雨の日にはJAZZを聴きながら

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Bireli Lagrene / Electric Side

2008年09月24日 21時04分53秒 | JAZZ
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ジプシーの血を引くフランス人ギタリスト、ビレリ・ラグレーンのエレクトリック・フュージョンに取り組んだ最新作。 2001年に“ Gypsy Project ”を結成してからは、マヌーシュ・スイング系のミュージシャンとの活動に軸足を置いていたので、ジプシー・スイングが苦手な僕は、しばらく疎遠になっていた。しかし今回、彼にしては比較的珍しいフュージョン作品であり、しかも超馬鹿テク・ベーシスト、エドリアン・フェローが参加していることもあり購入してみた。 ビレリが現在までにフュージョンを手掛けた作品は、知る限り本作品以外に2作品存在する。ひとつは95年にDreyfus に吹き込まれた『 My Favorite Django 』( 邦題:ジャンゴ・ライハルトに捧ぐ )であり、もうひとつは2000年に Universal に吹き込まれた 『 Front Page 』である。前者はデニス・チェンバース、アンソニー・ジャクソン、それからキーボードのクーノからなるカルテットでの演奏で、爽やか系のWR風フュージョンといった趣がる快作だった。後者は、デニス・チェンバースとドミニク・ディ・ピアッツァからなるトリオで、抜群のスピード感が心地よい傑作だった。 さて今回は、どんなフュージョン・サウンドを聴かせてくれるだろうか。メンバーは前述したようにベースのアドリアン・フェローの参加が何と言っても目を引く。ドラムの Damien Schmitt ダミアン・シュミット や キーボードの Michael Lecoq ミッシェル・ルコック はアドリアン・フェローのサポート・メンバーとして活躍しているミュージシャンである。また、サックスの Frank Wolf フランク・ウォルフ はビレリの“ Gypsy Project ” などで幾度となく共演している盟友である。スチールドラムのアンディー・ナレルが参加しているのが懐かしい。 収録曲は全9曲。そのうち7曲がビレリのオリジナル。意外にもダンサブルでポップな楽曲が並んでいる。アンディ・ナレルが参加していることから察しがつくように、アルバム全体に南国の香りが漂っている。しかし、緩くはない。ビレリはクリーンなサウンドと、フュージョン特有のオーヴァードライブ系のサウンドをうまく使い分け、多彩なサウンドスケープを作り上げる。フレーズも高速ビ・バップから、ジョージ・ベンソン風のクロマチック・ラインを多用したコンテンポラリーなものまで自由自在に織り交ぜ、聴く者の耳を釘ずけにする。個人的には9曲目 ≪ Hips House ≫ のベンソンズ・チルドレンを標榜したようなスタイルが気に入った。今更ながらアドリアンの超馬鹿テクにも腰を抜かす。もう、ここまでくると笑うしかない。スラッパーを別にすれば、今、世界で一番指が動くベーシストであることは疑う余地がない。マシュー・ギャリソン、ドミニク・ディ・ピアッツァを遥かに凌いでいる。ドラムのダミアンも手数が多く、かなりのテクの持ち主である。ただ、サックスのフランク・ウォルフが他のメンバーに比べて若干レベルが落ちるのが残念なところではある。 現代のジャズ界はあまりにも技術偏重傾向が強いのではないかと危惧する一方で、やはり「 超絶技巧の快感 」みたいなものは紛れもなく存在するわけで、ごく一部の天才的ミュージシャンにしか成しえない目も眩むような早弾きは、やはり失神するほど魅力的だ。 ハード・コア・フュージョンではないが、かなり聴きごたえのある硬質なサウンドであった。一度聴いただけではその真価が理解できないと思う。アドリアンのラインだけを傾聴しても、数十回は聴くことができそうな濃い内容だ。どうして日本にはこのようなフュージョン・バンドが生まれないのか、今更ながら悲しくなってくる。 Bireli Lagrene / Electric Side 2008 Dreyfus Bireli Lagrene (g) Hadrien Feraud (b) Frank Wolf (ts &ss) Andy Narell (steelpans) Damien Schmitt (ds) Dj Afro Cut-Nanga (dj) Michael Lecoq (key)

Helge Lien Trio / Hello Troll

2008年09月22日 23時40分44秒 | JAZZ
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ノルウェー王国出身のピアニスト、ヘルゲ・リエンが放つ、前作 『 To The Little Radio 』 から 2年ぶりとなる、通算6枚目のアルバム。

正確にはヘルゲ・リエン単独名義ではなく、デビュー以来ずっと活動を共にしてきたベースのフローデ・バルグ、ドラムスのクヌーツ・オーレフィアールとの3人によるトリオ名義である。

彼らのWeb Site および Liner Notes によると、2007年5月に Bergen で開かれた Nattjazz Festival でHansa 賞を、また2008年7月に開かれたKongsberg Jazzfestival においはDnB NOR 賞という、ノルウェー国内の権威あるジャズ賞を立て続けに2つ受賞しており、ますます勢いに乗る彼ら。そんな付加価値もあり、聴く前から非常に楽しみな作品である。

彼らの旧作はノルウェーのインディペンデント・レーベル Curling Legs か、日本の Disk Union から発売されてきたが、今回は母国の Ozella Music という無名のレーベルから発売された。しかも、前作がスタンダード集であったのに対し本作は、打って変って全てオリジナルで勝負してきた。スタンダードが安易な選曲だとは思わないが、スタンダードにははじめからメロディーの持つ力、求心力が備わっているため、そこそこのアドリブでも聴き手を納得させるこどができるが、オリジナルはそうはいかない。相当の自信と覚悟ななければ全曲オリジナル集は作れない。そんなところから彼らの本作にかける意気込みの程が窺えるのではないか。

全9曲。3拍子と4拍子と5拍子が交錯する複雑な楽曲で幕を開ける。変拍子ではあるが、ヘルゲのアドリブはシンプル。静かな水面が微かに揺れるような静的ラインを刻んでいく。

2曲目は陰鬱なオスティナートが印象的なクラシカルな楽曲。クヌーツ・オーレフィアールのブラシュ・ワークは不気味なほど抑制されている。

3曲目はフリー・フォームのイントロを持った非常にゆっくりとしたテンポ(ルバート)の抽象的な楽曲。フローデ・バルグの完璧なテクニックに裏付けられたボウイングが美しい。

4曲目は速めのラテン・ビート。冒頭から静かな曲ばかりだったので良いアクセントになっている。が、クヌーツはまたしてもブラシュを持っているので盛り上がりに欠ける。

5曲目は再びクラシック・スタイルのピアノソロから始まる5拍子の曲。またもやクヌーツはブラシュ。とにかく、今回はクラシック、特にチェンバー風の楽曲が多い。3人とも元はクラシック教育を受けたエリートであるから、このあたりは流石に巧いが、どうも以前のような過激性、前衛性に欠けている。

結局、7曲目のタイトル曲 ≪ Hallo Troll ≫ だけが彼ら本来の刺激臭が漂う楽曲だった。まあ、2001年のデビューから8年もたつのだから、スタイルが変化していくのも仕方ないのだが、どちらかと言えば2005年の『 Live 』以前の作風の方が僕は好きだ。

でも、まあ、危険な鋭さみたいなものは随所に感じられ、そのあたりはプラグドとアンプラグドの違いこそあれ、E.S.T. 通じるものがあると思う。エスビョルン・スヴェンソン亡きあと、同じスカンジナビアンとして、彼の遺志を継ぐものはヘルゲしかいない。 次作に期待する。

田中啓文 / 落下する緑

2008年09月21日 12時37分45秒 | JAZZ書籍
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ジャズ入門書や指南書の類は、巷に佃煮にして売れるほど沢山存在ますが、ジャズを題材にした小説となるとぐっと少なくなります。ましてやミステリ小説となると皆無ですね。僕の知る限りでは、ジャズ関連のミステリ小説を書く作家は田中啓文しかいません。

自身もテナー・サックスを吹く現役のジャズ・プレーヤーであり、関西で活動をしている“ ザ・ユナイテッド・ジャズ・オーケストラ ”のバンドマスターでも田中啓文は、93年に本書にも収録されている表題作 『 落下する緑 』 で 「 鮎川哲也の本格推理 」 に入選し作家デビューを果たした作家です。

彼の著書の中で、この永見緋太郎の事件簿シリーズだけがジャズがらみのミステリです。本書  『 落下する緑 』  ( 東京創元社 ) が発売されたのは2005年で、今年になり文庫版が発売になっています。上にアップした表紙は文庫本のものです。実は8月に永見緋太郎シリーズの第二弾 『 辛い飴 永見緋太郎の事件簿 』 ( 東京創元社 )が発売になっています。こちらもただいま熱読中ですが、滅多にお目にかかれないジャズ・ミステリですので、ゆっくり味わいながら読んでいます。

さて、このジャズ連作ミステリ小説 『 落下する緑 』 には7編の短編が収録されています。ほとんどが東京創元社が発行しているミステリ専門誌『 ミステリーズ 』に連載されていた短編です。 ジャズしか頭にない世間知らずのフリー系の若きテナーサックス奏者、永見緋太郎が、身近に起きた事件、謎をその鋭い推理力で次々と解決していくミステリです。隋書に散りばめられたジャズ用語は、ややもすると、ジャズの知識のない読者には抵抗感があるかもしれませんが、逆にジャズ好きにはたまらないスパイスとなり、臨場感、リアリティー感を増幅させてくれます。

傲岸不遜な名ベーシストの所有する高価なベースが何者かに壊されてしまう話や、レコード会社の担当者を鼻で使う横行跋扈なジャズ評論家への復讐ミステリ、などなど、これは絶対モデルとなる人物がいるなぁ~、きっと( ̄∇ ̄; とニンマリしながら読める面白い話ばかりです。 あまり読むのが速くない僕でさえ、面白さのあまり一晩で読み終えてしまったほどです。

それそれの短編の終わりには、ストーリーに関連したCD, LPが3枚づつ紹介されており、ジャズ・ファンには嬉しいオマケとなっています。まずは文庫化されて読みやすくなった本書を手にいれ、気に入ったら新作の単行本『 辛い飴 永見緋太郎の事件簿 』を買われてはいかがでしょうか。

Roy Hargrove Big Band @ Blue Note Tokyo

2008年09月20日 22時58分30秒 | ライブ
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9月18日木曜日、Blue Note Tokyo にロイ・ハーグローブのビッグバンドを聴きに行った。5年ほど前にRH Factor で来日した時は観られたが、昨年の今頃、Quintet で来日した際は仕事の都合で観に行けず、悔しい思いをした。だから今回は大好きなビッグバンドを引き連れてくるということもあり、絶対にハズす訳にはいかないと思っていた。しかも今回は驚異のイタリア人歌手、Roberta Gambarini ロバータ・ガンバリーニもゲスト出演するということで、なんとも贅沢なステージである。これだけギャラ高のメンバーのステージなのにチャージが8.400円とは有り難い。しかも僕は Blue Note のメンバーになっているので、10% off の 7.540 円 で観られる。さらに先日行われた東京JAZZ のチケットの半券を提示すると2.000円分のギフトカードが頂けるキャンペーンがあったので、実質 5.500年ほどでニューヨークの一流ビッグバンドが観られるわけであるから、かなりお得なライブである。 はじめ、ロイがビッグバンドを立ち上げるのは今回が初めてかと思ったが、調べてみたら2006年にリハーサルバンドを組んで、 NYC の Jazz Gallery を拠点に活動していた時期があるようだ。そして、そのライブは All About Jazz の2006年度 Performance of The Year に選ばれている。当時のメンバーの半数ほどが今回も参加しているようだ。 ところで、ロイとロバータ・ガンバリーニの共演とはちょっと意外だが、どういう経緯で二人は共演に至ったのだろうか。長年ロイのマネージャー兼プロデューサーをしてきた Larry Clothier ラリー・クロージェは、ロバータ・ガンバリーニの作品のプロデュースも手掛けていたので、彼がこの二人を引き合わせたのかもしれない。そういえば、ロバータのデビュー作にはロイのバンドのピアニスト、ジェラルド・クレイトンも参加していたっけ。 僕が観たのは 7時からの 1st set 。客席はほぼ満員。まずはビッグバンドのメンバーがステージに登場してくる。CDでしか聴いたことのない憧れのミュージシャンがこんな間近に座っている。それだけで早くも軽い興奮状態になる。リード・トランペットのフランク・グリーンは想像していたより大柄だ。 Bob Mintzer Big Band や Gerald Wilson Big Band 、それから Village Vanguard Big Band などなど、様々なビッグバンドにハイノートヒッターとして参加してきたビッグバンド界の重要人物だ。意外に日本での知名度は低い。4th トランペットの席には大好きなダレン・バレットが座っている。髪を伸ばしてかなりイメージが変わっていた。リード・サックスは、個人的にはかなり注目しているジャスティン・ロビンソンだ。ピアノも天才肌の新人、ジェラルド・クレイトン。長いドレッドヘアーを馬の尻尾みたく後ろで束ねている。まだまだ少年ぽさの残る若者だ。お、バリトンのジェイソン・マーシャルと目が合ってしまった。コワッ! タイトル不明のおそらくロイのオリジナルで幕を開ける。(結局最後までMCがなかったので演奏曲目は全てアナウンスなし。) テーマが終わるといきなりジャスティン・ロビンソンの長尺なソロ・パートが用意されていた。通常、ビッグバンドにおいては、ソロのコーラス数はあらかじめ決められているものだが、このバンドは決まっていないのだろうか? ジャスティンのソロは永遠と続く。熱く激しいソロ。やっぱりこの人は巧い。2曲目はスタンダード ≪ September in The Rain ≫。台風13号によるドシャ降りの東京に合わせて選曲したのだろうか。ロイはヴォーカルまで披露。決して巧くはないが妙に味がある。2曲目が終わり、ここでロバータが登場。まずはしっとりと≪ Everytime We Say Good Bye ≫ を歌う。同然、ロイもフリューゲルに持ち替えて情感豊かに歌い上げる。それにしてもロバータはめちゃくちゃ巧い。ほんとにイタリア人かと疑うほど英語も巧い。何となくカーメン・マクレイを彷彿とさせる。玉石混淆の女性ボーカル界にあって、彼女は間違いなく本物だ。4曲目は一転、ラテン・アメリカ系の哀愁漂うナンバーをスペイン語で歌い上げる。どうも ≪ La Puerta ≫ という曲らしい。一度聴いたら覚えてしまいそうな美しいメロディーをもった曲だが、ネットで調べたところメキシコの “ ロス・トレス・アセス ” というボレロ系のギター・トリオが歌っていた曲らしい。ロバータは2曲を歌ったところでステージを降りた。続いての演奏曲は95年のロイの作品『 Family 』に収録されていた3部構成の組曲 ≪ Triology ≫ 。8ビートで盛り上がるこのファンキーな曲に乗せてギターのソール・ルービンのソロがフューチャーされる。これがなかなかカッコいい。ジョージ・ベンソン系のフュージョン・ギターだ。 ギター~トロンボーン~トランペットとソロが続くが、そのソロを煽り、盛り上げるバックリフがこれまたカッコいい。決して構成やアンサンブルが複雑ではないのだが、観客を楽しませるツボを押さえているから否応なしに体が揺れる。組曲の最後には再びロバータがステージに登場し、ロイとスキャット合戦で盛り上がる。続く8曲目はミディアム・テンポのファンキーな4 ビート物(タイトル不明)。 3rd トランペットのターニャ・ダービィがビッグバンドらしい爽快なソロを聴かせてくれる。髪が短く小太りなのでちょっとわかりづらいがターニャは“ 女性”だ。最後は、高速ラテンにアレンジされたロイの名曲 ≪ Public Eye ≫ 。怒涛のテュッティ! 煽るバックリフ! ここでフランク・グリーンの脳天を突き抜けるハイノート・フレーズも炸裂する。ここでいったん演奏は終了し、ロイはステージを降りるが、当然、万雷の拍手は鳴りやまず、アンコールに応えるため再登場。曲はこれまた unknown 。どこかで聴いたことのあるスタンダードのような気もするが、思いだせない。 結局、アンコールを含め10曲を演奏。演奏時間はなんと1時間30分にも及んだ。Blue Note のステージでこれだけ長いセットは初めての経験かもしれない。ロイのトランペット・ソロはあまり聴くことができなかったが、あくまでビッグバンドが主役なのでその点は仕方ない。でも、ロイは、沢山歌い、バンドを指揮し、時々踊り、終始観客を楽しませることを忘れなかった。こんな楽しいライブは何年ぶりだろう。嬉しさのあまりビールを4杯も注文してしまった。鳥肌が立ち、そして目頭が熱くなった。

Henri Salvador / Chambre Avec Vue

2008年09月17日 00時03分00秒 | JAZZ
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沖縄での夏休み休暇中、前述したロジェ・チチェロと同じくら聴いたのがこのアンリ・サルヴァドールの2000年の作品『 Chambre Avec Vue 』(邦題:サルヴァドールからの手紙 )。ダニエレ・スカナピエコ、エリック・ルラン、ニコラ・フォルメルらが参加しています。詳しくまたあとで。


Roger Cicero / Mannersachen

2008年09月16日 18時15分44秒 | JAZZ
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このブログを通じて知り合ったドイツ在住のLaie さんから、Roger Cicero ロジェ・チチェロ という男性ジャズ・ヴォーカリストのことを教えていただきました。しかも、教えていただいたばかりではなく、遥々ドイツから日本では手に入らないCDまで送っていただきました。ほんと、感謝の念に堪えません。ありがとうございました。

ロジェ氏はドイツでは有名な歌手であるようですが、日本では全く知られていません。近年の欧州ジャズ・ブームの中にあってもドイツは北欧やフランス、イタリアに比べると人気が薄く、さらに男性ヴォーカルですから分が悪いのも当然。日本に紹介する輸入盤バイヤーの目に留まらないのも無理はありません。

さて、Cicero と聞いてピンときた人はいませんか。そう、彼は Eugen Cicero オイゲン・キケロ のご子息なのです。クラシックとジャズの融合に取り組んだ父親オイゲンと、ポップなジャズ・ヴォーカリストとして人気を博す息子ロジェ。同じジャズを生業としても親子で目指す音楽的意匠は全く異にしているのが面白いですね。

簡単に彼の経歴を紹介しておきます。( wikipedia より )

ロジェは1970年、ベルリン生まれ。10代からテレビなどに出演するなど、プロとしての音楽活動を開始。1991年から96年までアムステルダム音楽学院で音楽教育を受け、卒業後は Jazzkantine や Soulounge といったグループのゲスト・ヴォーカルを務め、モントルー・ジャズ・フェスティバルにも出演した。一方で2003年には自己のカルテットを結成した。2006年、女性ピアニスト、Julia Hulsmann ジュリア・ヒュルスマンの『 Good Morning Midnight 』 への参加を経て、初リーダー作である本作 『 Mannersachen 』 を同年リリース。さらに2007年にヘルシンキで開催された欧州放送連合加盟の国々が参加して繰り広げられる各国対抗歌合戦である Eurovision Song Contest ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト にドイツ代表として参加している。しかし結果は42カ国中19位と、残念な結果に終わる。ところが、さすがに10億人が観るといわれるユーロヴィジョンだけあって、その出場を契機にロジェの知名度はアップし、国内での人気を不動のもにしていったようだ。第二弾『 Beziehungsweise 』 が昨年発売されている。

40年代、50年代のスイング・ジャズの流れを汲みながらも、ラテンやロックのテイストを織り込んだポップなスタイルと言えるでしょう。本来、ヴォーカルの良し悪しは、その発音の良し悪しも含めて評価しなければいけませんが、なにしろドイツ語ですのでそのあたりは無視するとしても、声質は非常に聴きやすく、高音のしなやかな伸びや中音域の豊さは実に心地よい印象を受けます。ドイツ語というと語感が硬く、あまり歌ものとの相性が良くないような先入観がありますが、彼の口から発せられる歌声はとっても柔らかく、肌ざわりが良いので全く問題ありません。楽曲のほとんどを Matthias Hass ( music ) / Frank Romond ( text ) のコンビが提供しています。どの楽曲も魅力的です。

バックを務めるのは11人編成のビッグバンドで、メンバーの中には NDR Big Band のメンバーとしても活躍したトランペッターのDirk Lentschat やアルト・サックスのUlli Orth などもいますが、全体の印象としては、可もなく不可もなくといったところでしょう。

とっくに昔に絶滅したと思われていた “ 男性ジャズ・ヴォーカル ”という種族ですが、最近になり、Matt DuskMichael buble などの登場により、やや息を吹き返してきた感があります。 「 Michael bubleなどジャズじゃないよ~」 という罵声が飛んできそうですが、この際、彼らがジャズ・ヴォーカルか否かなどの議論は脇に置いておきましょう。そもそも、男性で純粋にジャズ・ヴォーカリストとして生涯歌い続けることを許されたアーティストは、フランク・シナトラぐらいのもんでしょう。当時のその他大勢のジャズ歌手、たとえばスティーヴ・ローレンスにしろ、ペリー・コモにしろ、結局はジャズを捨てざるを得なかったわけだし。

ということで、もし興味を持たれた方はYou Tube で彼の映像を探してみてください。お勧めはファースト・アルバム『 Mannersachen 』 に収められていた ≪ Wenn Sie Dich Fragt ≫ あたりでしょうか。人気を裏付けるかのように、素人のモノマネやライブの隠し撮りなどもアップされていて、観ていて飽きません。




2007年のユーロヴィジョンに出演した時の映像です。

夏休み2008

2008年09月12日 00時03分17秒 | JAZZ

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今日から遅い夏休みをとらせてもらって、家族で沖縄に行ってきます。
 して、 して、 してきま~す。
帰ってくるのは来週の火曜日です。
旅行中はおそらく更新などできないと思います。
でも、ネット・カフェが近くにあったら、書くかも。
では、また。


E.S.T. / Leucocyte

2008年09月09日 21時59分35秒 | JAZZ

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エスビョルン・スヴェンソンの悲劇的な死から3か月を経て、生前にオーストラリアで吹き込んでいた音源が発売された。結果的には遺作となってしまった本作は、当初発売は10月に予定されていたが、エスビョルンの死を受けて、急遽、前倒しで8月末に発売されたのだ。すでに巷の大型量販店などでは美辞麗句を並べて賞賛している。なかには「遺作にして最高傑作」と紹介している店もある。果たして、その言葉通りの内容だろうか。

音楽ビジネス界に色目を使わず、ジャズの価値体系から距離を置いたところで、独自の自己探求をひたすら推し進めてきた彼らの意志は、確かに本作の中にも汲み取ることができる。が、しかし、E.S.T. のファンの方々からの反論は承知で言わせてもらうと、どうも心に迫るものが感じられないのだ。作曲・編曲のクオリティーも、今までの彼らの水準からすると落ちていると言わざるを得ない。決して手を抜いた作品ではないのだが、何か新しい方向性を模索しているかのような、いわば習作デッサン集的作品なのだ。あるいは、過渡期的作品と言い換えてもよいかもしれない。次に待ち受けているであろう未知なる音楽の予感は感じられるが、まだ具現化できない曖昧な輪郭がこの作品には詰め込まれている。

収録されている曲は全部で7曲。そのうち、M-2≪ Premonition ≫ は2部構成で、M-7 ≪ Leucocyte≫ は4部構成となっている。展開のないコード上で繰り返される単調な旋律。その旋律を解体、再構築しながら新しい音楽を模索しているような楽曲が並ぶ。攻撃的な面と内省的な面が交互に表出しながら物語は進行する。そう、強烈なヴィジュアル・イメージを次々と想起させる力を持った楽曲ではあるのだ。また、冷徹でアヴァンギャルドな作風は、今まで以上に顕著だ。深海まで届きそうな深いエコーがかかったエスビョルン・スヴェンソンのピアノ。ありったけのエフェクター・フッド・ペダルを踏み込んだようなノイジーでスペイシーなベース音を発するダン・ベルグルンド。

徹頭徹尾、E.S.T. の世界に染め上げられた作品なのだが、やっぱり、本作は問題作であっても、決して傑作ではない。悲しいことに。


Aaron Parks / Invisible cinema

2008年09月06日 22時04分50秒 | JAZZ

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保守派と革新派が入り乱れる混沌とした現代NYジャズ・シーンにおいて、革新本流を貫く、今最も有望視されているピアニスト、アーロン・パークスのBlue Note デビュー盤。現在までに Keynote Records というレーベルから4枚のソロ名義のアルバムを出してきたが、テレンス・ブランチャードのバンドでの活躍が認められ、今回、晴れてメジャー・デビューを果たすことになった。

83年生まれのアーロンは、10代の早い時期からケニー・バロンの薫陶を受け、弱冠16歳でデビュー盤『 The Promise 』(1999)を録音した。そこには折り目正しい正統派ピアニストとしてのアーロンの姿が刻まれていた。しかし、作品を追うごとにそのスタイルはより現代的なものへと変貌していき、2002年に吹き込まれた『 Shadows 』は、自身のオリジナル曲を中心とした都会的で洗練された作品として高い評価を得た。ちょうどその頃にテレンス・ブランチャードの目にとまり、彼のバンドに参加。5年間在籍し、3枚のアルバムにその名を刻んだ。

その一方で、 フランク・ネメスアンブローズ・アーキンムシーレイマット・ペンマンマイク・モレノ、ケンドリック・スコット、クリスチャン・スコットなど、NY の最前線で活躍する若手ミュージシャンンらと競演する中で、独自の世界観を築いていった。

本作のメンバーには、ベースにマット・ペンマン、ドラムにエリック・ハーランド、そしてギターのマイク・モレノと、盟友をそろえた。収録されてている曲は全10曲で、すべてアーロンのオリジナル曲だ。

幾分内省的で、ダークで陰鬱な楽曲が大半を占める。ブラッド・メルドーやE.S.T. 的な手法も散見される。しかし、そのような先人達のスタイルを完全に咀嚼、消化し、独自の明確なオリジナリティーを提示することに成功しているあたりに、相当の手腕を感じる。決して楽しい音ではないが、脳内に確かな余韻を残す稀有な音世界だ。

また、4人のメンバー間の結束力の強さもその音から明確に伝わってくる。特にマイク・モレノの音楽的意匠は、完全にアーロンの意匠と同一ベクトル線上にあると言ってよいだろう。こういった音楽はそれだけで聴いていて非常に心地よいものだ。

ただ、若干残念なことは、エリック・ハーランドの奏法が、いつもよりも軽く、デジタル感が漂っていることだ。スネアのチューニングがハイピッチなのか。ミキシングのせいなのか。なんだかとっても落ち着かない音なのだ。最近のNY録音の作品には有りがちだが、個人的にはあまり好きではない。

ということで、普段、欧州産ジャズを好んで聴いている方には、ややトッツキにくい面をもった作品かもしれないが、NYジャズの現状を知る意味でも、一聴の価値はある作品だと思う。きっとアーロンの醸し出す不思議な磁場を体感できるであろう。



Aaron Parks / Invisible cinema 2008 Blue Note ( Music from EMI )
Aaron Parks  ( p, mellotron, key )
Mike Moreno  ( g )
Matt Penman  ( b )
Eric Harland  ( ds )


Andre Ceccarelli / Live Sunside Session

2008年09月05日 22時20分32秒 | JAZZ
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フランス・ジャズ界の重鎮アンドレ・チェカレリの最新作が、フランスの新興レーベル、Cristal Recordsから発売された。

昨年発売された前作 『 Golden Land 』 は、エンリコ・ピエラヌンツィやデヴィッド・エルマレクを擁した優雅で気品に満ち溢れた傑作であった。今回は、アントニオ・ファラオ、シルヴァン・ブフ、トーマス・ブラメリを迎えてのライブ盤で、しかも二枚組だ。

ライブ会場となったのは、パリの Sunside というライブ・ハウス。この Sunside のあるロンバール通りには他にも Baiser sale (ベゼ・サレ)や Duc des Lombards (デュック・デ・ロンバール)など、ジャズを聴かせるクラブが点在している。例えるならば“ パリのニューヨーク52番通り ” みたいなものだ。

この Sunside  はビルの1階にあるのだが、実は地下にも Sunset  というライブ・ハウスがある。もともとは83年にまず地下の Sunset  がオープンし繁盛したため、レストランであった1階部分をライブ・ハウスに改装して2001年にオープンしたのが Sunside  である。 Sunset  は主にエレクトリック・ジャズやワールド・ミュージックのライブを、 Sunside  はアコースティック・ジャズのライブを行っているようだ。

本作は2枚組でトータル92分とやや短めの録音時間。収録されている曲は、Disc 1 に 5曲、Disc 2 に 5 曲の計 10 曲。最初と最後に ≪ Giant Steps ≫ のバージョン違いを持ってきている点が面白い。どちらも甲乙つけ難い名演である。そのほかにはショーターの ≪ Juju ≫ や、マイルスの ≪ Seven Steps to Heaven ≫ などもやっている。残りはメンバーのオリジナルである。

やはり小さなハコで繰り広げられる一流ミュージシャンのライブは凄まじい迫力があり、圧倒される。決して Hi-Fi な録音ではないが、それがかえって臨場感を高める。最後列からチェカ爺が強烈に煽る。ファラオもそれに加担する。でもって、ブフが否応なしに熱くなり、沸点超えの強烈ブローを繰り広げる。どんどんとテンションの上がっていく様は圧巻だ。今、フランスで最も勢いのある若手テナーはブフとエルマレクだろう。そんな確信を与えてくれる演奏だ。

それにしても、チェカ爺は1945年生まれだから、今年で63歳になるはずだが、いったいこのエネルギーはどこから来るのだろう。老境に入っても若手ミュージシャン相手に一歩も譲らず、むしろ余裕綽綽で彼らを後方から激しく煽るのだから大したものだ。音圧の衰えなど微塵も感じられない。

 ≪ Giant Steps ≫. ≪ Juju ≫

明日につづく

JOC featuring Jesse Van Ruller / Silk Rush

2008年09月02日 18時10分13秒 | JAZZ

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Jazz Orchestra of The Concertgebouw featuring Jesse Van Ruller / Silk Rush

欧州のビッグバンド界隈は今や百花繚乱の様相を呈している。長い歴史を誇るドイツの WDR Big Band (西ドイツ放送協会ビッグバンド)やNDR Big Band (北ドイツ放送協会ビッグバンド)、デンマークの Danish Radio Big Band (デンマーク放送ビッグバンド)から、90年代に産声を上げた Brussels Jazz Orchestra ( 以下 BJO )や Paris Jazz Big Band ( 以下 PJBB ) などの新興勢力まで、現在のヨーロッパ大陸は、まさに戦国時代さながらの群雄割拠の勢力争いが繰り広げられている(ちょっと大げさか)。

今日聴いているオランダのビッグバンド、Jazz Orchestra of The Concertgebouw ( 以下JOC )も BJO やPJBB 同様、96年に創立された歴史の浅い集団だ。日本に紹介されたのは今年6月に発売された彼らの5作目の作品『 Riffs’n Rhythms 』(前項あり)が初めてである。そのため最近までほとんど日本では知られていなかったビッグバンドと言ってよい。しかしスローペースながら現在までに計6作品を制作し、着実に知名度をアップさせてきた。

オランダにはストリングス・セクションを有する世界でただ一つのビッグバンド、メトロポール・オーケストラや、比較的コンベンショナルなスタイルで安定したサウンドを奏でる83年設立のDutch Jazz Orchestra などが既に存在しているが、この JOC は地元出身の若き精鋭を中心に結成された新しいビッグバンド・サウンドを模索する集団という点で他との差別化を図っている。

優れたビッグバンドには必ず優れたアレンジャーが存在するものだが、本バンドにはヘンク・モトーヘルトという刺激的でカッコいいアレンジを提供するブレインがいる。彼はバンドの創立者の一人でもあり、指揮や作曲も手がけている。そして JOC の最大のウリは、なんといってもギターのジェシ・ヴァン・ルーラーが参加していることだろう。さらにはピアノは Criss Crossに素晴らし作品をいくつも残しているピーター・ビーツ ( 前任はなんとミケル・ボルストラップ! )。ドラムには BJO や メトロポール にも名を連ねるテクニシャン、マタイン・ヴィンクが籍を置いている。

このように本来なら地味な役割を演じるはずのリズム隊が一番目立っている珍しいビッグバンドだが、無名といえどホーン陣営のレベルも相当高い。テナー&クラリネットのJan Menu ヤン・メユーやトランペットのRuud Breuls ルード・ブルルスなど、オランダ・ジャズの新人賞であるWessel Ilacken Prijs ( Prize ) ヴィッセル・イルケン賞を受賞した精鋭達が終結しているのだ。ルード・ブルルスはMetropole Orchestraや Dutch Jazz Orchestra でも活躍している中堅プレーヤーで、先日発売されたジム・ベアードの『 Revolutions 』(前項あり)でも胸のすく爽快なソロを聴かせていたのが記憶に新しい。

さて、今回の最新作だが、JOCきってのスーパー・スター、ジェシを主役に配した思い切った作品だ。演奏曲もすべてジェシのオリジナル。いわば“ ジェシ・ヴァン・ルーラー・ソングブック集 ”である。デビュー当時はその馬鹿テクぶりに誰もが腰を抜かしたものだが、4ビート一辺倒な単調さとソング・ライティング能力の未熟さを感じずにはいられなかったが、ここでのアレンジを施された彼のオリジナル曲は、そんな過去の先入観を払拭させてくれるのに十分魅力的だ。ディレイもディストーションも通さないクリアなジェシのギター音が、分厚いホーンの音圧にどう対抗できるのかが聴きどころだが、理想的なバランスで両者がブレンドされ、音響的にも非常に心地よい仕上がりをみせている。これがライブ収録とは俄かに信じられない。

それにしてもギターをフューチャーしたビッグバンド作品って、今まであっただろうか。すぐに頭に思い浮かぶのは、Ryan Ferrira ライアン・フェレイラというフランク・ギャンバレ系のギタリストをフューチャーした HR Big Band の『 Three Decades of Steely Dan 』と、スティーブ・ヴァイが Metropole Orchestra と競演した『 Sound Theories I & II 』( YouTube 動画はこちら )ぐらいだ。

ということで、なんと、10月に JOC が初来日し、Blue Note Tokyo で一夜限りのライブを行うのだ。これは、絶対はずせない。仕事をズル休みしても観にいこうと思っている。

  Steve Vai  from “ Passion & Warfare ”

<追記>
ギターとビッグバンドの共演作品では、ビレリー・ラクレーンが昨年発表した WDR Big Band との作品 『 Djangology/To Bi or Not to Bi  』  というのがありましたね。


中年音楽狂サンの記事をあげときます(TBができないため)。
http://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2008/10/jesse-van-ruler.html