かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 330

2021-10-14 16:52:21 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究40(2016年7月)『寒気氾濫』(1997年)
    【明快なる樹々】P136~
     参加者:泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取 未放


330 ほんとうは迷えもしない人生をひととき巨大迷路に遊ぶ

   (レポート)
 安易な道、困難な道、そのどちらより厄介なのは、先を予測できない道だろう。知識や経験が増すほどに迷うことは怖く、保守的になってゆくのが人の常だろう。「ほんとうは迷えもしない」には、自己と対峙する作者が窺える。迷うという選択の出来ない自分を認め、そんな自分が、巨大だが出口の約束された迷路にひととき遊ぶという。警句のようでもあり、ほろ苦い歌だ。日光江戸村の隣りに巨大迷路パラディアムというテーマパークもある。(真帆)


   (当日意見)
★通俗的ですが、人生にはレールのようなものがあって、そんなに選択の余地なんかない。だから
 自分の道を選ぶとか迷う自由なんかない。そんな自分が巨大迷路で遊んでいるってわりとリアル
 にとりました。(鹿取)
★松男さんだから迷えないのではないのです。人生ってゴールがないんじゃないですか。巨大迷路
 にはゴールがあるからこそ迷いがあるのです。人生にはゴールがないしどこが出口か分からない
 から迷うなんて出来ないのです。だから松男さんだけでなく誰にも迷うなんてできないんです。
    (鈴木)
★今の意見はとても面白いですね。私も迷えないのは松男さんだけではなく人間みんなだと思って
 いましたが、人生にはゴールがないから迷えないんだという解釈が、すごく広がりが出て面白か
 ったです。(鹿取)
★下世話な解釈でいいですか?公務員の人生って真面目で迷えないですよね。この巨大迷路はとて
 も魅力的な女性で、ひとときその女性に迷ってしまったと、そんな風に解釈しました。恋に溺れ
 て迷っている。(M・S)
★巨大迷路は魅力的な女性の暗喩ってわけですね。(鹿取)
★いや、恋の解釈は分かりますが、公務員って迷うんですよ、大変なんですよ。(鈴木)
★でも、巨大迷路を女性と解釈すると前の歌(レタスの葉こころの襞を一葉ずつ洗いて盛りて君と
 のランチ)のレタスも恋人になるんです。何十年も連れ添った奥 さんとでは絶対レタスを一緒
 に一枚ずつ洗うなんて歌にはならないですよ。(M・S)
★そうよねえ(笑)(女性一同)
★松男さんは奥さんと一緒に農作業とかやっているんですよ。外で働いて家と関係ないような人だ
 ったら一緒に食事の準備って嘘くさいけど、いつも畑で一緒にキャベツ採ったりしている人だか
 らこういうランチもありうると思います。(鈴木)

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