雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

Avishai Cohen 『 At Home 』

2006年11月29日 21時24分01秒 | JAZZ
チック・コリアのアコースティック・ピアノ・トリオ編成に限って言えば,ミロスラフ・ヴィトウス,ロイ・ヘインズと組んだ『 Trio Music Live In Europe 』(1986 ECM )に代表されるトリオ組が最も好きなのですが,次いで好きなトリオとなるとアヴィシャイ・コーエン,ジェフ・バラードと組んだ,いわゆる「 New Trio 」が好きです。特にアヴィシャイ・コーエンには以前からベタ惚れで,1998年にチックが結成した「 Origin 」で彼の演奏を聴いて以来,すっとフォローしてきました。

彼の音はあまり低音を強調せず,どちらかというと mid を持ち上げた音で,サステインが短めで,時に速いパッセージをスタカートぎみに,ポッ,ポッ,ポッ,ポッっと軽い感じで弾いてみせるあたりが独特です。従来の 4 beat のウォーキングに全く支配されない,独創的な音列,リフパターンの創作,それらから生み出される中近東風の哀愁を帯びたメロディー。確かにこんなベーシストは今までいなかったのではないでしょうか。

チックと組んだ「 New Trio 」や「 Origin 」でのアヴィシャイの演奏は好きだけど,彼のリーダーアルバムはちょっと食指が伸びないというファンも多いかもしれません。リーダー作になるとウード( oud : 琵琶みたい弦楽器)などを取り得れた民族音楽の色調が強い作品が多く,聴き手を選ぶ傾向にあります。僕もあまり民族楽器が入ったジャズは好きではないので,彼の作品が全て良いとは思っていません。ただ,彼のファンになった決定的な愛聴曲があるのです。僕には。それはファースト・アルバム 『 Adama 』に収録されている 《 Madrid 》 という彼のオリジナル曲なんです。

ほとんどアドリブなどない,哀愁感のあるテーマだけで聴き手を虜にする4分50秒の短い楽曲です。Low D のベース・アルコに乗ったウードのイントロからはじまり,ホーンによる中近東哀愁メロディーが奏でられ,短い Adam Cruz (アダム・クルーズ)の ドラム・ソロをはさんで再びテーマへ。このメロディー,一発でアヴィシャイに夢中になってしまった僕にとっては思い出の曲です。この曲は昨年 King Records の「低音シリーズ」で発売になった彼の6枚目の作品 『 At Home 』で再演されています。こちらは前作よりスロー・テンポでウードも入っていないので聴きやすいかもしれません。

個人的にはファーストに収録されていたヴァージョンの方が好きですが,現在,ちょっと入手し難いアルバムかもしれません。どうしても聴いてみたい方は,『 Chick Corea Presents Originations 』(2000 stretch )という「 Origin 」関連のコンピレーションが発売になっていますので,これなら何処でも手に入りますよ。しかも国内盤1800円です。「 Origin 」の名曲(と僕は思っている) 《 wigwam 》も収録されているお買い得盤です。

《 madrid 》の試聴はamazonのこちらでできますが,なにしろ1分の試聴ではイントロで終わってしまって,肝心のテーマまでたどり着けません。試聴システムの弱点ですね。残念。

アヴィシャイ・コーエンの Official HP はこちら
ここも試聴はできるがたった30秒。役にたちません。

関係ないけどチック・コリアの全アルバム・リストはこちら

Stefano Battaglia 『 Bill Evans Compositions 』

2006年11月26日 19時00分22秒 | JAZZ
イタリアの孤高の耽美派ピアニスト Stefano Battaglia (ステファノ・バターリア)の1992年の作品『 Bill Evans Compositions Vol. 1&2 』( Splasc(H) )です。正確には1992年にVol.1 が発売され,次いで93年にVol.2 が発売されたのですが,今年になり両者のカップリング盤として再発されました。

実はもともと僕はVol.1 だけを某オークションで手に入れ愛聴していたのですが,どうしてもVol.2 が手に入らず,今回泣く泣くカップリング盤を買い増ししたというわけです。2枚組みで3800円はちょっと痛かったけど,なにせ,凄く出来がよかったので満足です。

ところで,あまり日本ではバターリアの知名度が高くないですね。国内盤としてはおそらく P.J.L のEuropean Piano Jazz Series として1993年の『 Baptism 』 ( Splasc(H) )が発売されているだけですから,しかもこれ,ピアノソロなので初めてバターリアを聴いてみよという人にはちょいと抵抗があります。そのあたりも人気のなさに関係あるかもしれません。最近,ジャズ批評『 ピアノ・トリオ Vol. 3 』で2003年の『 Where Do We Go From Here 』( Labour of Love )が紹介されたので,この機会にファンが一気に増えることを期待します。

さて,本作はタイトルが示すようにビル・エバンスの作曲に焦点を当てた作品なのですが,演奏自体は特にエバンスを意識したものではなく,彼の持ち味であるキース・ジャレットの奏法を踏襲する路線です。しかし唯のキース路線ではありませんよ。キース派の百花繚乱する欧州ピアノ界にあって,彼は頭ひとつ抜きん出た個性を兼ね備えています。エンリコ・ピエラヌンツィをも凌駕するバターリアの存在は,これからのイタリア・ピアノ界を益々面白くしてくれることでしょう。

メンバーはバターリアのレギュラー・ベーシストと言ってもよい Paolino Dalla Porta (パオリノ・ダラ・ポルタ)とドラムスがAldo Romano (アルド・ロマーノ)。取り上げている楽曲は《 Interplay 》,《 Time Remembered 》,《 Orbit 》,《 Loose Bloose 》,《 Nardis 》,《 Very Early 》,《 Displacement 》などなど,エバンスのアルバムでお馴染みの曲が名を連ねていますが,中には全然聴き覚えのない曲も多く,とっても渋い選曲です。原曲にかなり手を加えて原型をとどめないものまであります。それにしてもいつもながらバターリアは音楽に真摯に向かい合い,その奏でるジャズには一寸の隙もありません。

しかも深遠で陰鬱な世界感を持っているので,ピエラヌンツィがそうであるように,聴き手にもそれなりの集中力と覚悟が必要です。まあ,あまり日常的に聴くジャズではないのでしょうね。それにしてもVol.1 とVol.2 を比べると,断然,僕が持っていなかったVol.2の方が出来がイイ。特に《 There Came You 》から《 The Two Lonely People 》の繊細な美旋律にすっかり耽溺してしまった。やっぱり買ってよかった。

バターリアの『 The Book Of Jazz 』については別項(2005年10月18日)で書いてます。

Kim Pensyl  『 Pensyl Sketches #1 』

2006年11月25日 23時47分43秒 | JAZZ
Kim Pensyl (キム・ペンシル)というキーボーディストをご存知でしょうか。1980年代以降に頭角を現してきたフュージョン・キーボーディストの1人ですが,同年代のジェフ・ローバーやデビッド・ベノワらに比べて知名度が低く,知る人ぞ知る存在と言ってよいでしょう。

昔,僕の頭の中ではジェフ・ローバー,デヴィッド・ベノワ,キム・ペンシルの三人は横一線の同格扱いだったのですが,いつの間にかジェフ・ローバーはスムース・ジャズ系の大物プロデューサーに昇格してしまい,デヴィッド・ベノワも今やGRP Recordsの看板アーティストです。それに対してキム・ペンシルは「あの人は今」状態。僕も今回記事を書くにあたり彼のホームページを見て初めて近況を知った次第です。

僕が初めてペンシルを聴いたのは1989年か90年のことでした。当時はまだセゾングループのWAVE(現在はノジマ傘下)が西池袋の西武百貨店に入っていたのですが,そのWAVE店内で流れていたのを聴いて一目惚れ。打ち込みのリズムセクションにヒューマンで爽やかなヴィブラフォン系のシンセ。LA の香り漂う新鮮な音でした。

キム・ペンシルはオハイオ州コロンバスの生まれ。年齢の記述はありませんが,おそらくジェフ・ローバーらと世代的には同じでしょうから1950年代の生まれでしょう。幼少期にテレビ番組のバックで流れていたハープ・アルパートを聴いて音楽に開眼。始めは中学でトランペットやエレキベースを演奏していたようですが,両親がピアノを弾いていたこともあり高校からはピアニストとして活動を開始し,後にアレンジや作曲も手がけるようになったようです。

彼のデビューアルバムは1988年の 『 Pensyl Sketches #1 』で,ロサンジェルスのマイナー・レーベル Optimism Records からリリースされました。その後クリスマス・アルバムをはさんで1990年までに 『 Pensyl Sketches #2 』, 『 Pensyl Sketches #3 』の計4枚のカタログを同レーベルに残した後,1992年にはGRP Records に移籍を果たし1994年までに4枚のアルバムを制作しました。しかし1994年には GRPを離れ,Shanachie Recordsに移籍し2枚のアルバムを制作。1998年には Fahrenheit Records に移籍しそこでも2枚を制作。そしてその後はずっと録音の機会に恵まれず,2004年にやっと自主制作盤を1枚制作するに至っています。こうしてみるとGRP Records を離れてからはミュージシャンとしてあまり恵まれていたとは言い難い生活を送っていたことが想像されます。

彼の作品群の中で,最も彼の個性が際立っている作品は,初期のOptimism Records に記録された『 Pensyl Sketches #1 』,『 Pensyl Sketches #2 』,『 Pensyl Sketches #3 』であると思っています。その後のGRP Recordsからの作品は手が込んでいるけど,冴えない匿名的なライト・フュージョンに変貌していて聴くに耐えません。

1990年代前半はまさにフュージョン全盛期。GRP Records が最も隆盛を誇っていた時期でした。そんな時期にGRP Recordsと契約したペンシルへの同社の期待は大きかったと思います。同社は彼の個性的なサウンドを綺麗なドレスで覆い, いかにもGRP sound といったサウンドで売り込んだのです。しかし思ったほどのセールスが上げられずたった3年で契約打ち切り。GRPに使い捨てられたも同然でした。解雇された1994年といえばちょうどデイブ・グルーシンとラリー・ローゼンがGRP Recordsを去って,代わりにトミー・リピューマが社長に就任した年でもあります。もしかするとリピューマとの確執もあったのかもしれません。

僕がペンシルをフォローしたのは1994年の『 When You Were Mine 』までです。それ以後のアルバムは聴いていないのであまり参考にはならないかもしれませんが,彼の音楽をこれから聴くなら,まずは 『 Pensyl Sketches #1 』 か 『 Pensyl Sketches #2 』 が最適です。と言うか,この2枚で十分かもしれません。中古店やネット・オークションでかなり安く手に入ると思います。打ち込み系の音楽で僕が感激したのは,ペット・ショップ・ボーイズとこのキム・ペンシルだけです。

George Robert & Phil Woods 『 The Summit 』

2006年11月23日 21時35分15秒 | JAZZ

Phil Woods 直系のスイス人アルティスト,George Robert (ジョルジュ・ロベール)が,長年の夢であった師匠のウッズと初の競演を果たした記念すべき1997年の作品『 The Summit 』(Mons)。フィル・ウッズ直系と言いましたが,むしろウッズ極似のスタイル,音色,フレーズで,ウッズの手癖,常套句までそっくりそのまま真似しちゃうほどウッズにゾッコンのジョルジュ・ロベールです。

そんな
2人が競演しているものだから,ぼーと聴いているとどっちがどっちやら分からなくなってしまうほどです。よく聴くと若いはずのローベルの方が温度感が低くあっさりしている感じ。やっぱりウッズはいつでも熱い。

バックはケニー・バロン(
p),レイ・ドラモンド(b),ビル・グッドウィン(ds)。ロベールは2002年にケニー・バロンと『 Peace 』(DIW)という傑作を世に送り出したその頃から日本でも名前が浸透してきたのではないでしょうか。それまでは国内盤もなく,Mons TCB などにしかリーダー作が無かったため,数多くのミュージシャンと欧米を中心に世界を股にかけて活躍しているわりに,日本では知られていなかった感があります。

艶っぽい音色,フレーズの多彩さ,スピード感,適度なコンテポラリー感覚など技術的には申し分なく,本作でも
5曲のオリジナルを披露していますが,どれも優れた楽曲(作曲までウッズ似!)で,僕も含めウッズ系が好きなファンにはたまらない存在です。

ですが,「そんなにウッズに極似ならウッズ聴いた方がましや」と思えなくもない。
1960年生まれですからまだ40歳代半ば。ウッズ圏内から抜け出し自分の世界を築くのにまだ十分な時間があります。今後の活動の行方に期待したいミュージシャンです。

ジョルジュ・ロベールの Official HP はこちら

       
Phil Woods & Gene Quil  『 Phil Talks With Quil 』1957年 Epic
これもウッズとクイルの区別がつかなかったな~。僕がウッズ・ファンになった記念すべき傑作アルバム。


Alain Mion 『 Some Soul Food 』

2006年11月21日 20時15分05秒 | JAZZ
ジャズ批評「ピアノ・トリオ Vol.3 」の中でVENTO AZUL RECORDS の早川さんが推薦していたAlain Mion (アラン・ミオン)の『 Some Soul Food 』です。

けっこう前から diskunion で面置きされているのを見てはいましたが,今ひとつ購入に至らずにいました。ところが先日何気にジャケットを手にとって見てはじめてベースが Patrik Boman (パトリック・ブーマン),ドラムスが Ronnie Gardiner (ロニー・ガーディナー)であることを知り,思わず買っちゃいました。

二人は Peter Nordahl (ペーター・ノーダール)のレギュラー・トリオのメンバーで,Lisa Ekdahl (リサ・エクダール)のバックも務めていて,僕の大のお気に入りミュージシャンなんです。

特にブーマンは Patrik Boman Seven Piece Machine ( pb7 ) というカンザス・ジャズ風のビ・バップ・バンドを結成していて,これが実に楽しくてかっこいいバンドで気に入っています。ブーマンは <spice of life >が取り扱うスウェーデン・ジャズ・レーベル,Arietta Discs(アリエッタ・ディスクス)の主宰者でもあります。

Alain Mion (アラン・ミオン)はモロッコ生まれのフランス人で59歳。現在はパリを中心にヨーロッパや故郷のモロッコなどで活動しているようです。1960年代にはパリの Blue Noteを拠点に活動し,ハンク・モブレーやフィリー・ジョー・ジョーンズらと競演歴もあります。1974年に Cortex というフュージョン・バンドを立ち上げ,解散する1980年まで3枚のアルバムを制作しています。その後はジャズ・ピアニストとしての活動に専念しています。何となく経歴が同じフランス人ピアニストのジャン・ピエール・コモみたいですね。

このアルバムの1曲目はまさにRamsey Lewis (ラムゼイ・ルイス)の 《 the in crowd 》の作風で,ゴスペル,R&B調の思わずハンド・クラップで参加したくなるノリのいい楽しい曲です。基本的にゴスペルベースなのですが,アーシーなテイストではなく,やはり欧州の洗練されたリリシズムを感じる仕上がりです。中にはM-3 《 The Secret 》 や M-7 《 I Remember Jeff 》のような美メロ哀愁歌曲も織り交ぜ,落としどころにも抜かりがありません。寺島靖国氏の 『 Jazz Bar 2005 』には《 I Remember Jeff 》が選曲されているとの事です。僕としては 《 The Secret 》 のほうが泣けるかな。

これは,絶対お薦め。

アラン・ミオンの Official Home Page はこちら

Karel Boehlee 『 Last Tango In Paris 』

2006年11月20日 22時11分22秒 | JAZZ
またジャケットに釣られて買っちゃいました。Karel Boehlee (カレル・ボエリー)の新譜,『 Last Tango In Paris 』。まんまと今回も木全信(キマタ・マコト)氏の罠に嵌まった感じです。でもいつもながら良くできた作品で感心します。ミニコンポなどでBGMとして聴き流してしまうとイージー・リスニング・ジャズになるし,また,それなりの高価な装置で面と向かい合って聴くとボエリーの手垢にまみれていないリリカルなフレーズに感動できるように作られています。

 「何か他の事をやりながら流れていても邪魔にならない、しかし聴く意思を持って聴けば充分楽しく、聴き応えある音楽」 。

これがKEY’ STONE MUSIC のプロデューサー,木全信の制作姿勢ですから,まさに本作などその姿勢が如実に現れた音楽ではないでしょうか。前作,『 Blue Prelude 』については以前にも拙ブログで書いていますのでこちらをどうぞ。

ということで,今までのM&I の作品同様,とても瑞々しく透明感のあるリリシズムに貫かれた作品です。逆浸透膜フィルターを通して全ての鉱物,不純物を取り除いた純水のように,無駄な装飾技法や難解な構成など一切なく,あくまで何処までも透明で美しい音,メロディーを奏でることだけ,その一点にだけに集中したボエリーの美意識は,ジャズ・ファンだけでなく,あらゆる音楽ファンに受け入れられる音楽の普遍性を内包しているかのようです。

メンバーは今まで同様,ベースがHein Van de Geyn (ヘイン・ヴァン・ダ・ゲイン),ドラムスがHans Van Osterhout (ハンス・ヴァン・オーシュタハウトゥ)です。タイトルが『 Last Tango In Paris 』となっていますが,タンゴ曲集ではありません。あまり馴染みのないミュージカル曲や映画音楽,それにクラシックなどから構成されています。今回はボエリーのオリジナルは1曲のみと少なめです。個人的にはボエリーのオリジナルに愛着があるのでちょっと残念。

このディスクは3日ほど前に購入し以後毎日聴いているのですが,段々と感じてきました。イイ感じです。彼の作品はいつもそうなんですが,始めはピンとこないのですが,聴き込むうちに彼独特の美旋律がまるであぶり出しのように浮かび上がり,僕の感傷中枢を刺激し出すのですね。そうなればしめたものです。「いい加減に聞けばそれなりに。集中して聴けばちゃんと心に響く。」そんな仕掛けが施された秀作なのではないでしょうか。

Living AV

2006年11月19日 15時18分21秒 | Audio

今日の東京は一日中雨模様です。仕事もオフなので妻と子供が出かけている間に溜め込んでおいた録画番組の整理をしています。

僕の所有しているDVDレコーダーは,寝室AV用に東芝のRD-X3,リビングAV用にシャープのDV-HRD20 です。DV-HRD20 はハイビジョンを21時間録画できるのですが,あれもこれもと無造作に録画していると250Gのハードディスクなどあっという間に満タンですからね。時々消去作業をしないと。

作業をしながら先日WOWOWで放送されたChris Botti (クリス・ボッティ)のライブをみていたのですが,これがなかなか僕のツボを刺激してくれて面白かったです。ピアノがビリー・チャイルド,ベースがジェームス・ジナス,ドラムスがビリー・キルソン。オーケストラ指揮とアレンジがギル・ゴールドスタイン。そしてゲストがスティングやバート・バカラックをはじめ,昨日拙ブログでも取り上げたジョージ・ベンソン&アル・ジャロウのアルバムにも参加していたジル・スコットという黒人女性ヴォーカルなども登場し,最後まで飽きさせない企画がいっぱい詰まった作品でした。そうそう,この放送はDVDを丸ごと流しただけです。DVDの詳細はHMVでどうぞ

それにしても,ビリー・チャイルドとビリー・キルソンの巧さには脱帽です。凄い。この映像は永久保存版にしよっと。

で,話のついでに我が家のリビングのAVを紹介させていただきます。大した装置ではありませんが。

液晶テレビ : SHARP LC-37GD3
DVDレコーダー : SHARP DV-HRD20
AVアンプ : DENON AVR-770SD
LDプレーヤー : Pioneer CLD-919
スピーカー : Audio Pro AVANTEK FIVE
AVラック : QUADRASPIRE QAVM
ワイアレス・ヘッドフォン : Pioneer SE-DIR1000C

DVDレコーダー のSHARP DV-HRD20は,ハイビジョン録画はできるが,当然DVD-RWに焼くと普通の画質になってしまいます。とっても中途半端なコンセプトです。ブルーレイ録画機がもう少し安くなるまで我慢しようかと思います。テレビも37型と中途半端なサイズだし,なんだか全てにおいて極められない中途半端な物ばかりです(笑)。でもまあ,音と映像は懲りだしたら限がないですからね。このあたりで満足せねば。

“吾唯足ことを知る” 

これ,僕の座右の銘ですから。これでも十分恵まれていると,上を見ちゃ,限がない。

AVアンプのDENON AVR-770SDは購入した時(2003年?)は,てっきりデジタルアンプだと思っていたけど,違うみたいです。現行のモデル,AVR-550SDはちゃんとデジタルアンプみたいですが。でも,音は結構イイです。映画観るくらいならこれで十分かな。スピーカーはスウェーデン製のAudio Proですが,60000万円/1本ですから,それなりの音しか出ません。スタイルでチョイスしたので音は我慢してます。

レーザー・ディスクは今でも沢山持ってますので,もう少しの間はCLD-919にも頑張ってもらわないと。1990年製ですから,かれこれ15年も働いてくれています。むしろディスクの方が経年変化(化学変化)で駄目になってきている物もあり,早くDVDに焼いておかないといけない状況です。

ラックはピュア・オーディオ用にも使用しているQUADRASPIREです。チェリーの無垢材です。

ワイヤレス・ヘッドフォンは2個買いました。子供の寝静まるのを待って,妻と2人で映画を観る時に活躍しています。ノイズが全然入らないので,昔のワイヤレス・ヘッドフォンとは大違い。はじめはびっくりしました。イイ買い物だったと満足しています。

ということで,映画などを観る時はこんな感じです。

     


Mark Jordan 『 Blue Desert 』

2006年11月19日 01時56分00秒 | Around JAZZ
前項でジェイ・グレイトン,ディーン・パークス,エイブラハム・ラボリエル,などなど,懐かしい名前が出てきたので,思わずCD棚からこんなものを引っ張り出してきてしまいました。ジャズではありません。いわゆるAORです。70年代から80年代のAORブームを体験した人はご存知でしょう。Mark Jordan (マーク・ジョーダン)の 『 Blue Desert 』は1979年のアルバムですが,ジェイ・グレイトンが丁度,売れ出した頃の飛ぶ鳥も落とす勢いの時期にプロデュースした作品です。そして翌年1980年にはジェイ・グレイトンはデヴィッド・ホスターと有名なAIRPLAYを結成するわけです。

まあ,このあたりの話をし出すと,芋づる式にどんどん話が拡大していってしまいますので止めますが,兎に角,この頃はジャズを聴く一方で,主におねえちゃんと会う時のBGMでかなりAORにお世話になっていましたでの,それなりに今でも愛着があります。

マーク・ジョーダンは本作で一躍有名になりましたが,その後は泣かず飛ばずだったようです。本作は丁度,ジェイ・グレイトンが同時期にプロデュースしたAl Jarreau の 『 Jarreau 』のロック版的なサウンドが聴こえてきます。ひたすらクリアで爽やか。これらのサウンドを支えたのがエイブラハム・ラボリエル,ディン・パークス,マイケル・オマーティアン,ジェフ・ポカロ,ジム・ケルトナー,etc であったわけです。いや~,凄腕スタジオミュージシャン達が名を連ねていますね。アーニー・ワッツも参加していました。ルカサーも叫んでいますし,それにも増してジェイ・グレイトンが完全に切れまくっています。主役を完全に食ったバック・ミュージシャン。冷静に聴くととっても妙なアルバムですが,そこがジャズ魂を刺激したりして。

なんとなく,20年以上手放せないでいる,甘酸っぱい香りを含んだ愛聴盤です。

George Benson & Al Jarreau 『 Givin’ It Up 』

2006年11月18日 22時52分34秒 | JAZZ
George Benson (ジョージ・ベンソン)とAl Jarreau (アル・ジャロウ)の初コラボレーション作品 『 Givin’ It Up 』 が兎に角,凄かった。何が凄いって,参加ミュージシャンが凄いのなんのって,80年代をクロスオーバー,フュージョンを聴きながら青春を送った僕には,胸が熱くなるような懐かしい顔ぶれがこれでもかと言うくらい並んでおります。聴きながらリーフレットの曲ごとのパーソネルを眼で追ってにんまりしてしまいました。こんな聴き方は久しぶりです。

ジョージ・ベンソンもアル・ジャロウも昔は滅茶苦茶聴きまくったミュージシャンでした。個人的にはベンソンならリアルタイムで聴いた1980年の 『 Give Me The Night 』に始まり,『 Breezing 』 や『 In Your Eyes 』も良く聴いたけど,その頃の一番の愛聴盤は2枚組みのライブ盤 『 Weekend In LA 』でした。ヴォーカリスト・ベンソンとギタリスト・ベンソンのバランスが取れた傑作だと思っています。アル・ジャロウもリアルタイムでは1983年の 『 Jarreau 』が一番印象的だったですね。そこから遡って 『 Breakin’ Away 』 や 『 This Time 』も良かったな。全部,ジェイ・グレイトンのプロデュースだったんですよね。そうそう,ベンソンもジェイ・グレイトン制作盤ありますよね。ベンソンとジャロウはグレイトン繋がり,ってなとこでしょうか。

最近はめっきり2人を聴くことは少なくなりました。飽きたというより,近年のジャズはあまりにも多方面に拡散してしまって,ベンソンやジャロウをフォローするだけの,経済的,時間的余力が無くなってしまったからです。今,CD棚を探してみたら,ベンソンの最後のCDは2000年の 『 Absolute Benson 』 が最後で,ジャロウに至っては1994年の『 The Tenderness 』 が最終購入でした。両作品とも素晴らし出来ですけどね。『 Absolute Benson 』はGRP移籍第三弾で,プロデューサーは『 Breezing 』でベンソンを世界的スターに導いたトミー・リピューマが再び登場しています。90年代半ばにトミー・リピューマはGRPの社長になりましたからね。その関係で引き寄せたのでしょうね。このアルバムでベンソンはかなりギターを弾きまくっています。全体にラテン・タッチですが,3曲目の <Jazzenco >など,近年のベンソンのギタースタイルの典型フレーズ満載で,ギタリスト必聴です。最近のベンソンンズ・チルドレンと呼ばれるミュージシャン,たとえばボビー・ブルームやノーマン・ブラウンなど,このへんとそっくりなフレーズ弾いてます。ジャロウの『 The Tenderness 』もマーカス・ミラーがプロデュースしていて,往年のAOR的な作りとは全く別物です。マーカス・ミラーはもちろん,スティーブ・ガット,マイケル・ブレッカー,ジョー・サンプルのソロもフューチャーされ,演奏半分,歌半分の配分で,マルです。

かなり話が脇道に逸れてしまいました。さて,本題です。

1曲目 < Breezin'> はベンソンのインスト原曲にジャロウが歌詞を付けて演奏されています。ジャロウの十八番,ヴォイス・パーカッションではじまり,シュワーとラリー・ウイリアムスのシンセがかぶり,更にカリウタのフィル・インからお馴染みのベンソンのスキャット・ユニゾン・ギターリフへ。もうそれだけで逝ってしまいそうです。ふー,シアワセ。後ろでディーン・パークスのリズム・ギターが控えめに鳴っていますね。エイブラハム・ラボリエル=ディーン・パークスの弦リズム隊は,果てしなく聴いてきましたが,いつ聴いても心地よいですね。ディーン・パークス。懐かしい響きです。ドナルド・フェイゲンでも今夜引っ張り出してこようかな。ラリー・ウイリアムスも80年代に聴いたSEAWIND以来です。しっかり生き残っていたのね。

2曲目 < Morni' > はジャロウの『 Jarreau 』に収められていた曲。ジャロウは終始ヴォイス・パーカッションに徹し,ベンソンがメロディーを担当。軽快なスムース・ジャズ風の仕上がりです。この曲はデヴィッド・フォスター=ジェイ・グレイトン,つまりはAIRPLAYの作品です。80年代を代表するAORの名曲でしょう。この頃の2人は,まさに神憑っていました。凄かった。デヴィッド・フォスターはその後も活躍していますが,ジェイ・グレイトンが最近耳にしませんがどうしちゃったのでしょう。まあ,今更グレイトンという時代でもないのでしょうが。

3曲目 <TUTU > はご存知マーカス・ミラーの曲。ハービー・ハンコックとパトリース・ラッシェンが参加。ハンコックはアコピでソロとってます。あまり大きな声で言えませんが,僕はあまりこの曲好きではありません。

4曲目はスタンダードの <God Bless The Child > 。ジム・スコットという女性ヴォーカル,ジャロウ,ベンソンの3人が歌ってます。バックはカリウタ=ラッシェン=ミラーと,最強。

5曲目 <Summer Breeze >は爽やかな風が吹きぬけるAOR仕上げのメロー・チューン。ジャロウの初期のアルバムでも入っていそうな曲です。これもラリー・ウイリアムスのアレンジ。意外にこのアルバムのキー・パーソンはラリー・ウイリアムスだったりするわけですね。ジャロウとベンソンのハーモニーも素敵です。流石。

6曲目 <All I Am > はベンソンのしっとりバラード。あれ,ベンソンがナイロン弦を弾いていますね。珍しい?

7曲目 <Ordinary People >は,ミディアム・テンポのタイトなリズムに乗って,ベンソンの美しい旋律が奏でられるインスト・トラック。ソプラノ・サックスのマリオン・メドウズって,昔一枚だけ買ったな~。スムース・ジャズ系で打ち込み多かったような。

8曲目 <Let It Rain > ジャロウの書いたバラード。パティー・オースチンとジャロウのデュエットで,ベンソンはギターで参加。今や超売れっ子のクリス・ボッティがお得意のミュートを聴かせてくれています。マーカス・ミラーが派手ではないけどしっかりボトムを支えているので,全体に締まった印象を受ける仕上がりです。

9曲目 < Givin' It Up For Love > は打ち込み系のややブラコン寄りの曲。ジャロウとフレディー・ラベルという人の作曲のようです。僕は知らなかったのですが,フレディー・ラベルという人は2003年のジャロウのアルバム 『 All I Got 』でもディレクターとして参加していて,モーリス・ホワイトを唸らせたキーボーディストだそうです。タイトル曲ですが,個人的にはあまり好きじゃないかな。

10曲目 < Every Time You Go Away > は誰もが耳にした事のあるダリル・ホールの名曲。どちらかと言うとポール・ヤングのカヴァーの方が有名なのかな。とってもソウルフルでコンテンポラリーな優れたアレンジです。と,誰かと思ったらまたラリー・ウイリアムス。イイ仕事してますね~。ちょっと,チェックしておかなきゃ。

11曲目 < Four > は言わずと知れたマイルスの曲。これをパトリース・ラッシェン=スタンリー・クラーク=ヴィニー・カリウタのシンプルなリズム隊をバックにフォー・ビートで演奏しています。スタンリー・クラークももちろんウッド・ベースですし,ベンソンの純ジャズ・ソロも聴けますよ。

12曲目 < Don't Start No Schtuff > はハモンド・オルガンに乗ってブルース・フィーリングたっぷりのベンソンのソロが聴けるノリノリの曲。個人的には?

13曲目,ラストはサム・クックの <Bring It On Home To Me > 。これが例のポール・マッカートニーのヴォーカル物なのですが....。
「たまたま隣のスタジオでレコーディングをしていたポールが,飛び入りで参加した」らしいのですが。誰が聞いてもそんなの嘘だろうと思いますよね。ギャラの問題はその場で話をつけたのでしょうかね? ありえませんよね,そんな事。
やっている曲もポールの歌も,大したことないし。本作にははっきり言ってこの曲は不要です。最後にちょっとケチがついちゃたな。あ~あ。

ということで,全曲,通して聴きながら徒然に書き綴ってみました。やっぱり最初の2曲が絶品ですね。後半,ちょっとテンション下がっちゃうけど,全体としては豪華ミュージシャンに支えられた完成度の高い作品ではないでしょうか。

Richie Beirach 『 Manhattan Reverie 』

2006年11月16日 21時33分39秒 | JAZZ
僕は熱心なRichie Beirach (リッチー・バイラーク)のファンというわけではありません。特に1990年代の彼の活動については全くの無知なのです。それでも80年代の前半ぐらいまではよく聴いたのものです。ピアノ・ソロの『 Hubris 』(1977 ECM)やジョージ・ムラーツ,ジャック・ディジョネットと組んだ『 Elm 』(1979 ECM),それに『 Eon 』や『 Elegy For Bill Evans 』などもよく聴いたものです。当時のJazz Life 誌でQuestが絶賛されていたので飛びついたものの,当時の僕にはデイブ・リーブマンのサックスが何度聴いても理解できず投げ出してしまった,なんてこともありました。

あの頃のアルバムで今でもたまに引っ張り出して聴いているのは『 Hubris 』ぐらいなものです。クラシックとジャズの融合産物のような音楽で,鋭角的で極めて温度感が低い,怖いくらい繊細なバイラークの美旋律に,当時は何となくジャズの未来像みたいなものを感じたりしていました。僕にとってバイラークは,イコール《 Sunday song 》であり《 leaving 》なのです。

最後にバイラークを聴いたのは1986年の『 Quest2 』だったと思います。正直あまりどんなジャズだったか覚えていません。無機質的てアブストラクトな感じだったかもしれません。その頃から彼の音楽からは徐々に興味が薄れ,いつの間にか僕の中では過去のミュージシャンになっていました。

ところが,1999年にヴィーナスレコードから『 What Is This Thing Called Love 』を発表したのでした。ヴィーナスとバイラーク? どうもしっくりきませんでした。結局スルーして,そのうち忘れてしまっていましたが,2001年に第二弾『 Romantic Rhapsody 』が発売された際,軽い気持ちで購入してみました。そしたらこれが素晴しい内容で感激。丁度いい塩梅にバイラークの毒気が抜き取られ,原氏の思惑どおりに日本人好みのジャズに仕上がっていたんですね。それでいて,何処を切り取ってもバイラークそのものであり,彼らしさは失っておらず,バイラーク健在を見せつける秀作でした。微妙な間,ペダリング。それに重厚な独特のリハーモナイゼーション,ヴォイシングにより,《 blue in green 》や《 I wish I knew 》などの聴き慣れたスタンダードナンバーに新たな命を吹き込むことに成功していました。第三弾はクラシックを取り上げていたのでこれはパスしました。

で,今回の第四弾 『 Manhattan Reverie 』となるわけですが,結論から言うと,良くも悪くも,ヴィーナス度が前作にも増して強くなった印象を受ける仕上がりです。

バイラークが老熟して聴きやすくなったのか,あるいは原氏のリクエストなのか。おそらく両方なのでしょうが,以前のハード・エッジなバイラークからは想像できないくらいの穏やかな彼の姿がそこにあります。随所に鋭いフレーズもちらつかせますが,全体のトーンは柔らかく穏やか。往年のバイラークを知る者には少々物足りないかもしれません。盟友ジョージ・ムラーツとビリー・ハートとのトリオですがら,そのあたりの息はぴったりで,完成度は高いと思いますが,う~ん,どうでしょうか。個人的にもう少し尖がっていた方が好みです。これじゃ,第二のエディー・ヒギンズになり兼ねません。

ということで,出気は素晴らしいが『 Romantic Rhapsody 』には少し劣る,といった評価になります。

Lars Jansson 『 Ballads 』

2006年11月14日 20時45分21秒 | JAZZ
ここ数日の間に急に寒さが増してそろそろ冬も近づいてきた感じです。こんな季節の変わり目には決まって毎年風邪をひいてしまう僕なんですが,今年も案の定,1週間前から関節痛と咳,喉の痛みが続き全然良くなりません。しかも今日は当直。解熱剤の座薬を入れて頑張っています。

さて,こんな季節に毎年聴きたくなるのが僕の場合Lars Jansson(ラーシュ・ヤンソン)なんですね。欧州ピアニストの中でもヤンソンは特別な存在で,日常的に聴き流すにはもったいない有り難いピアニストです。盆暮れとまでは言わないまでも,一年の内で,ここぞ,という時に棚から取り出してトレーに乗せ,静かにヤンソンの音楽を味わう。ヤンソンのJazzに浸る。そういった聴き方が適切な感じがします。あの比類なき美旋律は聴き過ぎてはいけないのです。いつも聴く時には新鮮な気持ちで接したい,そんなPianoだと思うのです。

以前にも書いたことがありますが,現在の欧州ピアニストは乱暴に言い切ってしまうと,みんな<キース・ジャレット系>ではないかと思っています。キースの遺伝子を引き継ぎながらも,自らが育んだ遺伝子も継承し,彼らの国々の風土,習慣などからの環境因子も取り込み,確実に進化したキース系ジャズが欧州には増殖しています。そして,そんなキース系の超進化型ミュージシャンの最右翼がラーシュ・ヤンソンではないかと思います。昔「スウィングしなけりゃ意味が無い」なんて言葉がありましたが,今はそんなものはJazzには必要ないのです。スウィングはJazzの必要条件ではなくなったのです。ひたすら美しい旋律を奏でること,そのことこそがJazz Pianoに求められているのです。

あの美旋律は,スウィング~ビバップ~ハードバップと進化してきたジャズの方法論の延長線上には発生しない手法から生まれていると思われます。バド・パウエルを何万回聴こうが,ピーターソンの早弾を完璧にコピー出来ようが,決してそこからはあの旋律は生まれてこないものです。彼の生まれ持った類稀な美意識,メロディー・センス,そしてスウェーデンという豊かな自然環境から得た感性。それらが彼の指先から自然発生的に紡ぎ出てきた結晶のような物なのでしょう。彼にとっては,ジャズ・イディオムは自身の音楽を具現化するための手段に過ぎないのでしょう。

本作『 Ballads 』は1991年から2000年の間にImogenaに吹き込まれた作品群から珠玉のバラード・トラックだけを厳選抽出したコンピレーションです。。全18曲でこれからヤンソンを聴いてみようという方にはお勧めの1枚です。1曲目が《 Hope 》で2曲目が《 The Tree 》で,単なる名盤『 Hope 』の1曲目と2曲目の曲順をひっくり返しただけですが,この2曲が彼のベスト・オリジナルですから初心者には見逃せません。個人的には,『 A Window Towards Being 』からの《 More Human 》, 《 Marionette 》あたりも愛聴曲です。まさにヤンソンの魅力がぎっしり詰まった宝石箱のようなアルバムです。

Lars Jansson official homepage (日本語)はこちら。国内盤の試聴ができます。http://www.lars.jp/index.html

Guido Manusardi 『 No More No Less 』

2006年11月12日 19時32分18秒 | JAZZ
小気味良くスイングする上質のジャズが聴こえてきそうな,そんな素晴らしいジャケット。Guido Manusardi (ギド・マヌサルディ)の新譜がSoundHills Records(サウンドヒルズレコード)から発売になりました。「黙って聴いてくれ。内容は保証するよ。」とでも言っているような,自信に満ちた職人の目。イイ顔してます。

プロデュサーはあのRED RecordsのSergio Veschi(セルジオ・ヴェスキ)です。サウンドヒルズは今までにも結構セルジオ・ヴェスキ氏に依頼し制作していますね。新しいところではファブリツィオ・ボッソの『 Rome After Midnight 』や,ボッソとボルトロの『 Trumpet Legacy 』などのサウンドヒルズ盤もセルジオ氏の手によるものです。欧州のブルー・ノートとの呼び名も高いRED Recordsのセルジオ氏の音は,正に現代版ヴァン・ゲルそのもの。肉厚なピアノの音が勢いよくスピーカーから飛び出し,ギドのフレーズがより生き生きと再生されています。

サウンドヒルズレコードはご存知大阪のスーパー・ストップ株式会社のオリジナル・レーベルですね。スーパー・ストップは以前はCriss Crossのディストリビューターをやってました。簡単なノートが書かれた黄色い帯を付けて輸入販売してましたが,最近はより多くの欧州系の新譜の通信販売も手がけています。レコード屋に行くとよく置いてあるフリーペーパー『 jazzyell 』がそれですね。

タイトルの『 No More No Less 』って,「ほどほどに」,「ちょうど良い感じ」,あるいは「過ぎたるは及ばざるが如し」といった意味でしょうか。70歳を過ぎたギドのジャズに対する現時点での心境かもしれません。芳醇で円熟味のあるピアノ。溢れ出る軽やかな美旋律。昔はエヴァンスとピーターソンの折衷フレーズを奏で,時に斬新で攻撃的な作品も制作していましたが,最近では正統派のいかにもジャズらしいピアノスタイルに変貌してきました。彼の昔の作品から時系列に従い聴いてくると,彼のピアノスタイルの成熟過程がよく理解できます。

本作はオリジナル曲とスタンダードが半々の配分です。正直,これと言って特筆すべき内容ではないのですが,寺島靖国氏が言われているように,確かにこういったアルバムの方が最後まで手許に残る愛聴盤になるのかもしれません。

個人的には最近のギドの老熟路線系の作品の中では,2001年にSplasch(h)から発売されている『 The Woodpecker 』が大好きです。

P.S. そうそう,前回紹介したジョヴァンニ・トマッソの『 VIA GT 』もセルジオ・ヴェスキ氏の作品です。


Ivan Paduart 『 My French Heart 』 

2006年11月09日 22時36分01秒 | JAZZ

CDの買い方には大きく分けて4通りあるように思うんですよね。

その壱:全く知らない未知のミュージシャンの
CD
を,そのメンバー,ジャケット,曲目などから,今まで培った自分の嗅覚だけを頼りに良し悪しを推し量り買ってくる,云わば,“冒険買い”。

その弐:信頼するジャズ評論家やライターのレビュー,あるいはネット上で評判になった
CD
を買ってくる,“お薦め買い”。

その参:好きなミュージシャンではあるが,新譜がでるたびに参加ミューシャンやそのコンセプトから,あまり好みでないと判断した場合はスルーする,“良いとこ買い”。

その四:もう絶対好きなので,いかなる場合も片っ端から買いまくり,新譜が出れば内容の良し悪しなど関係なく発売当日にレコード店に駆け込み手に入れる,“惚れこみ買い”。

で,先日発売になったIvan Paduart (イヴァン・パデュア)の新譜 My French Heart 』 (Gats Production)などは,まさに“惚れこみ買い”であって,誰が何と言おうと,ここだけは譲れない僕の領域みたいな…..感じのピアニストなんです。ということで,なかなか客観的に評価できにくいイヴァン様なのですが,冷静に耳を傾けてみましょう。今回のアルバムは,クロード・ヌーガロやシャルル・アズナブールらのフランスのヒット曲を取り上げたコンセプト・アルバムです。個人的にはあまり好みではないテーマですが,日本人が企画するとやはりこういったアルバムになっちゃうのでしょうかね。“ I warmly thank Pascal Noel for his ambitious ideas and Takashi Kasai for having ordered me this project. ”とイヴァン自身が記してあるように,ガッツ・プロダクションの笠井隆社長さんの提案のようです。悪いとは思いませんし,基本的には大好きな社長さんです。欧州,特に東欧のジャズをたった一人で発掘して日本に紹介してくださるその心意気,ヴァイタリティーには敬服いたします。

今回は初のガッツ・プロダクション作品ですが,今まで日本にイヴァンを紹介してきたのは,P.J.L. (ポリスター・ジャズ・ライブラリー)で監修を務めた杉田宏樹氏であり,また,欧州系レーベル,Sarahを通じてイヴァンの作品を制作したVideoartsの海老根久夫氏らの功績が大きいと思います。それはそれで喜ばしいことではあるのですが,本当のイヴァンの個性は,もっとずっと以前の,A Records, B Sharp, Iglooなどに吹き込まれた,今よりもっと陽気で哀愁漂う,ラテン=フュージョン・タッチのアルバム群にあるように思うのですけどね。

日本人主導,企画でアルバム制作が成されるようになってから,徐々に甘美さを増してきたイヴァンですが,今回は今まで以上に甘いです。甘党の僕としても,これ以上甘いとちょっと辛いです。でも中には良い曲もあります。M-1C アズナブールの《 君を愛した後で 》など美しい旋律を持った良い曲です。ドラムとベースのリフで始まるのですが,このイントロ,完全にトニー・ウイリアムスの名曲《 シスター・シェリル 》のパクリです。

M-8 僕に降りかかるごたごた 》もアズナブールの曲ですが,ここでのイヴァンのソロが素晴らし。彼には独特の歌うフレーズがあって,そこに気付いた人は彼の虜になっちゃうんですね。ぼーと聞流すと陳腐な売れ線狙いのイージー・リスニングに聴こえちゃうような,危なっかしい作風なのですけどね。最後の《 You must believe in spring 》も泣けます。そう,この曲ってルグランの作曲だったのね。エヴァンスと勘違いしてました。

企画が企画だけに全体に穏やかでおとなしい印象を受けるアルバムですが,こんなアルバムからイヴァンに入ると幻滅しちゃうかもしれませんので,もっと元気の良い過去の作品を紹介しておきます。

     
『 Turquoise 』1993 B Sharp CDS093
正確にはイヴァンがリーダー
 をつとめたバンド,Aftertouch の第二作目です。始めはフュージョン演ってたんですよ。Aftertouch名義でB Sharpに2枚残していますが,象の顔のジャケが印象的な第一作の方は所有していませんが,この第二作は結構カッコイイです。フレットレス・ベースを操るFrancois Garnyって,なかなかのテクニシャンです。この後イヴァンはIglooに移籍し,リシャール・ガリアーノを迎えてジャズ・ラテン的なこれまた素晴らしアルバムを制作していきます(別項参照)。


Giovanni Tommaso 『 Via GT 』

2006年11月07日 21時58分28秒 | JAZZ
Massimo Urbani (マッシモ・ウルバーニ)が登場しましたので,ちょっとだけ,彼の愛聴盤を挙げときます。

あれほど上手いのに,彼の知名度が意外に低いのが不思議です。やっぱり国内盤が出てないからですかね。輸入盤はあることはあるけど,既に入手困難なブツも多いし。彼は1992年にヘロインのオーバードープで35歳の若さで亡くなられたのですが,死後に結構未発表曲がCD化されました。でも,中にはあまり録音状態が良くないものもあったりします。まあ,録音の良し悪しは別として,どれを聴いてもその鬼気迫る熱演,狂演には身震いしちゃうんですけどね。正にパーカーの魂がイタリアの地に舞い降りたかのような,パーカー直系の吹き手です。米国のフィル・ウッズに対し,欧州のウルバーニ,といった感じですかね。ちょっと違うか。

で,この作品はジョヴァンニ・トマッソ(b)のリーダー・アルバムなんですが,これが出来がイイんですよ。カッコイイ。フロントはウルバーニ(as)とパオロ・フレズ(tp)で,ピアノがダニーロ・レア。ドラムが盟友ロベルト・ガット。メンツ的にも最高で,出てくる音が熱くglooveする名曲揃い。全曲,トマッソの作曲だと思いますが,イイ曲書くんですよ,この人。

トマッソのアルバムで Cam Jazz から出ている 『 Second Tempo 』というアルバムも愛聴盤です。こちらはジョー・ロバーノ,アントニオ・ファラオの名演が聴けます。

ついでに,ダニーロ・レアの カンツォーネを演奏しているvenus 盤 『 Romantica 』も最近手に入れ,愛聴してます。先日の横浜ジャズプロムナードで聴いたラリー・フランコ以来,ジャズ・カンツォーネにはまってます。

Enrio Pieranunzi featuring Art Farmer  『 ISIS 』

2006年11月07日 20時15分30秒 | JAZZ
西山瞳さんを聴いた後には,やっぱりエンリコ聴きたくなっちゃう,ということで,またまたエンリコの古い作品を引っ張り出してきました。9月23日に瞳さんの 『 CUBIUM 』 を取り上げた際にも Phil Woods & Space Jazz Trio を引き合いに出しましたが,今回は Enrio Pieranunzi featuring Art Farmer の 『 ISIS 』を聴いてみましょう。これは1980年のアルバムですね。個人的には初期というか1980年代のエンリコのベスト3に入る名盤だと思います。ちなみに残りの2枚は,『 Deep Down 』(soul note)と『 Space Jazz Trio Vol.1 』(yvp)です。

で,この作品は1970年代に映画音楽の仕事やイタリア訪問中の米国ミュージシャンのサイドメンとしてのキャリアを積みながら,めきめきとその実力をつけていき,世間的にも評価されるようになりつつあったエンリコが,大御所アート・ファーマーを迎えて制作したバップ・チューン満載の名盤です。

タイトル曲の《 ISIS 》 とは,ライナーによるとエジプトに伝わる《 月の神 》 だそうです。まあ,ジャズの曲名なんてそもそもいい加減ですから,全然意味わかりません。ディジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーの曲を演奏していて,まさにバッパー・エンリコが聴ける貴重な記録なのですね,これが。

「 ほーら,西山瞳なんて,全然エンリコに似てねーだろ~。」と,偉そうにジャズ仲間に語って聞かせる時などには,本作が最適です。

Massimo Urbani (マッシモ・ウルバニ)もちょっとだけ参加してますが,相変わらず素晴らし熱気溢れるソロをかまして,アルバムを締めてくれてます。