黛玉が部屋に入ると、髪誂えからして、年齢のいっただろう婦人がふたりの下女に引き入られながらやってくるのを見た。
黛玉は祖母であるとわかり、ちょうど頭を下げて挨拶をすると、腕に抱きしめられた。「可愛い娘よ」と、叫び、口づけをし、大きな涙をこぼした。黛玉もまた涙を流し続け、とまらなかった。
すべての人がゆっくり慰め、黛玉はこれに応じて祖母に深々と挨拶をした。祖母は黛玉のために、皆をひとりずつ紹介した。
ちょうど、黛玉の母のことを話そうとしていた時、祖母―贾母もまた、悲しみが沸き起こってきた。
黛玉の年齢が若いにもかかわらず、話しや身のこなしが優雅で、しかも非常に行儀が良く愛されているようだ。ただ体が虚弱でか弱そうだと、誰もの目にも映っていた。
その中のある人が尋ねた。「黛玉お嬢さん、失礼ですが、どんなお薬を服用していますか?」
黛玉は答えて、「生まれた時からこのような様子でして、薬を飲むのはやめたことがないのです。沢山の名医といわれる医師が処方しましたが、どれも効果がないのです。今は、高麗人参の丸薬を飲んでいます。」
贾母·は言った。「丸薬を処方しますが、いかがですか?たくさんあるから皆で少しばかり分けましょう。」
ちょうどこの時、裏庭から甲高い笑い声が届き、こう言った。「遅くなりました。遠方からの客人を出迎えて、お目にかかれませんでした。!」
話しが終わるとすぐに、屋内の老婆の下女たちは、ひとりひとりが恭しく厳粛になり、列を乱さずに立ち並び、その場にいて息が押し留まるくらいだった。
黛玉はこの場に遭遇し、驚き、困惑した。
ひとりの女の人が、従えた下女に囲まれて導かれるようにして部屋の裏の戸から入ってきた。その人は頭からつま先まであでやかに輝き、面をつけた神様か、女神のように美しい。二つの目は切れ長の眼で、眉は柳の葉のように流れ、目尻は上がり、体は細身で、立ち姿は艶っぽい。顔面は春の勢いがあるかのように生き生きとし、唇には笑みがこぼれている。
(自分自身のために)
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