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九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の所長ら九電幹部が佐賀県の古川康知事の政治団体に対し05年以降、毎年3万円を個人献金していたことが分かった。献金は玄海原発や地元佐賀支店の要職に就いている時期だけ行われ、金額は一律3万円。政治資金規正法は政党以外への企業献金を禁止しているが、専門家は「個人献金の形を取った事実上の企業献金だ」と指摘している。
古川知事の政治団体「古川康後援会」の政治資金収支報告書によると、九電幹部による個人献金は知事就任2年後の05年から始まり毎年、玄海原発所長、佐賀支店長がそれぞれ3万円を寄付。所長は07年、支店長は07年と09年に交代しているが、交代後も寄付額は3万円と変わらず、時期も毎年10〜12月に集中している。このほか3、4号機担当の玄海原発第2所長も05〜07年に毎年1万5000円を寄付。古川知事の資金管理団体「康友会」にも現副社長(元佐賀支店長)が07〜09年に5万円ずつ献金しており、2団体への寄付額は05〜09年で計49万5000円に上る。
個人献金した元支店長は毎日新聞の取材に「プルサーマル発電を推進したいという気持ちがあったので献金した。金額は自分で決め、他の人の献金状況についてはわからない」と組織ぐるみの献金を否定。九電も「個人がそれぞれの考え方で行っているもので、会社として関知していない」と話している。
玄海原発を巡っては06年、専門家から危険性が指摘されたMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を使用するプルサーマル発電について、古川知事が「安全性は確保される」として同意。09年に3号機で全国初のプルサーマル発電が始まった。
一方、福島第1原発事故を受けて定期検査後も停止したままの2、3号機の再稼働問題が浮上。古川知事はいったんは「安全性の確認はクリアできた」と容認姿勢を示したが、その後に国が打ち出した全原発での耐性試験実施方針や、九電の「やらせメール」問題発覚を受けての最終判断が注目されている。
電力各社は大幅な電気料金の値上げを断行した74年に「公益企業として不適切」として、政治資金規正法で認められている政党や、政党が指定する政治資金団体への企業献金も自粛している。
九電幹部らから古川知事の政治団体に対する献金について、神戸学院大法科大学院の上脇博之教授(憲法学)は「特定のポストから退いたら献金していない状況をみれば、個人の意思でやっているとは思えない」と指摘。「組織的に行われているのであれば本来は受け取ってはいけないお金だ。原発に権限を持っている知事ならなおさら辞退すべきではないか」と話している。
古川康後援会は「個人として寄付されたもので、企業献金の認識はない。原発と結びつけて考えるところは何もない」と話している。
【関谷俊介、三木陽介】毎日新聞7月9日(土)15時50分
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