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ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

medium 霊媒探偵城塚翡翠

2021年12月31日 | 本を読んだで

相沢沙呼    講談社

「泣き女の殺人」「水鏡荘の殺人」「女子高生連続絞殺事件」と三つの事件があって、その章の間にインタールードとして短い話がはさまる。このインタールードがクセもん。なにやら男が若い女性のお腹にナイフを突き立てているみたい。このインタールードと本編になんの関連があるかが、この作品の重要なキモ。ホームズ役の城塚翡翠とワトソン役の香月史郎。このコンビが難事件を解決していくのだが・・・。       

走らなかった鉄道 未成線を追う

2021年12月30日 | 本を読んだで

 松村真人        神戸新聞総合出版センター

 SFにIFをあつかうジャンルがある。もし××が△△だったら。もし信長が本能寺で死ななかったら。もし義経が衣川で討ち死にせず大陸へわたっていたらジンギスカンになっていたかも。もし第2次世界大戦でドイツ日本が連合国に勝っていたら。
 そういったことを想像するのもおもしろい。この本はそのおもしろさを感じさせる本である。
 未成線。資金面、人口減少、など様々な理由で、計画はされていたが、そこに鉄道は走らなかった。人々に忘れられた土地となって山林となったところ。鉄道の替りにバスが走っているところ。観光用のトロッコを走らせて人気を呼び村おこしに成功した。など、もし、そこに鉄道が走っていたら、そこはどんな町になっていただろう。IFの世界を楽しむのである。

メインテーマは殺人

2021年12月28日 | 本を読んだで
アンソニー・ホロビィッツ   山田蘭訳 東京創元社

 ワシはSFファンやからミステリーのことはよう判らんけど、ミステリーにミスディレクションという手法があるねんて。真相とはいっこも関係のないことを、いかにも関係ありそうにゆうて、ケムに巻いて、ほんまはこっちが真相やねん。ゆうて読者をだまくらかす。
 この作品も、ページ数の多くを割いてミスディレクションをやっとった。う~む。みごとにだまされたわい。

読まずに死ねるか!4

2021年12月26日 | 本を読んだで

内藤陳         集英社

 内藤陳師匠の冒険小説おすすめ本4冊目。この巻も陳師匠のおめがねにかなった本がたくさん。おもしろ本ブックガイドとして、このシリーズ以上のモノをワシは知らん。陳師匠がこの本おもしろい。読め。ワシみたいに陳師匠を知る者にとってはこれだけでいいのである。陳師匠がおもしろいといえば、それだけで充分。
「グランドマスター」おもしろい。読め。
「猛き箱舟」おもしろい。読め。
「総門谷」おもしろい。読め。
 これだけを並べていても、ワシは本屋に走る。けど、それじゃ1冊の本にならん。で、陳師匠はそのことを、手を変え品を変えで、読者に熱く語る。この本(というか、このシリーズ)はおもしろ本おすすめ言語大辞典ともいっていいだろう。

時間飼ってみた

2021年12月17日 | 本を読んだで

小浜徹也、高塚菜月、笠原沙耶香 編         東京創元社

 創元日本SFアンソロジーの4冊目。既存の作家6人と、新人2人の8人の作家1編づつ収録されている。たしか、3冊目の「されど星はながれる」で、毎年夏に出したいとおっしゃってた。フレッド・ホイル先生も「10月1日では遅すぎる」といっているのに、この4冊目は10月29日の発行。遅すぎるよコハマさん。
 収録作は次のとおり。
「未明のシンビオシス」           小川一水
 ロードノベルか?いいや。
「いつか明ける夜を」            川野芽生
 神馬が少女を連れてくる。
「1ヘクタールのフェイク・ファー」     宮内悠介
 東京の高円寺にいるはずが、アルゼンチンのブエノスアイレスにいた。
「ときときチャンネル♯2 時間飼ってみた」 宮澤伊織
 うちに天才科学者が居候。その人が「時間」を飼ってる。
「ラムディアンズ・キューブ」小田雅久仁
 長すぎる。
 「ほんとうの旅」              高山羽根子
  言葉あそび。
 「神の豚」                 溝渕久美子
  豚が飼えない台湾。兄行方不明。代わりに豚が。兄の変身か。 
「射手座の香る夏」             松樹凛
 動物乗り。匂い言語。

面白かったのは。溝渕と松樹の新人二人。溝渕の作品はSFっ気は少ないが、コロナ禍という現実をベースに、不可思議な現象を描いて、ほんまかいなと思わせる文章力の持ち主と見た。
松樹のは溝渕と違って、SFっ気はいっぱい。見せ場もいっぱいで謎の面白さを満喫した。
 この二人、今後が楽しみである。



定吉七番シリーズ5 太閤殿下の定吉七番

2021年12月14日 | 本を読んだで

 東郷隆     角川書店

 上方丁稚アクションの5作目。「秀吉の黄金」と「真昼の温泉」の2作が収録されている。
「秀吉の黄金」はどこぞに隠された黄金をめぐって、大阪商工会議所とNATTOの抗争。この作品、複数VS複数の集団バトルとなっている。
「真昼の温泉」は名作西部劇「真昼の決闘」のパロディ。元ネタでは一人で戦う保安官だったが、こちらは一人で戦う兵庫県県警のおまわりさん。それと並行してバカぼんを追う定吉七番の活躍をえがく、あいかわらずの上方ドタバタアクションでごきげんをうかがう。

万博聖戦

2021年11月26日 | 本を読んだで

 牧野修         早川書房

 時は1969年。1970年の大阪万博の前年。中学生のシト、サドル、ミメイの3人は恐るべき事実を知ってしまった。人類は本来子供なのだ。大人の大多数は精神寄生体に憑依された「オトナ人間」なのだ。その「オトナ人間」がはびこって、この国を支配しようとうごめき出した。このままでは「オトナ人間」の思うがままの国になってしまう。シトたちは戦う。この国の未来を守るために。子供たちと「オトナ人間」の決戦の場は大阪は千里丘陵の万国博覧会の会場だ。
 それから67年後、大阪で二度目の万博が開催される。すっかり大人になったシトたち。はたして誰が「オトナ人間」になったのか。2度目の万博はいかなる博覧会か。
 小生(雫石)も70年の万博のころは子供だった。小生、万博大好き人間で、70年の万博はもちろん、1981年の神戸ポートピアも1990年の花博と、関西で開催された博覧会は日参した。じつは2025年の2回目の大阪万博は密かに楽しみしている。小生は無邪気に博覧会が好きなんだ。小生、身体はおじんだが中身はまだまだ少年なんだ。「オトナ人間」にはなってないぞ。

SFマガジン2021年12月号

2021年11月18日 | 本を読んだで

2021年12月号 №748     早川書房

雫石鉄也ひとり人気カウンター
1位 円円のシャボン玉 劉慈欣 大森望・齊藤正高訳 
2位 薬        メグ・エリスン 原島文世訳
3位 原子の町     スタニスワフ・レム 芝田文乃訳

連載
アグレッサーズ 第七話 九分三十七秒 戦闘妖精・雪風 第4部 神林長平
マルドゥック・アノニマス(第39回)     冲方丁
空の園丁 廃園の天使Ⅲ(第11回)      飛浩隆
幻視百景(第34回)             酉島伝法

スタニスワフ・レム生誕100周年        監修 沼野充義
ハヤカワ文庫JA総解説 PART3

レム特集。レムの語録が載せられているが、これがめっぽう面白かった。これを読むとレムというひとの偏屈ぶりが判る。手ごころを一切加えずアメリカのSFを批判している。いやあ、胸のすくような悪口っぷり。これじゃアメリカSF作家協会の名誉会員を剥奪されたのむむべなるかな。   

機龍警察 白骨街道

2021年11月09日 | 本を読んだで

 月村了衛           早川書房

 ワシ、このシリーズのファンである。第1巻の「機龍警察」から6冊全部読んでいる。第6巻目の「機龍警察 狼目殺手」から4年待たされた。待たされたかいがあった。
 今回の舞台はミャンマーと京都。2本立てで話はすすむ。国産の機甲兵装が開発されつつある。メーカーの技術者がそれの重要な秘密を持って海外へ逃亡。それが海外に流失すると日本の国益を大きく損ねる。もちろん国際指名手配。そいつがミャンマーで捕まった。ミャンマー政府は日本政府に犯人を引き取りに来いという。犯人が収容されているのが、ミャンマー政府軍とロヒンギャなど反政府勢力が争う最も危険な場所。その犯人引き取りの役目を、特捜部突入班の3人の警部に命令された。姿俊之警部、ユーリ・オズノフ警部、ライザ・ラードナー警部のおなじみの3人。それは、3人に死にに行けというがごとき命令である。
 特捜部と警視庁刑事部捜査2課は国産機甲兵装をめぐって、不可思議は金の流れを探る。大きな疑獄事件の臭いがする。京都の企業グループ城州グループが鍵を握っている。城州は特捜部理事官城木貴彦警視の実家なのだ。その金の流れの先にはミャンマーの軍がある。
 逆ロッキード事件ともいうべき巨悪の臭いがプンプンする。その背後にはこのシリーズに流れるダークマターのごとき「敵」が存在する。
 3人の警部はミャンマーの警察とともに、かって、最悪の作戦といわれた、インパール作戦の地を行く。3人とも機甲兵装は装備せず、生身で戦う。ミャンマーのクーデターもちゃんとストーリーに組み込んであるのはみごとだ。
 このシリーズ、まだまだ続くようだ。楽しみだ。
 

オクトローグ 酉島伝法作品集成

2021年11月05日 | 本を読んだで

 酉島伝法           早川書房

 酉島伝法の作品が8編。酉島の作品は読むのではなく感じるモノだろう。紙面に連ねてある文字だけを読んで行っても、なんのことやらようわからん。酉島の書く字、とくに漢字は表音文字として読んではいけない。表意文字として読むべきだろう。酉島のあやつる漢字は読者を「酉島伝法の世界」へと引きずり込む。酉島未経験の人は入りにくいかも知れないが、いったん入り込めば、だれも見たことにない世界にびっくりするだろう。
星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。

読まずに死ねるか!3

2021年11月04日 | 本を読んだで

内藤陳            集英社

 冒険小説の伝道師内藤陳師匠の3冊目の、おもしろ本おすすめ本である。ルーティーンの読書日記はあいわらずアツい。
 この3冊目の目玉は、冒険小説協会風雲録と深夜プラス1ツアー。冒険小説風雲録は陳師匠が冒険小説協会設立を思いついてからの、当初の活動を記録してある。SFファンも熱心でアツい人が多いが、冒険小説ファンも負けず劣らずアツい人が多いんだな。ワシも後悔の多い人生であったが、冒険小説協会に入会しなかったことは後悔している。陳師匠は、ワシが実行委員長をやったSFのイベントにゲストに来ていただいた。ボロボロのカローラをワシが運転して新神戸まで、迎えにいったが、あの時直接内藤会長に入会を申し込んでおけば良かった。後悔しているのである。
 深夜プラス1ツアーは、陳師匠のお店の名前ともなった、ギャビン・ライアルの名作「深夜プラス1」ワケ有りの人物を、フランスのブルターニュからリヒテンシュタインまで運ぶ話。もちろん、警察に追われ暗殺者にも追われる。タイムリミットがある。このコースを陳さんをはじめとする冒険小説ファンが、実際にシトロエンDSで走ってきたというもの。うらやましい。

パーキングエリア

2021年10月13日 | 本を読んだで
 テイラー・アダムス   東野さやか訳          早川書房

 登場人物は6人。舞台は雪に閉ざされた山中のパーキングエリア。こういう設定で434ページの長編を読ませてしまう。100枚前後の短編にしかならないと思うのだが。読みはじめから読了までだれることなく一気に読ませてしまう。この作者たいへんな腕力だ。
 重いガンの手術を受ける母を見舞うため、女子大生ダービー・ソーンは雪道をホンダ・シビックで走っていた。雪はますますひどくなり、ワイパーも破損した。とりあえず山の中のパーキングエリアに避難する。休憩所には4人の先客がいた。ダービーは駐車場に止められたバンの中に少女が閉じ込められているのを目撃する。4人の中に誘拐犯がいるのだ。あの子を助けなきゃ。ダービーは決心する。夜のことである。
 外は猛吹雪。除雪車が救援にくるのは明日の朝。警察に連絡したいが携帯の電波がエリア外。バッテリー残量も少ない。ダービーは墓石の拓本集めが趣味のただの美術専攻の女子大生。格闘技も身につけていない。武器もない。持っているのは小さなアーミーナイフだけ。犯人は銃を持っているだろう。女の子は難病で定期的にステロイド剤を注射しなくては命にかかわる。4人のうちだれが犯人か、だれが味方か判らない。
 さあ、どうする。ダービーは女の子を助けることができるのか。
 


SKAT.20

2021年10月12日 | 本を読んだで

第58回宣伝会議賞実行委員会編          宣伝会議

 昨年の宣伝会議賞に応募して1次審査通過以上の作品が掲載してある。小生も応募したが結果は秘密。一つの課題に実に多くの人が多くの作品を応募している。一人の人間が考えることに限界があるのがよく判る。小生も、とりあえず全課題を考えたが、なるほど、そういう切り口、考え方があったのかと勉強になるなあ。
 グランプリは商工組合中央金庫の
 なかなか見どころのある悩みをお持ちですね。
と、いうコピーであったが、小生の選ぶグランプリは次の作品だ。1次審査にすら通ってなかったようだが、審査員の福部明浩さんが紹介していた作品。新ビオフェルミンの課題に応募されたラジオCM。
女の子「ママ、お腹痛い」
ママ「お腹痛いの?痛いの痛いの、飛んで・・・」
女の子「やめてママ、飛んでった先の人がかわいそう」
NA「お腹が痛くなったら、新ビオフェルミン」
 福部さんは、これがグランプリだとおっしゃっていたが、小生も同感だ。
 新型コロナまん延による感染症のこわさをやさしく底流に流しつつ、登場人物の優しさ、そこに商品である新ビオフェルミンを印象づける。実に見事な広告になっている。

定吉七番シリーズ4 ゴールドういろう

2021年10月11日 | 本を読んだで

 東郷隆        角川書店

 大好評上方ドタバタアクション第4弾。殺人許可証を持つ丁稚定吉七番の今回の相手は小豆を市場から抹消して、京都伝統和菓子を壊滅に追い込む悪者。名古屋の富豪で和菓子屋の鯱鉾屋金蔵は日本政府が某所に保管している国有羊羹の貯蔵所に攻撃をしかけて小豆相場を牛耳って和菓子界制服をたくらむ。それを阻止するため定吉は敵の本拠地名古屋に乗り込む。
 このシリーズ、いうまでもなく007のパロディ。今回の本歌は「ゴールドフィンガー」だからできれば、「007ゴールドフィンガー」を観てからこれを読めばあちこちにやりとするだろう。
 007ではウェットスーツの男が海から上がってくる。ジェームス・ボンドだ。ウェットスーツを脱ぐとタキシードの正装。
 安治川からヘドロで汚れたウェットスーツの男が上がってくる。ガタロかいな。ウェットスーツを脱ぐと、唐桟の和服に草履の丁稚が現れた。定吉七番だ。
 と、いう具合に、今回はあちこちのもじりパロディが散りばめられて007ファンはニヤリくすくす。もちろん特別誂えの車も出てくる。本家のボンドカーはアストン・マーチンだが、こっちの定吉カーはダイハツスパイダー。英国製ではなく大阪は池田製である。
 ボンドは捕らわれて縛り付けられてレーザーで殺されそうになる。定吉も縛り付けられて殺されそうになる。こっちはレーザーではなく、納豆が一粒づつ落ちてくる。関西人の定吉に納豆が当たると・・・。ワシ(雫石)も関西人だから、このシーンは怖かった。あないな腐れ豆が肌に当たると死んでまうで。
 悪の首魁鯱鉾屋金蔵が本家のゲルト・フレーベそっくりなのも笑わせる。

星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。

息の重さあるいはコトバ五態

2021年10月09日 | 本を読んだで

  服部誕    書肆山田


 畏友服部誕氏からご恵送いただいた詩集。服部氏6冊目の詩集となる。小生、詩は書いたことがない。と、いうか小生は逆立ちしても詩はかけない。だから、こうして6冊も詩集を出している人は敬服する。
 もちろん一読させていただいた。詩は散文と違って感性だけで書かれているようだが、この詩集は感性だけではなく、しっかりした設計とそれを実作に仕上げる確かな文章作成技術が感じられる。