エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

アメリカのイノベーション戦略の要はスマートグリッド

2009-10-21 00:01:03 | Weblog
以前このブログで、9月22日オバマ大統領により発表された"A Strategy for American Innovation"(詳細は、こちらをご覧ください)についてご紹介しましたが、そこで特徴的なのは、①クリーンエネルギー革命と②次世代自動車がアメリカのイノベーション戦略の要となっていることです。
 この2つを総括して、「アメリカのイノベーション戦略の要はスマートグリッド」ということができると思います(もう一つは、ヘルスケア技術)。
 そこで、この2つのイノベーション戦略の内容を具体的にご紹介しましょう。
1クリーンエネルギー革命の解放
①3年後に再生可能エネルギーの供給を倍増する
・2009年アメリカ復興法による債務保証と税額控除
・2009年アメリカ復興法による研究開発
・2009年DOEによる洋上発電に関する規則の制定
②省エネ産業の振興
・2009年アメリカ復興法による低所得者世帯に対する50億ドルの支援
・2009年アメリカ復興法による連邦政府ビルの省エネ化のための45億ドルの支出
・2009年アメリカ復興法による州政府・地方政府による省エネ・創エネ事業に対する63億ドルの支援
③クリーンエネルギー・イノベーションへの投資
・大統領は10年間で1500億ドルを投資する計画を提案
④キャップ&トレード方式の排出量取引制度の導入
⑤労働力のRE-ENERGYSE
・DOEと全米科学財団による数万人の新規労働力をクリーンエネルギー産業に就職するための支援プログラム
2 次世代自動車
①電気自動車と電気交通システムに対する史上最大の投資
・2009年8月民間の蓄電池と電気自動車部品の開発に対する80億ドルの助成金の交付を決定
・2009年アメリカ復興法によるEV・pHEVの購入に対する最大7500ドルまでの税制上のインセンティブ
・電気交通システム構築のためのパイロット事業に対する4億ドルにおよぶ支援
②次世代自動車製造に対する250億ドルの債務保証
・2009年6月第一次として80億ドルの債務保証を実施。この中には、フォードに対する59億ドルの債務保証、北米日産に対する16億ドルの債務保証、テスラに対する4億6500万ドルの債務保証が含まれる。
・今後数年間で、追加的に170億ドルの債務保証が行われる。
③次世代バイオ燃料の開発・製造
・2009年アメリカ復興法による8億ドルの助成金と5億ドルの債務保証
④自動車の燃費向上
・燃費基準の引き上げ

アメリカのグリーンニューディール国民運動から何を学ぶか

2009-10-20 06:45:52 | Weblog
「2020年に90年比で25%削減する」が日本の新しい中期目標となりました。その実現性に関して様々な議論が展開されていますが、私の立場は「発想の転換」で実現の道筋をつけようというものです。この中には、今までにない草の根型の国民運動の展開も含まれます。
 この関係で注目すべきは、オバマ政権の「グリーンニューディール」がトップダウンの政策スローガンからそのような国民運動へと進化しつつあることです。
 この点で、最近刊行された『The Green Dollar Economy』という本をご紹介したいと思います(「まえがき」は故ロバート・F・ケネディ上院議員)<邦訳『グリーン・ニューディール』;こちらを参照ください>。
 著者のVan Jonesは、日本ではあまり知られていませんが、米国ではいち早く「グリーン・カラー・ジョブ」(Grenn Collar Job)の重要性を訴え、わずか2年で一介の市民運動家から普遍的なグリーン・エコノミーを創出する国民運動の旗手に駆け上がった人物で、グリーン・エネルギー産業への職業訓練の強化を求める国際NGO「グーン・フォー・オール」(GREEN FOR ALL)を主宰しています。
 ①地球環境問題と②米国経済の弱体化および格差の拡大を現在のアメリカの2大危機として捉え、この2つの危機を解決するための国民運動を展開するとともに(この点は、地球温暖化対策のための国家総動員体制の構築を唱えるレスターブラウンの主張と共通しているところがあります)、環境負荷の少ないグリーン産業の発展とそれによる経済的恩恵をあらゆる社会的階層の人々が享受できるようにする「グリーンカラー・エコノミー」(Green Collar Economy)の実現を唱え、シカゴ、ウィスコンシン州ミルウォーキー、カリフォルニアリッチモンドなどでの豊富な実例を紹介しています。
 省エネ国民運動、チームマイナス6%など日本の国民運動は一般的な広報・啓発にとどまっていましたが、アメリカのグリーンニューディール国民運動は市民層の草の根型の参加により「グリーン・カラー・ジョブ」(Grenn Collar Job)の創造を目指すというより明確な目標を目指した合目的的な国民運動となっています。
 読んでみると、何か、「グリーンカラー・エコノミー」(Green Collar Economy)が『ポスト・クライシスの世界』(田中明彦・東大教授著)における世界的な思潮となってくるような予感がしてきます。

日本企業のスマートグリッド対応と「イノベーションのジレンマ」

2009-10-19 00:00:45 | Weblog
 スマートグリッドは、今後の企業のビジネスモデルを構想するに当たって”不(非)連続な活断層”です。このことを象徴する最近の動きの一つに、ドイツを代表するソーラーメーカーQセルズの不振があります。
 Qセルズの企業収益をみると、2009年1月~6月期に上場してから初めて赤字に転落しました。同社は、世界シェアでシャープを抜いて首位に躍り出るなど急成長してきましたが、設立から10年を迎えた本年はこれまで経験したことのない窮地にあります。
 要因としては、世界金融危機後の実体経済の落ち込み、世界の太陽電池市場の需給緩和等がありますが、不振の根底には、太陽光パネルが「コモディティ化」してきたことがあります。
 このことは、クリステンセンがThe Innovator's Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail (『イノベーションのジレンマ - 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』)のなかで指摘した「イノベーションのジレンマ」(Innovator's Dilemma)を想起させます。
 「イノベーションのジレンマ」は次のメカニズムで起こります。
①優良企業は顧客のニーズに応えて従来製品の改良を進め、ニーズのないアイデアについては切り捨てる。イノベーションには従来製品の改良を進める持続的イノベーションと、従来製品の価値を破壊するかもしれない全く新しい価値を生み出す破壊的イノベーションがあるが、優良企業は持続的イノベーションのプロセスで自社の事業を成り立たせており、破壊的イノベーションを軽視する。
②優良企業の持続的イノベーションの成果はある段階で顧客のニーズを超えてしまい、顧客はそれ以降においてそうした成果以外の側面に目を向け始め、破壊的イノベーションの存在感が無視できない力を持つようになる。
③他社の破壊的イノベーションの価値が市場で広く認められた結果、優良企業の提供してきた従来製品の価値は毀損してしまい、優良企業は自社の地位を失ってしまう。
 スマートグリッド革命を迎えるにあたり、日本の関係企業が「脱コモディティ化」戦略を構築し、「イノベーションのジレンマ」をいかに回避するか、その手腕が問われています。

アメリカの電力会社デュークエネジーによるスマートメーター大量導入

2009-10-18 00:16:44 | Weblog
アメリカの電力会社デュークエネジー(Duke Energy)
は、オハイオ州とインディアナ州においてスマートメーターを大量に導入することを決め、スマートメーター会社であるエチェロン(Ecelon)と契約しました。第1弾の契約金額は1,580万ドルですが、全体では1億5,000万ドルとなります。
デュークエネジーは、オハイオ州において70万台のスマートメーターを導入する法的な手続きをすでに終了しており、インディアナ州においても手続きが進行中です(詳細は、こちらをご覧ください)

スマートグリッドがネットワークであることに由来する内在的課題

2009-10-17 00:32:23 | Weblog
スマートグリッドへの取り組みが内外で加速化していますが、ここで冷静に立ち止まり、スマートグリッドがネットワークであることに由来する”内在的”課題を整理してみたいと思います。
1. 物理的ネットワークのデジタル接続は、リスクファクターを上昇させ、信頼性を減少させる方向にベクトルが働く。
2. 電気が「エネルギーの通貨」として機能するようになるので(言ってみれば、キロワットアワーがエネルギー通貨の単位となる)、ネットワーク上の資金決済、電子マネーなどのようにお金としての通貨のネットワーク上での処理と同様な安全性の確保が求められる。
3. 消費者のプライバシーとデータを様々な形で活用したいとする電力会社等の要求との間で、「情報の所有権」に関する問題の解決が必要となる。
 私見では、1と2の課題に対して日本のNGNは一定程度の解を与えるものです。ただ、本質的な回答は、IPアドレスを現在のインターネットやNGNのように機器につけるのではなく、シリコンバレーにあるPARCのVan Jacobsonが提唱しているように、コンテンツにつけるというネットワークのアーキテクチャーそのものの転換(Content-cntric Networking:詳細は、こちらをご覧ください)が必要なような予感がします。

COP15をめぐる世界の機関投資家の動き

2009-10-16 07:02:03 | Weblog
 9月16日世界の投資家たちが、国際社会の政策立案者に対し、COP15においって思い切った温暖化対策をとるよう求める共同声明を発表しました。
 具体的には、以下のような事項をポスト京都協定に盛り込むよう求めています。
①世界全体の排出量を、2050年までに90年比50~85%削減する目標を設定すること
②先進国の削減目標は、2020年までに25~40%削減、2050年までに80~95%削減とすること
③途上国は、測定可能・検証可能な排出削減目標を盛り込んだ行動計画を策定すること
③各国政府はエネルギー効率化、低炭素技術への支援を行うこと
④地球規模の効果的な炭素取引市場への移行を支援すること
 上記の共同声明に署名した投資家の数は181人、その総資産額は13兆ドルで、投資家が集団で発表した気候変動に関する声明としては史上最大級のものです。
今後世界的な減CO2事業の推進、日本の減CO2事業の遂行等に対して世界の機関投資家の資金を呼び込んでくる際に考慮すべき動きでもあります。

ボルダーのスマートグリッドシティの最新動向

2009-10-15 00:05:01 | Weblog
 9月22日から24日まで、ワシントンDCで開催されたGridwise Week 2009において、ボルダーのスマートグリッドシティ(こちらをご覧ください)の最新動向が明らかにされました。
 それによると
ー200マイルの光ファイバー敷設
ー46,000箇所が、BPL(電力線搬送通信を利用したブロードバンドインターネット接  
 続 :Broadband over Power Lines)機能保有
ー16,000のAMIメーター(スマートメーター)が設置
ー4,700の変電所の監視

P・クルーグマンが指摘する環境対策とマクロ経済政策の組合せの必要性

2009-10-14 07:03:44 | Weblog
グリーンニューディールに関して、ノーベル経済学賞受賞者であるP・クルーグマンは、次のように語っています(全文は、こちらをご覧ください)。
 「過大評価は禁物です。環境政策によってすべての問題を解決できるわけではありません。
 (ただ)公共投資の対象としては効果的です。旧来通りの道路や橋の建設よりもましです。二酸化炭素排出のキャップ・アンド・トレード制度を確立できれば、経済に良い効果をもたらすでしょう。
 制度が明確になれば、企業は今から投資を始めます。今、投資が増えることは非常に重要です。グリーン・ニューディールで経済を回復させようというのはあまりにも楽観的ですが、環境対策とマクロ経済政策を組み合わせることで相乗効果を上げることはできます。」
 この指摘は、以前新中期目標「90年比25%減」を実現するための骨太の9原則をご紹介しましたが、このうちエコポイントの活用、政府によるコミットメントの明確化等に対応します。
 私は、この環境対策とマクロ経済政策にイノベーション創造政策(私が言う「ST革命」の推進)を加え、3つ政策を有機的に連関させて展開すべきだと思います。
 円高、株価下落等により景気の二番底が現実化しつつある今、「90年比25%減」を実現する「ST革命」のためのイノベーション創造とエコポイント等の組合せという基本戦略で早急にアクションをとる必要があります。

DOE長官のスマートグリッド新方針

2009-10-13 00:05:53 | Weblog
 9月22日から24日まで、ワシントンDCでGridwise Weekが開催されましたが、基調講演したDOEチュウ長官は、「アメリカは20世紀中ごろの電力システムでは21世紀のエネルギー経済を構築することはできない」(“America cannot build a 21st Century energy economy with a mid-20th Century electricity system.” )と指摘し、スマートグリッドが電力システム改革のカギとなることを強調しました。
 そのような認識に基づきチュウ長官は、09年アメリカ復興法による基金の中から電力会社の従業員の訓練に1億ドル、州の公益事業委員会(PUC)がスマートグリッドに習熟した職員を雇用するために4420万ドルを拠出することを表明しました。
 チュウ長官は、次の5つの分野をスマートグリッド実現、電力システム改革の重点分野として挙げています。
1. Renewable Integration: Addressing variability and intermittence of large-scale wind generation and solar energy
2. Energy Storage: Providing regulation and load shaping is critical to grid operations
3. Load Management: Making consumer demand an active tool in reducing the peak
4. System Transparency: Seeing and operating the grid as a national system in real-time. For example, the 2003 Blackout could have been prevented through the use of phasors that would have given grid operators 30-40 minutes of warning that problems were developing.
5. Cyber Security and Physical Security: Securing the physical infrastructure and two-way communication and data exchange.
 最後に、チュウ長官は、HEMSやその中での需要対応(demand response )、風力発電などクリーンエネルギー分野における新技術への投資に必要性を強調し、プレゼンを締めくくりました。

町工場に省エネサービスを展開するベンチャー企業と中小ビルの省エネ化

2009-10-12 00:40:32 | Weblog
 町工場に省エネサービスを展開するベンチャー企業が誕生しました(こちらをご覧ください)。ユビキュタスエネジーがそれで、創業から4年という速さで、本年3月にジャスダックに上場を果たしました。
 1件あたりの契約金額は小さいのですが、だからこそ競争相手も少ないし、いったん契約すると途中でキャンセルされる可能性も小さいという読みもあるようです。
 現在、中小ビルの省エネ化を広範に推進するための標準化、実証事業等が本年度事業として推進されていますが、これが基盤となって中小工場、ビル等のエネルギーマネージメントが進むことを期待したいと思います。