「難民高校生」 仁藤夢乃 筑摩書房 2016.12.10
これは文庫本。
単行本は2013年3月に英治出版より刊行。
絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル、
とある。
著者は1989年生まれ。
家庭・学校のつながりを失い、中学生の頃から渋谷の路上をさまよう生活を送り、高校を2年で中退。
虐待、妊娠、中絶、DV、リストカット、自殺未遂……。
周りには、そんな子がたくさんいた。
ヤンキー、引きこもり、被災地で孤立する中高生。
彼らの声はかき消されてきた。
ある講師との出会いをきっかけにボランティア活動を始め、明治学院大学に進学。
東日本大震災後、居場所づくりを展開する「Colabo」を立ち上げる。
メディアなどで、
深夜の都市部に溢れかえっている中高生とおぼしき若者を見るたび、
彼らの心境や環境について思いを廻らせていた。
疑問だったことが、少しは理解できたように感じている。
ーー近くにいる大人でも、彼らの世界を知ることは難しい。理解できない子どもたちの言動に対して、ただ叱ったり、どうしたらよいのかわからなくなってしまう。そういうことが重なり「問題児扱い」され「ダメな子」というレッテルが貼られる。
そんな大人たちに子どもは反抗を続ける。すれ違いが続くと関係はさらに悪化し、大人たちの子どもたちに対する想いは、心配や苛立ちや怒りなどの葛藤を経て、諦めへと変わっていく。そして、子どもたちは、その諦めの気持ちを敏感に感じとり、「見放された」と感じる。
ーー「受け入れる」とか「向き合う」とかは、ただそのヒトの存在を許したり認めたりすることではない、と私は考えている。何かを「してあげる」というスタンスではなく、その人と個人として向き合い、一緒に考えたり一緒に過ごしたりすることが重要なのだ。誰かと向き合うためには、自分のことも解放して相手に向き合うことが大切で、そうして互いのことを理解していくステップの繰り返しが、相手を受け入れることにつながる。
ーー若者に対して、大人たちにしてほしいのは、
「個人として向き合」「可能性を信じる」「姿勢を見せる」こと。
ーー安全安心な街づくりのためには、さまよう子どもたちや、家のない人、帰るところのない人たちを排除するのではなく、手を差し伸べ、そういう人たちを狙う大人たちにこそ、注意や指導をするべき
ーー自立は「一人でなんでもできるようになること」ではない。自立は孤立とは違う。たった一人で立つことではなく、むしろ、人の力を借りたり、誰かに力を貸したりしながら生きられるようになることだと考えている。
一人で我慢したりするのではなく、人を頼ったり、コミュニケーションを通して解決する力や、「助けて」と言えることが、自立につながる。
以上、少し引用した。
著者はまだ20代後半。
今も、同じようにような現実があるのだと思う。
著者も言うように、彼らを狙っている大人こそが問題だ。