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食・飲・読の日記

日々の食べたり読んだりを綴ります♪

あきない世傳 金と銀 源流篇@高田郁

2016-06-07 16:23:51 | 本(た)
  あきない世傳 金と銀 源流篇@高田郁 

あらすじ(「BOOK」データベースより)
物がさっぱり売れない享保期に、摂津の津門村に学者の子として生を受けた幸。父から「商は詐なり」と教えられて育ったはずが、享保の大飢饉や家族との別離を経て、齢九つで大坂天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公へ出されることになる。慣れない商家で「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭・治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていく。果たして、商いは詐なのか。あるいは、ひとが生涯を賭けて歩むべき道かー大ベストセラー「みをつくし料理帖」の著者が贈る、商道を見据える新シリーズ、ついに開幕!




いつも一生懸命で人に対して出来うる限りの心を尽くす、賢く知恵を身に付けるための努力は惜しまず、健気で素直で口が堅い、そんな幸が主人公です。
第一章では、七歳の幸があふれ出る学びの意欲が女子という理由で認められず、切なく。第二章では、一番の理解者である兄を亡くし、切なく。第三章では、九歳で奉公に出されるため家族と別れなければならず、切なく。鼻の奥がツーンとなりっぱなしでした。
第四章からは奉公先でのお話です。商家の暮らしぶりが細かく描かれ、興味深かったです。さて、慣れない商家で仕事を覚え働く幸の賢さが番頭さん、智ぼんさん(五鈴屋当主の末弟)の目に留まります。さらにはお家さん(五鈴屋店主の祖母)やご寮さん(五鈴屋当主の妻)にもかわいがられます。そんな中、五鈴屋当主はパッとせず、その弟は兄に対抗心剥き出し、末弟はとっても優しく本が大好き、でも商売には興味なし。みんな仲良く力を合わせてよと思うのは、お家さんや番頭さんだけでなく私もでした。家ではごたごたが起こり、それが収拾することがないままに物語は終わりますが‥ その終わり方。ご寮さんに別れられた五鈴屋当主の後添えに幸をって思ったよね、番頭さん。私としては、それはあんまりじゃないかと。幸がかわいそうじゃないかと。智ぼんさんならいいけどさ。あぁ、続きが気になります。

ふるさと銀河線@高田郁

2015-03-02 15:49:37 | 本(た)
  ふるさと銀河線@高田郁 

あらすじ(「BOOK」データベースより)
両親を喪って兄とふたり、道東の小さな町で暮らす少女。演劇の才能を認められ、周囲の期待を集めるが、彼女の心はふるさとへの愛と、夢への思いの間で揺れ動いていた(表題作)。苦難のなかで真の生き方を追い求める人びとの姿を、美しい列車の風景を織りこみながら描いた珠玉の短編集。




またまた高田郁さんの本、読みました。
みをつくし料理帖シリーズ、出世花、銀二貫とちがって現代もの。(現代ものって合ってるかしら?時代物じゃないってことです、念のため)
リストラ、受験、肉親との死別、理想とはかけ離れた仕事、アルコール依存症、痴呆、倒産、離婚、病気など。現代社会を生きていれば、誰しもが望まないのに遭遇する可能性のあるつらかったり哀しかったりする現実が描かれています。読んでいると、もしも自分だったらと思い、考えさせられます。ただつらく悲しいだけではなく、ひとすじの光であったり希望が見えるところが私自身をも救ってくれるような気がしました。
以下の2作品が特に心に残りました。
「返信」息子を亡くした夫婦が息子にあてて書いた手紙にジーンとなりました。
「あなたへの伝言」アルコール依存症に立ち向かっている女性とその夫のお互いを思う心、一日一日を積み重ねて未来へ向かっていく女性の姿、つらく厳しい状況に負けないでとエールを送りました。

銀二貫@高田郁

2015-02-18 14:19:04 | 本(た)
  銀二貫@高田郁 

あらすじ(「BOOK」データベースより)
大坂天満の寒天問屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。大火で焼失した天満宮再建のための大金だった。引きとられ松吉と改めた少年は、商人の厳しい躾と生活に耐えていく。料理人嘉平と愛娘真帆ら情深い人々に支えられ、松吉は新たな寒天作りを志すが、またもや大火が町を襲い、真帆は顔半面に火傷を負い姿を消す…。




またまた高田郁さんの本、読みました。
みをつくし料理帖シリーズ、出世花とちがって、男性・松吉が主人公。松吉の成長ぶりが小気味よいテンポで描かれているところがとてもいい感じでした。困難にぶつかり克服して、困難にぶつかり克服して、どんなに苦労してもその都度困難に立ち向かう松吉を思わず応援していました。そして高田さんの作品らしく、周りにいる人がすてきです。松吉を見守り続ける和助、お金よりも大事なものをきちんと知っていてその生き方を貫く信念ある強さ、そして人に対する愛情の深さが本当に周りを幸せにしていると思います。番頭の善次郎は最初、松吉につらく当たっていたものの、それは信心深さからくるもの、そして本当は心優しい人で、素直じゃないけれども人にフッと笑みをもたらせてくれます。松吉の親友となった梅吉はほんと、温かないい人です。銀二貫、貯まるたびにいろいろなことがあって、なかなか天満宮に寄進することがかなわなかったけれども、寄進する以外に使った銀二貫が実りあるものになっていて、和助の生き方がより輝いて見えました。銀二貫の寄進については最後はホッ。そして最後の和助と善次郎の会話にじんわりと心が温まりました。
松吉と真帆との絡み、じれったくて歯がゆくて。でも松吉がずっと悩んでいた問題を真帆と一緒に解決して、ふたりの絆がますます深まり一安心なラストでした。
当時の寒天作りや風景や火事のこと、大阪商人の心持ちなど細かく描かれていて、さすが高田さんだと感服しました。

出世花@高田郁

2015-02-09 14:04:13 | 本(た)
  出世花@高田郁 

あらすじ(「BOOK」データベースより)
「不義密通を犯した妻の血を引く娘に、なにとぞ善き名前を与えてくださらぬか」幼いお艶と共に妻敵討ちの旅に出て六年、江戸近郊で無念の死を遂げた矢萩源九郎が寺の住職に遺した言葉である。しかし、源九郎の骸と魂は三昧聖によって清められ、安らかに浄土へ旅立つ。「艶」から仏縁の「縁」と改名した少女が美しく成長する姿を、透明感溢れる筆致で描く感動の時代小説。




お縁のいつも一生懸命で、まっすぐで、人を思いやり、賢く、そして屍にも思いを寄せる、そんな姿に魅了されました。お縁のまわりにいる正真、正念、三人の毛坊主がいつもお縁を大切に思い、見守っている姿もすてきです。湯灌という仕事について目に見えるように様子が描かれているので、わかりやすくもあり、怖くもあり、その仕事の厳しさとそれを真摯に務めている6人には頭が下がる思いです。人情にあふれた物語だと思いました。

1話ごとのちょこっと感想↓
出世花 お寺でのお縁と周りの人たちの関係、湯灌の仕事についてなど丁寧に描かれていて、物語に入り込めました。
落合蛍 ミステリー要素ありで、読み手としては楽しめます。ただとっても切ないです。岩吉の思いと姿に瞳がうるみました。
偽り時雨 これもミステリー要素あり。お縁の人柄と賢さがますます感じられます。
       お寺から出て数日を過ごすお縁、いつも見守っている人たちがいないということに私がドキドキハラハラしました。
見送り坂暮色 正念の出自が明らかに。とても清く、人思いの正念に心奪われます。そして涙‥

天の梯 みをつくし料理帖@高田郁

2015-01-28 16:59:17 | 本(た)
  天の梯 みをつくし料理帖@高田郁 

あらすじ(「BOOK」データベースより)
『食は、人の天なり』――医師・源斉の言葉に触れ、料理人として自らの行く末に決意を固めた澪。どのような料理人を目指し、どんな料理を作り続けることを願うのか。澪の心星は、揺らぐことなく頭上に瞬いていた。その一方で、吉原のあさひ太夫こと幼馴染みの野江の身請けについて懊悩する日々。四千両を捻出し、野江を身請けすることは叶うのか!?厚い雲を抜け、仰ぎ見る蒼天の美しさとは!?「みをつくし料理帖」シリーズ、堂々の完結。




前作 美雪晴れ みをつくし料理帖の感想文はこちら

とうとう読み終わってしまいました。シリーズ第10弾。じわじわじわじわ、そうであろうと予測する結末に近づき、最後までドキドキさせられました。特に野江の身請け人が誰なのか、これは全然私には思いつきませんでした。(推理できないのはいつものことですが‥)読み終えて、私の心は、涙そしてほほえみが思わずじんわりと浮かぶような穏やかさ、このふたつであふれてます。澪が「食は、人の天なり」を全うする意志の強さ、料理への思いはすごいです。澪の料理を食べてもらう人への思い、ひいては周囲の人たちへの思い、すなわち愛がこの結末を導いたのだと思います。澪と澪を支えてきた人たちはお互いのことをよく考え、思いやり、それを実際に態度で示す、すてきな人ばかりです。種市、芳、りう、おりょう、ふきちゃんなどなどなどなど。そして澪と野江をつないできた又次さん。あっ絶対に忘れちゃいけない辛口で実は澪を導いてきた清右衛門先生!澪が将来出すであろうお店の名前まで付けちゃって。すてきな名前です
みんなみんな幸せになりますように。

1話ごとのちょこっと感想↓
結び草―屑尽くし  弁天様と呼ばれていた美桜が、小女と見間違うほどにやつれてしまって‥ がんばれ美桜! そして源斉先生の澪に対する思いについては、やっぱりねという感じ。
張出大関―親父泣かせ 安いお弁当をおいしく食べてもらうために工夫を凝らす澪、まさに澪らしいな。そして政吉の料理で料理番付の張出大関に! めでたいな!
明日香風―心許す 一柳の柳吾が!もう、ひどい!(←私、柳吾ファン♪) なになに今さら富三! しかも登龍楼! それにしても佐兵衛の件、解決してよかった。そして小松原様、すてき!(←私、小松原様ファン♪)
天の梯―恋し粟おこし 澪が考えて考えて野江を救い出す。その強い思いと実行力に感動。そこにからむ摂津屋、かっこよすぎ!(←一気に私、摂津屋ファン♪) でね、源斉先生、澪さんお幸せに。

本の最後に料理番付がついています。この大関、ほほぉとほくそえみました。天満一兆庵ははやりすぎかな。なんせ私、柳吾ファンだから。