橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

ちょっと一休み 小売店礼賛 地域社会復活に向けて

2010-02-22 16:20:22 | Weblog
「我はいかにしてツイッターで仕事を辞めしか」の続きを下書きしてたら、
どんどん長くなっていって、なかなかアップできないので、
口休めにちょっと別のことを載っけます。

それは、近所の商店街の小売店について。

私の実家は、地方の商店街の中にある小売店で、
ここもご多分に漏れず、シャッター商店街です。
こうした商店街は、コンビニや巨大スーパー、ユニクロなどにおされ
東京の一部の商店街を除いては、
風前のともしびのところがほとんどでしょう。

私の住んでいる地域は、今時流行の谷根千(谷中根津千駄木)の隣接地域で
今をときめく谷中銀座商店街など、こうした小売店が比較的元気な地域。
活気があると、さらなる企業努力も行われるというもので、
私は、そうした小売店の恩恵に浴しながら日々生活しています。

そして、そうした日々の生活の中で、
小売店の良さを実感し、これからの世の中の変化の中で
小売店の復権を願ってやみません。
というのも、小売店のある生活の復権は、
地域社会が生き返るためには必須だと思えるからです。
それに、小売店って凄いんです。

ひとつ、小売店で「これは凄い!」と思った事例を挙げます。

駅の近くの商店街にある肉屋さん。
有名俳優がそこのメンチカツを絶賛している評判の店ではあるのですが
そのメンチのお味以外にも、私がその店に通う理由があります。

それは、そこのじいちゃんです。

その店は、そのじいちゃんとその息子さん(かな?)夫婦とその娘さんらしき人が
交代で店番をしているのですが(多分)。私が行った時にはほとんど
じいちゃんがいて、「今日は何にしますか?」と応対してくれます。
まあ、それは普通のことなんですが、私が驚愕したのは、
そのじいちゃんが持っている「技」です。

もしかしたら、これはたいていのお肉屋さんなら
みなさんできることなのかもしれません。
でも、他の肉屋では気にしたことがなく、
この店で初めて気付いて、それ以降この店に通っているので、
他の店のデータは今のところありませんのであしからず。

前置きが長くなりました。
で、そのじいちゃんがもっている技とは何かというと・・。

ステーキを切る技です。

ある時、徹夜明けの仕事を終えて帰路についた私は、
地元の駅に降り立ち、急にステーキを食べたくなりました。
とはいえ、高級店に行くほどお金もないので、
駅前のスーパーで700円のワインを購入、
その足で、その肉屋へ向かいました。

その日も店番はじいちゃんで、「今日は、何にしますか?」といわれ、
自分としてはちょっと奮発の100g840円のプレートを指して
「これを150g下さい」と言いました。
じいちゃんが「どのへんがいい?」と聞くので、
「脂は少なめで、赤身のところがいい」と答えました。
肉の部位も好みで切ってもらえるのも、小売店の良いところです。

そして、冷蔵庫から大きな肉の塊を出してきたじいちゃんは
使い込まれた肉切り包丁で、おもむろに肉を切りだしました。

切り取られた一枚のステーキは、まさに赤身の部分で
旨そうな色をしています。そして、じいちゃんはそれを、
どこの肉屋にもあるあの電子計りに乗っけました。

緑色のデジタル表示は「154g」。

って、さらっと書いちゃいましたが、これ凄いと思いません?
目分量で切って、形も良い感じのステーキの形で、
厚さも1,5cmくらい。それで、たった4gの誤差!!!

なんか、感動の瞬間でした。
そのじいちゃんがずっと肉屋をやってきたプライドみたいなもんを感じました。

そして、その肉を、あの発泡スチロールプレートではなく、
蝋引きの紙にのせ、包装紙で包み、輪ゴムで留める。
昔ながらの肉屋の仕様です。これの良いのは、しみ出た肉汁が溜まらないと。

そして、じいちゃんは、
「この肉はあんまり焼きすぎないでね。生でも食べられるから。」と
私に助言して、肉を渡してくれました。
肉の包みは、薄い透明のビニール袋に入れられただけで、
私の既に持っていた買い物袋の中に収まりました。
エコですよねー。

もちろん、この店のお肉がおいしいことは言うまでもありません。

ここに書いたことは、全然普通のことですが、
こんな些細なことに、人間って喜びを感じてしまうんですよね。

このじいちゃんとの間では
「今日のおかずは決まりましたか?」「今日はなんにする?」と
会話するところから買い物が始まります。
一人暮らしが長いと、こうした人の生活にちょっと立ち入る感じとは
無縁でしたが、このちょっと立ち入る感じがあった方が
日々の生活は楽しくなるなという気がしています。

そして、「匠」とは全く無縁と思えるような
町の小売店にも「匠」を感じさせる事例は転がっているのだなと
今更ながら、働く人に敬意を表さずにはいられなくなるのでした。

もちろん、大型店の裏方でも、いろんなこだわりをもって
働いている人はいっぱいいると思います。
大型店が全くダメというのではなく、今後、大型店も
こうした地域との関わりを重視した販売姿勢を表に出せるようになるといいなということです。本社のマニュアルに縛られず、臨機応変に地域のニーズに対応していける
大規模店の新しいあり方を臨みます。

でも、小売店っていいよ。みんな小売店に行こう!
もちろん小売店の側のさらなる努力が必要ですが・・。

私の実家のような田舎の商店街の再生については、
また別の問題があるように思います。
それについてはまた改めて考えようと思います。

わー、ちょっと一休みと思ったのが、十分長くなってしまったー