「おやすみラスマニノフ」 中山七里 宝島社 2010.10.26
秋の演奏会を控え、第一ヴァイオリンの主席奏者である音大生の晶は初音とともに、プロへの切符をつかむために練習に励んでいた。
しかし完全密室で保管されていた、時価2億円のチェロ、ストラディバリウスが盗まれる。
脅迫状も届き、晶は心身ともに追い詰められていく。
さらに不可解なじけんが次々と起こり……。
晶はヴィルトゥオーソ科だ。
この言葉を初めて知った。
ヴィルトゥオーソというのは「音楽の名手」とか「芸術の技術に優れた人」を意味するイタリア語。
バイト先の店主が言う。
「失業率が高いのは必ずしも不景気のせいやない。給料の八割は我慢代だってことを知らん奴が増えたのもある」
晶に岬先生が言う。
「他人の罪を被ることは、本人に償う機会を失わせることだ。自己犠牲と言えば聞こえはいいけれど、自己陶酔になっている場合だってある。自己陶酔なんて前進できなくなった人間の逃げ道でしかない」
名声あるピアニスト、柘植は言う。
「モノを造り何事かを表現する者には頂点や終着点などない。あるのは通過点だけだ。しかし (略)」
ラスマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、
パガニーニ「ヴァイオリン協奏曲第2番、第三楽章〈鐘のロンド〉」
パガニーニ〈二十四のカプリース〉
など、YouTubeで確認しながら読んだ。
いつも思うことだが、
作家さんは、音楽の表現力も素晴らしい。