団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

米2%成長を予見させる6月雇用統計、高まりやすい円高圧力

2011-07-11 20:02:54 | 日記

 [東京 11日 ロイター] 6月米雇用統計の結果は、リスク性資産の運用を拡大するリスクオン取引の全開を狙っていた市場参加者に、冷水を浴びせたに違いない。リスクオフの色彩が強まると買われていたドルと円だが、米経済が3%成長から2%そこそこの成長に減速することが明白になれば、ドル買いの勢いは弱まるだろう。 

 このところこう着感を強めていたドル/円は、円高方向への圧力が高まりやすくなると予想する。 

 <弱い雇用統計、回復シナリオに冷水> 

 米労働省が8日に発表した6月雇用統計は、米経済の減速が一時的と予想していた市場参加者には、かなり衝撃的な結果だったに違いない。非農業部門雇用者数は、市場予想の9万人増を大幅に下回る1.8万人にとどまり、失業率は前月の9.1%から9.2%に悪化した。さらに4、5月の非農業部門雇用者数が修正され、増加数は合計で4万4000人少なくなった。雇用環境が改善していない実態が明白になり、個人消費が夏場以降に盛り返してくるとの予想は、現実性がかなり低下してきたのではないだろうか。 

 日本のサプライチェーン回復による震災のマイナス面がなくなり、原油価格も下がってきたので、米経済は今年後半に回復基調を強めるだろうとのシナリオは、かなり楽観的に過ぎると思える。2008年のリーマンショックで生じた資産価格の大幅下落で受けた米経済の傷は、その後の財政政策や金融緩和政策の大盤振る舞いで治癒したかに見えたが、やはり簡単には直せないことがはっきりした。米経済には「3%後半の成長が当たり前」という以前のような体力はなく、今は2%そこそこの成長が実力であると指摘したい。 

 <手詰まりの政策対応、ズルズルと米経済弱くなるリスク> 

 債務上限の引き上げ問題で紛糾し、米国債のデフォルトリスクまで市場で意識され出している中で、米政府に大幅な財政出動を繰り出す余裕はない。一方、量的緩和第2弾(QE2)を6月末で終了した米連邦準備理事会(FRB)も、直ちに緩和強化にカジを切り直すのは難しい。とすれば、政策的なサポートが当面はないまま、米経済は2%成長の巡航を続け、それに見合った経済指標の結果が出てくることになる。すでに市場では、現在のゼロ金利政策が長期化するとの見通しが広がっており、これが外為市場や米金利市場で織り込まれていくだろう。

7月6日のコラムで指摘したように、今の市場ではリスクオンとリスクオフの2進法的な情勢認識で、市場取引のパッケージを形成する色彩が強い。弱い6月米雇用統計をきっかけにリスクオン取引が影をひそめ、リスクオフ取引へと転換する可能性がある。リスクオフ取引ではドルと円が逃避先通貨と位置付けられてきた。だが、今回は米経済減速を理由にリスクオフへと転換するパターンであり、逃避先の2通貨の中で格差が生じるのではないか予想する。つまり、最強の逃避先通貨として円が浮上し、ドルはスイスフランと同等かそれ以下になるとのシナリオだ。 

 <重要性高まる今月13日のバーナンキ証言> 

 ソブリン危機を抱えるユーロは、ギリシャ債務危機が他のユーロ圏諸国に広がれば、かなりの売り圧力を受ける。その場合、ユーロ安/円高がかなり進み、ユーロ安/ドル高も進行するだろう。ドル/円についてはこれまで動きが鈍かったため、今後も同じように小動きが継続するとの見方も少なくない。しかし、私は米経済減速のイメージが市場に広く浸透すれば、円が対ドルで買われやすくなると予測する。3月の協調介入以降、ドル/円の下値は限定的だったが、米経済減速とその先の米金融政策の緩和強化の可能性を織り込みだせば、ドル売り/円買いのエネルギーは溜まっていくだろう。 

 その意味で、13日に予定されているバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の米下院での証言内容は、注目度が一段と上がることになる。年後半の景気回復シナリオを維持するのか、それとも修正するのか──。修正すれば、一気にリスクオフ相場へ傾斜すると予想する。ただ、私は対ドルで「円高になれば日本株売り」と20年以上にわたって繰り返してきた市場の反応ぶりにも注文を付けたい。今や日本の輸出に占める対米貿易の比率は15%を割り込んだ。一方、中国を含むアジア向け輸出は全体の50%を超えている。また、円建て輸出の比率も上昇しており、ドル安/円高イコール輸出企業の収益減という公式は、足元で大幅な修正余地がある。市場は円の実効レートに着目して、輸出企業や日本経済への影響を考えるべきだ。 

 とはいえ、ドル/円の象徴的な意味合いを重視する市場参加者が多ければ、円高イコール株安となり、それが政策対応要求に結びつくという構図はなかなか変わらないのかもしれない。日本の政策当局は、欧米の経済統計が事前の市場予想と違った結果になっても「個々の統計の結果に一喜一憂しない」とコメントしがちだが、今回の雇用統計に関しては、その波及の行方を注視していくことになるだろう。 

*筆者 田巻 一彦 はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

 

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません


最新の画像もっと見る

コメントを投稿