雨の日にはJAZZを聴きながら

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Mike Mainieri & Friends 『 White Elephant 』

2008年01月02日 23時30分31秒 | JAZZ
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昨日、今剛の唯一のリーダー作『 Studio Cat 』(1980)が昨年、紙ジャケ仕様で再発になっているというお話をしましたが、この70年代から80年代の旧作のリマスター、紙ジャケ仕様での再発という流れは近年顕著になっている傾向ですよね。特にロックの分野ではその傾向が強いように思いますが。個人的にも、昨年はリトル・フィートやロキシー・ミュージックなどのリマスター・紙ジャケ盤の一挙リリースに対して大人買いしてしまった、なんてこともありました。

さて、ジャズ界でも「フュージョン界最大の幻の名盤」と称されているマイク・マイニエリ&フレンドの『 White Elephant 』が、K2 マスタリング、特殊エンボス紙ジャケ仕様、さらに未発表音源2曲追加でリイシューされました。

本作はもともとはウッド・ストックのプロモーターで有名なマイケル・ラング氏が興したJust Sunshine Recordsから72年にLP2枚組でリリースされた作品ですが、当時のプレス数がわずか1100セットという希少性もあり、一気に幻化した作品です。その後、90年代に2回ほどCD化され再発されています。

まず94年にビデオアーツからVol.1 とVol.2 の2枚分売で発売されました。内容は、オリジナルLP2枚に収録されていた13曲に未発表音源4曲を加えた全17曲を2枚に分けて収録された作品でした。次いで96年にNYCから内容はそのままで2枚組でリイシューされました。

今回の再発にあたっては、オリジナルLPで採用されていたエンボス処理(中央の像とタイトルが飛び出している)を忠実に施し、音源はK2 リマスターし、さらに未発表音源 である≪ Prelude To Sunshine Clean ≫、≪ Drum Percussion Groove ≫の2曲を追加収録しています。

60年代後半のサイケデリック・ロックやプログレッシブ・ロックの台頭に危機感を抱いたのは、なにもマイルス・デイビスばかりではありませんでした。ニューヨークでセッション・プレーヤーとして活躍していたジャズ系のミュージシャンたちも、ロックとジャズの融合による新しい音楽の創造を模索していました。そんな中、マイク・マイニエリが立ち上げたリハーサル・バンドがホワイト・エレファントでした。最初はウォーレン・バーンハートやスティーブ・ガットら数人で始めたバンドでしたが、噂を嗅ぎつけたミュージシャンたちが夜な夜なスタジオに集結していき、最終的には20人ほどのミュージシャンがこの作品に参加することになります。当時20歳そこそこのマイケル・ブレッカーをはじめ、今では超一流のセッション・マンが名を連ねています。

こうなると否応なしに期待が膨らむのですが、実際、今回初めて本作を聴いてみると、意外に普通っぽいロックなので拍子抜けしてしまった、というのが本音です。オリジナルの13曲は全てヴォーカル物。中途半端なブラス・ロックあり、フォーク調の楽曲あり、AOR風ありの作品で、実験的ではあるのかもしれないが、今一つ革新的な情熱が伝わってこないのですね。

たとえば、72年にタイムスリップしてみると、プログレ界では、キング・クリムゾンが既にデビューしており、『 太陽と戦慄 』のリリース直前であるわけですし、イエスは名盤『 こわれもの 』や『 危機 』をすでに世に送りだしている頃です。それらと比べると本作が何とも頼りない作品に思えて仕方ありません。少なくとも“ Fusion (融合) ”という視点で考えると、ジャンルのミクスチャー度はプログレ集団の方がはるかに優っていたように思えます。

僕はマイク・マイニエリの『 Love Play 』(1977 Arista )あたりの音を想像していたのですが、全く別モノでした。第一、マイニエリは殆どヴィブラフォンを弾いていませんでしたし(笑)。Steps Ahead でマイク・マイニエリのファンになった方が本作を聴いたらガッカリするでしょう。

たとえばスター・ウォーズの『 クローンの攻撃 』や『 シスの復讐 』をはじめに観てファンになった若者が、77年の『 エピソードⅣ 』を観て笑っちゃうように。ただ、『 エピソードⅣ 』も『 White Elephant 』もすばらしい作品であることは間違いないのですが、現代の刺激的な映像、音に慣れてしまうと、あまりにも70年代のそれは貧弱に見えちゃうものです。

まあ、しかし、現代のフュージョン/スムース・ジャズという大河の源流を探っていてば、おそらく、この作品あたりに行く着くことは間違いないのでしょうが。

マイケル・ブレッカーは、本作の録音と同時期にビリー・コブハムのバンド『 Dreams 』(前項あり)にも参加しています。しかし、『 White Elephant 』や『 Dreams 』で聴かれるマイケルの音は、流石に技術的に未熟さが目立ちます。

また、今回初お目見えの2曲≪ Prelude To Sunshine Clean ≫、≪ Drum Percussion Groove ≫ですが、≪ Prelude To Sunshine Clean ≫は気の抜けたブラス・ロック調で、まるでヴォーカル吹き込み前のバッキング・トラックのようでもありますし、≪ Drum Percussion Groove ≫はクレジットがないので誰が叩いているのか分りませんが、2分30秒のパーカッション・ソロです。すでにLP あるいは再発CDをお持ちの方が、このためにわざわざ買い直すほどの未発表曲ではないかと思います。


今回、初めて収められた未発表フォト(リーフレット)。これが一番面白かったりして。マイケル、若い!! トニー・レビンはまだ髪の毛があったのね。

Mike Mainieri(key,vo,per,ulcers,arr)
Joe Beck(g)
Warren Bernhardt(key)
Michael Brecker(ts)
Randy Brecker(tp)
Sam Brown(g)
Ronnie Cuber(bs)
Jon Faddis(tp)
Steve Gadd(ds)
Nick Holmes(vo,g)
Tony Levin(b)
Sue Manchester(vo)
Bob Mann(g)
Hugh McCracken(g)
Donald MacDonald(ds)
Paul Metzke(g)
Nat Pavone(tp)
Jon Pierson(btb,vo)
Barry Rodgers(ttb)
Lew Soloff(tp)
David Spinozza(el-g,ac-g)
Ann E. Sutton(vo)
Frank Vicari(ts)
George Young(as)

南 佳孝 『 夏の終わりに僕は君を失う 』

2008年01月01日 12時02分58秒 | Around JAZZ
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明けまあしておめでとうございます。本年もお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

さて、昨夜は遅ればせながら年賀状書きをしながらNHKの紅白歌合戦を観るとはなしに見ていましたら、なんと寺尾聰が出演していたので、嬉しくなり見入ってしまいました。曲は当然≪ルビーの指輪≫。そして更にびっくりしたことにバックバンドが超一流スタジオ・ミュージシャンがずらりと勢揃い。

井上鑑(kb)、高水健司(b)、山木秀夫(ds)、今剛(g)、クリストファー・ハーディー(per)、菅坂雅彦(tp)、村田陽一(tb)、近藤和彦(as)と、よくも大みそかの生番組にこれだけの面々を集められたもんだと感心してしまいました。

≪ルビーの指輪≫を収めた81年のアルバム『 Reflections 』は当時バカ売れした名盤ですが、そこには伝説のバンド、PARACHUTE(パラシュート)が全面サポートしていましたからね。寺尾聰にはそのあたりのこだわりがあるのでしょうか。今回の紅白歌合戦にも当時と同じく井上鑑(kb)と今剛(g)が参加していたのがその手のファンには涙悶!です。25年という月日の間に、林立夫が山木秀夫に、土岐英治が近藤和彦に、向井滋春が近藤和彦に交代していますが、今剛が今も第一線で活躍していることは嬉しい限りです。欲を言えば、盟友である松原正樹とのツイン・ギターで復活してもらえれば言うことなしだったのですが。

ところで、松原正樹が多くの自己リーダー作品を制作しているのに対して今剛はたった一枚しかリーダー作を出していません。その唯一のリーダー作『 Studio Cat 』(1980 AGHARTA ポニー・キャニオン)は昨年8月に紙ジャケ仕様で再発になっています。以前にもCD再発された作品ですが、一度店頭から姿を消すとなかなか手に入らないレア盤ですから、興味のある方は今のうちに手に入れておいた方がよいかも。

で、日付もかわって元日の深夜に、80年代に浴びるように聴きまくったジャパニーズ・ポップス、AORがムショウに聴きたくなって、レコード棚からパラシュートの『 HAERE MAI 』やら松田聖子の『 Pineapple 』 、松原正樹の『 SPINER 』 、それから、さだまさしの『 夢供養 』(この中の≪サナトリウム)という曲での松原のソロは名演です)などなど、きりがないくらい次々と思い浮かぶまま聴いて夜を明かしてしまいました。

ということで、これから、家族で栃木県の実家に車で帰省するのですが、この70~80年代郷愁路線の熱き思いを引きずって、まずは南佳孝の『 夏の終わりに僕は君を失う 』をCDチェンジャーに挿入して行くことにしました。本作は76年から93年までのバラード・セレクションです。「バラード」というキー・ワードで彼の曲を“抽出”すると、結構ジャズ風のコンピレーション作品に仕上がるんですね。なかなか素敵なアルバムです。

ドラムでは石川雅春、林立夫、渡嘉敷祐一、高橋幸宏。ギターでは鈴木茂、松原正樹、故・大村憲司。ベースでは細野晴家臣、岡沢章。キーボードでは久米大作、坂本龍一などなど。超豪華メンバーのサポートによる珠玉のバラード集です。