日本語表現大辞典という講談社から出た辞書を最近買いました。これを読んでいると日本語の特徴が見えてきます。
近代日本の作家たち、文筆家は、何に腐心してきたのだろうか?
私流の結論を言えば、
①形容詞の使い方に関心をもった。(名詞を形容するその仕方で自分らしさを出そうとした。)
②同じく、動詞を形容する副詞的表現に努力してきた。
以上の二つに尽きる。これに付け加えるものがあれば、構成である。どのように、筋を展開するか。
亡くなった開口健は文章は形容詞からまず腐っていくと生前述べた。それは見方を変えれば、そこに魅力があったからであろう。実際彼の文章には、豊かな形容詞表現がみられる。
以上の観察結果を基に言いたいことは、英文を読むとき、何に着目するかである。
1.名詞に対する形容詞表現、特に後置修飾を見ることである。関係代名詞、それの短縮形としての分詞、関係副詞、接続詞thatをつかっての修飾等である。
2.同じく副詞。副詞句、副詞節の作られ方に目すべきである。
いかに優れた作家といえども、さすがに動詞となる言葉をふんだんに新設するわけにはならなかったようである。やったことは、S,V,O,Cを使って、その時代にふさわしい、あるいは自己の感性にふさわしい、形容詞句、形容詞節、副詞句、副詞節をつくることをしたに過ぎない。そして、逆に言えることは、文章表現、言語表現の基礎となるのは、英語的文法的に言えば、5文型が重要だということである。S,V,O,Cの組み合わせである。これを侮ることは出来ない。
灰色の霧の幕のなかから、黒い波が幾千の亡霊のように襲ってくる(加賀乙彦)
黒い波が押し寄せてくる出よさそうなものを、と思うのですが。それでは劇的効果がないのでしょう。「幾千の亡霊のように」という語句を使って、襲うという動詞を形容する以外方法がない。
from grayish (curatin of) clouds, black waves come one after another like ( as if) thousands of ghosts
従順一点張りの灰色の幕のような女(獅子文六)
従順一点張りの女はわかるが、灰色の幕のような女となると、私には実感が湧かない。こういう具合に表現上の独自性を出さないと作家たりえないのですかね。うそと紙一重ですな。私の趣味ではこのようなあいまいな形容詞を廃すので。
しかし、これを表現するとすれば、構造的には、後置修飾しかない。
a woman ,who is stubbonly obedient like a dim grayish cloth,
靄(もや)が野を蔽い、幕のように光る(大岡昇平)
靄が光るでは味も素っ気もないので、「野を蔽い、幕のように」とした。
hanging over the fields, the mist gleams like a thin cloth
風船よりは薄くて弱いけどシャボン玉よりは厚いみたいな、粘り気のある膜(景山民夫)
a sticky film which is thinner and more fragile than a balloon, but seems thicker than soup bubbles
意識に薄い膜がかかったように、頭と眼の奥とに鈍い痛みがある(高井有一)
like a thin membrane is floating in (attaching to )my mind, there is a dull pain in my head and in the bottom of my eyes
眼の裏に薄い膜でも張ったみたいに疲労と興奮が粘りつく(阿刀田高)
as if a thin film (were) attached to the bottom of my eyes,fatigue and excitement have last
注:英語は私の個人流儀適当に当てはめものであり、必ずしも適当でないかも知れない。ただし、構造的な日本語と英語の対応関係を言いたいがためにしたものであるので、その点を了解されたい。
近代日本の作家たち、文筆家は、何に腐心してきたのだろうか?
私流の結論を言えば、
①形容詞の使い方に関心をもった。(名詞を形容するその仕方で自分らしさを出そうとした。)
②同じく、動詞を形容する副詞的表現に努力してきた。
以上の二つに尽きる。これに付け加えるものがあれば、構成である。どのように、筋を展開するか。
亡くなった開口健は文章は形容詞からまず腐っていくと生前述べた。それは見方を変えれば、そこに魅力があったからであろう。実際彼の文章には、豊かな形容詞表現がみられる。
以上の観察結果を基に言いたいことは、英文を読むとき、何に着目するかである。
1.名詞に対する形容詞表現、特に後置修飾を見ることである。関係代名詞、それの短縮形としての分詞、関係副詞、接続詞thatをつかっての修飾等である。
2.同じく副詞。副詞句、副詞節の作られ方に目すべきである。
いかに優れた作家といえども、さすがに動詞となる言葉をふんだんに新設するわけにはならなかったようである。やったことは、S,V,O,Cを使って、その時代にふさわしい、あるいは自己の感性にふさわしい、形容詞句、形容詞節、副詞句、副詞節をつくることをしたに過ぎない。そして、逆に言えることは、文章表現、言語表現の基礎となるのは、英語的文法的に言えば、5文型が重要だということである。S,V,O,Cの組み合わせである。これを侮ることは出来ない。
灰色の霧の幕のなかから、黒い波が幾千の亡霊のように襲ってくる(加賀乙彦)
黒い波が押し寄せてくる出よさそうなものを、と思うのですが。それでは劇的効果がないのでしょう。「幾千の亡霊のように」という語句を使って、襲うという動詞を形容する以外方法がない。
from grayish (curatin of) clouds, black waves come one after another like ( as if) thousands of ghosts
従順一点張りの灰色の幕のような女(獅子文六)
従順一点張りの女はわかるが、灰色の幕のような女となると、私には実感が湧かない。こういう具合に表現上の独自性を出さないと作家たりえないのですかね。うそと紙一重ですな。私の趣味ではこのようなあいまいな形容詞を廃すので。
しかし、これを表現するとすれば、構造的には、後置修飾しかない。
a woman ,who is stubbonly obedient like a dim grayish cloth,
靄(もや)が野を蔽い、幕のように光る(大岡昇平)
靄が光るでは味も素っ気もないので、「野を蔽い、幕のように」とした。
hanging over the fields, the mist gleams like a thin cloth
風船よりは薄くて弱いけどシャボン玉よりは厚いみたいな、粘り気のある膜(景山民夫)
a sticky film which is thinner and more fragile than a balloon, but seems thicker than soup bubbles
意識に薄い膜がかかったように、頭と眼の奥とに鈍い痛みがある(高井有一)
like a thin membrane is floating in (attaching to )my mind, there is a dull pain in my head and in the bottom of my eyes
眼の裏に薄い膜でも張ったみたいに疲労と興奮が粘りつく(阿刀田高)
as if a thin film (were) attached to the bottom of my eyes,fatigue and excitement have last
注:英語は私の個人流儀適当に当てはめものであり、必ずしも適当でないかも知れない。ただし、構造的な日本語と英語の対応関係を言いたいがためにしたものであるので、その点を了解されたい。