先日,マーク・ターナー,ジェフ・バラード,ラリー・グレナディアから成るユニット「 FLY 」を聴いたのですが,サックス・トリオという僕の苦手分野でありながら,かなりはまっています。マーク・ターナー+LTCのアルバムも手に入ったし,このところマーク・ターナー漬けの日々を送っているのですが,今日はやはりマーク・ターナーが参加しているアルド・ロマーノの2004年のアルバム『 JAZZPAR Quintet + 1 』(enja)なんぞを聴いております。文字通りジャズパー賞受賞記念コンサートのライブ盤です。ジャズパー賞とは毎年デンマークで開かれる式典で,ジャズ界のオスカー賞とかジャズ界のノーベル賞とか言われている世界的に権威のある賞です。運営はデンマーク・ジャズ・センターという団体で,各国のジャズ有識者,専門家からなる委員会が選定するようです。ジャズパー賞にはデンマーク以外のインターナショナルな活躍が認められて贈られる「 Jazzper Prize Winners 」と,デンマーク国内のミュージシャンに贈られる「 Danish Jazzpar Combo Leaders 」の2種類があります。もちろんアルド・ロマーノは「 Jazzper Prize Winners 」の方を受賞しています。詳しくは
JazzparのHPをご覧になると歴代の受賞者が掲載されています。ノミネート者は5人なんですが,アルド・ロマーノが受賞した2004年の他の4人は,パキート・デリベラ,マーク・ジョンソン,スティーブ・キューン,ボビー・ハッチャーソンと,錚々たるメンバーです。歴代の「 Jazzper Prize Winners 」を見てみると,2000年のクリス・ポッターや2002年のエンリコ・ラバは分かりますが,2001年のマリリン・マズールや2002年のアンドリュー・ヒルなんかはちょっと日本人には理解しがたいものがありますね。どんな基準で選定されるのでしょうかね。HPを見ますと,次のように書いてあります。
The JAZZPAR Prize is awarded to an internationally known and fully active jazz artist who is specially deserving of further acclaim.
(国際的にも知名度があり,精力的に活動している将来的にも賞賛に値するジャズ・ミュージシャンに贈られる賞)
だそうです。マリリン・マスールって,世界的に有名なんですかね。やっぱりこの世界も裏金が飛び交うんでしょうか。
話を戻しますが,本作はバティスタとターナーの2管フロントのクインテットです。ステファノ・ディ・バティスタはアルド・ロマーノの弟子ですから御呼びがかかったのは分かるのですが,マーク・ターナーは何故このバンドに参加しているのか不思議です。でもこの米伊2管連合はなかなか美しいです。ややバティスタ様に軍配が上がる演奏ですが,ターナーの一歩引いた奥ゆかしいスタンスが,ある意味で現代的ジャズ・ミュージシャンらしさではないかと感じます。切々とバティスタが歌うバラード<Song For Elis>, <Il Cammino>など,じ~んと心に沁みわたる名演です。かと思うと一転して<Gush>ではバティスタ様が切れまくり,激しくブローしたりして,<おー,バティスタもこんなに凛々しいところがあるのね>と思わず惚れ直したりして。
タイトルの「+1」というのは,4曲でスシー・ヒルデガートという女性ボーカルが入っているからなんですが,このボーカル,あまり趣味ではないので,ちょと残念。最後の<Estate>では彼女とロマーノがデュエットしたりして,受賞コンサートらしいサービスも用意されています。それにしてもロマーノの歌はちょっとフラットしていてはっきり言って下手です。
ジャズパーのライブCDは毎年発売されているのですが,今まではデンマークのドメスティック・レーベルであるStoryvilleから出ていたのですが,本作ではenjaからです。どうしたのでしょうね。
本作は,大したアルバムではありませんが,受賞コンサートらしい楽しい雰囲気が伝わる好盤ではないでしょうか。