なにめでて をれるばかりぞ をみなへし われおちにきと ひとにかたるな
名にめでて 折れるばかりぞ 女郎花 われおちにきと 人にかたるな
僧正遍昭
名前にひかれて折っただけなのだから、女郎花よ、私が堕落したなどとと人に語るなよ。
自分が女郎花を手折ったのは、その名前についている「女」という文字に魅かれただけのことなのだから、僧形に身をやつしていながら女性の魅力に負けて堕落したなどと、人に言ってはくれるなよ、と冗談めかして詠んだ歌です。ストイックなまでに自らの身を律するという「僧侶」のイメージから離れた俗人的で人間臭さの漂う歌が歌人・遍昭の特徴と言えるでしょうか。
ここから女郎花を詠んだ歌が続きます。