「おもみいたします」 あさのあつこ 徳間書店 2022.11.30
「乱鴉の空」に引き続き、あさのさんの作品。
本を開いた瞬間、あっ!明らかに文字が大きい!
行数を数えてみたら「乱鴉~」は18行、「おもみ~」は17行。
流石に一行の文字数までは数えなかった(笑)
人に揉み治療を施すのがお梅の生業。
身体と心の闇までほぐす。
P96
お梅がわかっているのは、人はどれほどのものを手に入れても満たされないという事実だけだ。むしら、手に入れれば入れるだけ、己に欠けているもの、足らないもな、指の間から滑り落ちて、ついに手に入れられなかったものを求めてしまうのではないか。
P97
我慢すること、耐えることを身上としてしまった者は厄介だ。外に発っし散らさないままだと、辛さや苦しさや痛みは膨れ、固まり、血や気の流れを妨げる。
(略)我慢、忍耐を美徳と信じて疑わない者も、美徳だと押し付ける者も厄介極まりない。人の心身がどういうものなのか、まるで解していないのだ。
(岡っ引き)仙五朗は言う。
「真っ当にしゃんと生きている者ってのは、どこかで誰かを支えてるもんでやすよ。当の本人が気が付いていなかてもね。逆さまに、真っ当でないやつってのは、どうしても他人を傷つけたり、不幸せにしてしまう。人ってのはそういう生き物じゃありやせんかね」