僕の手元にも『 Swinging MACEDONIA 』 , 『 Ten To Two Blues 』 (『 After Hours 』),『 ‘Round Midnight 』の計3枚に<Old Fisherman’s Daughter>が収められていて,それぞれメンバーによって構成が少しずつ違うくらいで,基本的にゴイコビッチの歌い回しは同じなんですが,いい曲は何度でも聴きたくなるもので,先日,復刻された彼の1975年のアルバム『 Slavic Mood 』 (VISTA)にも<Old Fisherman’s Daughter>が入っていると知って,早速購入してみました。
で,これが予想以上の素晴らしい出来の良さで,個人的には名盤の誉れも高い『 Swinging MACEDONIA 』や人気盤『 Ten To Two Blues 』なんかよりずーっと好きになってしまいました。好きになったらとことん聴き倒すのが僕の主義で,仕事の行き帰りの車の中から,手術中もBGMでかけっぱなしでいたところ,看護士が「これはインド音楽なの?」と人の気持ちを逆撫でするような発言まで飛び出しました。でも東欧のエキゾチックな哀感って,確かにインド音楽にも通じる所があるのかもしれません。ライナー・ノーツにも書いてあるように,アルバム全体の雰囲気は本作の8年前に吹き込まれた『 Swinging MACEDONIA 』に相通じるものがありますが,よりノリの良くて分かり易いテーマを持ったオリジナル曲で構成されていて,1曲として弛みがなく,最後まで一気に聴き通せる内容です。全く肌触りは異なりますが,Blue Note 4000番台のリー・モーガンがよく取り上げる8ビートの中近東ハード・バップ?っぽい感じもあります。
彼の傑作,ワルツ・バラード<Old Fisherman’s Daughter>は,ここではミュートでまずゴイコビッチが優しく滑り出すと,サビでテナーのベン・トンプソンがそのまま引継ぎ(ここの吹き分けに痺れます),またゴイコビッチへ。余談ですが,『 Swinging MACEDONIA 』での<Old Fisherman’s Daughter>って,ゴイコビッチのテーマの後ろで,ネイザン・デイヴィスのフルートが鳴りっぱなしですよね。あれ,とっても煩いんですよね。名曲がちょっと台無しかなと思っていたところに本作のバージョンを聴いて目から鱗ですわ。これがベスト・バージョン,と勝手に決め付けています。
いずれにしてもジャケットのダサさに比べて,内容は非常に良いです。ピアノのヴィンス・ベネディッティのセンスの良さにもビックリ。今度彼のJHM盤買おうっと。
【愛聴度 ★★★★★】