Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

マニア市場拡大という逆説

2004-08-24 | ◆ビジネス
NRIから面白い調査結果が出た。「マニア層の市場規模推計と実態を調査--5分野で2900億円市場」 (CNET)だそうである。5分野とは、アニメ、コミック、ゲーム、アイドル、そして組み立てPC。

組み立てPCを除くとマニアの市場規模は、市場全体の11%に及び、もはやこれを「ニッチ」とは呼べないと記事は結んでいる。確かに10%を上回ってくればニッチと呼ぶには大きすぎるかもしれない。

そうなると、これまでニッチ・マーケットであるマニア市場へメジャー・プレーヤーが参入してくる可能性がある。例えば、マニアしか買わないアニメ関連グッズ市場に、大量生産低コスト型のメジャー・プレーヤーが参入し、少量高付加価値生産のニッチ・プレーヤーを駆逐することになる。

マニア・マーケットには限らないが、ニッチ・プレーヤーであると自負していた企業が、いつの間にかメジャー・マーケットで戦っていることがある。ふと気がつくと、独特だと思っていたサービスが他社と変わらなくなり、しかもメジャー・プレーヤーとばかり競合するようになる。

これは、市場規模が拡大していく過程でよく見られる。そして、メジャー・プレーヤーの参入によって市場が成熟状態に至り、更なるニッチを追い求めたプレーヤーか、メジャーとして地位を確立したプレーヤー以外は生き残りが困難となる。実はシステム・インテグレーションのビジネスが、正にそうした状況にあると言われている。

さてマニアの世界に戻るが、マニア市場が他の市場と異なるのは、メジャー・プレーヤーが参入した時点で、それはマニア市場であることをやめ、その市場を育ててきたマニアがマニアで無くなる、あるいはその市場から逃げ出すことにある。通常であれば、メジャー・プレーヤーの参入は価格を押し下げ、消費者にメリットがあるのだが、マニア市場ではそうはいかない。メジャー・プレーヤーの参入はマニア市場を破壊してしまうのである。

やはりマニアというものは、一般の人々が知らないようなことを語り合えないと、そのアイデンティティが失われてしまうのである。
ゆえに、マニア市場はもはや「ニッチ」ではない、という言葉に惑わされて安易に参入すると、きっと痛い目にあうに違いない。

ちなみに、私の知り合いのマニア曰く、マニア同士は分野が仮に異なっても心が通じ合うのだそうだ。なかなか話を判ってくれる相手がみつからないので、分野が違っても会合を開いて、ひたすら語るのだそうだ。仮に相手の分野が違っても。