雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

Martin Sjostedt 『 Mondeo 』

2006年02月28日 22時17分47秒 | JAZZ
昨日のフレドリク・クロンクヴィストに関連したCDを紹介させていただきます。クロンクヴィストのアルバムでもベースを弾いていたマーティン・シェーステッドの自己のバンドに,今度はクロンクヴィストが参加してます。マーティン・シェーステッド・バンドは2002年にヤナス・エストルム(p),ダニエル・フレドリクソン(ds),マグナス・リングレン(ts)らと結成され,現在までに『 Mondeo 』(2003 Sittel)と『 Slow Charles 』(2005 Sittel)の2枚のアルバムを制作しています。『 Mondeo 』には上記の4人のバンドにクロンクヴィストが3曲だけ,ゲスト出演しています。『 Slow Charles 』ではマグナス・リングレン(ts)が抜け,クロンクヴィストとカール・オランドソン(tp)の2管がフロントを務めています。余談になりますが,カール・オランドソンってペーター・ノーダールと競演したり,自己のアルバムではチェット・ベイカー風の演奏をしてましたが(顔もチェット・ベイカーに似ている),本当はバリバリのハード・バッパーなんですね。

僕はクロンクヴィストの『 maintain 』の荒々しい熱血バッパーに惚れて,もっと彼の演奏を聴きたいと思い,このマーティン・シェーステッド・バンドのアルバムを買ったのですが,ちょっと肩透かしでした。2枚ともハード・バップではあるのですが,大人しすぎなんですよね。楽曲自体は洗練されていてよく聴くとカッコイイのですが,クロンクヴィストのお叫びが皆無なんです。現代的ハード・バップとは得てしてそういうものであって,俺が俺がのアドリブ合戦を演じてた50年代のハード・バップとは決定的に違うのですね。微妙に伸縮する現代的4ビートに乗って,抑制を効かせたクールなソロを端的に演じる。そういったトータル・サウンド内の自己表現に重点を置いたアドリブがトレンドなんですね。

でも,疲れて帰宅し,寝る前のひとときの聴くには,これくらいのおしゃれで静かなハード・バップがちょうどいいかもよ。

最後に。彼のベーシストとしてのスタイルは,極めてオーソドックスです。彼の紹介記事を見ますと,目標としているベーシストはレイ・ブラウンだそうです。まさにレイ・ブラウンのような地味だけど,歌心のある綺麗なラインを刻むベーシストです。


Fredrik kronkvist 『 Maintain 』

2006年02月27日 22時14分47秒 | JAZZ
今日は,スウェーデンの先鋭アルティスト,フレドリク・クロンクヴィスト(Fredrik kronkvist)の『 Maintain 』を取り上げたいと思います。これは新譜ではなく昨年秋頃に店頭に並んでいた作品ですが,紹介しようと思いつつ今日までほったらかしになっていました。昨日,ブログ「Jazz&Drummer」のnaryさんと,フランチェスコ・カフィーゾの新譜の話になった際,ふとフレドリク・クロンクヴィストの事を思い出したので,今日は久しぶりに本作を聴きながら彼について書いています。

昨年のユーロ・ジャズ界ではアルトといえばカフィーゾばかりが注目され,すっかりクロンクヴィストなど忘れ去られていましたが,この人,かなり巧いアルティストです。スウェーデンという極寒の地にこんなに熱いアルティストがいたんですね。正直驚きました。まったく北欧らしさを感じない演奏なんですね。バックのリズムが現代的4ビートであるため,アルバム全体としては新しく感じるけど,彼のフレーズは意外に定石を守ったオーソドックスな手法を用いた演奏です。ただ凄く熱い。感情表現がストレートで昂揚してくると手がつけられないくらい激しく吹きまくる。北欧のケニー・ギャレットといった感じかな。あるいは昔のロザリオ・ジュリアーニを凶暴にした感じとも言える。

10曲中8曲が彼のオリジナルで,他の2曲はアレックス・ノースの<Lovetheme from Spartacus>とコルトレーンの<26-2>といった内容。<Lovetheme from Spartacus>はユーゼフ・ラティーフが演奏してクラブ・ジャズではネタらしいです。で,コルトレーンの<26-2>って,聴いたことがない。それにしても激しくコード・チェンジのある難解な楽曲です。そこでジャズ批評「コルトレーン全セッション」を引っ張り出してきて調べてみますと,1960年10月のセッションで演奏された曲だと分かりました。このセッションでの演奏はAtlanticの『 My Favorite Things 』と『 Coltrane’s Sound 』に収められていますが,この<26-2>だけはコルトレーンさえもその超難解なコード・チェンジ故にアドリブがぎこちなく,当時は発表されず,死後に『 The Coltrane Legacy 』の中に収められたようです。どおりで知らない訳だ。それにしてもそんな難解な没ネタを探してきて録音するなんて,相当のコルトレーン狂と推測します。確かにアルトを持ったコルトレーンといった趣も無きにしも非ず。

彼はA BOSSA ELTRICA(知らん)というバンドのメンバーのようですし,また,ヤン・ラングレンのプロデュースによるミリアム・エイダ(vo)のアルバムに参加していたり(共同名義),本作でもベースを弾いているMARTIN SJOSTEDT(読めない)のリーダー・アルバムにも参加しています。多少荒削りな暴れん坊4人組バンドではありますが,なかなか軽快でノリのよいアルバムです。これからの活躍にも大いに期待したい新人ですね。

Eric Legnini 『 Miss Soul 』

2006年02月26日 00時39分44秒 | JAZZ

エリック・レニーニの新譜がついに出ました。何年ぶりなんでしょう。僕が所有している最後のアルバムが1995年の『 Rhythm Sphere 』(Igloo)ですから,知るかぎり10年はリーダー・アルバムを出していないことになります。昨年にステファン・ベルモンドの『 Wonderland 』(B-flat)に参加していたのが最後かな。今,聴き始めたところですが,イイ感じです。傑作『 Natural Balance 』よりは少なくとも聴きやすい。


昔はキース直系のピアノを弾く凄腕と思っていましたが,今回のアルバムでは,そこから脱却しようとする姿勢は見られます。ラムゼイ・ルイス風のR&B, ゴスペル調の曲も見られように,非4ビート・ジャズの作風が多く,一方で,フィニアス・ニューボーン・Jrや,クリフォード・ブラウンの曲を原曲に忠実にハード・バピッシュに奏でたりしています。もちろんM-4< For All We Know >などでは,従来のリリカル路線も披露したりと,彼の多彩な才能が表出したバラエティーに富んだアルバムです。もしかすると,セールスを意識して制作されたのかもしれません。いずれにしても非常に娯楽性豊かで,かつ卓抜した作品です。


Eric Legnini 『 Natural Balance 』 (1991 Jazz Club)
本作は1989年の初リーダー・アルバム『 Essential 』に続く第2作目。レニーニの作品中,最も評価が高いのかな。キース直系の非常に洗練された欧州リリシズムの名盤です。最近はあまりお店でも見かけなくなったアルバムですが,ジャケを替えて再発になっているかも。


Eric Legnini 『 Antraigues 』 (1993 Quetzal )
P.J.L.(Polysar Jazz Library) のEuro Jazz Piano Collection,Vol.1 として再発されました。僕のブログでも以前にちょっと紹介しています。レニーニはNYでリッチ・バイラークに師事したそうですが,出てくる旋律はむしろキース・ジャレット風,というかかなり酷似している部分があります。本作でも<All of You>,<Meaning of the Blues>,<I Hear Phapsody>など,キースのレパートリーを演奏しています。

 
Eric Legnini 『 Rhythm Sphere 』(1995 Igloo)
ベルギー出身のレニーニが,ジョー・ロバーノとともに母国のジャズ・レーベル,Iglooに記録した快作。ハンコックの<The Sorcerer>,ケニー・ホイーラーの<For Jan>,ジョーヘンの<Inner Urge>などの,60年代新主流派の楽曲に焦点をあてて制作された,レニーニの最もリリカルなプレーが聴ける美しいアルバムです。


Stephane Belmondo 『 Wonderland 』 (2004 B-Flat)
フランスではかなり有名らしいステファン・ベルモンド(tp)のスティービー・ワンダー集です。レニーニ狙いで買ったのですが,なかなかしっとりしていて質朴な彼の人柄が伝わる好盤です。S・ワンダー集といっても,浮ついたフュージョン物ではなく,バラード系の曲を取り上げ,上手く4ビート化に成功しています。渋いS・ワンダー・カヴァー集に仕上がっています。今日のような雨の日にはぴったりです。


Fabrizio Bosso encontra Arrighini 『 Angela 』

2006年02月25日 22時56分07秒 | JAZZ
ちょうど1ヶ月ほど前にファブリツィオ・ボッソのワン・ホーン・カルテット『 Mare mosso 』を紹介したばかりなのに,もう新譜が発売になりました。今回,ボッソ参加のアルバムは3枚で,全てPhilology からになります。内訳はジャンニ・バッソとの競演盤が2枚と,リカルド・アリギーニ(p)との競演盤1枚です。ジャンニ・バッソとの競演盤は2003年録音盤が昨年2枚出たばかりですが,今回はチェット・ベイカー&ジェリー・マリガンに捧げた企画物です。ピアノがアンドレア・ポッツァに交代しているのでぜひ押さえておきたいブツですが,懐具合と相談し,今日のところはリカルド・アリギーニ(p)との競演盤だけを買ってきました。リガルト・アリギーニはフランチェスコ・カフィーゾ・カルテットのピアニストですね。昨年,プロムナード銀座2005にカフィーゾが出演した時もアリギーニがピアノを弾いてました。そろそろ店頭に並ぶであろうカフィーゾの新譜『 A Tribute To Charlie Parker 』でもアリギーニが参加しています。本作『 Angela 』はアントニオ・カルロス・ジョビン企画第3弾ということで,全曲ジョビンの楽曲を取り上げています。ボッソは2003年にイリオ・デ・パウラ(g)とボサノバ・アルバムを制作していますが,あんな感じのほのぼのボッサを想像していましたが,基本的にイタリアン・ハード・バップ路線で,ブルースあり,バラードありの楽しいアルバムです。ボッソの吹きっぷりは前作『 mare mosso 』よりも溌剌としていて爽快感抜群です。アリギーニのピアノもシングル・トーン主体のフレーズで非常に明快で分かりやすく,ベースのマッシモ・モリコーニも高音域での独特のウォーキングが刺激的です。録音も良く,特にピアノの音は綺麗に記録されています。やっとボッソの本命・ワン・ホーン・カルテットの登場といった感じでしょうか。すっきり爽快の5つ星です。

Fabrizio Bosso encontra Riccardo Arrighini Trio 『 Angela 』philology W603.2
Fabrizio Bosso (tp)
Riccardo Arrighini (p)
Massimo Moriconi (b)
Massimo Manzi (ds)

Akiko 『 mood indigo 』

2006年02月24日 21時29分36秒 | JAZZ
先ほど,LTCのお話をしたので,ついでにちょっと関連した話題を。

akiko の 『 mood indigo 』の中で,タイトル曲の<mood indigo>1曲だけですが,LTC+ファブリツィオ・ボッソ+ダニエル・スカナピエコという最強布陣で録音されているんですよ。しかもアレンジはニコラ・コンテ。プロデューサーは須永辰緒。知ってました? 

それにしても,1曲の録音のために,こんな凄いやつらを集めちゃうなんて,勿体無すぎ。流石,金持ちVerve。

結構,このアルバム好きです。

LTC+Mark Turner 『 Hikmet 』

2006年02月24日 20時15分38秒 | JAZZ
1月30日のマイ・ブログで,マーク・ターナーの『 In This World 』を紹介した際,ブログ「週末ジャズのページ」のVENTO AZULさんからOAM+マーク・ターナーや,LTC+マーク・ターナー盤があることを教えていただき,早速LTC+マーク・ターナー盤を購入しました。ただしOAM+マーク・ターナー盤は探せませんでしたが。

LTCとは,Pietro Lusso (p), Lorenzo Tucci (ds), Pietro Ciancaglini (b) から成るユニットで各人のイニシャルからとったユニット名です。ピエトロ・ルッソとロレンツォ・トゥッチは以前はロザリオ・ジュリアーニのレギュラーでしたね。ロレンツォ・トゥッチは今,イタリアで一番人気のドラマーに成長し,ファブリツィオ・ボッソやhigh Fiveのドラマーとして活躍中です。そんなイタリアのヤング・ライオンがなんと米国のしかもブルックリン系,スモールズ系の先鋭,マーク・ターナーとコラボレーションするというのも,なんとも不思議です。ジャズ界もグローバル化が進んでいるんですね。ちょっと想像しがたい組み合わせかと思いましたが,これがなかなかイイです。なにしろマーク・ターナーが素直にハード・バップしているんですね。ワーナーからの自己のリーダー・アルバムでは,なんとなく元気のない,相変らずの変態ウネウネ・クロマチック・フレーズでしたが,やはりゲスト出演という立場もあるのか,用意されたLTCのメロッディク・ハード・バップ的なオリジナル曲に素直に反応して,豪快にブローしています。ルッソとシアンカグリーニのオリジナル曲が半分を占めているのですが,これらがとってもメロディアスでリズミックな名曲揃いで,ターナーも歌いやすかったのでしょう。その他の曲では,ビル・エバンス+ジェレミー・スタイグの演奏で有名な哀愁バラード<スパルタクスの愛のテーマ>でもターナーには珍しく,美旋律を丁寧に編みこんでいくような手法で聴き手を魅了します。M-4<Pigolio di stelle>はサルバトーレ・ボナフェデの曲ですが,ここでもデクスター・ゴードンばりの雄雄しいトーンでオールラウンダーぶりを発揮しています。これはマーク・ターナーの名演間違いなし。気に入りました。ターナーを聴くならこの一枚からはじめるのが正しい聴き方。そう自信をもって明言できる傑作ではないでようか。こうなると,より激しいプレイが期待できるOAMとの競演盤が欲しくなってきます。あ~,欲しい。

ちなみにこのアルバムはイタリアのレーベル,VIA VENETO JAZZからのリリースですが,最近ではHigh Fiveの『 Jazz for More 』,『 Jazz Desire 』や,ダニエル・スカナピエコの『 Never More 』などの素晴らしい作品を出しているレーベルです。HPを覗いてみましたが,レーベル設立が1993年のわりには,発表したアルバムが60作品程度ですので,寡作なレーベルといってよいでしょう。でもカタログを見ると内容はかなり充実しています。1994年のアレサンドロ・ガラティーの『 Traction Avant 』(VVJ007)などは永久不滅の名盤ではないでしょうか。

LTC+Mark Turner 『 Hikmet 』2005 VVJ055
Pietro Lusso (p)
Lorenzo Tucci (ds)
Pietro Ciancaglini (b)
Mark Turner (ts)

Aldo Romano 『 JAZZPAR Quintet + 1 』

2006年02月23日 19時51分39秒 | JAZZ
先日,マーク・ターナー,ジェフ・バラード,ラリー・グレナディアから成るユニット「 FLY 」を聴いたのですが,サックス・トリオという僕の苦手分野でありながら,かなりはまっています。マーク・ターナー+LTCのアルバムも手に入ったし,このところマーク・ターナー漬けの日々を送っているのですが,今日はやはりマーク・ターナーが参加しているアルド・ロマーノの2004年のアルバム『 JAZZPAR Quintet + 1 』(enja)なんぞを聴いております。文字通りジャズパー賞受賞記念コンサートのライブ盤です。ジャズパー賞とは毎年デンマークで開かれる式典で,ジャズ界のオスカー賞とかジャズ界のノーベル賞とか言われている世界的に権威のある賞です。運営はデンマーク・ジャズ・センターという団体で,各国のジャズ有識者,専門家からなる委員会が選定するようです。ジャズパー賞にはデンマーク以外のインターナショナルな活躍が認められて贈られる「 Jazzper Prize Winners 」と,デンマーク国内のミュージシャンに贈られる「 Danish Jazzpar Combo Leaders 」の2種類があります。もちろんアルド・ロマーノは「 Jazzper Prize Winners 」の方を受賞しています。詳しくはJazzparのHPをご覧になると歴代の受賞者が掲載されています。ノミネート者は5人なんですが,アルド・ロマーノが受賞した2004年の他の4人は,パキート・デリベラ,マーク・ジョンソン,スティーブ・キューン,ボビー・ハッチャーソンと,錚々たるメンバーです。歴代の「 Jazzper Prize Winners 」を見てみると,2000年のクリス・ポッターや2002年のエンリコ・ラバは分かりますが,2001年のマリリン・マズールや2002年のアンドリュー・ヒルなんかはちょっと日本人には理解しがたいものがありますね。どんな基準で選定されるのでしょうかね。HPを見ますと,次のように書いてあります。

The JAZZPAR Prize is awarded to an internationally known and fully active jazz artist who is specially deserving of further acclaim.
(国際的にも知名度があり,精力的に活動している将来的にも賞賛に値するジャズ・ミュージシャンに贈られる賞)

だそうです。マリリン・マスールって,世界的に有名なんですかね。やっぱりこの世界も裏金が飛び交うんでしょうか。


話を戻しますが,本作はバティスタとターナーの2管フロントのクインテットです。ステファノ・ディ・バティスタはアルド・ロマーノの弟子ですから御呼びがかかったのは分かるのですが,マーク・ターナーは何故このバンドに参加しているのか不思議です。でもこの米伊2管連合はなかなか美しいです。ややバティスタ様に軍配が上がる演奏ですが,ターナーの一歩引いた奥ゆかしいスタンスが,ある意味で現代的ジャズ・ミュージシャンらしさではないかと感じます。切々とバティスタが歌うバラード<Song For Elis>, <Il Cammino>など,じ~んと心に沁みわたる名演です。かと思うと一転して<Gush>ではバティスタ様が切れまくり,激しくブローしたりして,<おー,バティスタもこんなに凛々しいところがあるのね>と思わず惚れ直したりして。

タイトルの「+1」というのは,4曲でスシー・ヒルデガートという女性ボーカルが入っているからなんですが,このボーカル,あまり趣味ではないので,ちょと残念。最後の<Estate>では彼女とロマーノがデュエットしたりして,受賞コンサートらしいサービスも用意されています。それにしてもロマーノの歌はちょっとフラットしていてはっきり言って下手です。

ジャズパーのライブCDは毎年発売されているのですが,今まではデンマークのドメスティック・レーベルであるStoryvilleから出ていたのですが,本作ではenjaからです。どうしたのでしょうね。

本作は,大したアルバムではありませんが,受賞コンサートらしい楽しい雰囲気が伝わる好盤ではないでしょうか。

Jean-Philippe Viret 『 L’INDICIBLE 』

2006年02月21日 11時25分33秒 | JAZZ
Swing Journal 誌って,毎月買ってはみるのですがあまり読み物がないと思いませんか。今月号もオーネット・コールマンの特集だったのですが,正直今更「オーネットは何を変えたのか」など,全く興味の対象外です。そんなほとんどがつまらないSwing Journal 誌の中で僕が興味深く読んでいるのは村井康司氏の「解明!ジャズ素朴な疑問」,寺島靖国氏の「日常生活する」,そして「IMPORT DISCS 輸入盤情報」というレビューです。「IMPORT DISCS 輸入盤情報」は毎月,大村幸則氏と杉田宏樹氏が2ページづつ担当して輸入盤を紹介しているのですが,その最後のページに「輸入盤ワールド」というコラムがあります。これはDUの山本隆氏が毎月3枚づつ推薦盤を紹介しているコラムなのですが,以前にも書きましたが,山本氏の感性に共感する部分が多いので,僕はここに紹介されるCDはほとんど買って聴くようにしています。

今月はその中でジャン・フィリップ・ヴェレの澤野工房からの新譜『 L’INDICIBLE 』が推挙されていましたので買ってみました。今までジャン・フィリップ・ヴェレは聴いたことがなかったので,同じフランス人のジョバンニ・ミラバッシのようなジャズを勝手に想像していました。しかし,最初に聴こえてきた音は,ベースのアルコで奏でるソロでした。ちょうどクラシックのコントラバス教則本の練習用リフみたいな曲でした。続く2曲目もフリー・フォームの形態から徐々にテーマらしき導入部に入り,なにやら難解な現代音楽の世界に引きずり込まれそうな嫌な予感。これはハズレだったかと1回目のヒアリングで感じました。いやいや山本氏が推挙するのだから駄作であるはずがないと,昨日,お昼休みに1回。そして帰宅後に今度は出来る限り大音量でスピーカーに対峙して聴きなおしてみました。するとどうでしょう。難解そうに思えた彼らの音楽が徐々に僕の音楽中枢を刺激しはじめたのです。おそらく数年間だったら僕のジャズに対する感性は,この手のジャズを拒絶していたと思うのです。でも今は心地よく僕の音楽中枢を刺激してくれるのです。そうまさにそれは刺激です。欧州叙情派の優しいピアノ・ジャズに完全に麻痺させられた僕の中枢は,ジャン・フィリップ・ヴェレによって程よく刺激され,再び覚醒したのです。欧州のジャズのレベルの高さにあらためて感服しました。ジャズは確実にネックスト・ステージに向かっているのですね。

この人,既に沢山,澤野工房(Sketchを含む)からアルバム出しているのですね。また,Kingの低音シリーズからもコントラバス奏者だけから成るユニットでアルバム出してるんですね。今まで知りませんでした。久しぶりに新鮮なジャズに触れて嬉しくなりました。

Zsolt Kaltenecker 『 Shantansz 』

2006年02月19日 21時03分41秒 | JAZZ
ハンガリーの超絶技巧のピアニスト,ソルト・カルトネッカーの新作『 Shantansz 』が,ガッツ・プロダクションから発売されました。シンセ,エレベによるプログレッシブ・ジャズ・ロックとのキャプションだったので,買うか買うまいか迷ったのですが,買っちゃいました。前作『 Alhimia 』も同様のシンセ・トリオ(ただしドラムはメンバー・チェンジしてますが)だったのですが,僕は所有してまいせん。だから今回がエレクトリック・トリオ初体験なわけですが,なんとも評価し難い作品になってしまったようです。これだけは異論がないと思うのですが,とにかく上手い,上手過ぎ。1曲目から打ち込みかと思ったら大間違い。この左手のループは,シーケンサー使っていないんですって。ライナーで難波弘之さんが書いてます。この比類なき正確なリフ。あまりにも正確過ぎて逆にチープに聴こえてしまいます。「プログレッシブ」と言っても,YESやKING CRIMSONのような音を期待するとがっかりします。あまりプログレぽさはないですが,強いて言えばELPのキース・エマーソン似ですかね。曲によってはアラン・ホールスワーズの『 Road Game 』(ジェフ・バーリン,チャド・ワッカーマンとのトリオ)あたりに似ていたり(M-3),ハンコックの『 Head Hunters 』ライクであったりもします。何しろ打ち込みなし,オーバー・ダブなしのシンセ・トリオなので,若干音は薄めですが,その分高度な演奏技術で補い余りある内容の濃さであります。ベースのペーター・バペッシュもドラムのゲルゲ・ボルライもカルちゃんに負けず劣らずの技巧派です。ゲルゲ・ホルライはコブハム似かな。凄い速いタム回しに圧倒されます。でも全体に目新しさはありません。音もちょっと平面的で安っぽいかな。まあ,こう言った内容なので好き嫌いははっきりしますよね。プログレ大好き,アランちゃん大好きな僕としては満足の内容でした。

Peter Asplund 『Lochiel's Warning 』

2006年02月19日 00時01分49秒 | JAZZ
これで今日は最後かな。もうすぐ12時だしね。最後はスウェーデンのトランペッター,ピーター・アスプランドの『Lochiel's Warning 』。この人,ホント巧いですよね。ケニー・ホイーラーのように透明度の高いクリア・ヴォイズで歌い上げたかと思うと,一転,アメリカ的なハード・バップを分厚い音で奏でたりして,とっても器用な人。なんとなくボッソに似ていなくもない。

このアルバム,1曲目から<In a Sentimental mood>。あ~ん,バラード・アルバムか,と思いきや,2曲目にオリジナルで完全にノック・アウト。凄い。巧い。カールゾンのソロもぶち切れ寸前で寸止め。顔もやばいが演奏もやばい。そして3曲目にまたもや<Falling in love with love>で,カーム・ダウン。かなりの確信犯でございます。巧く乗せられ最後まで聴き惚れてしまう。非常に良く出来たアルバムです。

Peter Asplund 『Lochiel's Warning 』2003 PROPHONE PCD071
Peter Asplund (tp)
Jacob Karlzon (p)
Johan Lofcrantz (ds)
Hans Andersson (b)

John Sneider 『 Panorama 』

2006年02月18日 22時52分55秒 | JAZZ
なんか今日は管が聴きたくなってきました。ブライアン・リンチの後に引っ張り出してきたのは,ジョン・スナイダーの『 Panorama 』です。本作は2000年の彼の1stなのですが,それ以後,新作はリリースされていないと思います。たまたま数日前に御茶ノ水DUに寄ったら,ラリー・ゴールディングスの新作が面おきされていて,手にとってみたらなんとジョン・スナイダーが参加していました。迷った末,買わなかったんですけどね。本作にもラリー・ゴールディングスが参加してますし,結構仲良いみたいです。

本作には,クリス・ポッターが花を添えるように参加していて,また,ジョン・ハート(g)も4曲で参加しています。スナイダーの音色は派手なハイノートなど使わず,低音から高音までバランス良く音が出て,厚みと温かみのある音色です。なかなか巧いですよ。

僕も彼のことはよく知らないのですが,1969年生まれの36歳で,ギタリストのボブ・スナイダーの弟です。今までにマックス・ローチ,ミンガス・バンド,カーティス・フラー,クラーク・テリー,ブラッド・メルドー,ラリー・ゴールディングスらと競演しているようです。1998年にはカーマイン・クルーソ国際ジャズ・トランペット・コンペティションで優勝。セロニアス・モンク・コンペティションのジャズ・トランペット部門で決勝の5人までいったようです。

久しぶりに聴きましたが,ジョン・ハートのギターが濁りのないピュアな音色で,フレーズの良く歌い,なかなかイイです。

John Sneider 『 Panorama 』2000 Double-Time Records DTRCD-167
John Sneider(tp)
Chris Potter (ts, bcl)
Larry Goldings (B3)
David Berkman (p)
John Hart (g)
Bob Sneider (g)
David Gibson (tb)
Dwayne Bruno (b)
Andy Watson (ds)

Brian Lynch 『 24/7 』

2006年02月18日 21時09分37秒 | JAZZ
ミゲル・ゼノンの続きですが,彼は今だマイナー・ミュージシャンですが,結構知らないうちに耳にしているんですよね。チャーリー・ヘイデンのLMOにも参加していたし,ジョシュア・レッドマンのSF JAZZ collective にも参加していました(これカッコイイですよ)。先ほどのダヴィッド・サンチェスのアルバムにも参加したりと。

で,僕が好きな彼の参加作品と言えば,ブライアン・リンチの『 24/7 』です。メインはブライアン・リンチなので,それほどゼノンは目立っていませんが,ひとたびソロを振られると,めちゃくちゃ熱いブローでリンチを煽ります。自分のリーダー・アルバムはやや考えすぎ,気負いすぎみたいなとこがありますが,本作ではゲストですから思いっきり吹いてます。

何も考えずにひたすら聴く。すっきり爽快な,文字通り快作です。

Miguel Zenon 『 Looking Forward 』

2006年02月18日 20時36分04秒 | JAZZ
ウェッセル・アンダーソンに続いて,もう一枚同じアルティストのアルバムを聴いてみたくなりました。そうですね~,ミゲル・ゼノンのFSNTからの1st album 『 Looking Forward 』なんていいですね。昨年にmarsalis records から『 Jibaro 』をリリースしていますが,あれ,難解ではないけれど,ちょっと複雑な構成の曲が多かったような印象があり,今ひとつ手が伸びないんですよね。このFSNTの方がわかりやすいかな。それに本作はダヴィッド・サンチェス(its)も参加してるし,ベン・モンダー(g)や,ほぼレギュラー・メンバー化しているアントニオ・サンチェス(ds)もいるし,知らないトランペッター,ディエゴ・ウルコラ?なんてのも入っていて,なかなか色彩豊かな楽しいジャズが聴けます。この人,コンポーザーとしても相当才能のある方で,変拍子,ポリリズムを駆使意した複雑な楽曲を作ります。

本作にはダヴィッド・サンチェスが参加していていますが,サンチェスのアルバムにもゼノンが参加したりしていますよね。SMEからの『 Melaza 』なんか良かったな~。この2管フロントのハーモニーは凄くかっこいい。また,パット・メセニー・グループのドラマーとして有名なアントニオ・サンチェスも緻密でしなやかなスティックさばきで曲に陰影と立体感を演出しています。シンバルの音の多彩さも素晴らしいです。

Wessell Anderson 『 warmdaddy in the garden of ~ 』

2006年02月18日 19時40分20秒 | JAZZ
今日は土曜日。子供も寝たし,ゆっくりジャズが聴ける時間が持てそうです。という事で,この時間から何枚聴けるかわかりませんが,聴いたアルバムについてそれぞれショート・コメントを書いてみたいと思います。さて,何を聴こうかな~。

そうそう,先ほどSwing Journal の3月号を見ていたら,2005年度ジャズ・ディスク大賞[ 金賞 ]にウイントン・マルサリスの『 live at the house of tribes 』が選ばれていました。あのアルバムも素晴らしかったけど,マルサリスと一緒に熱いブローをかましてくれたウェッセル・アンダーソンのリーダー・アルバムでも久しぶりに聴くとしましょう。

ウェッセル・アンダーソンを語るとき,必ず「マルサリスに認められて云々~」,みたいな賛辞が付いてまわるのですが,そろそろ正当にアンダーソンも評価されてもいい時期だと思いますが。今ひとつ日本では知名度が低い。あんなにマルサリスのアルバムに参加しているのにね。彼はマルサリスとの活動と平行して,自身のリーダー・アルバムを3枚制作しています。今聴いているのは1994年の1st で,ピアノに大好きなエリック・リードが参加しています。アンダーソンはアルティストですが,時々ソプラノも吹いたりします。このソプラノが凄く巧い。コルトレーンのソプラノに通じる16分音符の速いパッセージをいとも簡単に吹ききる技術を持っているんですね。“ sheets of sounds ”とか“ barrages of notes ”とか呼ばれる音列の嵐。

タイトルには『 swing 』とありますが,スウィングは演奏していません。親分が抜けている分,全員リラックスして,ブルース・フィーリング豊かな余裕の演奏でたいへん心地よいジャズです。

Wessell Anderson 『 warmdaddy in the garden of swing 』1994 atlantic JAZZ
Wessell Anderson (ts,ss)
Eric reed (p)
Ben Wolfe (b)
Donald Edwards (ds)

Charles Loos 『 French Kiss 』

2006年02月17日 22時02分21秒 | JAZZ
昨年の12月17日のマイ・ブログでチャールズ・ルースの『 En Public Au Travers 』と『 Lust for Jazz 』を取り上げました。その際,当時はまだ持っていなかった今日紹介する『 French Kiss 』を“全曲,フレンチ・ポップスのカヴァーで,ちょっと引いてしまいます。なんかはずれの匂いがします。”などと書いてしまったのですが,その後に購入し聴いてみると,なんと非常に美麗な旋律いっぱいの秀作であったのです。曲は確かにフレンチ・ポップスのようですが,あまりフランスのベタな感じがせず,洗練されていて,言われなければルースのオリジナル集と聴き間違える程,ジャズへの転化に成功しているアルバムに仕上がっています。このアルバム,「 MOONKS JAZZ MUST 150 」の中で大川内善宏さんが推薦しているのですが,結構この人の推薦盤は僕の琴線に触れるものが多く,そのこともあり本作を買ってみたのですが,まさにドンピシャといった感じでした。人によっては「甘すぎ」と評されかねないアルバムですが,ここまで美旋律が次から次へと沸いて出てくるとは,ルースは生まれながらのメロディストなんでしょうね。

余談になりますが,今日,菊池成孔著「東京大学のアルバート・アイラー」を読んでいたのですが,頻繁にコーダル/モーダルの話が出てくるわけですね。モードはマイルスの『Kind of Blue 』により世に知られるようになったとか,モードは機能和声によるアドリブのオルタナティブあるいはアンチテーゼとして考えられたとかいう話なのですが,どうなんでしょうか。現在,モード・アプローチを前面に出して活躍しているミュージシャンって,だいぶ少なくなったと思いませんか。先日紹介したアントニオ・ファラオだって,最近のアルバムでは「脱モード路線」のようですし。上記のルースなんか,モードによるアドリブなど当たり前ですが皆無です。特に欧州のキース系,エバンス系,あるいはピーターソン系の若手ミュージシャンは,全くといって良いほど,モード的なアプローチを行っていませんよね。そもそも,ビル・エバンスって人は,モードをマイルスやギル・エバンスらと考え出しましたが,自分ではそのモードを発展させなかった人ですしね。僕もそうですが,今のジャズ・ファンは(特にピアノ・トリオにおいて)美旋律至上主義みたいなところがあって,下手にやるとメカニカルなスケール練習のようなフレーズになりかねないモード旋律に嫌悪感を抱いている人も多いのではないでしょうか。ルースの『 French Kiss 』を聴きながら「東京大学のアルバート・アイラー」を読んでいたら,こんなことを考がえてしまいました。