「人を乞う」 あさのあつこ 祥伝社 令和元年.10.20
そうか、祥伝社は元号表情だったか……
令和という奥付けを見たのははじめて。
「天を灼く」「地に滾る」に続く最終章。
父は切腹、所払いとなった天羽藩上士の子・伊吹藤士郎は、
「地に滾る」で藩政の刷新を願い脱藩。
人が行き交い、物が溢れる江戸の地を踏みしめ、
貧し、迷い、慟哭しながら、自由に生きる素晴らしさを知る。
そしてーー
政が大きく変わる様を見届けるため、
藤士郎と異母兄の柘植左京は江戸から故郷に戻ってきた。
藤士郎は母や姉が自分たちなりの生き方を見つけ、逞しく暮らしている様に驚く。
友とも再会し、わだかまりを解いた。
だがそれも束の間、藩から登城せよとのお達しが。
意図が分からぬまま、二人は揃って城に参上するが、
そこで側用人から告げられたのは決して受け入れられない沙汰だったーー。
P189
思い込みに囚われていては、掴めないのだ。こういうものだと決めてしまえば、何も見えなくなる。この双眸は曇り、自分の見たいものしか、しんじたいものしか映らなくなる。