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e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

モジュール型と相互依存型の間で揺れるHP

2004-08-15 | ◆ビジネス
第二四半期、デルの好業績と、HPの業績不振が対照的である。大方の論調は、HPの業績不振はマネージメントの問題であり、マーケットの問題ではないというものだ。そのHP不調の原因は、クリステンセンの言うところの、「モジュール型」戦略と「相互依存型」戦略ののジレンマにあるのではないだろうか。

クリステンセンの「モジュール型」と「相互依存型」は下記のようにまとめることができる。(以前アップした記事も参照下さい。

・「十分でない」世界 (=機能や信頼性がまだ顧客を満足させ
 るに不十分な世界)では、相互依存型アーキテクチャーを
 採用せよ。

・「性能過剰な」世界(=性能が顧客の要望を上回る世界)で
 は、モジュール型アーキテクチャーを採用せよ

デルの戦略は「性能過剰な」世界での徹底したモジュール型アーキテクチャー指向である。モジュール化されたコンポーネントを集めてPCを組み立てるわけだが、その組み立て方を徹底的に効率化する。

一方のHPはそれをPC分野では見習っているように見える。一方、UNIXサーバーなど、必ずしも「性能過剰」とは言えない世界でもビジネスを行っており、デルほどにはモジュール型戦略を徹底することが難しいだろう。

しかし、HPはUNIXサーバーにおいても、独自プロセッサー戦略を捨ててIntel製のItaniumというUNIXチップを採用した。つまり、UNIXサーバー分野におけるモジュール型戦略である。HPはそれまでは独自プロセッサーに独自OSを組み合わせる「相互依存型」アーキテクチャー、つまりプロセッサーとOSという主要コンポーネントを統合的に開発してきた。HPのUNIXサーバー分野の宿敵であるSUNとIBMは今でも「相互依存型」を維持している。そして、「モジュール型」の象徴であるデルはUNIXサーバー分野への進出には慎重である。

つまり、PCサーバーの分野では、デルの「モジュール型」戦略に後塵を拝し、UNIXサーバーの分野では、自ら「相互依存型」から「モジュール型」へと先陣を切ったが、それはまだ花開くには至っていない。つまり二つの戦略の間で揺れ動いている状況にある。HPがどこで勝負を掛けるのか、これはサーバー部門だけではなく、HP全体の問題であるのだろう。それだけにその決断は難しい。

しかし、IT企業でこうした問題に直面する企業はHPだけではなく、自分にとっても耳の痛い話である。