神様がそこにいました。一人静かに腰をおろして穏やかな笑みを浮かべていました。みんながホッとするような、ずっと変わらないその笑顔…。
今さら説明するまでもありませんが、こちらにおわす御方こそ、今や日本中に広まった『つけ麺』の生みの親にしてラーメンの神様、池袋『大勝軒』創業者、山岸のおやっさんです。私は18で東京に出てきて、大学の友達に誘われて初めて食べた『あつ盛り』のあの味が、知らずに頼んだ大盛のたまげるくらいの量が、そしておやっさんの笑顔が忘れられません。後半苦しそうに食べる私に、「うちは多いからね。無理しなくていいよ。」と優しく言ってくれたおやっさん。意地でも食べきり、それからは『あつ盛り』中盛り麺かため味濃いめが私の定番となりました。おやっさんの様々なエピソードを人から聞いたりテレビで観ました。格好良すぎです。本当に神様みたいな人です。欲深い私は到底目指せる境地ではありません。でも、こういう先人が同じ世界に実在しているというだけで救われた気がします。どんな肩書きより、人間力。おやっさんはお身体を壊され、もう何年も前に引退し、私の知っていたあの小さな本店もありません。どんなお弟子さんも同じ味は出せないかも知れません。でも、気さくに肩まで組んでくれたおやっさんの笑顔は変わってませんでした。本当に嬉しかったです。おやっさん、またお顔を見に参ります。どうかいつまでもお元気で。