雨の日にはJAZZを聴きながら

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Amsterdam Jazz Quintet 『Portraits』

2006年06月27日 22時17分44秒 | JAZZ

ロベルト・ヤン・ヴァーミュラン(Rpbert Jan Vermeulen)はオランダの中堅のピアニストです。オランダのハーグ王立音楽院を卒業後,若き将来有望なミュージシャンに与えられるPall Mall Swing 賞を受賞。その後はニューヨークに渡り,リッチー・バイラーク,バリー・ハリス,ケニー・ワーナーらに師事し,オランダに帰国後はトム・ハレル,ハーブ・ゲラー,チェット・ベイカーらと競演していました。ここで紹介するアムステルダム・ジャズ・クインテット(Amsterdam Jazz Quintet)は,彼がリーダーとなり1991年に結成されたバンドで,現在までに4枚のアルバムを制作しています。本作は1997年録音の3作目にあたる作品で,トゥーン・ルース(Toon Roos)(ts, ss),バート・ヨリス(bert Joris)(tp)をフロントに据えた2管クインテット編成です。ちなみに現在入手困難なデビュー・アルバム『Signature』(1991 Groove)にはバート・ヨリスではなくデヴィッド・ロックフェラーが参加していました。

全体に欧州らしさが漂う上品で叙情性豊かなハード・バップで,全編メンバーのオリジナル曲で,内半数はヴァーミュランの作曲です。正直なところ,ヴァーミュランにはピアニストとしての際立った個性やテクニックがあるとは思えませんが,その分フロントのトゥーン・ルースとバート・ヨリスの柔らかく絡み合う何とも言えないハーモニーは,よく練られた楽曲の良さも手伝って,強く心惹かれるものがあります。格段取り上げて紹介するほどのアルバムではないかもしれないと危惧していたのですが,やっぱり夜な夜な愛聴してるアルバムなので,思い切って取り上げた次第です。

ちょっと話は逸れますが,この二人がフロントをつとめるアルバムでイヴァン・パデュア(Ivan Paduart)の『A night at the Music Village』というアルバムありますが,今だ入手できずにいる憧れの1枚です。イヴァン・パデュアを収集して分かったのですが,意外にこの人,多作だったんですよね。もう一枚,バート・ヨリスがオランダ・ジャズ界の重鎮であり,Challengeオーナーでもあるベーシスト,ハイン・バン・デ・ゲインと,同じオランダの女性歌手,パウリエン・バン・シャイク(Paulien van Schaik)とのトリオ編成で吹き込んだ『In Summer』が欲しいんですけどね。絶対イイと思うんですけど。これは。

さて,本作のジャケットに何やら数人の名前がレイアウトされていますよね。実はこのアルバムはジャケットに描かれている各界の著名人からインスパイアされて作曲された曲で構成されているんです。取り上げられている有名人は以下の9人です。

1)ブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)
2)ゲイリー・カスパロフ(Gary Kasparov)
3)ニック・リーソン(Nick Leeson)
4)スーパーバリオ?(Superbarrio)
5)ペレ(Pele)
6)ダライ・ラマ(Dalai Lama)
7)ジョン・クリーズ(John Cleese)
8)リゴベルタ・メンチュウ(Rigoberta Menchu)
9)M.C.エッシャー(M.C.Escher)

さて,何人ご存知ですか?
ゲイリー・カスパロフは世界チェス・チャンピオン。ニック・リーソンは英国最古のマーチャント・バンク,ベアリングズ銀行をたった一人で破綻に追い込んだトレーダー。ジョン・クリーズはモンティ・パイソンなどでおなじみの脚本家兼俳優。リゴベルタ・メンチュウはメキシコ先住民擁護活動家だそうです。1972年にノーベル平和賞をとっています。M.C.エッシャーは建築家であり画家。下の絵の作者と言った方がわかりやすいでしょうか。

            

正直,曲と人物像が結びつかないですけどね。まあ,ジャズのタイトルなんていい加減なものですから。
でも,本作は作曲と編曲のセンスの良さで最後まで聴かせてしまうとってもお上品な欧州ハード・バップで手放せません。


Jerry Bergonzi 『 Tenor of the Times 』

2006年06月25日 20時56分55秒 | JAZZ

ジェリー・バーガンジ(Jerry Bergonzi)は1947年ボストン生まれ。マイケル・ブレッカーより2歳,ボブ・バーグより4歳年上です。8歳の時にはじめてクラリネットを手にして,12歳の時にアルトサックスに転向。更に14歳でテナーサックスを始めたようです。初期のバーガンジはソニ・ロリンズ,コルトレーン,ハンク・モブレーにインスパイアされたと語っています。ローウェル大学を卒業後はストリップ劇場のバックバンドでエレキベースを弾いてお金を貯め,ついに1972年にニューヨークに上京。最初の7年間は生活に困窮しましたが,1979年にデイブ・ブルーベック・カルテットに参加し名声を得ました。しかし,1981年には再びボストンに戻り,テナー奏者と平行して教育者としてもキャリアを積み,数多くのバンドに参加すると同時にサックスの教則本やビデオを発表しています。いわばミュージシャンズ・ミュージシャン的側面を持つ彼ですが,本国ではマイケル・ブレッカーやジョー・ロヴァーノと並び称される名士だそうです。そうそう,昨日紹介したダン・ブレイデンもバーガンジに師事していたんですよね。

さて,この新作『 Tenor of the Times 』は古巣Double-Time Recordsを離れ,SAVANTに移籍した第一弾で,Double-Time Recordsの前作『 live GONZ 』同様,レナート・チコ(Renato Chicco)(p),デイヴ・サントロ(Dave Santoro)(b),アンドレア・ミシェルティ(Andrea Michelutti)(ds)のカルテット編成です。そしてGONZという名称はこのカルテットのバンド名のようです。

本作は全てバーガンジのオリジナルで,お得意の変拍子の楽曲も交えつつ,ボブ・バーグへの追悼曲<Bob Berg>なども配した全7曲です。変拍子でありながらバーガンジのソロはそれと意識されないほど自然で,何気に吹いていますが,相当のテクニックがないと乗れない難曲もあります。

バーガンジの音は時にコルトレーン風であったり,ジョーヘン風であったりするかと思えば,マイク・スターンと競演するといきなりブレッカー風に変貌したり,はたまたリーブマンを彷彿させる硬質でクールなフレーズをぶつけてきたりと,何でもできるテクニシャンなのですが,本作では気心知れたメンバーとの演奏ということもあって,比較的穏やかな彼の演奏が楽しめる好盤です。流して聴いてしまうとそれなりにしか響いてきませんが,大音量で彼のフレーズを追うように聴いてみると,一つのコードに対する様々なアプローチ,スケールの適用のバリエーション,音列の意表をつく跳躍,聴いたこともない斬新なフレーズなどなど,驚きの連続です。個人的には前作の『 live GONZ 』の方がライブ盤ということもあり,乗りの良い軽快な演奏が楽しめて好きですが,本作も聴くほどに味のでるスルメ盤かもしれません。特にピアノのレナート・チコの美麗フレーズには感心してしまいます。ライナーノーツによるとチコは現在はオーストリアに住み教鞭もとっているようですが,過去に15年程NYに住んでいたとこのと。僕は全く知りませんでした。
【愛聴度 ★★★】

          
Jerry Bergonzi 『 LIVE GONZI! II 』2004 Double-Time Records
パリのライブハウス,ロンバート(lombert)での実況録音盤。僕が所有しているのはVol.2ですが,当然Vol.1もあります。新作よりこちらの方が数段ノリが良いです。バーガンジのゴリゴリ,ブリブリの豪快な極太フレーズ満載。こんなに巧いのに日本での人気がないのが不思議です。バーガンジは初期にはRED,Blue Noteにも吹き込みがあります。最近まではDouble-Time Recordsに数多く作品を残していますが,オルガンのダン・ウォールを加えたトリオ編成が多く,僕としてはちょっと触手が伸びずにいます。
【愛聴度 ★★★★】


          
Guido Manusardi 『 Within 』1996 Soul Note
ギド・マヌサルディの追っかけで買ったアルバムにバーガンジが参加していました。これが僕のバーガンジ初体験。バックでイタリア・ジャズ界の重臣,マヌサルディが煽るわけですから,バーガンジもいつもより気合が入ります。僕の知る限りのベスト・ソロが聴かれる愛聴盤です。マヌサルディが素敵なのは当然。
【愛聴度 ★★★★】

          
Alex Riel 『 Rielatin' 』1999 stunt
stuntのアレックス・リールの作品にもたびたびバーガンジが参加しています。特に本作はマイケル・ブレッカーとのバトルが聴き応えあります。ベン・ウェブスターのM-1<Did You Call Her Today>で二人が左右のチャンネルに振り分けられ強烈なバトルが繰り広げられます。それにしても二人とも聴き比べるとよく似ています。
【愛聴度 ★★★】

          
Dave Santoro 『 Standards Band II 』2000 Double-Time Records
新作も含め数多くのバーガンジの作品に参加しているベーシスト,デイヴ・サントロは,バーガンジと同郷の仲。1978年から二人は競演しているとの事。本作はサントロ名義の<standards Band>の第二作。第一作はピアノがブルース・バースでしたが,第二作はレナート・チコが参加しています。とってもリラックスした雰囲気のアルバムで,これといった仕掛けも派手さもない凡作ですが,こういう作品こそ,テーナー奏者の格好の教材になるのでしょうね。同じサントロ名義で『 The New Standard 』という作品もありますが,こちらはよりモダンでモーダルな演奏でその懐の深さを見せつけています。
【愛聴度 ★★】


Don Braden 『 The Voice of The Saxophone 』

2006年06月23日 22時50分57秒 | JAZZ

最近,HighNoteからオルガン,ドラムとのトリオ編成の新作『 workin’ 』を発表したばかりのドン・ブレイデン(Don Braden)ですが,今日はその新作でなくちょっと古い彼のアルバムを聴いています。

新作は,前作の『
The New hang 』同様,オルガンのカイル・コーラー(Kyle Koehler)が参加し,ジャズ・ファンクを基調とした,やや古いタイプの1970年代のBlue Note soundに近い仕上がりでした。もともとロニー・スミス(Ronnie Smith)やサム・ヤエル(Sam Yahel)とも競演していたくらいですから,オルガン奏者との相性もばっちりで,乗りの良いNYCあたりで最近流行りのオルガン・ジャズでした。でも僕としてはジョシュア・レッドマン(Joshua Redman)の< ELASTIC BAND >のようなオルガン・トリオを期待していたのですが,ちょっと期待はずれだったのも正直な感想です。どちらかと言うと前作『 The New hang 』の方が< ELASTIC BAND >に近いテイストの楽曲があったような気もします。

ブレイデンは,クリス・ポッター,ジョシュア・レッドマン,マーク・ターナーらと共に
1990年代に登場したヤング・ライオンの一人で,90年代のハード・バップを推進させた立役者です。クリス・ポッターやジョシュア・レッドマンらが今でも第一線で活躍しているのに対して,ブレイデンはやや影が薄く,日本でもあまり知られていないテナー奏者ではないでしょうか。それでも<作曲>,<編曲>,<テクニック>のバランスのとれたところは,本国でも評価が高く,特にアレンジの才能に優れていて,アレンジャーとしての仕事も多いと聞きます。

今,聴いている『
The Voice of The Saxophone 』(1997 RCA Victor )もOctet編成でブレイデンの優れたアレンジが全編に施された素晴らしいアルバムです。

ハンク・モブレーの<soul station>,ウェイン・ショーターの<speak no evil>,ジョン・コルトレーンの<after the rain>の独創的で秀逸なアレンジも,あまり気難しくならない程度に程よくリハーモナイゼーションされていて,素晴らしいし,グローバー・ワシントン・Jr <winelight>も目から鱗のカッコイイ編曲で,10作以上ある彼の作品群の中でも,一番丁寧に作られた秀作だと思います。アルバム最後は,ジミー・ヒース作曲のバラード,<the voice of the saxophone >でしっとりと締めくくり,聴き終えた後に何とも言えない心地よさの残る愛聴盤です。

ヴィンセント・ハーリングやランディー・ブレッカーが参加し,ピアノには
Criss Crossにもリーダー作を吹き込んでいるダレル・グラントが参加しています。ちなみに録音はCriss CrossSharp Nineのレコーディング・スタジオで有名なブルックリンのSystem Two Studioです。音も良いですよ。
【愛聴度 ★★★★】

          
Don Braden 『 workin’ 』2006 HighNote
一瞬,ジョージ・ベンソンの新譜かと思った。盟友セシル・ブルックスIIIが参加しています。僕は一連のブレイデン作品でのセシル・ブルックスの太鼓は結構気に入っています。ソロではあまり難しい事をしないところがブレイデンの魅力でしょうか。メカニカル・フレーズも少なめ。ビブラート浅め,サブトーンも使わず音も薄い。そんなところが僕は好きですが,当然そこが嫌いな人もいるでしょうね。

          
Valery Ponomarev 『 Beyond The Obvious 』2006 Reservoir
ポノマレフのレザボアの新作を買ったら,ブレイデンが参加していました。ピアノレスなのでちょっと迫力のないハード・バップです。ブレイデンもやや大人しめの演奏で,★3つかな。ベースのマーチン・ゼンカー(Martin Zenker)は,以前に当ブログでも紹介したUGETSUのリーダーです。そう,ポノマレフも一時期加入していました。


Joe Magnarelli 『Hoop Dreams』

2006年06月16日 21時53分18秒 | JAZZ

ジョー・マグナレリ(Joe Magnarellicriss crossからの新作です。ジョー・マグラレリはcriss crossの専属看板トランペッターで,ジム・ロトンディやジョン・スワナに比べると今ひとつ知名度が低いのが残念ですが,実に味のある暖かいジャズを奏でる名手です。今回の新作はcriss cross6枚目になりますが,初めてのワン・ホーン編成で,ピアノ・トリオ+バーンスタインをバックに,力みもなくいつもより朗々と吹いていて気持ちがいいアルバムです。僕の手元には4枚の彼のリーダーアルバムがありますが,どれもエリック・アレクサンダーが参加しているので,どうしてもエリアレの押し出しの強い強烈なソロに耳が奪われ,マグラレリの存在感が薄らいでしまう作品ばかりでした。その点,今回の新作はマグナレリの朴訥とした言わば和み系のジャズにどっぷり浸れる初めての作品ではないでしょうか。一般的には凡作なのでしょうが,愛すべき凡作といってよい作品です。10曲中4曲が彼のオリジナルで,<Monk’s Mood>, , <Ask Me Now>など3曲がモンクの楽曲。<Old Folks>などのスタンダードでも非常に感情豊かな名演が聴けます。これからの季節,晴れた日曜日にベランダでビールでも片手に,ぼーとしながら聴くとはなしに聴くには最高にはまるアルバムではないでしょうか。Joe Magnarelli 『 Hoop Dreams 』2006 Criss Cross 1280 CDJoe Magnarelli (tp)Peter Bernstein (g)Gary Versace (p)Paul Gill (b)Tony Reedus (ds)          Joe Magnarelli 『 Why Not 』1995 Criss Cross 1104 CDマグナレリの第1作目。エリアレとの2管クインテットで,ピアノにリニー・ロスネスが参加しているのがちょっと変っています。criss crossのオーナー兼プロデューサーのジェリー・ティーケンスのアイディアなのでしょうけど,マグナレリにエリアレをぶつけてくるとは,ちょっとマグナレリの分が悪いです。まるでエリアレのリーダー・アルバムみたい。criss crossに一番多い三ッ星作品です。          John Swana & Joe Magnarelli 『 Philly-New York Junction 』1998 Criss Cross 1150 CDもう1人のcriss crossの看板トランペッター,ジョン・スワナとのco-reader album。例によってエリアレがゲスト出演。しかも一番目立っています。スワナとマグナレリ。結構フレーズは似ているような感じがしますが,スワナのハバードっぽいエッジの立った鋭いフレーズに比べて,マグナレリはケニー・ドーハムやアート・ファーマー的な歌心重視の温暖系フレーズで対抗している感じ。一聴するとスワナの方が巧く感じますが。このアルバムは楽曲もかっこよく,丁寧なアンサンブルで,出来が非常に良いです。僕は勝手に<メロディック・ハード・バップ>と呼んでますが,口笛で歌いたくなるような分かりやすいメロディーの,丁度Blue Note 4000番台で聴けそうな,綺麗なハード・バップのオンパレードです。          John Swana & Joe Magnarelli 『 Philly-New York Junction 』2003 Criss Cross 1246 CDスワナ=マグナレリの『 フィリー=ニューヨーク・ジャンクション』の企画第二弾です。スワナがフィラデルフィア,マグナレリがニューヨークで活動しているところからこの名前がついたのですね。バックはcriss crossの定番リズム隊,購入安心保障印みたいなトリオ,ジョエル・ワイスコフ,ピーター&ケニー・ワシントンです。僕は一作目の方が好きです。          John Swana & The Philadelphians 『 Philly Gumbo 』2005 Criss Cross 1260 CDスワナの話が出たので,ついでにもう一枚。これ,昨年のスワナのアルバムで,地元フィラデルフィアのミュージシャンと演った乗り乗りのアルバムです。目下,スワナの一番の愛聴盤であります。最高です。アル&ズートにドナルド・バードが飛び入りしたような軽快な60年代ハード・バップ。往年の名盤を聴いているような錯覚を覚えます。


青木智仁さん 死去。

2006年06月14日 22時16分48秒 | JAZZ

なんと,青木智仁さんが612日に亡くなってしまいました。急性心不全だったそうです。今日の夕方,新聞の訃報欄をたまたま見たら青木智仁さんの名前が目に飛び込んできて,一瞬心臓が止まりそうでした。まだ49歳の若さです。幾らなんでも早すぎですよね。心筋梗塞だったのでしょうか。

僕が青木智仁さんを知ったのはかれこれ
20年以上も前のことです。角松敏生さんのバンドで活躍していた頃です。当時僕は大学生で新潟に住んでいて,軽音楽部でジャズのベースを弾いていたのですが,友人に角松のコピーバンドをやろうよと誘われたのがきっかけで聴くようになり,そこで青木さんを初めて聴いたのでした。まだスラップと言う言葉などなく,チョッパーと呼んでいた頃です。当時,日本でチョッパーの名人は鳴瀬喜博と桜井哲夫,それからナニワエクスプレスの清水興ぐらいなもので,3人ともジャズ,フュージョン界のミュージシャンだったので,ポップス界に青木さんのような凄いスラッパーがいることに大変驚きました。ある年の角松さんのコンサート終了後に,友人と打ち上げをかねて近くのバーに立ち寄ったら,なんと角松さん達も綺麗な女性らと打ち上げをしていて,角松さんとお話をしたことがあります。そこにはメンバーがほぼ全員集まっていたのに,青木さんだけいなかったので,僕が「ところで青木さんはどうされたんですか」と尋ねたら,「今日は別口で飲みに行っちゃたみたいだね」と答えてくれたのを覚えています。どうってことない会話でしたが今でもつい此間のように覚えています。

青木さんは当時,
fender jazz bass を使っていたと思うのですが,最近はAtelier Zのベースを使用しているようです。まあ,Atelier Zはオーナーの本橋さんと青木さんの二人三脚で大きくしたブランドといっても過言ではないでしょう。基本的にfender jazz bassの流れを汲む音創りです。低音は重量感があり豊かで,それに対して高音はすっきり抜けがいい。いつも新品の弦を張っているようなクリアな音色。悪く言えばドンシャリ。エフェクターはほとんど使用せず,コーラスをかけて透明感をアップさせる程度。アンプは使用せず,ラインで送るだけ。マーカス・ミラーやネイザン・イーストのような音色,乗りで当時から日本人離れしていました。

青木智仁と言うと最近の若い人には「
Dimension 」や「 Source 」などのバンドでの活動の方が有名でしょうかね。僕も「Dimension 」は1990年代にはよく聴いたものです。8th9thまで買った覚えがあります。「Source 」もIIまでは持ってます。昔,「堀井勝美プロジェクト」という堀井勝美のアルバムがありましたが,「Dimension 」はそれに似ていて,僕の頭の中ではいっしょくたんになってしまっています。しかも「Dimension 」と「 Source 」もメンバーが重複したりしていて出てくる音も似通ってしまい,結局,日本人が創る<フュージョン>って,どれもこれも一緒だね,という結論に到達し,僕は<和フュージョン>を20世紀の終わりを持って卒業したわけです。

そんなわけで,最近の青木さんの活動はあまり知らないのですが,忙しいスタジオワークと自己のバンド活動,ジャズ・ミュージシャン特有の不規則な生活などで,心身共に疲れきっていたのでしょうか。とある教則ビデオで「僕は頼まれたら嫌とは言えない性格なもので~」と話していました。無理していたんでしょうね。

「素晴らしいベーシストを紹介しま~す。あおきともひと~。」
角松さんがコンサートでよく言っていたのを思い出します。角松さんに信頼され,20年以上もサポートしてきた青木さん。沢山の名演奏をありがとう。

人生は多分,自分が考えているより,少しばかり短いのかもしれない。

ご冥福をお祈りします。


Source 『 Source 』1997  P-Vine Nonstop
青木智仁と石川雅春(ds)が中心となり,小池修(sax),梶原順(g),小林正弘(tp)らと結成したフュージョン・バンド。本作はその1st。でもその前から5年程,ライブ活動していたようです。マイルスの『デコイ』あたりやブレッカー・ブラザーズ,あるいはジョージ・デュークっぽいファンクもあったりの,ごった煮アルバム。でも楽曲の出来は非常によく,今でもたまに聴いたりするととっても新鮮です。そう言えば,石川雅春は角松のコンサートで叩いていたような記憶があります。アルバムでは村上秀一や林立夫らが叩いてましたが。


Karel Boehlee 『 Switch 』

2006年06月04日 20時48分14秒 | JAZZ
  

今日は午前中に仕事を済ませ,午後に久しぶりにお茶の水DUに車で出かけました。いつもはDUの前に車を駐車して30分程漁って帰ってくるのですが,なんと今日は路上駐車している車が一台もないではありませんか。例の改定道路交通法による駐車違反取り締まり強化によるためなのでしょうけど,こんなに路駐が激減するとは思ってもいませんでした。みんなちゃんと駐車場に留めているんですね。

仕方がないので近隣の15分200円の駐車場に車をいれてCD漁りをしたのですが,どうしても駐車場代が気になり,落ち着いて物色できず,結局3枚の中古盤(計5040円)を買って駐車場代600円を支払い,何だかとっても損した気持ちで帰ってきました。帰りに秋葉の石丸ソフト館にも寄ろうと思いましたが,やはり秋葉にも路上駐車が皆無であったため怖くて止められず,素通りしてきてしまいました。今回の改定は僕のように車で都内を走り回る人にはかなり厳しいものです。これからはDUに出かける回数がかなり減りそう。なにか良い方法はないものでしょうかね。

さて今日は先日買ったカレル・ボエリー(karel Boehlee)の『Switch』(邦題:『ミスティ』)につて,ちょっと失敗談などをお話しようかと思います。失敗談とは言っても,ただ単におっちょこちょいのダブり買いなんですけどね。

以前にも当ブログでカレル・ボエリーについて書きましたが,結構僕はこの人好きで,少なくとも2代目European Jazz Trio (EJT)のピアニスト,マーク・ヴァン・ローンよりは好きなんですね。そもそも大学時代にEJTの『ノルウェーの森』がジャズ狂の僕とジャズに無関心な彼女との数少ない共通BGMだったので,聴く回数も半端じゃなく多くて,僕にとってはユーロ・ジャズの洗礼を受けた思い出深いアルバムだったんですね。カレル・ボエリー在籍期のEJTは,現EJTが10年以上続いているのに比べればすごく短命で,1988年の『ノルウェーの森』から1992年の『Beauty and the Beast』まで年1枚づつのペースで計5枚しか発表していません。

そこで問題なのが上の写真のアルバム『Switch』なんですが,これ,本来は1988年にTimelessにカレル・ボエリー名義で吹き込んだアルバムなんですが,EJTを手がけたalfa records(原哲夫氏)が,「どうせならEJT名義で再発しちゃえば~,ジャケットも変えてさ。その方が売れるし。」ということで出たreissue盤が最上右のアルバムなんです。当時は『Switch』というよりは邦題で『Misty』と呼んでいたと思うのですが,僕の頭の中では完全にEJTのアルバムと勘違いして,長年愛聴していました。他のEJTの作品に比べて硬質で力強くドライブし,スタンダードのアレンジも面白く,彼らの作品の中では一番のお気に入りだったくらいです。

話は先日の石丸電気でのことに戻りますが,5階の国内盤フロアで最上左のジャケットを見かけたんです。カレル・ボエリーの『Misty』とあります。「あれ,これEJTのミスティかな?」と一瞬思ったのですが,キャプションには「カレル・ボエリーの幻のデビュー盤が再登場!!」とあるではないですか。「幻」という言葉に弱い僕はすぐさま深く考えずにレジへ直行。帰りの車の中で期待を膨らませながらトレーに乗せて出てきた<Autumn Leaves>の音色を聴いて初めて理解しました。完全なダブり買いです。くそ~,何処が幻なんじゃ~。しばし落ち込みましたがreissue盤は「DSDマスタリング」なので音が良い。そう自分を慰めながら今,聴いています。でもこのアルバムは実にイイ。

          
European Jazz Trio 『Chateau En Suede』(邦題『スウェーデンの城』)1989 Alfa Jazz
EJTの2作目。カレル・ボエリー在籍期のEJTの中では,出来は一番かな。<エリナ・リグビー>から始まるこのアルバムの持つ優雅な雰囲気がたまりません。EJTだからと言って馬鹿にしちゃいけませんよ。イイものも沢山作ってるんです。