Dr. Mori Without Borders / Mori-san Sans Frontieres

森 一仁が医学・国際政治経済金融・人文教養教育など関心問題を国際的・学際的に考える。

ソマリア海賊対策Ⅱ:「巡視船しきしまの派遣が妥当では?」

2009-04-20 03:14:52 | 地球社会:国際政治経済金融
ソマリア沖へと海上自衛隊護衛艦が派遣されているが、目的が①海賊対策である事や、②商船等の護衛である事を考えると、最適解が既に存在する事がわかる。それは海上保安庁巡視船「しきしま」(JCG SHIKISHIMA)の現地派遣である。ここでWIKIPEDIAより少し引用してみる。

[引用始め]開発前に護衛船に海上保安庁の巡視船を使用すべきか、海上自衛隊の護衛艦を使用すべきかで議論となった。当初から、航続距離や法的な問題から護衛船には海上保安庁の巡視船使用が予定されていたが、一部の議員や世論から巡視船では攻撃力不足であるため、万が一のことを考えて護衛船には強力な武装を持つ海上自衛隊の護衛艦を使用するべきという意見が出てきた。巡視船が理想か、護衛艦が理想かはマスコミでも騒がれ、更に日本国内だけにとどまらずアメリカなどでも話題となったが、最終的にはアメリカ軍から偵察衛星による航海の安全を守るための情報支援が得られることになったことと、現実的に考えて巡視船では攻撃力不足と言うものの巡視船で対応出来ない攻撃を仕掛けてくる敵はありえないと考えられ、総理大臣も護衛艦の使用は検討していないと明言したため、予定通り巡視船を新規で開発し、それを使用することとなった。
[引用終わり]

ソマリア沖に出没する武装船団の中で本巡視船で対応できない連中がそれ程沢山存在するのかどうか。例えばしきしまの護衛対象はプルトニウム運搬船である。核燃料護衛の為に特別にデザインされた超・巡視船がしきしまであり、武装・サイズ・構造共に従来の巡視船を上回り、軍艦に近いものとなっている。少し列挙してみよう。


1.途中寄港が不必要にするための長い航続距離。
航続距離は20000海里、ヨーロッパから日本までオーストラリア南部回りで寄港無しで航海することが出来るそうである。これならソマリア近海を海上自衛隊輸送艦なしで十分に往復出来るだろう。日本を出港して途中あのインド洋で燃料を満タンにしたとすると、ソマリア沖では十分に暴れられるに相違ない。ジブチやイエメン等に立ち寄らずともソマリア沖で繰り返し海上警備行動を続行できる筈である。


2.構造は多数の水密区画に分けられた巡視船で唯一の軍艦構造。
テロリスト・海賊船の攻撃を受けたとしても、水密区画の分画化によって船体の傾斜や沈没を防げるのが恐らく本船の自慢であろう。大型故に携帯用のミサイルやロケット砲数発程度に耐えられると考えられている。ソマリアの海賊がRPG7等を保有していたと仮定して、本船に耐久性有りとは考えられないか。但し推進機関は最高速度25ノットの通常のディーゼル機関であり、対潜水艦作戦を前提としたガスタービン機関を搭載した自衛艦には遠く及ばないとされるがソマリア沖へ対戦作戦に赴くのではない事に留意。


3.核テロリスト襲撃・海賊対策に求められた高い攻撃能力。
兵装は35mm連装機関砲2基とRFS操作式の20mm機関砲2基。レーダーは海上自衛隊のはつゆき型護衛艦等で使用されているOPS-14二次元対空レーダー。これによりレーダー誘導・センサー誘導による精密な対空・対水上の射撃が可能で、テロリストや海賊が使用するであろう小型高速船やヘリコプター・民間航空機による攻撃や、米艦コール襲撃事件のような自爆攻撃を打ち砕くには十分な、全天候型の戦闘能力を備えていると考えられている。


4.ヘリコプターが可能にする広域哨戒
大型ヘリコプターAS332を2機搭載。これを使用することで周辺海域の哨戒が可能。ヘリに固定武装は無いが、防弾仕様のため小銃程度では撃墜が不可能。


5.対テロ特別警備隊が乗船可能
小銃等で武装した特別警備隊を乗船させて不測の事態に備える事が可能。更にプルトニウム運搬時には警護対象のプルトニウム運搬船にも、武装した海上保安官を警乗させていたらしい。今回はこれは無理だろうが、少なくとも特別警備隊の隊員はしきしまに随時乗船し、海賊船への臨検から逮捕に至るまで司法警察職員として堂々と海賊対策行動がとれるであろう。また、スパイ対策としてしきしまの乗員は海上保安庁職員名簿にも掲載されていない程の機密の徹底ぶりで、信頼がおける。


6.豊富な海賊対策訓練の経験
プルトニウム運搬船護衛任務以外に、戦闘能力や航行性を生かし中国・台湾との緊張強まる尖閣諸島周辺海域の警備業務に当たっている他、東南アジア諸国に毎年のように赴き、シンガポールやインドネシアなどと合同での海賊対策訓練などを行なっている等の経験が豊富である。実際に巡視船しきしまによる海賊対策官民連携訓練と言う海上保安庁自らが提出した資料をご覧頂こう。


ここまで見てきて海上自衛隊護衛艦よりも巡視船「しきしま」と乗組員、及び海上保安庁特別警備隊のソマリア派遣が今のところ最適解には見えてこないであろうか?

最新の画像もっと見る