ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

夏への扉

2022年12月02日 | 本を読んだで

 ロバート・A・ハインライン 福島正実訳       早川書房

 ずいぶん久しぶりに読んだ。たしか世界SF全集のハインラインの巻で読んだと記憶する。もう50年ほど昔のことだ。この全集、別巻が広告されていたが、まだ出ないな。どうしたんだろう早川さん。
 この「夏への扉」いろんなSFの人気ランキングで1位になることが多い。SFファンの心の琴線に最も触れる作品といっていいだろう。小生もSFファンとなってずいぶん経つ。ここでもいったように若いころ読んだ名作を読みなおしているしだい。
 さて、「夏への扉」だ。おおまかなプロットは覚えているが、細かいストーリーは忘れている。ほとんど初読みといっていい。うん。面白い。冷凍睡眠とタイムトラベルの複合ワザだが、時間モノSFが苦手な人(小生もそのうちかも)でも判りやすく複雑なタイムパラドックスはない。ようするに30年眠って未来に行き、30年タイムスリップする。
 主人公は世間知らずのエンジニアおたく。画期的な家庭用ロボットを開発して会社を興すが経営には全く関心がない。新たなロボットを造ることだけが楽しみ。会社の実務は全くダメ。で、経営は親友に、事務は若い女性を雇う。この女性がたいへんに有能で、会社の株も持たして、さらには婚約までする。
 ところが・・・。という話し。悪と善が判りやすいから楽しめる。善も悪も女性である。とくに悪の女性は強烈な悪女。この悪女っぷりは爽快ですらある。ハインラインの小説のうまさが堪能できる。