ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

新作落語の舞台裏

2021年02月04日 | 本を読んだで

小佐田定雄     筑摩書房

 小佐田さんの「舞台裏」シリーズの4冊目である。上方落語界のジェダイマスターともいういべき小佐田さんが新作落語をつくる「舞台裏」をつぶさに見れる本である。先行3冊とあわせて上方落語ファンなら必須課題図書ともいうべき本だ。
 小説は作者が編集者に原稿を渡した時点で完成といえる。落語は違う。作家が落語家に原稿を手渡す。それに落語家がアレンジを加えて高座にかける。客の反応をもとに次回同じ噺をやるときに改造を加えることもある。小説は再販の時作者が手を加えることもあるが、原則として小説は変化成長はしない。落語は作者の手を離れても、成長し変化していくのである。落語は生きて成長する生き物なのだ。
 また、同じ噺でも、演じる落語家によって書きわける必要がある。演じる場所、時、あるいは受けての客が違えば、微妙に書き分けなければならない。落語作家は大変なのだ。