ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「亥子ころころ」「あとは切手を、一枚貼るだけ」

2019-10-17 19:06:19 | 

 

「亥子ころころ」 西條奈加 講談社 2019.6.24

 

武家出身の職人・治兵衛を主に、出戻りむすめのお永、

孫娘のお君と三人で営む「南星屋」。

全国各地の銘菓を作り、味は絶品、値は手頃と大繁盛だったが、

治兵衛が手を痛め、粉をこねるのもままならぬ事態に。

不安と苛立ちが募る中、店の前に雲平という男が行き倒れていた。

聞けば京より来たらしいが、何か問題を抱えているようだ。

 

「まるまるの毬」の続編。

確か読んだはずだが、例により記憶はおぼろ (^^;

 

思いのこもった諸国の菓子が、強張った心を解きほぐす。

温かいーー

 

 

「あとは切手を、一枚貼るだけ」 小川洋子・堀江敏幸 中央公論新社 2019.6.25

 

小川洋子さんも堀江敏幸さんも芥川賞受賞者。

堀江さんの作品は読んだことがなかった。

二人が手紙をやり取りするカタチ……

 

かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。

失われた日記、優しいじゃんけん、湖上の会話……

そして二人を隔てた、取り返しのつかない出来事。

 

届くはずのない光を綴る。

 

「アンネの日記」など、さまざまな作品が語られる。

初見だったのはドナルド・エヴァンズ。

架空の国をこしらえ、名づけ、その国が発行する切手を、短い生涯の間に四千枚も描いた画家。

 

ーーともに逃げていける箱舟ではなく、それぞれが孤独を耐えなければならない母船と着陸船。ーー

 

作中の「私」ならずとも、ズシンとくる言葉だ。

 

 ーー私たちは決して、同じ船には乗れません。閉じられたまぶたの湖に浮かぶボートは、どれも一人用です。ーー

 

引用されている、まど・みちおの『けしき』という詩にドッキリ。

 

 けしきは

 目から はなれている

 

 はなれているから

 見えて

 見えているから

 けしきは そこに ある

 

 (略)

 

 見るものから

 いつも

 はなれていなければならないからだ…

 自分が そこに

 ほんとうにたしかり あるために…

 

 全体的にシーンと深い。

心の奥底に染み入ってくる。

 

 

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