Harem Scarem - Hard To Love (1991)
ついに今月、私の好きなハーレム・スキャーレムの通算15作目の作品「Change the world」が発表だ。
そこで、多くの人にこのバンドの素晴らしさをわかってほしくて、ちょっとした特集を組んでみることにした。
彼らはメロハーの最高峰のバンドと知られている。
そこでだ。
メロハーとは何だろうか?
メロディアス・ハードロックのことである。
では、メロディアス・ハードロックとは?
簡単に言えば、70年代から80年代に一世を風靡したジャーニー、TOTO、サバイバー、ボン・ジョビ、ファイアー・ハウスなどに象徴されるポップな耳障りのよいハードロックのことだ。
70年代、ロック評論家の渋谷陽一氏が、大衆に媚びを売る改革性のないロック音楽という批判を込め、「産業ロック」と揶揄した音楽である。
まあ、多くの人は気にしないで、気持ちいいサウンドに耳をゆだねて聴きまくっていたけど。
ところが、1990年代、アメリカで、オルタナティブ、グランジ・ロックのムーブメントが起こる。
すると、これらの音楽は「時代遅れの古臭い音楽」と烙印を押され、抹殺されるのだ。
皮肉なことに、「産業ロック」が大衆からそっぽを向かれる「非産業ロック」になってしまう。
アメリカでは、2020年の今まで、この現状は変わらない。現在のアメリカでは能天気な明るいメジャーコードは禁じ手になってしまった。そこにはアメリカ社会の変質があると思われるのだが、ここでは言及しない。
メロディアスなロックはアメリカでは完全に過去の音楽として扱われている。
そりゃ、聴く人はいないことはないし、昔のバンドは活動を続けてたりするが、一部の人のためのマイナーな存在となった。日本で言えば演歌みたいな存在になったと言っていいかも。
でも、幸運なことに西洋人みんなが嫌いになったわけではない。アメリカで絶滅しても、海を渡ったヨーロッパで、この手の音楽は生き続けるのである。
特にスゥエーデンとノルウェーでは、新しいバンドが出て来たりするようになった。
そして、聞き手の方はわが日本である。
日本のロック・マニアが彼らを支える。そして、世界中の少数派のマニアがネットの動画サイトの影響だろう、流行の音楽ではなくても、アメリカで流行ってなくても、ヒットチャートには出てこなくても、支えるようになっていく。
レコード会社では、イタリアのフロンティアズ・レコードが、こうした音楽を支える。どうやら社長が70年代、80年代のロックを好きみたいだ。
ということで、表舞台からは姿を消したメロディアス・ハードロックは何とか生き残っているのである。知る人ぞ知るのだが・・・。
最近ではメロディアス・ハードロックをAORと表現するメディアもある。あのボズ・スキャッグス等のソフト&メロウの世界ではなく、大人向け(年寄り向けの)ロックという意味だ。まあ、ジャンルの表現はどうでもいい。何とか生き残ってくれれば。
さて、本題である。
ハーレム・スキャーレムは1991年のメジャー・デビュー。この手の音楽をやるには遅すぎた。カナダのバンドだが、もうアメリカで勝負できるタイプの音楽ではなかった。結局売れたのは、日本とフィリピンが中心だったようだ。
でも、日本での熱狂的支持が彼らの活動を存続させる。
彼らはアメリカや本国のカナダでは売れないまま、何と今回で15作目の作品を出すのである。音楽性を変えたり、バンド名を変えたり、一度解散したりしながら、約30年間続けてきた。
これはすごい!日本のファンの応援と世界中の少数派のマニアが支えたこそのバンド継続だ。
美しいメロディと、歯切れのよいギター、気持ちのいいコーラスと展開。好きな人は好きなのである。
もし、ジャーニー、サバイバー、ボン・ジョビが好きなら、聴いてほしい。
Harem Scarem - Honestly
バラードも絶品。