Pat Metheny(G,Orchestrionics)
Rec. October 2009,NY (Nonsuch 516668)
パット・メセニーのソロ・アルバムに、「Zero Tolerance for Silence(94年)」という全く肌に合わない作品があったのだが、本作もまたなんとなく悪い予感がする。といってもノイジーで即興的な演奏を思いつくままに録音したような感じの「Zero Tolerance for Silence」とは違い、こちらの方は構想から完成までにだいぶ手間暇とお金がかかっているようだけどね。
HMVレビューによると「タイトルの『オーケストリオン』とは、19世紀末から20世紀初頭に実在した、オーケストラの複数の楽器を同時に演奏させることができる大掛かりな機械のことで、このコンセプトを現代の最新技術に当てはめたのが本作」なのだそうだ。古くはオルゴールやロール式のオルガン、はたまたシンバルを打ち鳴らす猿のおもちゃや鳩時計なんかもその類といっていいと思うけど、シンセやサンプラーでどんな音でも自在に出せるようになった昨今、音楽的な内容はさておきわざわざ生の楽器(ピアノ、マリンバ、ヴァイブラフォン、オーケストラ・ベルズ、ベース、ギターボット、パーカッション、シンバル、ドラムス、チューニングした複数の空き瓶等の、叩いたり弾いたりする楽器)に一個一個装置を取り付けて自動演奏させるという発想自体が素敵だね。技術的なことは専門の業者に依頼したようだが、とにかくジャケットの写真を見ているだけでも圧倒される。
全5曲がオリジナル。
いやはやビックリ。サウンドはまさしくPMGそのもので(ドラムスのビート的なこともあり、ポール・ワーティコが在籍していた頃に近いかなって感じ)、自動演奏によるチープな感じは全くしない。まあ元になる部分に最新のテクノロジーが使われていると思うので当然だろうけどね。ただし全体的にダイナミックレンジが小さい(なぜか再生レベルも低め)のは気になるところ。おそらくこれが楽器を自動演奏させる音の強弱の限界なのだと思うけど、楽曲自体が雄大な作りなのでその辺が少々悔やまれる。でもまさかここまで違和感のないサウンドに仕上がっているとは思ってもみなかった。メセニーのギターやオーケストレーションの素晴らしさはもちろんなのだが、すべてを一人で行っているであろうと思われる打ち込み作業の、各楽器(特にドラムス)のフレージングに対する徹底ぶりも相当なもの。さすがに完璧主義者のメセニーだけのことはあるね。おそらく今度のPMGのツアーは本作からの曲が中心になると思うけど、これだけ完成度の高いデモ演奏があれば、きっとメンバーも曲を覚えるのがずいぶん楽だろう。生身の人間がプレイすればこれ以上に素晴らしい演奏になることは間違いないので(打ち込みは所詮打ち込みなので)、そちらの方もぜひとも聴いてみたいものだ。
それにしてもよくこれだけ全楽器の音の出るタイミングがバッチリ合っているものだね。私が20年ほど前に買ったエレドラなんかは、パッドを叩いてから音が出るまでに時間のロスがあって全く使いものにならなかったんだけどなぁ(苦笑)。もしかすると打ち鳴らし装置が打面に当たるまでの時間もきちんと計算してプログラミングされているのかもしれない。
楽曲はどれもが平均的に良いのだが、私としては切ないメロディーでスタートして途中から4ビートにチェンジする4曲目が一番好き。なにはともあれ、音楽的には危惧していたような悪い内容でなくてホッとした。
評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)















