小泉純一郎元首相が1日、名古屋市内で講演し「原発ゼロを実現し、循環型社会を目指すべきだ」と早期の脱原発を強く訴えた。講演の内容は以下の通り。
経済界の人と話をしていると、原発ゼロなんて無責任だと憤る声が多い。わたしはそんな中で原発ゼロを主張しています。
放射性廃棄物、核のごみをどう処分するか、あてもないのに原発を進めていくのは無責任ではないか。先日、エネルギーの地産地消が進むドイツやフィンランドの「オンカロ」という最終処分場を視察した。最終処分場は四百メートルの固い岩盤をくりぬいた地下に埋める。それでも原発四基のうち二基分しか容量がない。そもそも今、ごみを埋めても十万年後まで人類がきちんと管理できるのか。
日本では野田佳彦前首相が一昨年暮れに事故の収束を宣言したがとんでもない。原発は事故が起きれば人の健康や農水産物、地域への影響が計り知れない。民間会社では負担しきれない。
原発を立地してもいいという自治体のためにどれだけの税金を使ってきたか。汚染水対策も廃炉も税金を使わなきゃできない。事故の賠償にこれからどれぐらいかかるのか。原発のコストほど高いものはない。
第二次世界大戦で日本は無謀な戦争をして三百万人以上が命を落とした。満州(現中国東北部)から撤退していれば戦争は防げたが「満州は生命線だ」と撤退を拒否し、結局は国を焦土にした。経済成長のために原発は必要だという意見があるが、そんなことはない。戦争で満州を失っても、日本は発展したじゃないか。
原発の代案はない、今すぐ全廃は無謀という声も聞くが、政治がはっきりと方向性を示せば代案は出てくる。
日本人は焦土からでも立ち上がった。これという目標ができれば、官民が協力し、ピンチをチャンスに変える特性を持っている。今、原発をゼロにするという方針を自民党が打ち出せば、一挙に(脱原発の)機運が盛り上がる。(太陽光などの)再生可能エネルギーを資源にした循環型社会をつくるという夢に向かって結束できる。
世界が必要とする安全な社会をつくるため、今はピンチではなくチャンスなんだ。
(中日新聞)
毎日新聞社説:小泉氏のゼロ論 原発問題の核心ついた
核心をついた指摘である。政界を引退している小泉純一郎元首相が原発・エネルギー政策に関連して「原発ゼロ」方針を政府が打ち出すよう主張、注目を浴びている。
使用済み核燃料問題などを正面から提起し、政治が目標を指し示すことの重みを説いた小泉氏の議論にはもっともな点がある。安倍内閣が原発再稼働や輸出に前のめりな中だけに、原発からの撤退を迫る忠告に政界は耳を傾けるべきだ。
かつて「改革の本丸」と郵政民営化に照準を合わせたことを思い出させるポイントを突いた論法だ。小泉氏は1日、名古屋市での講演で「放射性廃棄物の最終処分のあてもなく、原発を進めるのは無責任」と指摘、福島第1原発事故の被害の深刻さにもふれ「原発ほどコストの高いものはない」と政府・自民党に原発ゼロにかじを切るよう求めた。
原発をめぐる小泉氏の主張は毎日新聞のコラム「風知草」(8月26日付)が取り上げ、強い関心を集めるようになった。東日本大震災後、原発政策に疑問を深めた小泉氏は8月中旬、フィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」を視察、使用済み核燃料を10万年も地中に保存するという処理策に「核のゴミ」は管理不可能だと確信したのだという。
小泉氏が今後、何らかの政治的な行動を取るかは不明である。しかし、指摘は真剣に受け止めるべきだ。
まず「トイレのないマンション」と言われる核廃棄物問題について、小泉氏が言うように、政府は責任ある答えを示していない。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し再利用する核燃料サイクルは、その要とされた高速増殖原型炉「もんじゅ」実用化のめどが全くたたない。再処理工場(青森)の稼働を急いでも、余剰プルトニウムがたまるばかりだ。私たちはこの点からも原発推進の無責任さをかねて主張してきた。
もうひとつは国策にかかわる問題はなし崩しに対応せず、旗印を掲げることが重要だと再認識させたことだ。小泉氏は「今、ゼロ方針を打ち出さないと将来も難しくなる」という考えだ。原発は日本の経済、社会に組み込まれ、これを変えるのは容易ではない。現実には政治が大きな方向を示さなくては代案も作りにくく、状況は動かないのではないか。
解せないのは、なお侮れぬ発信力があるはずの元首相の発言に対し、「原発ゼロ」路線をことあるごとに批判してきた勢力から、正面きった反論があまり聞かれないことだ。
進次郎氏も脱原発示唆 父・小泉元首相に続き
自民党の小泉進次郎復興政務官は7日、名古屋市内での講演会で、脱原発について「2020年に(東京)五輪、パラリンピックが終わって、そこから先にたとえ高いハードルでも目指す道があった方が夢や希望がある」と述べ、将来的には脱原発を目指すべきだとの考えを示唆した。
父親の純一郎元首相が脱原発を訴えて波紋を広げる中、原発再稼働に前向きな安倍晋三政権の一員で、国民の人気が高い進次郎氏の発言は注目を集めそうだ。
進次郎氏は「脱原発」との言葉は使わなかったが、原発をめぐる安倍政権の姿勢について「今は景気回復しそうだから黙っているが、このままなし崩しにいっていいのかという声はある気がする」と指摘。「いま話したことで私の言わんとしている思いは(聴衆が)感じていると思う」と述べた。
進次郎氏はこれまで純一郎氏の脱原発の訴えに「政権の一員としての立場がある。私は私で職責を全うしたい」と、政権の方針に従う考えを示していた。(中日新聞)
経済界の人と話をしていると、原発ゼロなんて無責任だと憤る声が多い。わたしはそんな中で原発ゼロを主張しています。
放射性廃棄物、核のごみをどう処分するか、あてもないのに原発を進めていくのは無責任ではないか。先日、エネルギーの地産地消が進むドイツやフィンランドの「オンカロ」という最終処分場を視察した。最終処分場は四百メートルの固い岩盤をくりぬいた地下に埋める。それでも原発四基のうち二基分しか容量がない。そもそも今、ごみを埋めても十万年後まで人類がきちんと管理できるのか。
日本では野田佳彦前首相が一昨年暮れに事故の収束を宣言したがとんでもない。原発は事故が起きれば人の健康や農水産物、地域への影響が計り知れない。民間会社では負担しきれない。
原発を立地してもいいという自治体のためにどれだけの税金を使ってきたか。汚染水対策も廃炉も税金を使わなきゃできない。事故の賠償にこれからどれぐらいかかるのか。原発のコストほど高いものはない。
第二次世界大戦で日本は無謀な戦争をして三百万人以上が命を落とした。満州(現中国東北部)から撤退していれば戦争は防げたが「満州は生命線だ」と撤退を拒否し、結局は国を焦土にした。経済成長のために原発は必要だという意見があるが、そんなことはない。戦争で満州を失っても、日本は発展したじゃないか。
原発の代案はない、今すぐ全廃は無謀という声も聞くが、政治がはっきりと方向性を示せば代案は出てくる。
日本人は焦土からでも立ち上がった。これという目標ができれば、官民が協力し、ピンチをチャンスに変える特性を持っている。今、原発をゼロにするという方針を自民党が打ち出せば、一挙に(脱原発の)機運が盛り上がる。(太陽光などの)再生可能エネルギーを資源にした循環型社会をつくるという夢に向かって結束できる。
世界が必要とする安全な社会をつくるため、今はピンチではなくチャンスなんだ。
(中日新聞)
毎日新聞社説:小泉氏のゼロ論 原発問題の核心ついた
核心をついた指摘である。政界を引退している小泉純一郎元首相が原発・エネルギー政策に関連して「原発ゼロ」方針を政府が打ち出すよう主張、注目を浴びている。
使用済み核燃料問題などを正面から提起し、政治が目標を指し示すことの重みを説いた小泉氏の議論にはもっともな点がある。安倍内閣が原発再稼働や輸出に前のめりな中だけに、原発からの撤退を迫る忠告に政界は耳を傾けるべきだ。
かつて「改革の本丸」と郵政民営化に照準を合わせたことを思い出させるポイントを突いた論法だ。小泉氏は1日、名古屋市での講演で「放射性廃棄物の最終処分のあてもなく、原発を進めるのは無責任」と指摘、福島第1原発事故の被害の深刻さにもふれ「原発ほどコストの高いものはない」と政府・自民党に原発ゼロにかじを切るよう求めた。
原発をめぐる小泉氏の主張は毎日新聞のコラム「風知草」(8月26日付)が取り上げ、強い関心を集めるようになった。東日本大震災後、原発政策に疑問を深めた小泉氏は8月中旬、フィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」を視察、使用済み核燃料を10万年も地中に保存するという処理策に「核のゴミ」は管理不可能だと確信したのだという。
小泉氏が今後、何らかの政治的な行動を取るかは不明である。しかし、指摘は真剣に受け止めるべきだ。
まず「トイレのないマンション」と言われる核廃棄物問題について、小泉氏が言うように、政府は責任ある答えを示していない。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し再利用する核燃料サイクルは、その要とされた高速増殖原型炉「もんじゅ」実用化のめどが全くたたない。再処理工場(青森)の稼働を急いでも、余剰プルトニウムがたまるばかりだ。私たちはこの点からも原発推進の無責任さをかねて主張してきた。
もうひとつは国策にかかわる問題はなし崩しに対応せず、旗印を掲げることが重要だと再認識させたことだ。小泉氏は「今、ゼロ方針を打ち出さないと将来も難しくなる」という考えだ。原発は日本の経済、社会に組み込まれ、これを変えるのは容易ではない。現実には政治が大きな方向を示さなくては代案も作りにくく、状況は動かないのではないか。
解せないのは、なお侮れぬ発信力があるはずの元首相の発言に対し、「原発ゼロ」路線をことあるごとに批判してきた勢力から、正面きった反論があまり聞かれないことだ。
進次郎氏も脱原発示唆 父・小泉元首相に続き
自民党の小泉進次郎復興政務官は7日、名古屋市内での講演会で、脱原発について「2020年に(東京)五輪、パラリンピックが終わって、そこから先にたとえ高いハードルでも目指す道があった方が夢や希望がある」と述べ、将来的には脱原発を目指すべきだとの考えを示唆した。
父親の純一郎元首相が脱原発を訴えて波紋を広げる中、原発再稼働に前向きな安倍晋三政権の一員で、国民の人気が高い進次郎氏の発言は注目を集めそうだ。
進次郎氏は「脱原発」との言葉は使わなかったが、原発をめぐる安倍政権の姿勢について「今は景気回復しそうだから黙っているが、このままなし崩しにいっていいのかという声はある気がする」と指摘。「いま話したことで私の言わんとしている思いは(聴衆が)感じていると思う」と述べた。
進次郎氏はこれまで純一郎氏の脱原発の訴えに「政権の一員としての立場がある。私は私で職責を全うしたい」と、政権の方針に従う考えを示していた。(中日新聞)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます