Dr. Mori Without Borders / Mori-san Sans Frontieres

森 一仁が医学・国際政治経済金融・人文教養教育など関心問題を国際的・学際的に考える。

日本の「イルカ食」を巡る世界市民と言論③ 反捕鯨・魚食で食糧問題、ハードホゲイ

2007-03-31 04:34:23 | 応用生命医科学:栄養・食糧農業・環境生理
[過去の経緯より]先日、日本人はイルカを食べる残虐な国民であるとして、世界中からの本邦・日本国に対する非難、侮辱と誹謗及び中傷の数々に非常に憤りを感じた私ですが、事実から言えば私達はイルカを食しているとの事でした。しかしイルカ問題と併せてクジラ問題が、また関係の無い問題が取り上げられさらには英語で最大級の侮辱を本邦国民に対して浴びせられた事に鑑みて、何とか拙い英語で反論を試みたのです。これは自ら敵陣に突撃してしまった浅はかな暴挙である事は重々承知であります。

<ラベルがクジラ>
「イルカ虐殺」と表現したビデオの最後は「クジラ」と書かれた食材がスーパーに並べられているシーンです。では、なぜこれをイルカと表現したのか。第一の可能性はイルカに酷似した小型クジラの漁を撮影していると言う事です。小型のクジラであれば、イルカに類似しているものもあると聞きますが、映像情報つまり画像から単にイルカ漁と勘違いしたのであれば取材不足としか言いようがありません。最後の方のコマで確実に「KUJIRA」と書かれているのですから、少し日本語のわかる人間を同行するかあるいは英語のわかる日本人を同行するなどしてこの「KUJIRA」の意味を確かめればよかったと思います。もしクジラ漁を撮影しているのであれば、これは国際的にも認められた行為でありこれを攻撃する事は国際的に認められた捕鯨そのものの存在を否定する事になります。

調査不足でないとして「KUJIRA」の意味を知りつつ「反イルカ漁」キャンペーンを貼ったらどうなるでしょうか?前にも述べましたが、国際捕鯨の団体がクジラ漁については一定量を認めるとしていますが、まずここでクジラ漁に対して攻撃キャンペーンを貼る事が主催者側に明らかに不利である可能性があります。つまり政治的・国際関係論的或いは商業的などの何らかの観点から反イルカ漁キャンペーン主催者の利益と反する可能性があると言う事です。

または単にセンセーションの問題が考えられます。「イルカ」となると普段は愛玩の対象として広く世界中に認識されているために、これを獲る漁に対してネガティブ・キャンペーンを張った方が、戦術的には間違いだとしても戦略的には効果的なのであります。ビデオを流布する側はこの辺りを明白にして、クジラなのかイルカなのかを判然とすべきだったと思います。愛玩物としてのイルカのイメージを巧に利用して日本叩きを行なうのであれば、これは明らかな「MISLEADING」としか言えません。そしてこれは判然と申し上げますが、極めて悪質です。

<捕鯨問題>
「イルカ」と称したビデオへのコメントになぜかクジラ問題を取り上げる人々が多いのです。彼らは英語も読めないのかどうかわかりませんが、捕鯨をしないと世界の水産資源の観点から地球上の皆が困る事は周知の事実と私は思っていました。クジラは海中のオキアミを大量に食べつくしてしまうので、これをエサとする他の水産資源が激減してしまうのです。マグロでも何でも魚類がエサとするものを、からだの大きなクジラが一飲みにしてしまえば、魚類のエサは激減し、残された魚類は細々と生きていくしかありません。貴重な水産資源保護の観点から、捕鯨はむしろ適宜行なうべきであると思います。再三再四言いますが、乱獲は決して許されるものではありません。では捕鯨を許可しなかった場合にはどうなるか。

<捕鯨と水産資源確保、食糧問題と人口爆発と環境問題>
現在世界中で人口爆発と食糧問題が課題となっています。穀物や陸上動物は地上にあるために気象の影響を直接に受けてしまいます。地球温暖化と言うプロパガンダが貼られていますが、拙ブログにもリンクしてあるように全球レベルの温暖化は存在しません。地球環境の変化は、中緯度付近の温暖化であります。中緯度付近で異常に温められた空気が対流によって極地へ到達します。工業国が集結しているのが中緯度付近とすると、工業化によって汚染された大気が同時に極地へと運ばれます。粉塵その他の微粒子によって極地の大気は霞がかかり、日照が妨げられると言います。これによって全球レベルでは地球寒冷化が、中緯度付近では温暖化と言う環境温度の格差が生じていると言われます。

水の比熱が4.2J/g・Kです。さて空気の比熱が定圧比熱で1.006J/g・K、定積比熱0.717ですから、温度だけに注目すると大気の変化しやすさに比べて水圏の環境変化は緩やかであると考えられます。比熱の大きいほうが、それだけ温度を1℃上げるのに必要なエネルギーが大きいからです。変温動物は違いますが、恒温動物である私達ヒトの生体内部も、脳やホルモンなどの内部の神経内分泌系のメカニズムとは別に、この水の特異性によって環境温の変化の影響を相殺しています。

こうなると異常気象だの地球環境変化などと言いますが、海象については地上ほどではない事がわかるでしょう。「海象」とは地上で言う気象にあたりますが、環境ブームのこんにちでも「異常気象」はキーワードになりますが「海象」と言う言葉はあまり聞きません。ここで海中の食料資源確保をすこし頑張れば、食糧問題も言われる程深刻にならなくてもよいかも知れません。

<海中生物資源と食生活>
魚介類を食生活に取り込む事は、健康その他の観点からも首肯されています。魚油はシソ油、エゴマ油と同じn-3系脂肪酸に属しています。これは植物油と同じ不飽和脂肪酸に属します。ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などはこの不飽和脂肪酸です。不飽和脂肪酸には植物油と魚油が属していますが、融点が低くて常温では液体なのです。つまり固まりにくいのです。

脂肪酸、つまり油は炭素(C)と水素(H)による炭化水素基(つまりCとHがつながったもの)から出来ていますが、炭素同士がいわゆる二重結合(つまりC=Cと言うつながりかた)をしていないものが飽和脂肪酸です。牛脂・豚脂・バターなどはこちらです。こちらは融点が高く、常温では固体です。血管中などで固まられてはイヤですね。

イギリスなどでは心臓血管系の疾患が多いですが、バターを食したり、肉食をしたり、フィッシュアンドチップスのような油脂の多いものを食べているからと言われます。せっかく魚類を摂っているのですが。逆にオリーブ油を食する地中海文化圏では心臓血管系の疾患が少ないとの報告もあります。

先日トランス脂肪が禁止とのニュースがありましたが、これは植物性油脂などの不飽和脂肪酸を、肉類から出る動物性油脂のように常温で固体或いはクリーム状に近づけるために水素などを付加して生産しているようです。トランスとは炭化水素基と言って炭素と水素の結合様式に、シス型とトランス型とあるのですが、生体内に自然に多く含まれ運ばれ用いられているシス形ではなく、人工的にトランス型の結合様式に変化させてしまおうと言うものです。もともとが植物性油脂等でも、動物性油脂のように心臓血管系疾患のリスクファクターになっていると言われます。

(油類は小腸で吸収されてリンパ管に入り、左の鎖骨の辺りにある静脈を経て血管中に入りますが、脳血管や心臓を栄養する冠状動脈などが油脂などによってつまると大変なのです。オリーブ油などは脂肪酸のうちでも善玉コレステロールと言われるHDLを多く含み、これは悪玉とされるコレステロールを全身の組織から回収して肝臓で処理されるために肝臓へと運びます。これで心臓保護的と言われます。善玉と悪玉の違いは、含まれているリン脂質(あぶら)とタンパク質の含有量の違いです。悪玉ではコレステロールが50%、タンパク質が20%、リン脂質が20%ですが、善玉ではコレステロールが20%、タンパク質が20%、リン脂質が25%なのです。直径も善玉の方がずっと小さいのです。)

<捕鯨推進活動家=ハードホゲイ!!!>
ハードゲイ(HG)と言われる芸人さんがいました。ここではそれにちなんで伝統的に行なわれてきた適度な捕鯨を推進する捕鯨活動推進家「ハードホゲイ」でありたいと思います。現状では「HARDLY 捕鯨」、つまりほとんど捕鯨せずですね。

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