日々の恐怖 5月17日 お守り(1)
これは私Mが、いや、正確には母が2010年の半年前から9月の終わりごろまでに経験した話です。
その年の7月某日、もろもろの事情で、私は結婚を前に実家へ一度帰省するため、アパートから引越しすることになりました。
父は仕事の繁忙期でこれませんでしたが、母が有給をもらって代わりに来てくれました。
母は前年から体の調子が芳しくなかったのですが、とにかく外で遊ぶのが大好きな人で、その年の5月にトルコ旅行なんぞに行くような、本当に活力あふれる虚弱体質の人です。
さらにいうなら、何もないような場所でよく転ぶ、おっちょこちょいな人でもあります。
荷造りのときも、10センチの段差しかないアパートの玄関で派手にスッ転んでました。
私のアパートがあった某所は、海と山に囲まれた比較的のどかな場所で、高速を走らせれば、すぐに熊野やお伊勢さんに行けるような立地の場所でした。
そんな場所ですから、旅行好きで観光大好きな母親が行動を起さないはずもなく、
「 Mさん!お母さんちょっと熊野古道めぐり行きたい!」
ちょっと熊野古道めぐりってアンタねぇ、なんて思いもしましたが、言い出したら聞かない人ですし、
「 行かない!」
なんて私がごねて後からネチネチ文句言われるのもイヤだしなぁ、という思いもあり、とてもすごく遠回りですが、引越しの荷物(クロネコさんの単身パックからあぶれ出た荷物)をひっさげて、熊野古道と那智大社、周辺のお社へ行くことになりました。
旅なれた母はあれよあれよと言う間に宿を確保し、行きたい社と観光スポットをググって決め、出だし快調に出発しました。
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