ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「ファミレス」

2014-06-19 14:27:14 | 
「ファミレス」  重松清  日本経済新聞社  2013.7.22

 帯には
  
  料理は優しさなんだ。
  誰かのためにつくる時が、一番うまくなるんだ。

  町並みも日常のくらしも、家族のかたちも変わる。だからこそ、変わらないものが生きる支えになる。
  手間ひまをかけるから美味しい。料理も、人生も。

 少しずつ抜書き。

 「うますぎる惣菜は毎日は食えないもんだ」
 「そこそこうまくて、でも、たいしたことはない。弁当や惣菜はそれでいいんだ。
  飽きずに毎日食ってもらうには、その塩梅が大事なんだ」
 「料理のことだけじゃなくてよ、人生全般、そういうものなんじゃねえのかな」

 美味しそうで簡単なレシピが沢山♪ 例えば…卵とトマトの炒め物やブロッコリーのナムル

  塩コショウと醤油、日本酒、さらに隠し味に佐藤を入れたレアの炒り卵をつくり、そこに
  湯むきしたざく切りのトマトを軽く炒めたものを加え、ごま油を垂らして混ぜ合わせればおしまい。

  小房に分けたブロッコリーを茹でて、顆粒のままの中華スープの素をごま油と混ぜたもので和えるだけ。

  他にも
  粉末の中華スープの素をお湯に溶き、そこに中華ドレッシングを大匙三杯足して、胡椒で
  味を調えてから、片栗粉でとろみをつけると――酢辣湯(サンラータン)のできあがり

  そうそう、これも試してみたい。
  買ってきたポテトサラダにカレー粉とマヨネーズを加えて混ぜなおし、耐熱容器に入れて、
  オーブントースターで軽く焦げ目をつけるだけ。
  
 p237 別居を経て一博との離婚を宣言する桜子の言葉。

 いままでの熟年離婚って、奥さんのワガママだとか、ダンナさんの長年の無理解や無関心のツケだとか、
 いいイメージが全然ないでしょう?それは『ここまで連れ添ってきて、なぜ人生の終盤になって
 裏切るんだ』って発想です。でも、いまどきのアラフィフは『ここまで』でも『人生の終盤』でも
 なくて、むしろ、オトナとしてやっと折り返し点を過ぎたあたりなんです。
 節目に来たとき、やっぱりこれからのことを考えたくなると思うんです。必ずしも絶対に離婚したい
 というのではなくて、FA選手が残留するのと同じように、元のサヤに収まる可能性だって残して、
 でも、このまま惰性で老後を迎えるのは嫌だっていう…

 p248 一見フワフワしていそうで、実はしたたか。シングルマザーになろうとするひなたの言葉。

 張り切りすぎるオトコって、自分だけで完結しないんですよね。
 『家族のために』とか(略)『わが社の発展のために』とか・・・自分以外のせいにしちゃうでしょ。
 そういうオトコって、うまくいかなかったときに文句言うんですよな。
 『せっかく家族のためにがんばってきたのに』『俺の黒も知らないで』とか
 うまくいったときだって、『やっぱり俺ががんばらなきゃな』とか『親父がしっかりしないと』とか…
 でも、その時の香って、ミョウーにうれしそうなんですよね。結局みんな、家族のたまにがんばる自分や
 家族のために耐える自分、家族のためにワガママを我慢する自分が、大好きなんです。

 p263 桜子の問いがズシンとくる

  「あなたの『格』は、なに?」

 p283 エリカ先生の言葉

 足し算の思想――ニッポンのオヤジたちの大半はその思想の信奉者だ。
 「要するに、なにかが増えることで幸せを実感するわけ。言い換えれば、幸せに生きるっていうのは、
 なにかを増やすことだと考える思想」
 足し算の思想にはかなラス尾張がある。自分の人生で増やすことができるのはこのあたりまでだろう、
 というピークがある。それは同時に「ここまでいけば幸せな人生だ」と納得できる合格ラインでもある。
 
 家族のためにがんばるお父さんだって、ほんとうは「家族」のためにではなく「『家族のために
 がんばっている』自分」のためにがんばっているだけではないのか・・・・

 ぬるま湯こそが、家族の幸せなの。追い炊き禁止なの。ぬるーいお湯に長ーく浸かるには、まさに半身浴
 ……体の半分はお湯の外に出してなきゃいけないのよ。

 p323 陽平が、教え子のドンに言う(ドンの母は不倫して事故にあって入院中)

 「じつは、お母さんは、きみの優しさに感謝すればするほど、追い詰められるんだよ。
 きみはさっき、お母さんの逃げ道をふさぎたくないから起こらないって言ってたよな。
 でも、ほんとうは逆なのかもしれないんだ。優しくされると、かえって逃げ道がふさがれて、
 かえって追い詰められて、キツくなっちゃうっていうの…いまは想像しかできないかもしれないけど、
 わからないかな」
 「あ、わかります!」
 「それって、サッカーでPKをはずしたときに励まされるとキツい、ってのと同じでしょう」
 
 p324 陽平の思い

 子どもに悲しい思いや寂しい思いをさせたくない――
 子どもの毎日は、いつも楽しいことばかりであってほしい――
 オトナなら誰でも願う。だが、子どもがネガティブなものに出会う前にオトナが先回りして
 取り除くことは、ほんとうに「愛」なのだろうか。
 「ガキの頃にしっかり悲しめよ。しっかり起こって、しっかり泣いて、しっかり孤独を噛みしめて、
 その付き合い方のコツを覚えていくんだ。そうじゃないと……オトナになってネガティブなものに
 出会ったときに困るだろう?大人は誰にも守ってもらえないんだぞ」
 でもな
 「苦しむことは別だ。悲しさと苦しさは違うんだ。子どもを苦しめてしまうのは、オトナの罪だ」
 子どもの背負った苦しみを取り除くのは、俺たち音なの責任なんだよ」

 p354 正論を振りかざし、嫁の不倫もなかったことにしようと振る舞い、孫のドンに正論だけで接しようとする正子に、陽平が言う。

 「正しくても、優しくないですね、それ」
 「正しくても優しくないこと、世のなかには意外とたくさんあるんだと想います」
 「正しさはもちろん大切なんですが、優しさのほうがもっと大切なんだと僕は思うし、生徒にも
 そう思っていてほしいんです。だって、正しさと正しさがぶつかってしまうこと、あるでしょう?
 戦争なんて、まさにそうです。でも、優しさと優しさはぶつからない。二つの優しさが出くわしたら、
 一つの大きな優しさになるんです」 (略)
 「優しさは間違いを許すことじゃなくて、認めることなんです。間違いを『なかったこと』にはしない、
 ということなんです。怒りをもったまま、悲しみを持ったまま、それをまとめて包み込むことが、
 優しさなんだと思うんです」

 p371 被災地でボランティアをした美代子(陽平の妻)の言葉。

 「人間ってみんな、自分では気づかなくても、昔の記憶に支えられていきてるのよな」
 「その支えがなくなったとき、人間は孤独になるのよ」
 「過去の思い出がなくなると、これからのことも想像できなくなるんだって」

 家族って、夫婦って何だろう・・・
  
コメント
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