■小中学校から送電/年3300万円売電予想・北杜市
東日本大震災による原発事故で注目を集める太陽光発電の動きが県内で加速している。北杜市は4月から大規模太陽光発電所(メガソーラー)の電気の販売を始めた。甲府市内では来年1月、北杜市の5倍の出力を持つメガソーラーが稼働する。一方で電力を送電網に送る技術面や設置費用の課題も指摘されている。
■メガワット級 着々
八ケ岳のふもとにある北杜市高根町の高根東小学校。校門を入ると黒っぽい太陽光パネルが載った校舎の玄関がある。体育館の屋上などに計504枚の太陽電池がある。発電量は95キロワットだ。校内で電気の一部を使い、余った電力は太陽光の直流電力を交流に変換する装置「パワーコンディショナー」で学校脇の送電線に送り込む。東京電力がこの電気を買い取る仕組みだ。
廊下にあるモニター画面は発電量や気温、風向きなどの気象データを刻々と映し出す。浅川孝夫教頭は「太陽電池を間近に見ることができ、理科の学習にも役立つ」と話す。
北杜市教育委員会によると、市内の小中学校24校のうち小学校13校、中学校8校と学校給食センター1カ所の計22カ所に太陽電池が整備され、今年2月から送電を始めた。文部科学省の「スクール・ニューディール」構想の一環で、発電量は計1千キロワットにのぼる。
■日照時間トップ
北杜市は日照時間が県内でもトップレベルにある。2006年には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証研究の地として選ばれた。中央道の長坂インターチェンジから約2キロに国産含め9カ国、27種類の太陽電池が並ぶ2メガワット級の発電施設がある。市環境課によると、一般家庭の消費電力に換算して約600軒分の電力を賄える。
太陽光発電は発電量が天候や季節に左右され、電力会社の送電線につなぐと電圧などに悪影響を及ぼす恐れがあるという。NEDOは市などに委託して5年間で解決策に取り組み、複数の太陽電池をつないでも電圧の変動を抑えることができる装置を開発。3月に実証研究を終えた。
市は4月に施設を無償で譲り受け、売電先を3月までの「エネット」(本社・東京)から大手総合商社「丸紅」に変え、1年間の契約を結んだ。売電額は昨年の発電実績から約3300万円を見込む。維持管理費を差し引くと市に約1500万円が入る計算だ。
また、甲府市下向山町の県有地では来年1月の営業運転開始に向け、米倉山太陽光発電所(10メガワット)の工事が進む。県と東京電力が共同で建設。北杜市の約5倍の発電量にもなる予定だ。
■技術・費用、残る課題
電力会社は太陽光、風力、バイオマス発電などで作られた電気を一定量購入することが、新エネルギー利用特別措置法(RPS法)で義務づけられている。2009年からは固定価格買い取り制度も始まった。東電山梨支店のまとめによると、県内の太陽光発電量は拡大の一途をたどる=グラフ参照。
県は「やまなしグリーンニューディール計画」で太陽光発電の普及に力を入れる。ただし、課題もある。
住宅への太陽電池導入が進み、送電網に大量の余剰電力が送り込まれると周波数の変動や電圧の上昇などシステムが不安定になる。計画推進指針のなかで県は「電力を制御するシステムが普及しない限り、太陽光発電の普及には限界がある」と指摘する。
さらに工事費は高額だ。県の補助金を使って太陽光パネルを設置した人を対象とした09年の調査によると県平均で約259万円。余剰電力を売った場合、元を取るには14年必要で、補助制度を利用しても10年程度はかかるとしている。
朝日新聞(田村隆)
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