橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

「りぼん」60周年。りぼんから70年代を振り返ってみた

2015-08-08 23:10:15 | ツイッターつぶやき

りぼんが創刊60周年で、全ふろくの本を出したのだが、軒並みこれが売り切れで今日は手に入らず。手に入らないと、かえって懐かしくなって来て、私自身がりぼんを読み始めた頃に思いをはせてしまった。

りぼんにはかなり影響された。

1970年代後半、一条ゆかりの「砂の城」や土田よしこ(赤塚不二夫の弟子)の「わたしはしじみ」を読み、一方で、田淵由美子、太刀掛秀子や陸奥A子などファンシー路線も好きだった。りぼんにはまるきっかけとなったのは山本優子の「美季とアップルパイ」。今の少女マンガにはあまりみられないドタバタコメディだ。いろんなタイプの人間模様が一冊の中に錯綜していて、けどどれも感情移入出来た。人それぞれ好みが…なんて言うけれど、自分の中にもいろんな好みや人格があるのだと、このりぼんのラインナップを思い出しながら、再確認した。

ところで、70年代のりぼんを思い出しながら、この空気感、何かに似ている、と思いついたのが、先日このタイムラインに投稿した「SWITCH」の特集、70年代の音楽だ。日本語をロックにのっけたはっぴいえんど、ヨーロッパの匂いを感じさせた荒井由美…。洗練という意味では、マンガより音楽畑のほうが先を行ってた気がするが、田淵由美子のマンガのフランスパンとカフェオレの朝食や綿レースのワンピースに憧れ、陸奥A子のアーガイルのセーターをかわいいと思った小学生は、中学生になって、ユーミンの世界にたどり着く。ギャグマンガ「わたしはしじみ」の笑いの中に感じる人間の哀しみは、はっぴいえんどの「はっぴい」の意味にも似ている気がして、70年代とはそういう時代だったなあと懐かしくなる。

木と紙の家の縁側に腰掛けて、庭のある洋館に抱く憧れは、たぶんまだ、日本で暮らして行く上での本当の心地よさとか、美しさへの判断力が正しく働いていて、西洋文化の気持ちのいい部分を日本の風土に合わせて掬いとろうとしていたんだと思う。まだ、日本人のそうしたセンサーが働いていた。

暦に基づいた伝統的な暮らしや、落語や浪曲、和歌や俳句、和装や祭りといった文化はまだまだ、大人たちの身体の中には生きていて、それを、戦後入って来た憧れの西洋文化と折衷させながら、洋楽やマンガなどの新しい形の中に落とし込もうと模索した時代。外来のものを吸収し、自分たちに合うように作り替えるというお得意の文化活動が、開国以来のピークにあったのではないかとさえ感じる。

そんなことを思うのも、最近、内田樹と松本隆の言葉に膝をたたいたからだ。内田樹曰く「ロックに日本語を乗せたはっぴいえんどこそ、外来文化を換骨奪胎して自らのものにする日本文化の正統な継承者(というような趣旨のことです。記憶で書いております)」。さらに、前述のSWITCHで、そのはっぴいえんどの作詞を担当し、さらに松田聖子の楽曲の多くの作詞を担当した松本隆(はっぴいえんど)は「輸入文化だったポップスを日本に合うように作り替えてやっと消化できたのがはっぴいえんどから松田聖子への流れ」と語った。

ただの和洋折衷みたいなクールジャパンの魅力の無さにげんなりしていた昨今、この2人の言葉は、本来のクールジャパンとは何かという謎を一気に氷解させてくれた。

時代を変える程のパワーを持っていた松田聖子こそクールジャパン。めちゃめちゃ納得である。そういう意味で言えば、70年代に生まれたハローキティなどは、クールジャパンと言えるのかも…。
まあ、何が本当のクールジャパンかは置くとして、松田聖子が登場する直前、70年代後半はやはり、戦後における時代の分岐点、時代が象徴する何かのピークだったんだろうと思う。それが何なのかは、まだぼんやりして言葉にできない。私が多感な子供時代を過ごしたからかも知れないが、そこには何か特別なものがあったような気がしてならない。

子供時代の多幸感とともに70年代のことをよく思い出す。しかし同時に、まだ薄暗かった日本家屋の家の中や、物置の隅の暗闇や、不景気でお金が無いといった大人たちの暗い顔も憶えている。

りぼんを初めて読んだのは1974年。小学校1年生の時に、友達のおばあちゃんの家の16歳の住み込みのお手伝いさんが毎月買っていたのを読ませてもらった。まだ、中卒の住み込みのお手伝いさんというのがいた時代だった。

「人間が生きて行くのは大変だ」というあまりにも普通のことが、まだ真正面から受け止められた時代。その大変さから少しでも心を解放するためにいろんな文化はあったと、今になって思う。

りぼんから話が広がりすぎた…。なげーよ!
でも、クールジャパンって、一体なんなんでしょうね…。
大きいテーマだわ…