Sweet Dadaism

無意味で美しいものこそが、日々を彩る糧となる。

口約束

2009-02-13 | 徒然雑記

 一緒に遊んで楽しい人なら探せばそれなりに見つかるものだと思う。
けれど、一緒に生活して楽しい人と、一緒に仕事をして楽しい人(さらにそれが上司ではない場合)はそうそう見つかるものではないと思っている。

「またいつか、必ず一緒に仕事をしましょう。絶対、面白いことができそうな気がするんです。」
もう5年以上前になるだろうか、そう云って前の会社を辞めていった(ほどなく私も辞めることになっていたが)部下がいた。一旦離れたわたしたちのフィールドは、ゆっくりとではあるが、当時とは違う方向へ向かって着実にふたたび近づいているように感じる。

 「俺は日本に来た人に、こういうものを見せたくて、こういう楽しみをあげたいんです。だって、俺が外国にいったときにそういうものが見たいから。」
 「ハイエンドの人だけに、とびきりの文化体験とか手取り足取りの面白いもてなしを独占させるのはおかしい。普通の人だって、一泊に3,000円しか払えない人だって、面白いものを見たいし面白いことがしたいはず。俺はその面白さがどこに転がっているかを示してあげられる人になりたい。」
逃げ場のない主観で語る論拠はとても薄弱で、けれど否定できない強さとひとつの真実が確かにそこにある。自分がかつて得た強い感動を根拠にして且つ冷静にビジネスを考えられる人は、おそらくその方向を間違えない。と私もこれまた贔屓目を多分に含んだ主観で思う。

 私が今の仕事に就いた動機は彼と全く異なる。とはいえ、自分でないもののためになにができるかということをツーリズムの視点で勝手にそれぞれが考えたことによって、アプローチは全く異なりながらも同じことばを同じ温度で語り、愉しい議論ができるところまでようやく互いが近付いた。
この先、どんな仕事を一緒にしようかなんて話し合ったことはないし、ましてやツーリズムの畑でそれぞれが生き延びていることも5年前には想像していなかった。故意に曖昧なままにしておいた口約束が会わないあいだに着実にその輪郭を帯びてゆくことに、私はどうにも言葉にし難い嬉しさと信頼を感じてならない。

これまで、考えが煮詰まったときに思い浮かぶこともなかった彼の顔だが、これからはちょっと考えてみてもいいかな、と思う。「あいつだったら、この状況に対してどう云うだろう。」
こんなことを思うことがすでに、「一緒に仕事をしている」ことなのかもしれない。

実際に顔をつき合わせて仕事をする日が来るまでに、あと10年もあればお釣りがくるだろう。
必ず来るその日が楽しみだ。




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3 コメント

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Unknown (野人)
2009-02-13 18:52:34
お疲れ様です。
タイトルを見てドキッとしてしまいました(笑
今年は実現させます。。。

自分も、ビジョンはまだ捨ててはいない。
かつての朋友と酒の席で語った話が夢物語になるのか、それとも花を咲かせるのか。
「言うわ易し。」
今となって重くのしかかる無言の圧力。
混沌とする前にまた。
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ありがたいことに (けんたろ~)
2009-02-13 22:36:59
私も前の会社がなくなった時に、
何人かから同じことを言われ
昨年くらいから徐々に実現し始めています。

さらに、昨年ミスターからも言われたのは
嬉しかったです。
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ビジョンとは、遠くにありて思い続けるもの (マユ)
2009-02-17 15:13:04
>野人

「かつての」って、もう過去の女扱いか!(嘘

あのときは、結構辛らつなこと云ったよね。意図的にそうしたことをちゃんと覚えてる。

目標への努力はかぎりなく具体的に、そしてどこまでもリアリスティックに、ね。


>けんたろ~さん

実現の兆しがあるってことは嬉しいことだよね。
わたしたちのような仕事は個人商店みたいなものだから(ひとりだちできれば、だけど)、ナニワブシ的な人との繋がりとか理念の共有とか、そういうのってなんか泥臭いって思いつつも、凄く大事だったりするんだよね。たぶん。
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