押しても駄目なら

風が吹けば、と共に非線型現象の第二例でしょう。

南天堂

2005-06-14 11:36:46 | 気になる本
SanPanと言う小冊子を読んでいたら、いや、みすずだったかな。寺島珠雄著 南天堂 松岡虎王麿の大正・昭和 が面白そう、とあって、図書館で借りた。

気になった話題を一つ二つ。
南天堂というのは本郷通りと白山通りとが一番距離を狭くする部分を結ぶ通りの北側にあった本屋兼レストランである。この店は実は今もある。数年前にその前を通った事がある。戦前のある時代に詩人、小説家だのが集まって談論風発の場を提供していたらしい。その主人が松岡虎王麿である。

第二十四章は大正末期から昭和初期の南天堂が話題である。話題の中心の一人は中野重治。小見出しは『驢馬』の中野重治、『むらぎも』の南天堂などがある。
『むらぎも』の主人公片口安吉はレーニンの著作の翻訳の印税の一部を出版社から百円の小切手で貰う。出版社のある神楽坂からどうやって本郷三丁目まで来たのかは判らないが、交差点を渡った辺りで下駄が割れた。近くの下駄屋で小切手支払が出来るかと尋ねるが、出来ないと断られる。知っている古本屋でお金に換えて貰おうと赤門、正門、一高前で、古本屋へ入る。主人に「ようがす。おとりかえしましょう」と無事現金化して貰い、隣の下駄屋で下駄を買う。
肴町から左へ曲がると右手に南天堂があり、白山上への連なる。原文では、「肴町になった。道が白山へとつながってそこに南天堂本屋がある。ここにいろんな人々が集まって議論をしたり酒飲んだりするということを聞いたことがある。アナーキスト系の詩人が良く出入りするともきいてきた。安吉は行ってもいようかと思ったことがあった。」となっている。

長い引用だったが、この日が東京帝大の卒業式の日あるいはその前後であり、1927年3月14日に衆議院の予算委員会で「渡辺銀行は支払い停止」と大蔵大臣片岡直温が誤謬答弁をして、翌日から銀行の取り付け騒ぎが広汎に起っていることに寺島珠雄は拘るのである。帝大の卒業式は三月十四日以前なのだろう。そして昭和金融恐慌の寸前にその影すら感じさせずに『むらぎも』は終わっている。

これは大変面白い指摘だと私は思う。


レストランだか集会だかの署名簿の一部が示されている。一例。署名の字が達筆で読めない、とのこと。うーーん、読めそうだが・・・。

三?一?体の木乃伊(ミイラ)封言の月のおぼろなる光をあびて ○○○


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