雨の日にはJAZZを聴きながら

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2006年極私的愛聴盤 テナーサックス篇

2006年12月31日 22時45分49秒 | JAZZ
1) One for All (tenor: Eric Alexander )『 The Lineup 』 sharp nine
高品質安定型の正統派ハード・バップを提供し続ける One for All ですが,彼らのデビュー当時からのファンである僕も,最近はやや食傷気味。でも,つい聴いちゃう。しかし,好きな曲だけ。ジム・ロトンディー作の《 Dountown Sounds 》と《 Express Train 》が好き。昔からOne for All のイイ曲は彼の作曲が多いような気がします。

2) Jimmy Greene 『 True Life Stories 』 criss cross (2006月5月26日UP
僕の描く2管ハード・バップの理想形に限りなく近いジャズです。これは心底,ほれ込んでいるジミー・グリーンのcriss crossの最新です。ザヴィア・デイヴィス(p),ルーベン・ロジャース(b),エリック・ハーランド(ds)と,これ以上のメンバーは望めません。

3) Bob Reynolds 『 Can't Wait For Perfect 』 FSNT (2006年8月7日UP)
アーロン・ゴールドバーグ参加に惹かれて購入した新人サックス吹き手。これが予想外に僕の好みでした。ジョシュア系というか,ふにゃふにゃ,うねうねの掴み所のないフレーズを綴っていくスタイルですが,マーク・ターナーやジョシュア好きな人にはお薦めです。エリック・アレクサンダーやグラント・スチュアートなどの腰のすわった正統派好きにはお薦めできません。

4)Eli Degibri 『 Emotionally 』 FSNT (2006年9月18日UP
本作よりも2003年のデビュー盤 『 In The beginning 』の方が実は好きです。でも本作もなかなかですよ。あまり大きな声で賞賛してもみんなの賛同が得られなそうなので言いませんが,とっても,好きです。この感じ。

5)SF JAZZ (tenor: Joshua Redman ) 『 SFJZZ Collective 2 』 nonesuch (2006年3月28日UP
今年はジョシュアも新譜がなかったので,このSFJAZZでの演奏がジョシュアの今年のベスト・パフォーマンンスかな。最近発売になったサム・ヤエルの『 Truth an d Beauty 』でも吹いていたけど,やっぱりメインはヤエルのオルガンなので,ジョシュアは何となく控えめな感じでした。ソロ・パートも少なめだったし。でも,アルバムとしては凄くかっこよかったけどね。

2006年極私的愛聴盤 ピアノ篇(2)

2006年12月31日 20時39分24秒 | JAZZ
左上から右下へ

11) Alfio Origlio 『 Ascendances 』 cristal records
VENTO AZUL Records さんから頂いたフランス人ピアニスト。これが大当たりで,流石VENTO AZULさんが“お薦め度100%の作品”と推すだけのことはあります。ドラムというかパーカッションの浮遊感がたまりません。オリリオの美しい和声も新鮮。現在は Paris Jazz Big Band のメンバーとしても活躍中です。愛聴度★★★★★。

12)Eric Legnini 『 Miss Soul 』 label bleu (2006年2月26日UP
ラムゼイ・ルイス風のR&Bあり,フィニアス・ニューボンのカヴァーありの非4ビート系の楽しいアルバムです。彼の新境地とも言える意欲作と言えるでしょう。

13) Helge Lien 『 To The Little Radio 』 DIW (2006年5月28日UP
アヴァンギャルドで,奇天烈な音列が並ぶ難解なイメージのリエンが,今回はハイ・レベルのインタープレイは維持しながらも,かなり聴きやすい作風へとイメージ・チェンジしてきました。やや暗鬱なトーンで,いつも聴きたいとはいきませんが,時々,ムショウに聴きたくなる麻薬的美盤です。

14) Jm Trio ( piano: Joachim Mencel ) 『 Interludium 』 allegro
ポーランド・ジャズには全く無知な私ですが,思わずジャケ買いしたヨアヒム・メンセルというポーランド人ピアニストのトリオが当たり盤でした。非4ビート系のスピード感のあるオリジナルが魅力的です。しかもよく指が動きます。ソルト・カルトネッカーをはじめ東欧ジャズって意外に超絶技巧のピアニストって多いんですね。

15) David Udolf 『 Playing 』 bluehouse records
ジャズ批評No.133 で,VENTO AZUL Records の早川さんが推薦していた盤で,僕も早速注文させていただきGET。難解な曲は演奏しない。奇を衒うアドリブはしない。ジャズを最もジャズらしく演奏できる上品なスウィング系のピアニストです。ほっと一息入れたい時に手が伸びる愛聴盤になりました。

16) Larry Franco 『 Inport-Export 』 philology
今年に横濱ジャズプロムナードで聴いて,一目惚れしたラリー・フランコ。同イベント中,最も興奮したバンドでした。ライブ会場で即購入しサイン&握手もしてもらいました。彼は歌うピアニストで,どちらかと言うと歌手としてのフランコに魅力を感じます。会場は超満員で僕も立ち見状態でした。イタリアンジャズを好きな大人たちが会場を埋め尽くし,盛り上がり,最高のライブでした。アルバムでは目立ちませんが,ドラムのエンゾ・ランツォが凄かったな~。

17) Kasper Villaume 『 Hands 』stunt records (2006年2月4日UP
アルバムを出すたびにスケール・アップしていきたヴィヨームですが,本作ではクリス・ポッターを迎えて最高にスリリングでドライブ感のある傑作をぶつけできました。これはもう最高です。クリス・ポッターの貢献度も高く,ぶち切れ寸前のフラジオ出しまくりの熱演です。以前はいまいちの吹き手だと思っていましたが,最近のポッターの活動には目を見張るものがあります。今年はデイブ・ホランドの『 Critical Mass 』でも好演が聴かれました。

18) Christian Jacob 『 Contradiction 』wilderjazz (2006年8月12日UP
ジェイコブにはずれなし。今回はミッシェル・ペエトルチアーニ集です。哀愁のペト・ワールドを忠実に再現した傑作です。その分,本来のジェイコブの持つ強靭なドライブ感は希薄ですが。これも頻繁にお世話になった超愛聴盤でした。

19) Matej Benko 『 Universality 』 ARTA
クジラのジャケットで有名なVit Svec Trio (ヴィト・スヴェック・トリオ)の『 Keporkak 』でピアノを弾いていたのがこのマチェイ・ベンコ。チェコのピアノ弾きです。“東欧”“ほとんど無名”“マイナー調の哀愁オリジナル”。これぞピアノ・トリオ・マニアが泣いて喜ぶ条件を満たした隠れ名盤ではないでしょうか。それにしても,ヨアヒム・メンセルもそうですが,東欧のピアニストって普通の4ビートって演奏しないんですね。

20)Ketil Bjornstad 『 Floating 』 universal (2005年12月4日UP
これ,今年の作品かと思っていましたが,拙ブログで取り上げたのは昨年だったのですね。とにかく,よく聴きました。というのも,手術中にBGMとしてずっと使っていたからです。スタッフの評判は上々でしたよ。環境音楽的な作品ですからね。あまり真剣に聴いても仕方ありません。ある意味,愛聴盤なのでとりあげました。

2006年極私的愛聴盤 ピアノ篇(1)

2006年12月31日 18時25分16秒 | JAZZ
今年も残すところ後6時間あまりなのに,慌てて今年の愛聴盤を棚から引っ張り出して並べてみました。

某ジャズ誌で高評価を得られるようなありきたりのベスト10ではなくて,ことし1年,実際に我が家のCDトレイに頻繁に乗った嘘偽りのない愛聴盤を,世間的評価を度外視して選盤してみました。厳密には今年に発売されたものではない作品も含まれますが,全て今年に購入したものです。まずはピアノ篇です。

左上から右下へ

1)Enrico Pieranunzi 『 Ballads 』 cam jazz
エンリコの数多くの作品中,最も柔らかく優しい彼の内面が表出した秀作です。録音も優れていて特にマーク・ジョンソンのベースが素晴らしい。高価な装置で聴いてみたい録音です。エンリコの入門盤としても最適かも。

2)Theo Saunders 『 Three For All 』 blue chip jazz
はじめに彼らの2枚組みライブ盤『 Live ! 』を聴いて惚れこみ,VENTO AZUL Records さんから本作も購入。切れのいいスウィング感,オリジナル曲の出来の良さなど,ピアノ・トリオ・ファンを唸らせるに十分な才能を持ったピアニストです。

3) Sai Ghose 『 Fingers and toes 』 summit records
DUの山本氏がジャズ批評No.133で紹介していた『 India Looking West 』共々,とっても楽しいB級名盤。この子供の足ジャケを真似して,我が家の息子の足を撮影した写真を以前アップしたのですが,よろしければこちらをどうぞ。

4)Paolo Di Sabatino 『 Paolo Di Sabatino 』 around jazz
サヴァティーノのアルバムではジョン・パティツーチ参加のトリオ盤『 Threeo 』も良かったけど,本作にはバティスタが参加しているのでつい手が伸びちゃう。ラテン・タッチの灼熱のハード・バップが気持ちいい。今年の夏は聴きまくった。2001年の録音なので新譜ではないです。

5) Jim Watson 『 The Loop 』 reese records
タイトル曲の《 The loop 》はもちろんチック・コリアのオリジナル。僕はこの曲がチックの曲の中では一番好きなのですが,この曲をカヴァーしているアルバムを見たことがありませんでした。チックの演奏が完璧なので,だれもカヴァーする勇気がないのでしょう。と,思っていたら,ジム・ワトソンというピアニストが大胆にもカヴァーしているではありませんか。はたして,洗練されていないちょっとドン臭い《 The loop 》に仕上がっちゃいましたが,なかなかの好演。アルバム全体としても緩急自在に巧みな技を随所に散りばめながら,しっかりした作風の快作に仕上げました。今後の活動にも期待したいですね。

6)Ivan Paduart 『 A Night In Tokyo 』 P.J.L.
パデュアの最新盤はGatsからの『 My French Heart 』ですが,フランスのヒット曲集という企画物で,個人的には今ひとつの出来でした。このBody&Soulでもライブ盤は彼のオリジナル美曲満載のパデュアを知るには恰好の名盤。ちゃんと《 Igor 》も入ってるし。この1曲で泣いてください。やっぱりパデュアはエエな~。

7) Jean-Philippe viret 『 L'indicible 』 atelier sawano
ベーシスト,ジャン・フィリップ・ヴェレのリーダー作で,ピアノはエドゥアール・フェルレ。ややアブストラクトで守備範囲外かと当初は思いましたが,聴き込むうちにツボにはまり,今では近年の澤野盤では一番のお気に入りです。澄んだ星空を見上げながら,ビール片手に聴いているとホント,幸せな気分になってきます。

8) 西山 瞳 『 I'm Missing You 』 自主制作盤(2006年11月7日UP
Spice of Life から今年発売になった『 Cubium 』よりも,この自主制作盤の方が好きになってしまいました。仕事のBGM, ベッドの中(もちろん眠る時ですけど),運転中,と今年一番聴いたピアノ・アルバムかもしれません。《 Passato 》に彼女の類稀なるメロディー・センスを感じます。超美麗歌。

9)Baptiste Trotignon 『 Flower Power 』 naive(2006年12月29日,30日UP)
昨日紹介したばかりですが,このところ毎日聴いているアルバムで,すっかりはまってます。やっぱりエルトン・ジョンの《 your song 》がベストですね。これ1曲だけでも聴いて欲しいな~。

10) Aaron Goldberg 『 Worlds 』 sunnysaide communications(2006年7月11日UP
アーロン・ゴールドバーグとしてはOMA Trioとしての作品の方が好みですが,まあ,本作もゴールドバーグの“静”の側面が窺える好盤です。

Baptiste Trotignon  『 Flower Power 』 つづき

2006年12月30日 21時10分34秒 | JAZZ

M-6: ジェームス・テイラー 《 Don't let me be lonely 》1972年
レミ・ヴィニョーロのピチカートで奏でられたテーマにつづき,トロティニョンが単音で丁寧にゆっくりアドリブに入るのですが,歌心に満ちた暖かいフレーズに心打たれます。原曲ではマイケル・ブレッカーが間奏を吹いていたことは有名ですが,2001年のブレッカーのアルバム『 Nearness of You 』では,この《 Don't let~ 》を今度はジェームス・テイラーをゲストに招いて30年ぶりの再演を聴かせてくれました。
http://www.excite.co.jp/music/store/artist/81080635/?mode=tune

M-7: ボブ・ディラン 《 Mr Tambourine man 》1965年
中学1年の時,8万円で買ってもらったモーリスのギターで,ディランの《 風に吹かれて 》や《 ミスター・タンブリン・マン 》をよく弾いて遊んでいたっけ。

M-8: サイモン&ガーファンクル 《 明日に架ける橋 》1970年
サイモン&ガーファンクルの最高傑作。原曲もピアノだけの伴奏でアート・ガーファンクルが歌っていました。ここでは3/4拍子で演奏されています。ここでもトロティニョンのソロが素晴らしい出来です。今まで,トロティニョンってシリアスな音楽が似合う人かと思ってましたが,意外に歌物を弾かせても上手いんですね。彼の多面的な音楽性が垣間見れる快演です。
http://www03.morawin.jp/artist/80312130/14190902/

M-9: レオ・フェレ 《 C'est extra 》1970年
フランスのシャンソン歌手だそうです。僕は知りませんでした。全くシャンソンには疎いもので。でも好旋律の美曲です。原曲が聴いてみたくなりましたが試聴できるサイトを探せませんでした。哀愁漂うメロディーをトロティニョンが丁寧に感情豊かに綴っていきます。最後は溢れ出る情念が爆発し,フリー・フォーム直前で寸止めエンディング。

M-10: エルトン・ジョン 《 Your song 》1970年
《 Your song 》をピアノ・トリオで演奏すると聴いただけであまりにもベタすぎて退いちゃいますが,実はこの曲こそ本アルバム中の最高の出来具合なんです。キラー・チューンですわ。完全に嵌まりました。
1分40秒から2分42秒の1分間のトロティニョンのアドリブが最高。至福の美メロの時です。今まで何となく距離感のあったトロティニョンが一気に身近な親友になった瞬間です。こういう美旋律の出会いがあるからジャズは止められないんですよね。

M-11: ドアーズ 《 The End 》1967年
1970年にビートルズの解散,ジャニス・ジョプリンとジミー・ヘンドリックスの相次ぐ麻薬による死。そして翌年71年にドアーズのジム・モリソンも麻薬中毒死。こうして「フラワー・ムーブメント」は終焉を迎えるわけですね。本作も《 The End 》で静かに幕を下ろします。


Baptiste Trotignon  『 Flower Power 』

2006年12月29日 22時30分32秒 | JAZZ

このところ新譜を買ってもあまり当たりに恵まれず,スランプに陥っていたところに,やっと愛聴盤に値する作品に出会えた感じです。Aldo Romano (アルド・ロマーノ),Remi Vignolo (レミ・ヴィニョーロ),Baptiste Trotignon (バティスト・トロティニョン)の共同名義でnaïve から発売された新作『 Flower Power 』です。

一応,アルド・ロマーノのリーダー・アルバムということなのでしょうが,本項ではトロティニョンの作品としておきます。

アルド・ロマーノは言わずと知れたイタリア~フランス・ジャズ界の重鎮で,自分ではそれほど凄い技を披露していないのに,起用する素晴らし若手ミュージシャンのおかげで,数多くの名盤を世に送り出すことに成功している,人の良さそうなおじさんですが,今回も地元フランスでは今やファースト・コールの若手ベーシスト,レミ・ヴィニョーロと,これまた凄腕フランス人ピアニスト,トロティニョンを引きつれ,とっても楽しいアルバムを作ってくれました。感謝多々。


僕としては当然トロティニョン買いなのですが,ベースのヴィニョーロが参加しているのもイイですね。ヴィニョーロって,最近のフランス発のアルバムにはちょくちょく顔を出しているので,「おー,なんかカッコイイベースやな~」とクレジットを見るとヴィニョーロだったりします。印象に残っているアルバムではロザリオ・ジュリアーニの『 More Than Ever 』やデヴィッド・エルマークの『 Talking Cure 』など新世代型の斬新なリズムを刻んでいます。欧州のリューベン・ロジャーズ,てなところかな。


目に染むような極彩色のジャケット・デザインはいかにもサイケデリックで,タイトルも『 Flower Power 』とくれば,やっぱり60年代後半から70年代のフラワー・ムーブメントを意識した作品なのでしょう。そう言えば昔,チャールス・ロイドというサックス吹きも『 Forest Flower 』というサイケデリック・ジャズの作品で人気を博した時期もありましたね。

さて,本作は全11曲,全てが60年代から70年代にヒットしたポピュラー音楽やロック,シャンソンなどのカヴァーでできています。

11曲中8曲が昔聴いた曲でしたので,<懐かしのヒット・パレード>的思いで聴き入ってしまいました。

M-1: ミッシェル・ポルナレフ 《 Love Me, Please Love Me 》1966年
原曲はバラードでしたが,ここでは高速にアレンジして演奏されています。原曲を知らない人には往年のジャズのスタンダードかと聴き間違うほどジャズ化されてます。これは素晴らしい演奏です。

http://www.ongen.net/search_detail_track/track_id/tr0000532388/

M-2: マーレイ・ヘッド 《 Say It Ain't So 》1975年
美しい旋律を持ったバラードですが僕は知りませんでした。ジーザス・クライスト・スーパースターのヴォーカルを担当していた人のようです。
http://www.anthonyhead.org/joe.html

M-3: セルジュ・ゲンスブール 《 Je taime moi non plus 》1969年
フランス人歌手兼俳優のゲンスブールのヒット曲。これも僕は知りませんでしたが,とっても綺麗で可愛い旋律の曲です。M-2同様,原曲を知らなくても全然OK。
http://www.amazon.com/Histoire-Melody-Nelson-Serge-Gainsbourg/dp/B000051YEG

M-4: ロバート・ワイアット 《 Sea Song 》1974年
お~,こんな所でワイアットが聴けるなんて夢にも思いませんでした。これは昔は良く聴いた曲です。UKプログレ,カンタベリー系を聴いていた頃の思い出の曲。ソフト・マシーンのオリジナルメンバーのロバート・ワイアットの名曲です。『 Rock Bottom 』のA面1曲目でした。思わずトロティニョンのピアノをカラオケにして歌っちゃいました。
http://listen.jp/store/album_031257150767.htm

M-5: レッド・ツエッペリン 《 Black Dog 》1971年
これは知らない人はいないでしょう。彼らの最高傑作『 Led Zeppelin IV 』の1曲目を飾る名曲中の名曲ですね。「ヘイ ヘイ ママ セド ザ ウェイ ユー ムーヴ~」なんて,これも一緒に歌えちゃいます。小学校6年頃に初めて聴いたこの曲の感動は今も色褪せません。当時はジョン・ボーナムのドラムがずれている様に聴こえて不思議な魅力を感じたものでした。それがポリリズムであることを知ったのはずーと後のことです。この曲に関しては,やっぱり数倍,原曲の方がカッコイイです。
実は,今でもつえっぺりんのCDを(ブートは別として)ほとんど持っているんですが,久しぶりに一番大好きな『 Physical Graffiti 』を先程から聴いているのですが,やっぱ,ボーナムって,すげ~,て思いますね。こういうのを聴くとジャズもロックも関係ないって実感しますわ。やっぱ,ボーナムは最高!!


 To be continued....




 


Ove Ingemarsson 『 Heart Of The Matter 』

2006年12月27日 22時08分55秒 | JAZZ
E.S.T. の連続10枚聴きも終わったので,しばらく溜め込んでいた新譜のレビューでも書こうかと思いましたが,その前にちょっとE.S.T. について蛇足を。

あくまで僕の推測ですので信憑性に欠けますが,,,,E.S.T. がここまでポップに変体していった影には,ある1人の男の存在が大きかったと思うんですよね。その人は Ake Linton (アケ・リントン)氏といって,E.S.T.の初期の作品から最新作『 Tuesday Wonderland 』まで,途中ブランクはあったものの,一貫してエンジニアとして彼らの音楽に関わってきた人物です。E.S.T. のbrain でもあり,E.S.T.の第四のメンバーと言っても過言ではないエンジニアです。

実際,最新作『 Tuesday Wonderland 』についてのスヴェンソンのインタビュー記事の中で次のようにアケ・リントン氏について話しています。

ARTURO MORA: Regarding that studio process, which is the importance of your sound engineer Ake Linton in the development of the band?

ESBJÖRN SVENSSON: Well, Ake Linton is a very, very important man in this process. He is the fourth member of the trio, he’s been travelling with us for five or maybe six years now and we have been recording with him before, but this is for a very long time the first album we’re really making together with him, and that was such a joy to work with him. We went down to Gothenburg and used his studio, and we were recording for four days, went into the studio, turned our mobile phones off, we were just concentrating, and worked very hard for these four days, and recorded the whole album.

昨年の来日公演でもスヴェンソンはステージ上でリントン氏を第四のメンバーとして紹介しているようです(僕は見てませんが)。

このリントン氏,スウェーデンのジャズ・アルバムをウォッチしていると時々名前を見かける人物で,僕の好きなOve Ingemarsson (オーベ・イングバールソン)や Ulf Wakenius (ウルフ・ワケニウス)のアルバムにもしっかりエンジニアとしてクレジットされています。

ということで,リントン繋がりで一枚紹介しておきます。オーベ・イングバールソンの95年の作品『 Heart Of The Matter 』です。この作品もリントン氏の手によるものです。Swedish Jazz がお好きな方には今更紹介するまでもありませんが,スウェーデンのトップ・テナーマンで,めちゃ,上手いです。で,この人,何が凄いって,マイケル・ブレッカーそっくりに吹くんですよ。“ブレッカー似” じゃなくて,“ブレッカーそっくり”なんです。

ジャズ批評 No.104 『 マイケル・ブレッカー大全集 』でもニコラス松尾氏がブレッカーそっくりさんとしてイングバールソンを紹介しています。

本作はドラムスにアダム ・ナースバウム、ピアノにラーシュ・ヤンソン、ベースにラーシュ・ダニエルソン を迎えたカルテット編成ですから,もう最高です。90年代の比較的オーソドックスなハード・バップ系のオリジナル中心です。モーダルでスウィンギーなラーシュ・ヤンソンのピアノも新鮮です。イングバールソンとブレッカーとの差異など,僕の耳には全く分かりません。傑作ではありませんが,「すげ~,ブレッカーそっくり!!!」と,ひとりにんまりしながら聴くには結構楽しめる快作です。





E.S.T. 『 viaticum 』

2006年12月27日 20時50分03秒 | JAZZ
このところE.S.T. のアルバムをデビュー作から順を追って聴いてきましたが,E.S.T. の通算9作目にあたる本作『 viaticum 』(2005年)でやっと御仕舞いです。ふ~。(最新作『 Tuesday Wonderland 』は最初に紹介済み)。僕の中では,1999年の『 From Gagarin’s Point of view 』をE.S.T. の頂点として,以後の作品は結成当初の北欧の風土に根ざした独特のリリシズムや即興性から徐々に遠退いていき,多くの大衆に受け入れやすい,ジャズファンにもあるいはロックファンにもアピールする,最大公約数的ポップ・ミュージックに変異していったように思われて,興味が薄れていったというのが正直な所ですが,そんな< Post-Gagarin >の作品群の中では比較的良く出来た作品だと感じるのがこの『 viaticum 』です。

Viaticum とはキリスト教用語で「臨終の聖餐」と訳され,イエス・キリストの最後の晩餐に因んだ臨終を迎える際の儀式のようなものだそうです。Voyage (航海,人の一生)の語源になったラテン語でもあります。まあ,意味はどうあれ,こんな重々しいタイトルが示すように全体に暗鬱な曲調が多く,最初聴いた時はあまり好きになれず,しばらく放置していました。でも,聴きこんでいくと1曲1曲の出来はとっても良くて,やや色彩感や温度感が薄い単調な曲が並んでいるので,一聴して印象に残りにくいのですが,意外にスヴェンソンは感性を研ぎ澄ました鋭いアドリブを披露しています。僕は特にM-8 《 A Picture Of Doris Travelling With Boris 》が好きです。ドラマティックな美旋律が次々と溢れ出る6/8拍子の名曲です。個人的にはこの路線を踏襲して欲しかったな~。そうすれば第二のパット・メセニー・グループになれるのに。

ということで,E.S.T. の全10作品を今回あらためて聴いてきましたが,わずか13年の間にここまで彼らのジャズが変貌するとは全く予想外で驚きでした。昔のE.S.T. をしる僕としては,現在の彼らの活動には少々戸惑いを禁じえませんが,これも激しい競争社会である音楽業界を生き抜くための手段なのでしょう。では,最後に超個人的なベスト3 をあげて終わりにしたいと思います。

1位 : 『 From Gagarin’s Point of view 』 (1999年)
2位 : 『 When Everyone Has Gone 』 (1993年)
3位 : 『 Viaticum 』 (2005年)

E.S.T.  『 Seven Days Of Falling 』

2006年12月22日 23時52分56秒 | JAZZ
エリック・サティーにようなピアノで始まる1曲目《 Ballad For The Unborn 》を聴いただけで,残りの曲は聴く気にもなれなくなる,ジャズ・ファンからすれば明らかに駄作です。ですから,あまり書く気にもなれないのですが,曲によってはスヴェンソンの凄いアドリブも聴けるので,非常にもったいないアルバムです。そこまで弾けるのにどうして隠すの,と叫びたくなってしまいます。ダン・ベルグルンドのベースも完全にロックですし,電子音や歪音も散乱し,聴けたもんじゃありません。ついに「あっち側の音楽」に行ってしまった世紀末的ジャズ? かな。

E.S.T. 『 Strange Place For Snow 』

2006年12月22日 23時23分51秒 | JAZZ
E.S.T. の通算7作目にあたる『 Strange Place For Snow 』(2002年)は,『 From Gagarin’s Point of view 』(1999年),『 Good morning Susie Soho 』(2000年)に始まる3部作の第3部ということになるらしいのですが,明らかに前2作とは異なる音楽的指向を持った作品です。ただ,良い方向にベクトル変化しているのであれば問題ないのですが,どうもこの作品以降,ジャズよりもロックやダンス・ミュージックに軸足を置いた曲作りが目立つようになり,どうも個人的には好きになれません。

「どんなに一生懸命4ビートを刻もうが,どんなにかっこいいアドリブを演奏しようが金にはならない」ということを悟ったかのように即興パートが減っていき,代わって平易で単純なメロディーが反復されるようなループ・ミュージックが増えました。その背景にはジャズだけでは喰っていくことが困難なスウェーデンのジャズを取り巻く劣悪な環境事情 も少なからず関係していると思われます。いくらジャズが盛んなストックホルムと言えど,ジャズだけで生計を立てられるミュージシャンはほんの一握りの恵まれた人々だけなのでしょう。

ということで,この作品でE.S.T. は,真摯なジャズ・ファンに愛想を尽かれましたが,代わって大金を手に入れることに成功したのでした。

E.S.T. 『 Good morning Susie Soho 』

2006年12月21日 22時16分35秒 | JAZZ
前回,僕が好きなE.S.T.は『 From Gagarin’s Point of view 』まで,と書いてしまいましたが,記事を書くにあたり本作『 Good morning Susie Soho 』を久しぶりに聴きなおしてみたら,結構イイ演奏であるとことを発見したので,訂正させていただきます。
「僕が好きなE.S.T.は『 Good morning Susie Soho 』まで」と。

正直なところ,この『 Good morning Susie Soho 』は所有していたものの,あまり聴いていませんでした。というのもタイトル曲の《 Good morning Susie Soho 》が嫌いで,その1曲のためにアルバム全体のイメージがあまり良くなかったからなんですね。《 Good morning Susie Soho 》の何が嫌いかって,それはベースのダン・ベルグルンドが生音にWahを通したエフェクト音をダブリングさせて演奏しているのが,気持ち悪いのです。この辺からダン・ベルグルンドはウッド・ベースにエフェクターをかける変な趣味を持ち始めたわけですけど,最悪は弓弾でハーモニックスを出し,それにディストーションをかけるという,聴いているだけで自律神経系に変調をきたすのではないかと不安になるような,そんな不快な音です。

でもこの作品,楽曲単位で聴きこんでいくと,なかなか名演ぞろいで魅力的なんです。M-2 《 Do The Jangle 》や M-4 《 The Wraith 》などでのスヴェンソンの高速アドリブはおそらく彼の作品中最高の出来ではないでしょうか。斬新でアイディアに満ち溢れたパーカッシブなアドリブ・ライン。これぞスヴェンソンの真価が発揮された永久保存版の名演です。

現在の彼らのスタイルを暗示しているかのようなポップなM-9 《 Spam-Boo-Limbo 》 。

彼らの深遠なる宇宙感が垣間見られる《 Serenity 》や《 Reminiscence of A Soul 》など4編のバラード群。

こうして聴いてみると前作『 From Gagarin’s Point of view 』ほどではないにしても,新境地を拓きつつある進化過程のE.S.T.を知ることのできる名盤といえなくもないかな。


E.S.T. 『 From Gagarin’s Point of view 』

2006年12月19日 21時07分50秒 | JAZZ
1993年のデビュー・アルバム『 When Everyone Has Gone 』から1997年の『 Winter In Venice 』までが <E.S.T. 第一章 > であるとするなら,本作『 From Gagarin’s Point of view 』からが <E.S.T. 第二章 > ということになります。そして本作こそ彼らの最高傑作であると確信します。兎に角,1曲1曲のオリジナリティー,洗練度,斬新さ,が際立っていて,非の打ち所がありません。

プロデューサーのクレジットが,Johan Ekelund (ヨハン・イーケルンド)からESTに代わった記念すべきセルフ・プロデュース第一作で,<all compositions, all arrangements, produced EST > と記されています。ユニット名も本作以降, <Esbjorn Svensson Trio > から <E.S.T. > という略称に変更しており,より三者の結束を固め,オリジナリティーを追求していこうとする意思が伝わってきます。

本作以降,エレクトロニクス(とは言っても簡単なギター用エフェクターが主だけど)の導入を試みていくのですが,本作はでまだ装飾的な使用に留まり,嫌味がなく好感がもてる使い方です。ベースのダン・ベルグルンドも 《 Dodge The Dodo 》 の中で弓弾きを披露していますが,現在のようなノイジーなディストーション・サウンドではありません。ちなみに彼はベーシストでありながら弓を珍しいフレンチ・ボウという持ち方で弾きます(DVDの映像で確認しました。)。チェロなどと同じ持ち方ですが,このほうがカッコイイんですよね。フレンチ・ボウでコントラバスを弾いているのに,出てくる音はディストーションがかかっているという,なんとも不思議なヴィジュアルです。

本作『 From Gagarin’s Point of view 』と次作『 Good morning Susie Soho 』からのコンピレーション(カップリングではありません)が米国(ソニー・コロンビア)から『 Somewhere Else Before 』というタイトルで発売されています。しかし,お得だからと言って『 Somewhere Else Before 』を買わない方がよいですよ。1枚買うなら絶対『 From Gagarin’s Point of view 』です。アルバムとして完成されているので,曲順を含め崩しようがない傑作ですから。特に個人的に気に入っているのは1曲目から5曲目まで。

1曲目 《 Dating 》から切れ目なく3曲目 《 Subway 》まで一気に疾走します。スヴェンソンが素晴らしいテクニックで16分音符の息の長いパッセージを昇降し,その馬鹿テクぶりを発揮します。「こいつ …,こんなに弾けるのか (^。^;;; ) 」 と驚愕。それにしてもキースにフレーズが似ています。そして彼らの代表曲,《 Dodge The Dodo 》に続きます。ドラムン・ベース,リズムン・ベースというか,ジャム・バンド風のポップな曲です。彼らの新機軸と言うべきこの曲で一気にロック・ファンにもアピールし,ポピュラリティー獲得に寄与した名曲です。「この路線で一儲けしようか~」と彼らに悪魔が囁いた運命的な楽曲でもあります。そして5曲目がこれも彼らの名曲 《 From Gagarin’s Point of View 》。深い藍色を呈するバルト海をゆっくり遊覧する豪華客船から眺めるフィヨルド。そんな風景を連想される美旋律バラード。そして6曲目の 《 The Return of Mohammed 》 へ静かに流れていきます。この緩やかに浮遊する優しいメロディーはパット・メセニー・グループを連想させます。転調の仕方,シンセの入り方が素敵です。

ということで,僕が好きな E.S.T. はこのへんまで。これ以後は徐々に「アコースティック楽器の電気化」が進み,ジャズ・ファンからロック・ファンへそのファン層をシフトさせていくことになります。

E.S.T. 『 Winter In Venice 』

2006年12月19日 20時35分52秒 | JAZZ
E.S.T. の全10作品,14年間の軌跡の中で,最もジャズ・ピアノらしい作品が本作,『 Winter In Venice 』です。

19970年当時には彼らはすでにエレクトロニクスの導入を虎視眈々ともくろんでいたと思われますが,前項でお話ししたように,アコースティックにこだわるプロデューサー,Johan Ekelund (ヨハン・イーケルンド)の主導により,本作では100%アコースティック・サウンドが聴かれます。おそらく,年配のジャズ・ファンもこれなら拍手喝采してくれるでしょう。近年のE.S.T. の作品しか聴いていない方の中には,「どうもこいつら胡散臭い,似非ジャズメンだ。」と馬鹿にしている方も多いかと思いますが,いやいやどうして,この『 Winter In Venice 』以前の作品を聴いたらきっとぶっ飛びますよ。キース・ジャレットからもろ影響を受けました,と言う分かりやすい作風ですが,やはり1960年代生まれのロック・ポップスを聴きながら育った環境因子の影響もあって,単なるキースの焼き回し,リメイクではありません。

全曲オリジナルですが,ポップスやフォーク調のテーマを持った楽曲が多く,しかしアドリブは完全にジャズしてます。タイトル曲 《 Winter In Venice 》 に聴かれる翳りある叙情性。こんな美しいメロディーを奏でる人が,後にどうしてあの轟音ロック・ジャズに走ったのか。不思議でなりません。

本作は2002年発売のジャズ批評 No.113 『 続ピアノ・トリオ最前線 』で彼らの代表作として取り上げられていますが,現在でもその評価は変わらないでしょう。ちなみにエスビョルン・スヴェンソンは1995年,1996年に年間最優秀スウェーデン人・ジャズ・ミュージシャンに選ばれ,1997年の本作はスウェーデン・グラミー賞を獲得しています。

E.S.T.  『 EST Plays Monk 』

2006年12月13日 22時40分39秒 | JAZZ
1996年のE.S.T. の第三作目はモンク集でした。『 EST Plays Monk 』と題された本作は,本国スウェーデンで10万枚以上の売り上げを記録するヒット作となりました。本作からレコード会社もポップス系に強い Superstudio Gul / Diesel Music に移籍し,さらにプロデューサーにAORバンドでキーボードを弾いていたこともあるJohan Ekelund (ヨハン・イーケルンド)を招きいれています。このヨハン・イーケルンドという人は,自分は完全な電化キーボーディストであるくせに,「ジャズはアコースティックに限る」という信念を持っていたようで,沸々と湧き上がるE.S.T. の3人の<バンドの電化計画>に反対し,決してレコーディングにエフェクター類を持ち込むことを許さなかった人物として有名です。まあ,そのおかげで僕たちは非常に名盤度の高い本作や,次の『 Winter In Venice 』がアコースティック・ジャズとして楽しめるわけですが。

個人的にはモンクはあまり好んで聴くことのないミュージシャンですが,この人は死後もなお,いろいろなミュージシャンにその楽曲が取り上げられ,アレンジされ録音されています。それだけ,ミュージシャンにとっては魅力ある楽曲なのでしょうかね。死んでもなお影響を与え続けられる偉大なピアニストですね,モンクって。

で,本作では,モンクのギクシャクしたリズムをスマートに形成し直し,随所にストリングス・アレンジを施して,僕でも心地よく聴ける作品に仕上がっています。1曲目の《 I Mean You 》なんて,こんなに美しい楽曲だとは本作を聴くまで知りませんでした。4曲目の《 Bemsha Swing 》でもダン・ベルグルンドのベース・リフが独創的で,自然と体が揺れちゃいます。

E.S.T.  『 E.S.T. Live ‘95 』

2006年12月13日 22時09分35秒 | JAZZ
1995年録音のE.S.T. の第二作。最所は Prophone Records というレーベルから『 Mr. & Mrs.Handkerchief 』といタイトルで発売されましたが,2001年にボーナス・トラック(1999年のライブ音源,名曲《 Dodge The Dodo 》 )を付加して『 E.S.T. Live ‘95 』としてリイシューされました。この頃もまだ<電化>されていません。安心して音楽に没頭できます。しかも3者の高次元での緊張感のあるインタープレイが存分に堪能できて,全曲手抜きのない高密度の内容です。個人的には1曲目の《 Say Hell To Mr. D 》が美旋律が散りばめられた極上のバラードで,大好きです。

本作から,以後長きに渡り彼らをサポートしていくことになるレコーディング・エンジニアでありブレーンでもあるAke Linton (アケ・リントン)氏が参加しています。

ある意味,必死にキース・ジャレットやチック・コリア,ビル・エヴァンスなどの模倣からの脱却することに必死であったため,エフェクターを使って聴衆をあっと驚かすなんて余裕,なかったんでしょうね。

E.S.T. 『 When Everyone Has Gone 』

2006年12月13日 21時21分14秒 | JAZZ
北極海から届く風。
フィヨルドの香り。
極寒の地,スヴェーデンの白夜の夢は続く。

1993年のE.S.T. のデビュー・アルバム『 When Everyone Has Gone 』( Dragon )です。2005年7月30日に拙ブログでこのデビュー盤の短い記事をエントリーしています。最上の3行の詩はその時に記したものです。ほんと,このアルバムを聴いているとこちらの体温まで下がってきそうな,そんな温度感の低い音楽なんですね。深く沈みこむ藍色の北極海。肌を突き刺す北風。荒涼としたスウェーデンの大地。極寒の地,ストックホルムで夜な夜なこんなジャズが繰り広げられているのかな~と,イメージしながら昔はよく聴いたものです。今のE.S.T. からは全く想像できない純粋な抒情派路線の新鋭としてデビューした3人は,当時まだ20歳代の若者でした。

静謐な空気感が怖いくらい生々しく伝わってくる名盤と言ってよいでしょう。まだ<電化>スイッチがオンされていない状態のE.S.T. が聴けます。この路線を発展,昇華させていけたら,個人的にはもっとE.S.T.を好きになっていたかもしれませんが,その分,活況を呈するヨーロピアン抒情派ピアニストの中の目立たぬ“ one of them ”で終わっていたかもしれません。

それにしても3人とも巧過ぎ。音もイイ音してるし。現在のプレイがいかに楽器を弾いていないかがよくわかります。もったいない。