Dr. Mori Without Borders / Mori-san Sans Frontieres

森 一仁が医学・国際政治経済金融・人文教養教育など関心問題を国際的・学際的に考える。

日本とギリシャ ~彼我の違い~

2010-05-20 19:27:51 | 地球社会:国際政治経済金融
「ギリシャを植民地化するEU」なる記事を読んで考えさせられた。EUやIMFの行動に驚いている訳ではない。以前よりIMFは債務棒引きと引き換えに政治・社会経済的な構造改革を加盟国、或いは被支援国に迫る事で経済金融グローバリズムの実働部隊としての働きを行ってきた事は本ウェブログでも何度か触れた筈である。

東南アジア方面においてもラオスを取り上げてIMFの実態を明らかにした。現代アメリカのネオコン系統の政治家が奥深くに入り込んでいたのであるからその行動基準や実態は何よりも明らかであろう。

さて気になるのはギリシャへの「要求内容」である。『EU理事会の決定によれば、ギリシャは公務員と年金受給者向けのボーナスを削減し、ガソリンやタバコ、酒への課税を強化し、地方自治体の運営コストを削減し、ベンチャー企業に関する規制を緩和するための法律を制定「しなければならない」。17の課題が片付いたら、今度は9月までにギリシャは年金受給開始年齢を65歳に引き上げる(現在は平均61歳)など、新たに9つの要件を満たさ「なければならない」。12月までにギリシャはさらに、国民健康保険の利用者にはジェネリック医薬品の処方を義務付けるなど12の対策を実施し「なければならない」』

ここまで読んでおやっ?と思われるかも知れない。日本国はEU加盟国でもないし、IMFのお世話になる程に経済状態が悪化している訳でもない。しかし年金問題、タバコ課税強化、地方自治のコスト削減を目論んだ地方主権促進、規制緩和、年金受給年齢の引上げ、ジェネリック医薬品処方・・・本邦が小泉政権・鳩山政権等の政権交代を超えて着々と実行してきた政策の数々である。

ギリシャ人は祖国の自治が脅かされていると敏感に感じ取りデモ隊を組織して抵抗している。ポリスの都市国家自治、哲学的弁論と言論の基礎を築いた国としてのプライドが今でも根強いこの国で市民達は立ち上がった。本邦はどうであろうか。一部の政治家が「たちあがれ」と呼び掛けるが、一般市民は国外からの要求に唯々諾々と屈するどころか、「国際化」或いは「グローバル化」と言う「錦の御旗」を手に入れていそいそと「構造改革」に協力してはいないか。

ナショナリズムの時代は終わった。各国が国益だけを考えている時代は終わりを告げねばならない。この事と世界的共同体の成員としての独立国家の自尊を無にして巨大な利益追求集団によるグローバリズムに自ら参画する事とはまるで意味が違う。本邦は以前から民主主義国家ではない。しかし「官と民」と言う際の「お上」である「官」が「アメリカ」や「中国」或いは「金融経済グローバリスト」にすり替わっただけではないか。

西洋文明の祖としてのプライドの高いギリシャ国民の動きに思わず襟を正さねばと思った。

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