雨の日にはJAZZを聴きながら

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LTC / A Different View

2008年07月30日 21時47分58秒 | JAZZ

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Pietro Lussu ( p )
Lorrenzo Tucci ( ds )
Pietro Ciancaglini ( b )

イタリアの中堅プレイヤーであるピエトロ・ルッス ( p )、ロレンツォ・トゥッチ ( ds )、ピエトロ・シアンカグリーニ ( b ) らが結成したユニット LTC の第二弾。発売になったのは昨年暮れでしたが、最近になってやっと購入し、思いのほか出来が良くて愛聴している作品です。ピアノのルッスは、スケーマ・セクステット~ニコラ・コンテ・バンドの流れで徐々に頭角を現してきた人で、ちょっとクラブ系の範疇に入るミュージシャンというイメージもありますが、90年代からロザリオ・ジュリアーニのサポートもしていましたし、05年にはこのLTC名義で第一弾となる『 Hikmet 』( VVJ ) という列記としたジャズ作品を出しています。

この『 Hikmet 』はゲストにマーク・ターナーを迎えたハード・バップ作品でしたが、マーク・ターナーはゲストという役回りながらも、全曲で豪快にブローし、しかもこの時は絶好調だったため、LTC のメンバーはやや影が薄く、LTC の音楽性が発揮できていない作品でした。ただし、全体としてのサウンドは滅茶苦茶カッコよかったのです。あのブルックリン系の覇者マーク・ターナーがこの時だけは豪快なバッパーに変身していて非常に面白かった。

そして、あの時の控え目な LTC のイメージがあったのと、なんといっても今回の新作の解説が小川充氏と帯に記されていたのが、今まで購入を躊躇っていた理由です。

キャプションには、「 解説:小川充 イタリア発。スタイリッシュな新世代ジャズの極致!」 と書かれています。僕は帯に“ 小川充 ”とか“ 須永辰緒 ”書かれているだけで真っ先に購入リストから外しています。彼らのことを誰かが「ジャズという惑星をめぐる宇宙人」と譬えて言い表していましたが、宇宙人ですから話が通じない。彼らの話も理解できない。全くジャズに対する価値基準の異なる方が薦めるジャズなど信用できない。ということで、今まではスルーしてきたのですが、今回はちょっとした冒険買いをしてみました。

一曲目から哀愁メロディー&ラテン・リズムのクラーク=ボラン・ビッグバンドの名曲≪ Just Give Me Time ≫ です。いかにもクラブ系のファンが喰いつきそうなナンバーです。やはりクラブ系をターゲットにした作品なので、全体に 非4ビート の軽快な楽曲が多いです。やや荒っぱい演奏ですが、打鍵が強くダイナミックで、聴き心地は確かにイイ感じです。70年代のホレス・シルバーを連想させるラテン・ゴスペル調の曲もある。終盤にはニーナ・シモンの≪ I Wish I Knew How It Would Feel to be Free ≫ なんてやってて、泣けます。

緊張感は皆無で、テクニック的にも平凡。でもまあ、聴いているうちに自然に体が揺れている軽快なサウンド。たまにはこんなのもイイな~と思いながら、たまにではなく、このところ頻繁に聴きこんでいます。

      
LTC + Mark Tuner  『 Hikmet 』  2005年  Via Vento Jazz

これは名盤。な~んだ、ちゃんとしたバップもできるじゃ~ん、と、マーク・ターナーの懐の深さを思い知った衝撃の一枚。ふにゃふにゃ、うねうねと変態フレーズを浴びせかけるターナーも素敵ですが、こんな王道路線も一枚位持っててもいいですね。

訃報 ハイラム・ブロック

2008年07月28日 09時29分14秒 | JAZZ
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24丁目バンドやデヴィッド・サンボーンらとの競演を通じて日本でも人気のあるギタリスト、Hiram Bullock ハイラム・ブロックが、7月25日に喉頭癌で亡くなられたようです。昨年の東京JAZZにも出演し、大きなお腹を揺らせながら愛嬌たっぷりに観客席を走り回っていたのに....。 Rest in Peace

Hiram Bullock Late Night with David Letterman Guitarist Dies Hiram Bullock, onetime barefoot guitarist for Paul Shaffer's World's Most Dangerous Band, dead at the age of 52. Bullock had been fighting a tumor in his throat since January.  

    ( All About Jazz より引用 )

その他の記事 http://thejazznetwork.ning.com/

ハイラム・ブロックは、おそらくかなりのへヴィー・スモーカーだったのでしょう。でも、彼が本当にヘヴィー・スモーカーだったかどうかは僕は知りません。それでも「おそらくそうだった」と推測できる根拠は、喉頭癌という癌が、最も喫煙と関連が深い癌だからです。極端に言えば、喫煙しなければ罹らない癌が喉頭癌ということです。

発癌と喫煙の関連度を表す用語として“ 発癌寄与度 ”というのがあります。つまり、「その癌の発生に、喫煙がどの程度関与しているか」という指標です。その寄与度でいうならば、喉頭癌は驚くことに約95%です。逆の見方をすれば、喫煙しなければほとんどの喉頭癌は生じないわけです。一般的に喫煙との関連が問題視されている肺癌でさえ約70%ですから、いかに喉頭癌が喫煙によってもたらされているかが分かります。本当に喫煙していて怖いのは喉頭癌です。ちなみに食道癌は約50%です。

先日も忌野清志郎さんが喉頭癌の骨転移のため、FUJI ROCK 2008 など全ての公演をキャンセルするとの報道があったばかりですが、彼も長年喫煙し、それもかなりのヘヴィー・スモーカーだったようです。あるファンが「清志郎は禁煙していたのに、なぜ癌になるんだよ~」と叫んでいたのが印象的でしたが、癌には長い潜伏期というものがあるので、禁煙したからといってすぐに発癌のリスクが減るわけではありません。肺癌でいうならば、禁煙後も発癌のリスクは持続して高く、禁煙後10年でやっとリスク減少がみられると言われています。

それにしても、今年に入ってからなんだか訃報のニュースが多いと思いませんか。All About Jazz で訃報記事を検索して、リストを作ってみました。

ピート・カンドリ             1月11日没 前立腺癌     享年84歳
デニス・アーウィン         3月10日没 肝臓癌        享年56歳
ジミー・マクグリフ          5月24日没 多発性硬化症   享年72歳
ボブ・フローレンス         5月15日没 肺炎              享年75歳
エスビョルン・スベンソン 6月14日没 事故死           享年44歳
ロニー・マシューズ         6月28日没 膵臓癌           享年72歳
ジョー・ベック                7月22日没 肺癌              享年62歳
ジョニー・グリフィン         7月25日没 詳細不明        享年80歳
ハイラム・ブロック         7月25日没   喉頭癌           享年52歳

上記以外でもマイナーなところでは、ジミー・ジュフリーやセシル・ペインらも亡くなられています。

こうして見ると、ピート・カンドリは別として、みんなやや短命ですね。9人の故人の平均年齢が66歳。エスビョルン・スベンソンの事故死を除いても69歳と、70歳に満たないのですから。死因に目を向けてみると、9人中5人が癌死です。

このあたりの事実を裏付けるような論文があります。

「 Medical Problems of Perfoming Artists 」 という、音楽家の健康問題を扱うユニークな医学雑誌があるのですが、その2000年9月号に次のような論文が掲載されました。

The Longevity and Causes of Death of Jazz Musicians, 1990-1999

本論文は1990年から1998年の間に亡くなられた346人のジャズ音楽産業になんらかの形でかかわった人を対象としたスタディーで、対象をミュージシャンと非ミュージシャンに群分けして、死亡時年齢、平均寿命、死因別死亡割合などを統計学的に比較し、考察を加えたものです。

これによると、ジャズ・ミュージシャンの死亡時年齢は70歳と、非ミュージシャンに比べて4歳ほど若い。しかも平均余命を全うできた人も少ない。死因を見てみると、癌死の割合が一般にくらべて高い。などの結論を導いています。

ざっくり言って “ ジャズマンは癌に罹って早死にする ” ということでしょうかね。
なお、ウェブ上で閲覧できるのはアブストラクトだけです。

だいぶ話が逸れてしまいましたが、最後に僕が大好きなサンボーン、マーカス・ミラーらとやった≪ Love And Happiness ≫ を観ながら、彼の死を偲ぶことにしましょう。


日曜日のジャズ日記

2008年07月27日 08時07分29秒 | JAZZ
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去年暮れの大掃除で、例年のごとく一年分の「 スイングジャーナル 」を処分したとき、来年こそは読みもしないこの本を買うのはやめようと決心し、以来、同誌は立ち読みで済ませています。愛読コーナーは杉田宏樹氏と大村幸則氏の担当している輸入盤情報ぐらいですから、3分もあれば立ち読み完了です。

以前はライブ情報も目を通していましたが、今では「 ジャズ批評 」誌もライブ情報を載せるようになったので、そちらで用が足りてしまいます。「 ジャズライフ 」誌はだいぶ前から購入していませんので、現在買っているジャズ雑誌は唯一、「 ジャズ批評」だけということになります。

さて、昨日、仕事帰りに8月号のスイングジャーナルを職場近くの大型書店で立ち読みしたのですが、驚いたことに、にこやかにほほ笑むウイントン・マルサリスとカントリー界の帝王ウイリー・ネルソンの姿が表紙を飾っているではないですか! 新譜紹介コーナーの記事によると、マルサリスのレギュラー・バンドにウイリー・ネルソンが参加した形で録音されたようです。

ウイリー・ネルソンがジャズだなんて意外に思うかも知れませんが、78年に彼は名作『 Stardust 』というスタンダード集を出しているんですよね。81年の『 Somewhere Over The Rainbow 』もAOR風のスタンダード集でしたし、けっこう彼はスタンダード好きなのです。このあたりは大学生の頃、よく聴いたものです。そう、82年のロジャー・ミラーとの共作『 Old Friends 』もジャズでは決して味わえないアメリカのもうひとつの顔を見せてくれる印象深い作品でした。でも、本格的なジャズ・ミュージシャンを起用してのアルバムは初めてではないでしょうか(ハーブ・エリスが参加した作品はありましたが。詳細失念 )。リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラのマルサリスはあまり面白くないけど、それ以外は結構好きなので、明日にでもさっそく買ってこようと思ってます。

さて、よく晴れた日曜日なのに、今日も僕は試験勉強で憂鬱な時間を過ごしています。せめて爽やかな音楽でも聴いて気分を晴らそう! ということで、ちょっと恥ずかしいのですが、「日曜日の午前中のドライブ&オープン・カフェでの遅い朝食」をイメージして、AOR~JAZZのコンピを作ってみようかと、思ってます。

夏コンピ  

   

    

    

Al Foster / Love, Peace and Jazz !

2008年07月26日 23時08分29秒 | JAZZ


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相互リンクさせていただいているイタリアン・ジャズ・ファンのrhodia さん は、部屋でジャズを聴いているだけでは物足りず、海外のジャズ・フェスティヴァルに出かけて行ったり、また、お気に入りのミュージシャンに直接連絡をとって、お友達になっちゃたりと、とっても行動派のジャズ・ファンでいらっしゃいます。

そんな彼女が先月、ニューヨーク州のロチェスターで開かれた Rochester International Jazz Festival に行かれました。現地で、公演待ちの行列に並んでいると、イタリアの新興レーベルJazzeyes のゼネラルプロデューサーである Paul Siculiana 氏に声をかけられて、Jazzeyes のサンプルCDをいただいちゃったという嬉しいお話をされていました。そのCDの中身を見せていただいたところ、すでに発売になっているケビン・ヘイズやエディー・ゴメスのCD以外に、アル・フォスターのCDもあったので、おそらく Jazzeyeからの4作目はアル・フォスターの新作なんだろうな~と思っていたら、やっぱり発売されました。

イタリアはパレルモ発の新興レーベル Jazzeyes は、現在までにジョー・ロック、ケビン・ヘイズ、エディー・ゴメスの3作品をリリースしてきました。今回のアル・フォスターの新作がレーベル第4作目となります。まだカタログ数はわずかですが、ケビンとエディーを聴いた限りでは非常に丁寧な仕上がりの秀作で、録音もよく ( ちなみにケビンの作品は内藤克彦氏が音を作ってます )、しばらくは注目していきたいと思っていたレーベルです。

さて、アル・フォスターですが、考えてみると彼のリーダー作ってほとんどありませんね。僕の手許には98年にドイツのライカというレーベルから発売された『 Brandyn 』 しかありません。ネットで検索してみたのですが、彼のOfficial Web Site もないし、ウィキにもディスコグラフィーは掲載されていません。彼がレギュラー・カルテットを組んだのが96年ということですから、12年間の活動期間で作品が2作品とはちょっと寂しい感じがしますが、これも彼の優しく奥手な性格から来るものなのでしょうね。

本作品のメンバーは、ピアノにケビン・ヘイズ、ベースにダグラス(ダグ)・ワイス、そしてサックスにエリ・デジブリ(前項あり)という中堅+新進気鋭の組み合わせ。エリ・デジブリはデビュー当時からすっかりファンになってしまって追っかけしている吹き手で、エモーショナルに吹きまくるタイプです。ケビンとエリは05年に『 One Little Song 』というデュオ作品を出している仲です。ダグ・ワイスはカルテット結成当初からのオリジナル・メンバーです。

曲目は、アルのオリジナル3曲と、≪ ESP ≫、≪ Blue In Green ≫、そしてブルー・ミッチェルの ≪ Fungii Mama ≫ の全6曲。アルのオリジナル3曲の内2曲は前述した97年の作品『 Brandyn 』でも演奏されていた≪ The Chiff ≫と≪ Brandyn ≫。ブルー・ミッチェルの ≪ Fungii Mama ≫は、彼のBlue Note 初リーダー作である人気盤『 The Thing To Do 』( BN 4178 ) のA面一曲目に収められていたラテン~カリプソ風の軽快な曲ですが、この作品にはアル・フォスターも参加していたんですね。ちなみにこの作品がアルの初レコーディングになります。

寺島靖国氏が著書の中で、アル・フォスターのことに関して「アル・フォスターってやつは、どうしようもなくドラムの雰囲気作りがうまい~」と語っていましたが、まさにそのとおりで、1曲の中で次々とリズム・パターンを変えつつ、時にはフロントを激しく煽り、時にはフロントの呼吸に呼応しながら、音楽の背景を描いていく手法に思わず陶酔してしまいます。また、随所に埋め込まれた絶妙な小技もお見事としか言いようがなく、やっぱりこの人は凄いな~と今更ながら感心してしまいます。この作品、極端な言い方をすれば、アルのドラミングだけを傾聴しても十分楽しめます。

一方のエリ・デジブリも絶妙なねじれ加減が心地よく、しかも要所要所で強暴にブローしまくってくれるので、ますます好きになっちゃいます。でもまあ、アルの前作『 Drandyn 』でのクリス・ポッターの素晴らしいプレイに比べたら負けちゃうのは仕方ありません。

全体にゆったりとした疾走感を持続しながら生々しく進行するライブをうまく捉えた素晴らしい作品だと思います。マスタリングも内藤克彦氏で、現代的な音の響きを重視しながらも、音が痩せずに芯が太く温かみを温存した録音、つまりはちょうど、ヴァン・ゲルダーとジム・アンダーソンのイイとこ取りのような美音ですね。そして、この作品はライブですから、可能な限り大音量で聴ければ、相当のトリップ感が体感できると思います。


Al Foster  『 Brandyn 』  1997  LAIKA
アル・フォスターよりも、クリス・ポッターの凄さについ聴き惚れてしまうアルバム。


Blue Mitchell  『 The Thing To Do 』  1964  BLP-4178
このアルバムはLPでしか持っていなかったので、久し振りにレコード棚を漁って引っ張り出してきました。今回のアルの新作でも演奏されていた≪ Fungii Mama ≫ですが、ブルー・ミッチェルとジュニア・クックの奏でるメロディーのなんと爽快なこと! 空の彼方に飛翔していくかのように高らかに歌い上げる様は、決して現代ジャズには見られない潔さがうかがえます。やっぱりジャズってこうでなくちゃね~と、久し振りにBlue Note 60年代の空気を味わった感じです。

[ 追記 8/27 ]
Al Foster のリーダー作に関して、中年音楽狂さん、Sugarさん、Ozaさんらからの
情報を総合しますと、現在までに以下の3作品が存在するようです。

1978 『 Mixed Roots 』 Laurie Records
1979 『 Mr. Foster 』  Better Days Records
1997 『 Brandyn 』  LAIKA Records

月曜祭日のジャズ日記

2008年07月21日 16時56分55秒 | JAZZ

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来月の専門医試験に向けての勉強を朝から部屋に籠ってやっています。とは言っても、ジャズを聴いたり、時々ベランダに出てビールを飲んだり、借りてきたビデオをみたりしながらですけど。 というわけで、現在の僕にとってのファースト・プライオリティーは勉強ですので、ジャズの話は極力少なめにしておいて、今、聴いているCDだけでもアップしておきます。

      
Django Bates 『 Winter Truce ( And Homes Blaze ) 』  1995 Bamboo

もともと僕はプログレッシヴ・ロックが好きで、たまたま大学浪人時代にFMで聴いたジョー・サンプルやジョー・ザヴィヌルに感動してジャズに入ってきた部類なので、プログレと親縁関係のあるジャズへの興味は今でも続いています。あのビル・ブラッフォードのバンド、アースワークスに80年代から90年代かけて在籍したジャンゴ・ベイツは、僕にとってはジャズ・ビッグバンドのアーティストというよりは、プログレ界の人という認識でいます。「ベランダでビールを飲んだり~」なんて書いてたら、思いだして引っ張り出してきちゃいました。凄く賑やかでハイ・テンションの名曲がずらり。カッコいいです。

      
Cholet - Kanzig - Papaux Trio  『 Beyond The Circle 』  2008  cristal records

MOONKS本に小山智和氏が、このコレット・カンツィッヒ・ポパー・トリオの前作『 Under The Whale 』 を紹介されていましたが、彼らの最新作が今回はフランスのCristal から発売になりました。このレーベルは僕が贔屓にしているParis Jazz Big Band なども手掛けていて、注目しているのですが、また素晴らしい作品を出してきました。ジャケットがいかにも夏向きで涼しげでしょ。でも内容は清涼感漂う演奏というよりは、透徹な響きをもったECM的サウンドです。中世王宮神殿の大理石廊下を素足で歩いて行くような感触。ピアノのジャン・クリストフ・コレットは初見でしたが、ベースのヘンリ・カンツィッヒ( Henri Kanzig )は、ティエリー・ラングと長く活動を共にしていたのでよく知っていました。ウッディーな柔らかいベースを弾く名手です。下にちょっとだけ彼のリーダー作を紹介しておきます。

      
Henri Kanzig  『 Grace of Gravity 』  1994  Plainisphare

リーダーはカンツィッヒですが、チャーリー・マリアーノの甘酸っぱい美メロ・ソロがなんとも言えない酩酊感を誘います。ホント、マリアーノって幾つになってもイイよね。

      
Gianluca Caporale 『 Un Lungo Viaggio 』  2007 Wider Look

Gianluca Caporale ?  あぁ~、トロンボーンの人ね。あ、あれは Gianluca Petrella か。 そうだ、ピアニストの......あれは Gianni Cappielo でしたね。
ということで、結局、初見のテナリスト、ジャンルカ・カポラルの作品でした。(イタリア人って、似たような名前が多くて、ほんと、困る。)
ファブリツィオ・ボッソが参加はしているのですが2曲のみと、購入するかどうか微妙に悩むところですが、これが、そんなボッソに関係なく、素晴らしい出来の良さです。ハードでファンキーでソウルフル! これぞイタリアのジャズだね~。と、徹頭徹尾、体育会系ハード・バップです。確かにボッソがもっと吹いてくれれば文句ないけど、リーダーのカポラルも、なかなか上手い。ロリンズやデックス系の男気あるゴリゴリのブローをかましてくれます。これからの猛暑の中、裸でビール片手にこんなジャズ、サイコーじゃないですかね。


George Gruntz Concert Jazz Band  『 First Prize 』  1989  enja

いつもコメントしてくださっているドイツ在住のLaie さんと、ジョルジュ・グルンツの話題になりましたので、僕の愛聴盤をちょと引っ張り出してきました。ジョルジュ・グルンツと言えば、母国のジャズ・レーベル、TCBから数多くアルバムをだしていますが、この作品は、TCBより以前に録音されたenjaの作品です。ビッグバンドといってもメンバーがすごくて、フランコ・アンブロゼティもいたし、今でも同バンドで活躍しているクリス・ハンターやラリー・シュナイダー、それにアダム・ナスバウムなど、信じられないミュージシャンが名を連ねています。最近はドニー・マッカスリンなんかも加入しているんじゃないかな。このバンドは80年代から現在に至るまで、スイス人はもとより、米国人、ドイツ人、イギリス人など、多くの外国人が参加した多国籍バンドです。つい最近、新作をTCBより出していると思いますが、まだ、購入していません。TCBって、結構高値なんですよね。


Steve Kuhn Live at Tokyo TUC

2008年07月20日 23時41分28秒 | ライブ

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July 19th 2008
Steve Kuhn (p)
Eddie Gomez (b)
Billy Drummond (ds)

※曲目については、公式のものではありません。

< 1st set >
01. If I Were A Bell
02. Two By Two
03. La Plus Que Lente / Passion Flower
04. Pavane pour une infante défunte (亡き王女のためのパヴァーヌ)
05. Round About Midnight ( intro ) / I Thought About You
06. Ocean In The Sky

< 2nd set >
07. Lotus Blossom
08. Love Letter To My Father
09. Slow Hot Wind
10. Poem For #15
11. Airegin

< encore >
12. Stella By Staright

日本のジャズ・ファンに愛され、毎年のように来日されているピアニスト、スティーブ・キューンのライブを、先週の土曜日、神田のTokyo TUC に聴きに行ってきました。

平日はビジネスマンで活気ある神田岩本町も、土曜日となるとたいへん静かな街に変わります。Tokyo TUCは、秋葉原駅から徒歩で5分ほど、初めて訪れる人は大概迷子になってしまうだろう裏路地に、ひっそり佇んでいます。

同店は、事前に料金を郵便振り込みした時点で予約成立となり、その順番で店内に案内されるというシステムです。僕は仕事の都合もあり、直前予約だったので74番でした。ですから良い席ははじめから諦めていたのですが、上手い具合にピアノの近くの席にすわることができてラッキーでした。

会場を見渡すとそれほど大きくない空間にもかかわらずざっくり計算して100人以上はお客が入っています。ギュウギュウ詰めの地下室は、酸欠を起こしそうなくらい熱気にあふれ、雰囲気も上々。ここは、Blue Note Tokyo や Cotton Club のように、入店してからライブが始まるまでの時間が長くなく、しかも食事のオーダーをせずに済むので非常に良心的で合理的です。

ビールを飲みながら待つこと15分。薄暗いステージにライトがあたり3人が静かに登場です。キューンは一曲目の≪ If I Were A Bell ≫ のあのイントロを弾きながらモニター音量を軽くチェックし、そのまま演奏に入っていきます。

演奏曲目は上記のごとくですが、M-01 ≪If I Were A Bell ≫、M-02 ≪Two By Two≫、M-03 ≪La Plus Que Lente / Passion Flower≫、M-07 ≪Lotus Blossom≫、M-09 ≪Slow Hot Wind≫、そしてアンコールの ≪Stella By Staright≫ などすべて、昨年発売された作品『 Live at Birdland 』( 2007 Blue Note ) でも演奏されていた曲です。ですので、大体の雰囲気は『 Live at Birdland 』と同じだと思ってもらって結構です。

M-4 ≪亡き王女のためのパヴァーヌ≫ は同名のVenus 盤からの選曲。M-06 ≪Ocean In The Sky≫ は言わずと知れたキューンの代表作ですし、ロリンズの M-11 ≪Airegin≫もたびたび演奏する彼の愛奏曲です。唯一M-08≪Love Letter To My Father≫ だけがエディー・ゴメスのオリジナルで、彼のリーダー作『 Next Future 』( 1993 Stretch ) に収められていたバラードです。普段はあまり観られないゴメスの美しいボウイングによるメロディーが聴かれました。

M-05 ≪Round About Midnight ( intro ) / I Thought About You≫ は、僕が勝手に曲名をつけてしまいましたが、≪I Thought About You≫に≪Round About Midnight≫のイントロを引用した曲です。途中に≪Round About Midnight≫のあのブリッジ部分も引用されたり、また≪ My One and Only Love ≫ を大々的に引用したりして不思議な世界を演出していました。このような引用(いわゆるコーテーション Quotation )のさりげない使い方は彼の得意技ですね。

M-10 ≪Poem For #15≫ はやはりキューンのオリジナルで、スティーブ・スワローとのデュオ作品『 Two by Two 』( 1995 Owl ) や、デヴィッド・フィンク、ビリー・ドラモンドとのトリオ作品『 The Best Things 』( 2000 Reservoir ) に収められていました。前者ではメロディーをバックにキューンが詩を朗読するといったヴァージョンでしたが、後者には詩の朗読は入っていません。今回のステージでは詩の朗読ではなく、詩をメロディーに乗せて歌っていました。誰しも彼の歌は上手いと思わないでしょうが、なかなか味があり、僕は嫌いではありません。僕の隣にいた中年の男性は、いきなりキューンが歌いだしたので吃驚していました。Venus あたりからキューンのファンになった方にはキューンのヴォーカルは驚きかもしれませんね。

この曲についてキューンは、「この曲は元ニューヨーク・ヤンキースの野球選手に捧げて書いた曲です。彼はキャッチャーをしていて、またチームのキャプテンも務めていましたが、不幸にも飛行機事後で亡くなられてしまいました。25年以上も前の話です(正確には79年のことです)。彼の名前はサーマン・マンソンといいます。」と話されていました。

全12曲。休憩をいれて、約70分のセットを2回。70歳のキューンにはかなりハードだったのではないでしょうか。アンコールの演奏の前に深く溜息をつかれていました。終演後にサイン会があり、大勢のファンが残っていましたが、僕は私用のためそれには参加せず、帰ってきました。ホント素敵な一夜を過ごすことができました。キューン、ありがとう。


Steve Kuhn Live 前夜祭( 2 )

2008年07月18日 20時51分04秒 | JAZZ
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梅雨はもう明けているんだろうなぁ~と、高を括っていたら、夕方にひと雨降っちゃいました。これで少しは涼しくなったかと思いきや、湿気ばかりこもって逆に蒸し暑くてぐったりしちゃいます。そんな早くも夏バテぎみの僕を尻目に我が愚妻は、いたって元気で、「 雨もやんだから下谷の朝顔市に行ってくるね~ 」と言って、先ほど子供と元気よく出かけでしまいました。結婚するまで全然知らなかったのですが、妻は意外にお祭り好きなのです。

さて、そうこうしているうちにスティーブ・キューンのライブが明日に迫ってきました。今日も引き続きキューンの旧作を引っ張り出して、聴いております。

      
『 Mostly Ballads and More 』 2005年 P.J.L

オリジナルは87年にリリースされた『 Mostly Ballads 』( New World Records ) ですが、05年に未発表曲4曲を追加してP.J.L. から再発された作品です。録音は84年で、キューンのソロとハーヴィー・シュワルツ( b )とのデュオから構成された静かな作品です。この作品は発売時、ジャケ違いの日本盤LPで購入しました。それまでのキューンの神秘的かつ狂気的なイメージを払拭する親しみやすい作品で、当時はよく聴いたものです。ECM脱却路線の先駆け的作品ではないかと、勝手に考えています。身構えて聴くほどの傑作ではありませんが、ながら聴きしていると不思議と心に沁みてくる優しい音です。デヴィッド・ベイカーの録音も素晴らしいです。

      
『 Life's Magic 』  1986年 Blackhawk

レア盤本掲載で有名になった86年、ヴィレッジ・バンガードでのライブ盤。巷では人気があるようですが、個人的にはそれほどイイと思ったことはないのです。こればかりは仕方ありません。やはりアンプリファイされたロン・カーターのベース音がどうしても馴染めないからでしょう。というわけで同日同所でのもう一枚の超レア・ライブ盤『 The Vanguard Date 』( Owl ) など、数万円だしてまで欲しいと思ったことなどありません。ただ再発されれば買いますけどね。「CDである以上、いつかは再発される!」と、信じていますので。

      
『 promises Kept 』  2004年 ECM

04年にECMから発売されたキューンのストリングスとの共演盤。彼は66年と71年にゲイリー・マクファーランドの指揮&アレンジでストリングス作品を発表していますが、マクファーランドがその直後に亡くなられたため、以後、ストリングス作品は制作されていませんでした。しかし、キューンの頭の中には常にストリングスをバックに演奏したいという思いとアイディアがあり、2000年についに理想的パートナーとしてカルロス・フランゼッティと巡り合い、本作が制作されたというわけです。作品完成時にはまだ発売レーベルが決まっておらず、結局、古巣ECMから発売されることになったので、当然マンフレッド・アイヒャーの名前も、ヤン・エリック・コングスハウグの名前もここにはありません。この手のストリングス作品は、聴き手の好き嫌いで評価が真っ二つに分かれるものですが、僕は比較的好きなほうです。きらめく星の雫のような繊細で美しいキューンの音色をストリングスが優しく包み込み、夢心地の中、物語は進行していきます。はまる人には見事にはまる作品です。

Steve Kuhn Live 前夜祭

2008年07月15日 21時29分33秒 | JAZZ
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今日も30度を超える真夏日です。外を歩いているとすぐに汗が吹き出し、頭がクラクラきます。これはとっくに梅雨明けしているとしか思えません。家に帰ってくるや否や、服を脱いでベランダでビールをか~と飲んで、ふと地面を見たら、なんとゴキブリが仰向けで死んでいました。我が家はマンションの高層階なのにいったいどこから入ってきたのでしょう。おそらく飛んできたのでしょうね。ゴキブリは熱帯性の昆虫で、30度以上になると活発に飛び回るといいますから。でも流石のゴキブリもこんな高いところまで飛んできて力尽きたのでしょうね、きっと。

さて、今週の土曜日にスティーブ・キューンのライブを観に行く予定です。場所は岩本町にある Tokyo TUC です。メンバーはドラムがいつものビリー・ドラモンドで、ベースがエディー・ゴメス。最近はデイヴィッド・フィンクと組まないんですね。僕は2003年と2004年にいずれもフィンク+ドラモンドのトリオでの素晴らしく息の合ったライブを観ているので、できればフィンクをもう一度観たかったのですが、まあ、エディー・ゴメスも大好きなベーシストなので、それはそれで楽しみです。

ということで、予習も含め、今日から一気にキューンの作品を聴いておこうと思い立ち、棚からCDをひと掴みしてきました。

      
『 Dedication 』  1997年  Reservoir  RSR CD 154

キューンの作品の中で、この『 Dedication 』と『 Oceans in The Sky 』( 1989 Owl )が一番好き。キューンの愛好家にはECM期をベストとする方々も多いのですが、僕はどちらかと言うと90年代の Concord から Reservoir あたりの温暖系にイメージ・チェンジしたころの作品が好きです。特にこの『 Dedication 』に収められている オリジナル曲 ≪ The Zoo≫ (シーラ・ジョーダンとの作品『 Playground 』でも演奏されている彼の愛奏曲 )での溢れんばかりの美々旋律に惚れぼれします。録音はRVGで、音の芯がしっかりした肉厚な録音です。本作がフィンク、ドラモンドと組んだレギュラー・トリオの初出作品なんですね。今や押しも押されもせぬトップ・ドラマーに成長したドラモンドですが、もともとはキューンが育てたドラマーと言っても過言ではありません。キューンなくして今のドラモンドはあり得ません。

      
『 Looking Back 』  1990年 Concord CCD-4446 

キューンは90年代に入り、Concord と Reservoir にそれぞれ3枚づつ作品を残しています。本作は90年に録音された Concord 第一弾です。この頃からだんだんとメロディックな曲想を好むようになり、同時にスタンダードも頻繁にレパートリーに取り入れるようになります。本作もタイトル曲以外は全部スタンダードかミュージシャンのオリジナル曲です。そしてエンジニアは、おそらく彼が最も信頼を寄せていたであろう故デヴィッド・ベイカー氏です。ベースはフィンクですが、ドラマーはルイス・ナッシュが務めています。


『 Pastorale 』  2007年 sunnyside communications SSC1175

今回のメンバーで録音された作品て、あったかな?と思い、棚を探してみたのですが、この『 Pastorale 』しかないんですね、たぶん。ライブ終了後にサイン会があるようなので、これを持参してサインを頂こうっと。本作は2002年に Venus から『 Waltz : Red Side 』というタイトルで発売になった作品ですが、2007年に Sunnyside Records がライセンス契約し再発したものです。Sunnyside は本作以外にもキューンのVenus作品である『 Quiereme Mucho』を発売していますが、オリジナルの “ モノクロームのエロジャケ ”をちゃんと別の絵柄に差し替えています。このあたりのマーケティングはしっかりなされているのですね。あんなエロジャケを喜ぶのは日本人ぐらいですから。

Renato Sellani / O Sole Mio

2008年07月13日 15時10分08秒 | JAZZ
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今日も真夏日のようですが、僕はといえば、一か月後に控えたとある試験に向けて、朝から自室に籠って勉強をしています。家族は僕の邪魔をしちゃ悪いからという名目で、友達の家に遊びに行ってしまいました。そんなわけで、けっこう気分良く、勉強したり、ジャズを聴いたり、こうしてブロウを書いたりしながら、のんびり過ごしています。

さて、イタリアの最高齢ピアニスト、レナート・セラーニのVenus からの第二弾『 O Sole Mio 』を、朝から繰り返し聴いています。本作は、本邦デビュー盤の前作『 My Foolish Heart 』と同日録音された音源で、あちらがスダンダード集、こちらがカンツォーネ集ということになります。セラーニのスタンダード集は既にPholology から発売になったものを買っているのでスルーしたのですが、今回のカンツォーネは面白そうなので買ってみました。

それにしてもセラーニ翁は御年81歳。普通の男性なら箸を握って介助なしに食事ができるのがやっと、歩いているだけで周囲から元気だね~と褒められる年齢です。僕は仕事柄、毎日、高齢者の患者さんを診ていますが、男性と女性では同じ80歳でも全然元気度は違います。女性だとたとえ90歳でも平気で手術を乗り切れますが、男性の80歳は簡単な手術でも術後に肺炎や体力低下を起こし、回復に難渋する方が多いのです。

男性の平均寿命が78歳、女性が85歳であることは誰でも知っていますよね。でも、病気やけがなどにより自立できず、介護を要するようになってしまった期間を寿命から差し引いた期間、いわば健康自立期間をWHOが“ 平均健康寿命 ”と呼んでいますが、これが日本では男性72歳、女性77歳であることは意外に知られていません。そう考えると、81歳という超高齢でありながらピアノまで弾いちゃうセラーニ翁は、まさにスーパー爺ちゃんと呼ぶにふさわしピアニストなのですね。

もうこの域に達すれば、作品の出来がどうの、フレーズがもたつく、もたつかないなどという評価は無意味です。81歳という、本来なら社会的存在意義をとっくに失っている年齢にもかかわらず、こうして地球の反対側の音楽ファンまでを魅了し、楽しませてくれるだけで、素晴らしいことなのですから。

閑話休題。セラーニは古くはチェット・ベイカーやリー・コニッツ、あるいはバッソ=ヴァルダンブリーニ・セクステットのメンバーとして半世紀以上にわたりイタリア・ジャズ界のトップ・ピアニストとして活躍してきた巨匠ですが、個人的には、二つの作品を通じて以前から馴染んでいたピアニストです。ひとつは99年にCD化されたGiorgio Azzolini ジョルジオ・アゾリーニの名作『 Tribute to Someone 』であり、もうひとつがイタリアのポップス歌手 Renata Mauro レナータ・マウロのスタンダード集『 Ballads 』です。

      
Giorgio Azzolini  『 Tribute to Someone 』 ( 1964年 Ciao Ragassi )

欧州ジャズ・ファンのバイブル『 ヨーロッパのジャズ・ディスク1800 』( 1998年 ジャズ批評社 )の巻頭カラーで星野秋男氏により“ 入手に苦労したアルバム ”の4枚のうちの1枚として紹介されたジョルジオ・アゾリーニの名盤。やはり目玉は胸のすく溌剌としたプレイが印象的なフランコ・アンブロゼッティとコルトレーン流儀のガトー・バルビエリの意外な組み合わせのフロントでしょうが、ピアノ・トリオで演奏されるM-2 ≪ so what ≫ などは、セラーニの知的で繊細なモーダル・フレーズが味わえる名演です。本作は99年に Schema の傍系レーベルであり、再発系を手がける Rearward からLP&CDで再発されています。凄くイイです。アンブロゼッティの最高の演奏が聴けます。ハード・バップ・ファンの必聴・必携の名盤です。


      
Renata Mauro  『 Ballads 』 ( 1970年 Dire )

『 ジャズ名盤ベスト1000 』( 安原 顕編 学研文庫 )の中で、杉田宏樹氏により “ 機会があるたびに、僕が褒めたおかげか、ついにCD復刻が実現した本作 ” と紹介された作品。レナータ・マウロはもともとはポップス歌手のようですが、彼女の経歴は謎に包まれています。杉田氏が調べようがないのですから、仕方ありません。ポップス歌手と言ってもかなりジャズ的な発声であり、声質もやや低めのダーク感が心地よいです。編成は基本的にはセラーニのピアノとのデュオですが、ストリングスも控えめに入ります。余談ですが、この『 ジャズ名盤ベスト1000 』の中の、杉田氏が担当した第11章「70年代ジャズにこだわったベスト」で紹介された50枚はすべて名盤です。必読!

意外なことに、日本にセラーニが国内盤として紹介されたのは今回のVenus 盤が初めてなのですね。しかし、実際にはこの10年ほどの間に彼は精力的に録音を行ってきました。そのほとんどがPholology に吹き込まれた作品です。さきほどPholology の Web Site を覗いてみたら、なんとセラーニは1998年以降、リーダーおよびコ・リーダー作を合わせて40作品以上も制作しているのです。1年に4枚ペースは尋常ではありません。僕の手許にも彼のPholology作品が10枚近くあります。半数以上がファブリツィオ・ボッソ絡みで購入したものですが、それ以外では『 Italian Saga 』シリーズというのがあって、これはジャンニ・バッソ、エンリコ・ラヴァ、ブルーノ・マルティーノ、それからもちろんボッソなどと、共演したシリーズ物で、おそらく知る限り12作品までリリースされているはずです。僕は大のセラーニ・ファンではありませんでの、それほど収集しようとは思いませんが、なかなかの秀作揃いです。

さて、店頭で知ったのですが、セラーニ爺さん、なんとダニーロ・レアとデュオ作品をVenusからまた出されたのですね。ダニーロ・レアも大好きだから今度買おうと思いますが、Venusの原氏は、セラーニを第二のエディ・ヒギンズに仕上げようとしているのでしょうか? な~んて驚いていたら、何々、Philology から今度はプッチーニ集を今週に発売するとの情報も入っています。なんだか凄いことになっています。

Florence Davis & Paris Jazz Big Band /French Songs

2008年07月12日 23時03分30秒 | JAZZ
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たぶん僕だけじゃないのだろうが、毎日暑くて頭がボーっとして体がだるい。しかも暑いだけじゃなく湿気も凄いのでますますだるい。いつから東京は亜熱帯気候になったのだろうか。ホントこの暑さと湿気は尋常じゃない。しかも、今日の東京には豪雨と雹(ひょう)まで降ったし。

さて、今日聴いているのはフランス人歌手 Florence Davis フローレンス・デイヴィスのデビュー作『 French Songs 』。彼女のことは全く知らないが、バックバンドがなにしろParis Jazz Big Band なので聴きたくてしかたなかった。すでに4月の時点でブログ『 晴れ時々ジャズ 』のアーティチョークさん が紹介してくれていた。以来、日本に入ってくるのを首を長くして待っていたのだが、今日、仕事帰りにお茶の水のDisk Union を覗いたら入荷していたのですぐに買ってきた。

彼女に関する情報はほとんど入っていない。MySpace にわずかながらバイオグラフィーがアップされているが、なにしろフランス語なのでよく理解できない。年齢不詳だが、付録のDVDの動画映像を見る限り40歳代ではないだろうか。ジャケットの写真は若そうに見えるが、実際にはけっこうな歳だと思う。DVDでは過去の音楽活動の映像も見られるが、それらから判断すると、ジャズ・ボーカリストというよりは、むしろ舞台女優やポップス・ロック系のボーカルを本業としていたようだ。確かに歌唱法は全然ジャズらしくない。しかし、シャウトしたかと思うと、猫なで声でブリっ子したりと、まあ、どんな歌でもそつなく歌い上げる歌唱力は大したものだ。

本作は全12曲で、タイトルからもわかるように、全曲フレンチ・ポップスのカヴァーだ。ミッシェル・ベルジェ、セルジュ・ケンスブール、ミッシェル・ポルナレフ、ジャック・ブレルらなどの曲を取り上げ、PJBBのピエール・ベルトランかニコラ・フォルメルがアレンジを担当している。

PJBB は、いい意味でヴォーカルを食った素晴らしい演奏を聴かせてくれる。原曲がどんな曲かわからないが、どれも都会的で機微に富んだアレンジが施され、また、要所要所で各メンバーのソロもフィーチャーされているので、PJBBファンもきっと満足できると思う。PJBBはテレビ番組のバックをやっても、歌伴をやっても、いつでもカッコいいね。

ところで、PJBBのメンバーをみたら、サックス陣ではエルヴェ・メシネとステファン・ギロームが抜け、そのかわりにシルヴィアン・ビュフが加入している。また、ピアノもアルフィオ・オリリスからティエリー・エリスに代わっている。メンバーがどんなに変ろうと、常にフランスのトップ・ミュージシャンで固めているところが凄い。

正直、あまり彼女の声質、歌唱は好きではない。個人的にはPJBBを聴くための作品と言いきりたい。なお、彼女の Official Web Siteでも全曲試聴できるのでお試しあれ。


小川隆夫著 『 ザ・ブルーノート、ジャケ裏の真実 』

2008年07月10日 19時17分01秒 | JAZZ書籍
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昨日、仕事帰りに買っておいた小川隆夫氏の『 ザ・ブルーノート、ジャケ裏の真実 』 (講談社)を読む。読むといっても、気になるページをランダムに拾い読みしているだけだが。本書は、ブルーノート1500番台のレコード一枚一枚に書かれていた当時のライナーノーツから、小川氏が興味深いと感じた記述を拾い出し、それに注釈をつけた、いわばライナー・ノーツ解説書だ。小川氏の文章には寺島氏のような文学的な面白みはないが、いつも「ふ~ん、そうなのね~。なるほどね~。」といった小さな発見に溢れていて、違った意味で面白い。 ≪1569番、ポール・チェンバースの『 Bass On Top 』で、彼が弾いていたベースは、たまたまスタジオにあったダグ・ワトキンスのベースだった。≫  ≪ 1580番、ジョニー・グリフィンの『 The Congregation 』は、アンディ・ウォーホールが描いたイラストのジャケットで有名だが、あのグリフィンが着ているアロハ・シャツは1533番のジャケット写真で彼が着ていたシャツだった。≫ などなど、トレビアの泉の宝庫だ。ただ、これらはもしかするとブルー・ノートのファンなら周知の事実なのかもしれないし、国内盤のライナーノーツにすでに書かれていることなのかもしれないが。その証拠に、1594番、ルイ・スミスの『 Smithville 』 の項では、 ≪ ルイ・スミスが2枚のリーダー作しか吹き込まず、シーンから姿を消したのは、本業の音楽教師に復帰するため地元アトランタに帰ってしまったためだ。≫ と書かれていて、これまた「へー、そーだったのね~。」と感心しながら、先ほど家にある本盤の岡崎正通氏のライナーノーツを読み返したら、同じことが書かれていた。単に、僕が勉強不足であっただけなのだ。 それにしても小川氏の執筆のペースは尋常ではない。本書以外にも『 ジャズマンが語る ジャズ・スタンダード120 』と『 JAZZ 黄金コンビはこれだ! 』を書いたばかりなのに、今月中には『 証言で綴るジャズの24の真実 』 も発売になるらしい。 整形外科医として臨床に従事し、原稿も書いて翻訳もして、さらには「ONGAKUゼミナール」をはじめ、多くのイベントを主催し、いったい一日をどのような時間配分で過ごしておられるのだろうか。1人で5人分くらいの仕事をこなしているように見える。臨床の仕事以外にブログの更新(それも時々)をするのがやっとの僕には想像もでいないことだ。

火曜日のジャズ日記

2008年07月08日 21時44分06秒 | JAZZ
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昨日から小雨が降ったりやんだりで、暑くはないのにとってもじめじめして蒸しています。
家に帰って湿度計を見ると、相対湿度68%でした。
以前、除湿器を使用していた時、一日経つと除湿器のタンクがいっぱいになるのを見て、ぞっとしたことがあります。
確か、気温30℃で相対湿度100%とした場合、1㎡に30gの水蒸気を含んでいる、と記憶してます。ですので、僕の部屋、約100㎥とすると、気温27℃、湿度70%として、ざっくり言って部屋の中に2リットルの水が溶けていることになるわけで、こりゃ凄いことです。

どこかで読みましたが、日本より湿度の高いフィリピンでは、除湿した水を飲料水に変換する電化製品も売られている、とのこと。本当かな?

そんなわけで、今、エアコンの除湿をかけてやっと快適になり、ビールを飲みながら久しぶりにブログ更新しているとことです。

新譜も買っていないわけではないのですが、なかなかイイのに巡り合えません。なので、今日も聴いているのは旧作の愛聴盤、ということになります。

      
Eydie Gorme  /  Blame It On The Bossa Nova  1963 CBS/Sony
カサンドラ・ウイルソンの新譜もよかったけど、やっぱり暑い夏はな~んにも考えずにボッサ・ボヴァがいい。夏の定番、イーディー・ゴーメの代表作。先ほどから、夏の夜風を感じならがベランダで聴いておりました。これ、一生聴き続けるんだろうな~。

      
Claus Ogerman Orchestra / Gate of Dreams  Warner Bros. 1977
ダニーロ・ペレスとの共作盤で、隅々まで美意識が張りつめたドラマティックなアレンジを提供したクラウス・オガーマンですが、誰しもが思い出すのは、マイケル・ブレッカーとの85年作品『 Cityscape 』ではないでしょうか。今日聴いている『 Gate of Dreams  』はさかのぼること7年前の77年に制作されたオガーマン名義の作品です。トミー・リピューマ=クラウス・オガーマン=マイケル・ブレッカーの人脈がここで生まれた作品でもあります。リピューマのお気に入りのアーティスト、ジョー・サンプル、ジョージ・ベンソン、デヴィッド・サンボーンらもソロをとっています。『 Cityscape 』ほどの完成度はありませんが、オガーマンの音世界を味わえる隠れた秀作です。

      
Michiel Borstlap / Body Acoustic  1999 emarcy
最新作『 Eldorado』 でクラブ・ジャズ路線のファンク・ビートでファンの度肝を抜いたミケル・ボルストラップですが、思いのほか気に入り、特に通勤時の愛聴盤として大活躍しています。今日聴いているのは99年に制作されたウェザー・リポートのカヴァー集です。ジェシ・ヴァン・ルーラーや、山本隆氏推薦の『レトロなバス』でおなじみ、エルンスト・グレールム( b )とハン・ベニンク( ds )も参加しています。

      
Uri Caine / Sphere Music  1993 Bamboo
デイヴ・ダグラスやフランコ・アンブロゼッティのバンドでの切れ味鋭いピアノが好印象だったので、以来、彼のリーダー作を収集しています。今日聴いているのは93年の初リーダー作です。この人、最近の人かと思っていましたが、56年生まれとのことですから、もう52歳になるんですね。キャリアを覗くとハンク・モブレー、ミッキー・ローカー、ジョニー・コールズらとの共演歴もあるらしく、かなり古くから活動していたみたいです。この初リーダー作にはゲイリー・トーマス、グレアム・ヘインズ、ドン・バイロンと、とんがり君達が勢ぞろいして、いかにもそれ風の曲が並んでいます。ラルフ・ピーターソンの狂暴なグルーブに乗って、みんな荒れ狂っていて実に面白いです。これ、かなりお勧めです。

7月08日の歩数 : 7987歩 体重 : 67.9kg
7月07日の歩数 : 8143歩 体重 : 68.1kg
7月06日の歩数 : 8282歩 体重 : 67.0kg
7月05日の歩数 : 2538歩 体重 : 68.0kg


土曜日のジャズ日記

2008年07月05日 14時16分26秒 | JAZZ
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今日の東京はよく晴れた爽やかな一日でした。午前中は川口市にある某病院にバイトに行ってきました。たまに土曜日に休みがとれるのですが、家にいても無駄に時間を過ごすだけなので、時々こうして半日ぐらいのバイトを入れて、せっせと小遣い稼ぎをしています。一回半日で一か月分のCD購入資金ぐらいになるので、まあ、悪くないバイトです。

       
Michel Herr / Intuitions  1989 Igloo IGL073
Brussels Jazz Orchestra との共演盤をリリースしたばかりのベルギーを代表するピアニスト兼作曲家、ミシェル・ハーの代表作。最近は作曲・編曲・指揮などの仕事が多くて、ピアニストとして活躍する機会がめっきり減ったのが残念ですね。おそらく同国のイヴァン・パドゥアなども、彼のピアノ・スタイルを手本にしたのでしょう。澤野工房から再発になった 『 Overture Eclair』 より断然美しいですよ。

       
Stephane Chausse / Rue Longue  2005 Nocturne  NTCD432
Paris Jazz Big Band にも参加しているフランス人クラリネット奏者、ステファン・ショセの初リーダー作。PJBBではサックスを吹いてました。この人、フルートも吹けます。ステファン・ギローム同様、吹きものならなんでも器用に操れるマルチリード奏者です。南仏で生まれただけあって、地中海の澄んだ海と青い空を想起させる爽やかな楽曲が並んでいます。アルフィオ・オリリス、ステファン・ウシャールのサポードも見事です。

      
Pierre-Alain Goualch / TIKIT  2004  EMD 0401
ピエール・アラン・グアルシュとドラマーの Franck Agulhon フランク・アギュロンのデュオ。グアルシュの作品では他に素晴らしいものが沢山ありますが、何故かこの変則デュオに魅かれるんです。自分の趣味からするとこういうフリー系のしかもデュオなんか絶対聴かないのに、これだけは心地いいのです。アギュロンは、ピエール・ドゥ・ベスマン、デヴィッド・エルマレク、エリック・レニーニなどの作品で聴いていますが、それほど目立つ存在ではなかったので、本作を聴いて最初は驚きました。特にスネアの妙技は素晴らしい。

       
Dannielle Gaha / You Don't Know Me  2002  Sonny 5106392000
以前にも取り上げたオーストラリアのシンガー、ダニエル・ガーの初リーダー作。先日、秋葉原の石丸電気で本作が6300円で売られていました。値段は需給関係で決まるわけですから、いくらで売ろうと勝手ですが、いくらなんでも6300円は高くないですか? それはさておき、この季節になると彼女のサラッとした涼しげな歌声が聴きたくなり、引っ張り出してきちゃう季節の風物詩のような作品です。

      
Gabriela Anders / Wanting  1998  Warner Bros. 946907-2
アルゼンチン出身でニューヨークを拠点に活躍中のガブリエラ・アンダーズのファースト。彼女はボサノヴァ・ユニット、ベレーザのヴォーカリストでした。セクシーでエロいウィスパー・ボイスで世界中の男どもを虜にした彼女。ジョージ・デュークもリック・ブラウンも鼻の下を伸ばしてバッキングに精を出します。


Cassandra Wilson / Loverly

2008年07月04日 21時17分31秒 | JAZZ
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ダイアン・シューア、ダイアン・リーブス、カサンドラ・ウイルソンら、いわゆる新御三家がジャズ・ヴォーカル界の注目を集め始めたのは80年代半ばのことでした。あれから20年。両ダイアンがメインストリーム系のいわばオールド・スタイルの歌唱法を受け継ぎながら人気を獲得してきたのに対してカサンドラは、伝統と革新を融合させたスタイルで時代をリードし、ジャズのテリトリーにとどまらない幅広いファンの支持を得てきました。そして現代アメリカのポピュラー・ミュージック界最高のディーヴァとして君臨し、各方面から最大級の賛辞が寄せられるカサンドラは、Blue Note のドル箱スターとして数多くの作品を世に送り出してきました。

しかし、僕もそんな巷の評価に迎合し、新譜が出るたびに買ってはみるものの、どうしても繰り返し聴く気にはなれないのです。あの井戸の底に蠢く妖怪の呻き声、と言っちゃ言い過ぎですが、なんともドロドロしたダーク・ヴォイスは、深夜に一人で聴いていると背筋が寒くなってきます。はたして、こんな暗く低い声が好きで好きでたまらないというジャズ・ファンって、いるのでしょうか?

いまここに、ジャズ批評誌の139号『 ジャズ・ヴォーカル特集 』があります。この中で89人のプロ・アマが、自身のヴォーカル愛聴盤を3枚づつ紹介しているのですが、計265枚のヴォーカル作品の中に、カサンドラの作品は一枚もありません。最近の同誌は、(自分も書かせていただいているのでなんですが)アマチュアの執筆による投稿雑誌と化し、確かに以前のような一人のミュージシャンに焦点を当てた資料的価値の高い特集はなくなりましたが、そのかわり、今、一般のジャズ・ファンがどんな音楽を望んでいるのか、その音楽から何を感じているのかをダイレクトに伝えてくれる雑誌として、極めて貴重な存在だと思うのです。こんな同誌に、件の如く、カサンドラが全く登場しないのは、これは聴き手の偽らざる本音ではないかと、思うのです。

と、まあ、仕事帰りに今日買ってきたカサンドラの新譜を聴きながら戯言を書き綴ってしまいましたが、本題に入りましょう。彼女のBlue Note からの新譜は待望のスタンダード集です。彼女は基本的にはシンガー・ソング・ライターですので、オリジナル曲やジャズ以外のフィールドから選曲した作品が多く、ジャズのスタンダードを歌うことは稀でした。しかも、ピアノを加えたバックバンドを従えてのスタンダードとなると、88年の『 Blue Skies 』と、97年にジャキー・テラソンと組んだ『 Rendezvous 』(邦題:テネシー・ワルツ)くらいしかありません。

個人的にはこの『 Blue Skies 』が大好きで、彼女の作品の中では唯一の愛聴盤と言ってよい作品です(あ、あと『 New Moon Daughter 』も好きですが)。M-BASEモーブメントの真っ只中に録音されたこの異色のスタンダード集は、マルグリュー・ミラー、ロニー・プラキシコ、テリ・リン・キャリントンという最高のピアノ・トリオをバックに、渋めの選曲と、彼女にしては比較的大人しいアレンジで、保守的なジャズ・ファンをも魅了して止まない最高のヴォーカル作品に仕上がっています。

今回の新作もジェイソン・モランのピアノが12曲中10曲で聴かれますが、やはり弦楽器好きなカサンドラのことだけあって、マービン・シーウェルのギターも大きくフィーチャーされています。クレジットにはありませんが、M-1 ≪ Lover Come Back To Me ≫ では、たまたま遊びに来たニコラス・ペイトンのソロが記録されています。彼女の作品で管入りは皆無ですから貴重な記録ですね。ジェイソン・モランも尖ろうと思うといくらでも尖れるピアニストですが、ここでは控えめなサポートに徹しています。でも時たま鋭角的なフレーズでグサリと刺さってくるあたりがたまりません。カサンドラの歌声は、どんなスタンダードを歌っても聴き手を自分の世界に引き寄せてしまう不思議な力を持っていますね。全体から伝わる印象としては、いつもの張りつめた空気感はあまり感じられません。ましてや難解さなど微塵もありません。よって聴き手も力を抜いて楽しめる作品です。そして、聴くほどに心の襞に深く沁み入る傑作ではないでしょうか。



7月04日の歩数 : 6100歩 体重 : 68.5kg
7月03日の歩数 : 4484歩 体重 : 68.6kg
7月02日の歩数 : 6631歩 体重 : 68.5kg
7月01日の歩数 :15063歩 体重 : 68.6kg
6月30日の歩数 : 7064歩 体重 : 68.6kg
体重は足踏み状態。ここからが難しい。