押しても駄目なら

風が吹けば、と共に非線型現象の第二例でしょう。

中国「反日運動」ーその2/金子勝氏の論壇時評

2005-06-14 23:33:07 | きのうきょうの話題
一月経ったあたりから少し冷静な多角的な議論が出るようになって来た。

その1 論壇時評 朝日新聞夕刊2005年5月25日 金子勝

金子勝氏の記事の見出しには「敗北のナショナリズム」「国際感覚欠く保守派」「「国益」失う逆説生む」などとある。魅力的な語句が並んでいるが、ちょっと分かり難い。保守論壇の、例えば石原慎太郎、判りやすい語句だが、極めて感情的で、論理が一体あるのか、と疑わせる物ほど酷くはない。しかし、中身は一体何だろう、と読み解くには相当時間が掛かりそうだ。

具体的に取り上げて見よう。岡部直明の「日中は仏独に何を学ぶか」(日経5月9日)の文章を引用して、「一方で『東アジア共同体』構想を唱えながら、小泉純一郎首相がA級戦犯を合祀した靖国神社に参拝して近隣諸国をいたずらに刺激するのは国際感覚を欠く」と言う指摘は正しいと金子勝は支持して、「たとえば、仮にドイツのシュレーダー首相がナチス幹部の墓参りをすれば、EUにおいて彼の政治生命は絶たれるだろう。保守派にはこうした国際感覚そのものが欠けている」と断定する。

ドイツが第一大戦を戦い、そしてナチスが第二次大戦を戦かった。第一次大戦の結果は多額の賠償を対戦諸国に支払った。その後の不安定の中からナチスの狂気集団に取り付かれたように、第二次大戦にのめり込み、敗戦の結果、ナチス集団の罪を断罪し、近隣諸国に謝罪した。しかし、ポーランドなどでは謝罪されていない、足りない、と言う意見があると新聞で読んだ(今この記事の引用は出来ない)。二度の大戦に敗北したドイツの近隣諸国への対応に学べ、と言うのは余りに経緯の違いを無視していて、参考にはならないと私は思う。

そう感じながらネットサーフィンしていたら、同意見ではないが、似たような視点からもっと具体的な反論を岡部直明にしている記事(泥酔論説委員の日経の読み方)があった。

泥酔氏は欧州で日中関係の比較対象とすべきは独仏ではなく、独露だというのである。これは一つの見識である。綿密な解析、論考などの価値がある。詳しくは泥酔氏の議論の展開を読まれたし。私の酔っ払っていない頭よりアルコール入りの脳味噌の方がはるかに優れている場合があることを実感した。

具体例2 浜矩子・寺島実郎「『入亜』時代にうまく身をゆだねられるか」(週間エコノミスト5月3・10日号)で寺島は、米国を抜いて大中華圏が最大の貿易相手国になった事実をあげたうえで、「この十数年で経済はとっくに『アジアシフト』しているのに、日本は米国のトラウマから逃げられない」という。そして、「Buisiness Week」誌記事を「なぜ日中はいがみ合うのか」(4月25日号)を引用して、中国経済の2010年代末までの発展を続けると言う説を肯定的に繰り返している。

これらを読むと私はちょっと待ってくれ、と言いたくなる。共産主義政権が一党独裁で市場経済を発展させた例はまだ世の中にはないことを軽く考えないで欲しい。もっと多面的な、重層的な思考を金子勝氏には期待したい。従って、国益もそうした視点から考えたい。

その2 世界 岩波書店 2005年7月号
その3 中央公論 7月号

資料その2、その3にはチャイナリスクと言う言葉が散見される。この言葉は保守系の論者が多く使うようだが、私は真面目に取り上げるべきだと考える。この話は長くなるので、ここで一旦この項は終わり。その2、その3の資料に基づく議論は稿を改める。

最新の画像もっと見る