橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

第三回火鉢カフェ報告 その2 日本での暮らし方を考える

2011-04-14 16:13:48 | 東日本大震災

 

「第3回火鉢カフェ報告~その1~」からの続きです>>

 

今回の火鉢カフェは、震災の影響もあり、カフェでの話題はもっぱら次世代エネルギーや今後の私たちの暮らし方についてだった。自然エネルギーへの転換はもちろんのこと、社会のあり方などにも話は及んだ。というのも、この火鉢カフェの会場である長屋が、まさにその社会のあり方を示唆していたからだ。

今回は、そんなに寒くなかったので、常に縁側のガラス戸を開け放っていた。すると、通る人々は中をのぞいて、近所の人は必ず挨拶をしていく。中から顔を向けて目が合えば、知らない人でも「こんにちわ」と声をかける。そうした、かつてはあった日常が、まだここには残っていることを、参加した方の多くが感じていたと思う。ドアのチャイムを鳴らさずに宅急便屋さんがやってきたり、お向かいの女の子が部活から帰ってきてお帰りとか、子どもが入園式を終えて戻ってきて、おめでとうとか、そういう会話が交わされていた。

 

先日、作家の高橋源一郎氏が、雑誌のSIGHTでの対談で、宮崎駿氏と会ったという話をしていた。

宮崎氏は次回作のために、昭和30年代の「町の音」を収録しようと日本中をロケハンして廻ったのだそうだ。しかし、そのことによって、もはや日本には「生活音」は存在しないことが分かってしまった。最終的には屋久島まで行って、昭和30年代の町の音はもう日本にはないことを確認したのだ。気密性が高い現在の住宅事情では、朝のまな板の音も、雨戸を開ける音もなく、子どもの声も聞こえない。密閉された空間に閉じこもり、音をたてずに過ごしている。窓も開けない。

 

それが、現在の疎遠な地域社会を作ってしまったのだろうか。

 

私は、地域社会のあり方は、住宅のあり方によって少なからず規定されると考えている。住宅の形態が変わる事によって、人間関係も変わってきた。木と紙でできた、隙間だらけの低層の住宅が建ち並ぶ社会から、コンクリートで密閉性の高い、高層マンションが主流の世の中に変わっていった事が、今の社会を形作る上で大きな影響を与えていると思う。もちろん、プライバシーという概念が導入された事は悪いことではない。でも、よく考えたら、家や部屋に関するプライバシーなんて、部屋を汚くしてるからお客さんには入ってもらえないとか、恥ずかしいとか、その程度のことのような気もしないでもない。

 

この宮崎駿氏の話には続きがある。

さらに彼は、「アニメは僕で終わりです」と語ったんだそうだ。

なぜか・・・。

「火とか水とか風とか音とかを再現するのがアニメ」で「それを知らない人間には再現できないから、もう不可能です」ということらしい。彼曰く、最近のアニメーターは炎が描けない。なぜ描けないんだと聞くと、「見たことがない」と答えるらしい。

 

確かに。

今回カフェに来てくれた方のほとんどは、炭火は非日常だと言っていたし、20代の女性は、私たち世代には全然未知の世界と言っていた。本当に「炎を見たことがない」若者がほとんどなのだろう。

 

私は年齢40そこそこでも、ゾンビのように生き残った商家の長屋、さらに向かいに鎮守の森、自転車漕げば海があり、という特殊な環境で育ち、五右衛門風呂とか、秋の落ち葉炊きとか、海を渡る風とかを日常的に経験している。火鉢カフェでの炭火も別に珍しくはない。でもそれは多分特殊なのだ。

 

*火鉢クラブ設立のきっかけとなった内子町石畳の炭窯

 

今、宮崎氏はアニメを自分とともに終わらせるための葬儀をやろうとしているという。

 

宮崎駿のアニメは、そのストーリーの好き嫌いはあれ、水のたゆたい方や、風の流れや、木のざわめきにおいては、確かに、自然のそれを経験した時の記憶を包含しているような気がする。自然を目の当たりにした時に感じた、快楽や恐怖感や説明できない色々な感情をそのセル画を重ねた映像は呼び起こすのだ。確かにそれは他のアニメとは違うかもしれない。

 

「アニメ」が「アニメもどき」になっていくのは時代の宿命かもしれない。

 

でも、私には「葬儀」をやろうとは思えない。炎を知らない若い人に「火を扱う事を知ってみない?」と呼びかけたい。別に、昔に戻りましょうと言いたいわけでもない。

 

ただ、火を扱うことは楽しいのだ。それを伝えたいだけだ。

 

理屈を言えば、今回の火鉢カフェのテーマにも掲げたように、震災等で電気が止まるような非常時には、炭や薪などで火を使えることも必要だともいえる。火は人間の文明の源でもあるから、それを忘れる事は、重要な何かを忘れるようなものだ、とも言えるかもしれない。

 

けれど、なぜ火鉢カフェなんかをやっているかを本能に従って答えれば、「火は楽しい」というところに行き着く気がする。

 

火がつくまでの過程、その上でモノが焼ける様、焼けたもののおいしさ、火の側にいる気持ちのよい暖かさ、火力を強めたり弱めたりコントロールする面白さ、大きくなったり小さくなったり、強くなったり弱くなったりする炎。そして、その赤い色。

 

とにかく、面白いのだ。

 

しかし、それがゆえに使い方を誤り、炎が牙を剥く事もある。その怖さを知るにも火を使ってみなければわからない。

 

使いながら、「火」の人間にとっての意味、現代における意味を考えてみたいと思う。現代の生活の中で、火を扱うメンタリティを生かしたエネルギー政策とはどんなものだろう。

 

誰もその姿を直接は見ることのできない「原子力という火」を捨てて、その姿を拝める「原始的な火」について、いま一度考えてみる事も、次へのステップに行くためには必要なんじゃないかと思う。

 

自分でも分かったような分からないような締めだけど、これから考える事は多いということだけは確かだ。

 


第三回火鉢カフェ報告 その1 炭団に羽釜も登場!

2011-04-14 15:50:46 | 東日本大震災

 

「電気が無いなら炭を使おう」をテーマに、福島の炭を熾し、福島の濾過炭で濾した水でお茶を入れ、宮城の酒を試飲した第3回火鉢カフェ。4月9日、10日、初めての2日連続開催でした。

もう、大盛況!と言いたいところですが、初日は雨、翌日10日は、2日前に追加開催を告知したので、知られていなかったのか、天気がよかったにも関わらず、客足はまばらでした。原発事故による放射能汚染の問題もあるのか、9日に雨が降ったのは痛かったです。ただ、来ていただいたお客さんとは、炭火の話、自然エネルギーの話、地酒の話で盛り上がり、人数は少なかったけれど、とても有意義な会となりました。30人近くの方にご来場いただきました。

 

では、

第三回火鉢カフェの報告です

 

根津は藍染め長屋の澤田さんちの軒先も春めいて、アケビが緑を滴らせ、紅葉の青葉が清々しい中での火鉢カフェとなりました。

 

 

アケビの花なんて見た事ないという方のために、花のアップを。

 

花の向こうにボケて見えているのは、澤田さんが染め物で使うクチナシと唐辛子です。

 

 

いつもの玄関と縁側。縁側には火鉢を花器にして花を生けてみました。この火鉢は茶室用で、中に炭を入れて使う暖房用。

 

縁側に募金箱も置いて、入ってくるとき目に入るようにしたのですが・・・。

裏道なので通行人もまばら。思った程は集まらず残念な限り。

またGWにでもイベントを企画しようか、構想中です。

 

というわけで、やっと中に入ります。

 

参加者は合計28人だけど…。盛り上がりました!


8畳一間のカフェは、少しのお客さんでいっぱいです

(募金を集めるにはもっと広いところでやらなきゃダメかもしれません)。

しかし、お客さん少ないながらもおおいに盛り上がりました。少ないといっても室内はいっぱい。火鉢カフェというより、囲炉裏カフェになっちゃってます。結構あったかかったので、熱源はこの囲炉裏と、火鉢一つだけにしたためです。

 

もう一つの熱源の火鉢とはこちら。

この珍しい猫足の火鉢は、合羽橋の炭屋「斉藤商店」さんからお借りしたものです。まわりに湯のみが置けてとても便利。みな口々に「欲しい!」。

 

 

500円の炭チャージでお茶とお酒はフリー

 

と、こんな設えで始まった第三回火鉢カフェ。

 

炭は告知の通り、福島産の炭を中心に使いました。炭が主役にも関わらず、炭のヨリの写真が無くてすいません。接客しながら、ふと気づいた時に写真を撮るので、どうしても取材をするようには万全に写真を撮れないのですね・・・とほほ。

 

写真の囲炉裏の真ん中に見えているのが焙烙(ほうろく)です。緑茶を炒ってほうじ茶にして飲んでもらいました。もちろんお水は、福島の桐炭を加工した濾過炭会津キリタン「桐切舞(きりきりまい)」で濾過した水です。

この濾過炭を開発しているのは福島県大沼郡三島町の商工会と役場で作った

三島町炭化プロジェクト委員会事務局です。

この会津キリタン「桐切舞」の発売は11月ということで、ちょっとお待ちいただく事になりますが、興味のある方は、上記のURLをクリックしてみて下さい。

 

また、三島町ではいわき市をはじめとした自治体の被災者を受け入れ支援しています。

被災者や支援についての情報と、

三島町への義援金をお考えの方は以下のページをご覧下さい。

 

 

次に、宮城石巻のお酒「墨迺江」。

会場写真の右下隅にちょこっと、とっくりの口が見えていると思いますが、これが墨迺江酒造の「燗たのし」のぬる燗です。現場で写真撮るのを忘れてしまい、事前に撮った写真でご勘弁。

みなさん、美味い!と舌鼓。

 

10日閉店間際には、「墨迺江」でネット検索してこの火鉢クラブのブログにたどり着き、カフェまでやってきて下さったという地酒好きの女性もいらっしゃいました。なのに、火鉢カフェの案内看板に不備があり、澤田さんちにたどり着くまで1時間も迷ってしまったということで、本当に申し訳ない事をしてしまいました。とはいえ、墨迺江「燗たのし」にはご満足いただけたようです。このお酒「燗たのし」というだけあって、やはり冷やより燗のほうが美味しい気がします。火鉢カフェにぴったりのお酒、墨迺江酒造さん、がんばって来年も「燗たのし」よろしくおねがいします!

 

火鉢カフェは終わってしまったので、あとはみなさま各自、以下のサイトから募金にご協力いただければと思います。

 

「宮城蔵元救済義援金」お願いページ 

   

 

 

http://bit.ly/fjGvcW(←クリックで飛びます)

 

 

 

 

 

また、今回は、火鉢カフェの常連、愛媛県内子町の酒六酒造さんから、酒粕も提供していただいたので、甘酒もフリーで振る舞いました。

酒六酒造さんが、自信をもって勧めて下さった酒粕だけに、アルコール臭さは無く、上質なヨーグルトドリンクのような感じさえする飲みやすさ。美味い。普通のお酒は飲めないという女性も、この甘酒なら飲めると、何杯もおかわり。あまりに気に入られていたので、お土産にペットボトルでお分けしました。ちなみに、上の写真は一日目の甘酒です。二日目は黒砂糖を入れ、焦がしてしまったのでもっと茶色い色になってしまいました。


サザエさんも作ってた?こんなものも初登場


また、今回いろんな火鉢をご提供下さり、とてもお世話になった合羽橋の斉藤商店さんですが、さらに、こんなものもいただきました。炭団(たどん)です。

私自身も、炭団は初めて。お客さんからも「かわいい!」の声が!

また、お客さんからは「サザエさん」の漫画(本)の中で、サザエさんが炭団を作っているシーンがあったという話を聞きました。かつて、炭が家庭の熱源の中心だった頃は、大量に出る炭の粉を、少しでも無駄にしないよう、家庭でもそれをかき集めて炭団を作っていたのでしょうか?今では、炭団が何でできているかわからない方も多いようで、ほとんどの方が「初めて見た」とのこと。炭団は、炭の粉を水で練り、ふ糊で固めます。

火がついた状態がこれ。かなり時間経ってます。結構長もちするのにはびっくりでした。

 

これは、火のついた炭団を割っちゃった状態ですが、丸いまんまだとまるでドラゴンボール!

 

 

斉藤商店さんによれば、もう島根県の業者しか作っていないとの事ですが、

こんなに良いもの絶やさないで欲しいなあ・・・。一気にファンになってしまった。

 

備長炭で炊く羽釜のご飯はスゴい!お金をかけない贅沢


ところで、上の写真の炭団の横に転がっているのは紀州備長炭です。基本的には福島の炭を使ったのですが、カフェの最後に、ご飯を炊くために備長炭を使いました。もちろん、囲炉裏でではなく、こちらの珪藻土の七輪に羽釜を乗せて炊きました。

ご飯を炊くには、火力の強い備長炭でなければなりません。けれど炊飯自体は思いのほか簡単でした。真っ赤に焼けた備長炭を七輪に入れ、お米と水を適当に入れた(本当に適当な計量)羽釜を上に乗っけて、ただ待つのみ。湯気が出たのを見計らい、その湯気がちょっと焦げ臭いなと思ったら、火から下ろして蒸らすだけ。何分とか時間を気にするでもなく、途中火加減も見ず、ただ放置。途中一度、湯気の臭いを確認しただけ。

蓋から吹きこぼれる事も無く、火が燃え上がる事も無く、静かに静かに、知らぬ間にご飯は炊きあがっていました。

 

炊きあがりのきれいな状態を写真に撮れれば良かったのですが、またこれもタイミングを逃し、気づいた時には・・・。

でも、美味い!!!

普通の値段のお米です。その上、あんな適当に炊いてこの美味さ。さすが炭火あなどれず。今回も販売した、おなじみ愛媛県は内子町小田の原木椎茸と海苔を焙って一緒に食しました。なんという贅沢!でもちーともお金かかってないんですよね。みんな普通の値段。

このご飯サービスは、10日の閉店前にいらしたお客様だけになってしまったので、今後はもっと食べていただけるよう工夫出来たらと思います。

 

これ、今回販売した内子町小田の原木椎茸です。

 

このお客様は、1日目来店でこの椎茸を気に入って、翌日も買いにきて下さいました。そして募金もしてくださいました。にしても立派な原木椎茸でしょう! マジうまです! また取り寄せますね。

 

というわけで、二日間の火鉢カフェは無事終了。

ただ、参加人数が少なく、募金があまり集まらなかったのが残念でした。

 

 

火鉢カフェで集まった募金について

第三回火鉢カフェで集まった募金額は、まだ一部受け取っていない募金分がありますので、その分を受け取ったら、まとめて報告致します。少々お待ち下さい。

 

というわけで、以下、今回の火鉢カフェで考えた事を書こうと思ったんですが、書き出したら長くなったので、ここで分けます。


次回は

火鉢カフェ報告~その2~カフェのテーマ「日本での暮らし方」を考える