ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

デジャヴ

2007年04月18日 | 映画レビュー
 デンゼル・ワシントン、かっこいい! 彼が出てくるだけで「うん、大丈夫、きっとなんとかしてくれる!」と思えるところがすごいです。

 それにしてもこういうタイムパラドックスね、うーん。面白かった。

 予告編を見たときに想像した内容とずいぶん違うので最初のうちは戸惑ってしまったのだが、それは「面白くない」という意味ではなく、「ふつうに正統派のアクションもの?」という面白さだったのだ。が、途中からいきなりSFになってしまったので、「あ、やっぱりこういう映画だったのね」と少々面食らった。予備知識なく見始めたら、この映画にはこの分岐点で戸惑う観客がいそうだ。

 さてストーリーは。

 ニュー・オリンズの港でカーニバルを祝うため、海軍の水兵とその家族がフェリーに乗り込みミシシッピー川に航行を始めたその瞬間、爆弾が爆発して543人が亡くなるという大惨事が起きた。捜査に当たることになった孤独な男はダグ・カーリン。デンゼル・ワシントンが演じるとそれだけで男臭くてかっこよくて痺れてしまう。切れ者のダグが見せられた映像は、衛星を使った監視カメラで特定の範囲内ならどんな角度からも4日と6時間前の映像が見られるというシロモノ。巻き戻しはできないが、リアルに室内で動く人の姿を捉えることができる。この技術がすごい。ほんとに既にこういう技術が確立しているのではないかと思わせるすごさだ。このカメラを使ってダグは他殺体となって発見された美しい女性クレアの部屋を見たいと言う。自分が殺されることも知らず目の前で生き生きと動き回るクレアの映像を凝視するダグ。爆破事件の鍵を握ると思われる彼女の様子に釘付けになる。これは監視社会の恐ろしさを実感させられる映像なのだが、勘のいいダグはこの映像の謎を解いてしまう。「これは4日前に録画された映像なんかじゃない!」

 偶然開発された最新鋭の装置を使って、ダグはクレアを救うことを決意した…だがどうやって?!

トニー・スコットの演出はアクションものなら任せとけというスピーディでパワフルなものなので、安心して見ていられる。逆に言うと、もう少し違うものも見せてほしいと思ってしまう点も否めない。その点、今回は今まで見たこともないカーチェイスを見せてくれた点では瞠目だった。ただしこれ、演じているデンゼルが「ラリっているみたいだ」と言うとおり、観客も見ているのがしんどくなってくるような映像だ。何しろ目の前の車が二重写しなんだからね、車酔いしそう。

 本作のテーマである「過去のやり直し」というのはこれまでずいぶん映画で取上げられてきた。過去は生き直せるのか? 人は過去を書き直したいという欲求にとりつかれる強欲な生き物なのだろう。何度も繰り返し取上げられるテーマであるからには人間の本質的な欲望を突いているに違いない。そして、西洋人たちはどういうわけか、ほとんどの場合「過去は変えられる」「運命は人の手で変えられる」という結論を用意する。そこには無常観がなく、人間中心主義的思考が窺えるのだ。「主体」を重んじる西洋近代主義の賜物といえよう。

 この映画でリアリティがあると思えたのは、ダグ・カーリンが命の危険を賭しても過去に戻ろうとした理由が、543人の命を救うためではなく、たった一人の女性を救うためだったということだ。「彼女を救う」という決然とした言葉には、逢ったこともない女性への強い愛が込められている。こういうのを運命の絆とでも呼ぶのだろうか。

 映画の最後に、「ハリケーン被害に遭ったニュー・オリンズの人々に捧げる」という献辞が流れる。どんな災難や困難にあっても決して諦めないこと、未来は自分達の手で掴むものだということを力強く伝えるメッセージ性の高い映画なのだ。

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デジャヴ
DEJA VU
上映時間 127分(アメリカ、2006年)
監督: トニー・スコット、製作: ジェリー・ブラッカイマー、脚本: テリー・ロッシオ、ビル・マーシリイ
出演: デンゼル・ワシントン、ポーラ・パットン、ヴァル・キルマー、ジム・カヴィーゼル、アダム・ゴールドバーグ

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