ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ココシリ

2007年04月21日 | 映画レビュー
 ココシリとはチベットの言葉で「美しい山」「美しい女性」という意味だそうだ。チベットの奥地に生息するチベットカモシカが絶滅の危機に瀕している。これはカモシカを守るために密猟者を逮捕する仕事に<ボランティアで>就いている男達の過酷な物語。実話に基づくというけれど、あまりにも壮絶な、あまりにもハードボイルドな話だ。密猟者を追う男たちは、何物かにとり付かれているとしか思えない執念で文字通り命がけで奥地へ奥地へと車を走らせる。

 密猟者達だって、元は遊牧の民だったのだ。それが砂漠化が進んで遊牧が不可能となり、皮が売れるからカモシカを殺す。ここにもグローバリゼーションの波が押し寄せているのだ。買う者がいるから密漁はなくならない。皮は遠く外国へと売り飛ばされる。

 それにしても不可解なのは、密猟者を追う者たちがボランティア活動で命を懸けているということ。近代合理主義の論理からはこの行動は説明がつかない。日本で「ボランティア活動」からイメージすることとはまったく異なるハードな闘いを繰り広げる男たち。ハードなのは人間同士の戦いだけではない。なにしろチベットの過酷な自然をも相手にしているのだ。流砂に飲み込まれて命を落とす場面の息を呑む凄惨さはどう。満天の星空の言葉を失う美しさもまた格別。食糧もなく放り出される密猟者達は平均高度4700メートルという酸素の薄い酷寒の地でどうやって生き延びていくのだろう。

 この映画に描かれたすべてのことが日本に住むわたしには想像を絶する。実話だから確かにドキュメンタリータッチではあるけれど、内容は極めてハードボイルドなサスペンスものと言っても過言ではない。ほんとに実話か、と言いたくなるぐらいだ。88分という短さもいいので、まあとにかくいっぺんご覧あれ。(レンタルDVD)

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ココシリ
KEKEXILI
上映時間 88分(中国/香港、2004年)
監督・脚本: ルー・チューアン
出演: デュオ・ブジエ、チャン・レイ、キィ・リャン、チャオ・シュエジェン

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