団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

主婦の既得権を認めれば配偶者控除は廃止できる

2012-11-29 20:08:52 | 日記
民主党は2009年衆院選のマニフェストで配偶者控除の廃止を掲げたが、13年度税制改正での廃止も取りやめ、結局4年連続の見送りをすることとなったようだ(11月6日読売新聞)。

 なぜ配偶者控除の廃止が問題になるかと言えば、これによって、妻の給与所得が103万円を超えると家計の手取り所得が増えなくなり、女性の就労意欲を抑え、パートタイマーの賃金相場を下げているとの議論があるからだ。

 もっとも、女性の就労意欲を抑えるのは配偶者控除だけでなく、夫の社会保険に加入できるか、自前で保険に加入しなければならないかの限度、給与所得で130万円の制約も大きい。さらに、妻の家族手当を払う基準を103万円にしている会社も多い。家族手当が2万円なら年に24万円で、これは大きい。

 おおざっぱに言って、103万から170万円近くまで、働いてもほとんど手取り所得が増えないという状況になる(本稿の目的は、家計所得を最大化する方策の解説ではないので、詳しくは税理士のブログなどを見ていただきたい)。

 主婦が働くと、収入を増やしても結局所得が増えないわけで、これは経済学の言葉を使うと限界税率100%ということになる。金持ちでも地方税を含めて税率は50%だから、この制度は著しく就労意欲を下げている。

 人口減少で働き手がいないのに、103万円の壁のために女性が就労調整して年間所得を減らしているのは理解しがたいことである。

 問題は配偶者控除だけでなく、主婦の医療保険、年金問題までにかかわる大問題だ。しかし、小問題を解決できない人に大問題が解決できるはずはない。まず、配偶者控除をなくすことから始めるべきだ。

働く妻と専業主婦の
不公平をなくすには

 配偶者控除の廃止に反対する側の心情は、これまでの制度を前提に主婦であったのに、今さらなんだということだろう。

 大学が多すぎるという田中真紀子文部科学相の問題意識に賛同する人は多かったが、いきなり3大学認可拒否はおかしいというのが良識ある世間の大勢だった。いきなり変えれば混乱が大きいのは当然である。

であるなら、すでに専業主婦である人の配偶者控除を認め、これから働きに出る若い人から変えていけば良い。多くの人は、既得権を打破しなければ改革は行えないという。私は逆だと思う。既得権を認めてしまえば、反対が減って改革ができる。

 配偶者控除は、すでに何十年も前から議論しているが、いまだに廃止できていない。20年前に、20歳の人から廃止していれば、もう改革ができていたのだ。

 明治維新は身分制度を廃した革命だが、武士には石高を一時金に換算して、その金額の国債を渡した。下級武士には生活費として不十分だが、大名には十分すぎるものだった。既得権を認めたからこそ、明治維新が成功したのである。

 では、社会保険、会社の家族手当という大問題をどう解決したら良いだろうか。政府が、会社に家族手当を支給するのを禁止するというのも奇妙である。家族手当は、労働条件の一部であり、労使が協議して決めることで、政府の関与すべきことではないからだ。

 一番簡単な解決策は、すべての女性がフルタイムで働くことだ。月給20万円なら、ボーナスがなくても年に240万円になる。それだけの年収があれば、103万円の壁を容易に超える。

 こういえば、反対の大合唱になるだろう。もちろん、ここでも20歳の人から始め、すでにそうであった人の既得権を認める。しかし、それでも、小さな子供がいるのに働けない。保育所をつくりもしないで女性に働けというのかと大反対になるだろう。

 私の提案は、まず、子どもの預かり費用を所得から引くことができるようにすることだ。子供を預けなければ働けないのだから、それは当然、所得を得るための費用である。費用を所得から差し引くのは当然だ。なぜ、この当然のことがなされないのか不思議である。

 アメリカでは、子どもを預けるコストは税金から引ける。所得から引く以上に、手取り所得が高くなる。これはアメリカの出生率が高い大きな理由の一つだと思う。

 さらに、この費用は夫または妻が主婦または主夫にも払えるようにする(もちろん、祖母など親戚でも良いことにする)。金額は、妻が働いている家計が外部に払っている子どもの預かり費用の平均とすればよい。

 このことによって、専業主婦の夫の税金が減り、家計所得が増える。これで、働いている妻と働いていない妻とが不公平だという反対論が消えるだろう。この制度には、女性の労働時間を減らすという副作用がない。


原田 泰 (早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員)

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