子供の頃、母がたまに話した辛かった話を聞くにつけ、戦争が母に不幸をもたらしたと受け止めていた。
義父が買った本 金色の背表紙で 「昭和万葉集」があり、ぱっと夜になって開いてみた。
赤字で我が子を歌う とあり、清水恒子 「庭の花」 生涯にたったひとつのよき事をわがせしと思う子をうみしこと
そのページの中に 宮本百合子「十二年の手紙」 幸といふはかかる幽けさ夫と居て雨夜は雨の音を聞くのみ
斎藤茂吉「霜」 あきらけき月夜ひととき時雨つつ夜の虹たてる空の静まり
前田夕暮 マンホール木蓋に変わりおく霜の白きが朝の道に顕つかも
昭和十九年九月 政府は銀、白金、ダイヤモンドなどの買い入れを開始した。
兵器部品として、銀は航空機用エンジンの軸受け、白金は電気機器の接点電気雷管などに使うとされた。