かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 259

2024-05-12 12:19:14 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究31まとめ(15年9月)
   【はずかしさのまんなか】『寒気氾濫』(1997年)107頁~
    参加者:S・I、泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放


259 輪郭の固き少女の触るるほど近づきてきて輪郭を消す

      (レポート)
〈感想〉「輪郭の固い」とは、直線的な身体の痩せた様子と同時に、少女の内向的なこころの固さも表現されているように思う。(真帆)


      (当日意見)
★私は少女が輪郭を消したと思ったのですが。257番の「少女の胸真っ平らなり蘆の
 芽のむすうに尖るすぐろ野に立ち」と同じ少女なのでしょう。そういう子が近づいて
 きて、むちゃくちゃ可愛くて輪郭が消えてしまった。(慧子)
★これはもう自分の子供だとしたら、近づくことによって融合的になる。その気持ちは
 実によく分かる。抱き上げるような感じ。遠くで見てると固い感じだけど、お父ちゃ
 んって近づいてくると融合されちゃうんですよ。(鈴木)
★輪郭が固いというのはまだ未熟な少女、そう思っていた子が近づいてきたら意外と女
 性的で成長していたんだと思ったという。(M・S)
★成長しているのを「輪郭を消す」とは言わないのでは。私はどちらかというと心理学
 的なイメージ。肉体も精神もやや固い少女が〈われ〉に「触るるほど」近づいてくる
 ことによってその輪 郭がおぼろになっていく感じ。少女が娘という設定だったら、
 抱きとるような親愛の情がここには入り込んでいるのかもしれませんね。その一体感
 が輪郭を消した。鈴木さんがおっしゃった融合というのと同じことだと思います。渡
 辺さんらしい高度な歌ですね。(鹿取)


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