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相互リンクさせていただいているイタリアン・ジャズ・ファンの
rhodia さん は、部屋でジャズを聴いているだけでは物足りず、海外のジャズ・フェスティヴァルに出かけて行ったり、また、お気に入りのミュージシャンに直接連絡をとって、お友達になっちゃたりと、とっても行動派のジャズ・ファンでいらっしゃいます。
そんな彼女が先月、ニューヨーク州のロチェスターで開かれた
Rochester International Jazz Festival に行かれました。現地で、公演待ちの行列に並んでいると、イタリアの新興レーベル
Jazzeyes のゼネラルプロデューサーである Paul Siculiana 氏に声をかけられて、
Jazzeyes のサンプルCDをいただいちゃったという嬉しいお話をされていました。そのCDの中身を見せていただいたところ、すでに発売になっているケビン・ヘイズやエディー・ゴメスのCD以外に、アル・フォスターのCDもあったので、おそらく Jazzeyeからの4作目はアル・フォスターの新作なんだろうな~と思っていたら、やっぱり発売されました。
イタリアはパレルモ発の新興レーベル Jazzeyes は、現在までにジョー・ロック、ケビン・ヘイズ、エディー・ゴメスの3作品をリリースしてきました。今回のアル・フォスターの新作がレーベル第4作目となります。まだカタログ数はわずかですが、ケビンとエディーを聴いた限りでは非常に丁寧な仕上がりの秀作で、録音もよく ( ちなみにケビンの作品は内藤克彦氏が音を作ってます )、しばらくは注目していきたいと思っていたレーベルです。
さて、アル・フォスターですが、考えてみると彼のリーダー作ってほとんどありませんね。僕の手許には98年にドイツのライカというレーベルから発売された『 Brandyn 』 しかありません。ネットで検索してみたのですが、彼のOfficial Web Site もないし、ウィキにもディスコグラフィーは掲載されていません。彼がレギュラー・カルテットを組んだのが96年ということですから、12年間の活動期間で作品が2作品とはちょっと寂しい感じがしますが、これも彼の優しく奥手な性格から来るものなのでしょうね。
本作品のメンバーは、ピアノにケビン・ヘイズ、ベースにダグラス(ダグ)・ワイス、そしてサックスに
エリ・デジブリ(前項あり)という中堅+新進気鋭の組み合わせ。エリ・デジブリはデビュー当時からすっかりファンになってしまって追っかけしている吹き手で、エモーショナルに吹きまくるタイプです。ケビンとエリは05年に『 One Little Song 』というデュオ作品を出している仲です。ダグ・ワイスはカルテット結成当初からのオリジナル・メンバーです。
曲目は、アルのオリジナル3曲と、≪ ESP ≫、≪ Blue In Green ≫、そしてブルー・ミッチェルの ≪ Fungii Mama ≫ の全6曲。アルのオリジナル3曲の内2曲は前述した97年の作品『 Brandyn 』でも演奏されていた≪ The Chiff ≫と≪ Brandyn ≫。ブルー・ミッチェルの ≪ Fungii Mama ≫は、彼のBlue Note 初リーダー作である人気盤『 The Thing To Do 』( BN 4178 ) のA面一曲目に収められていたラテン~カリプソ風の軽快な曲ですが、この作品にはアル・フォスターも参加していたんですね。ちなみにこの作品がアルの初レコーディングになります。
寺島靖国氏が著書の中で、アル・フォスターのことに関して「アル・フォスターってやつは、どうしようもなくドラムの雰囲気作りがうまい~」と語っていましたが、まさにそのとおりで、1曲の中で次々とリズム・パターンを変えつつ、時にはフロントを激しく煽り、時にはフロントの呼吸に呼応しながら、音楽の背景を描いていく手法に思わず陶酔してしまいます。また、随所に埋め込まれた絶妙な小技もお見事としか言いようがなく、やっぱりこの人は凄いな~と今更ながら感心してしまいます。この作品、極端な言い方をすれば、アルのドラミングだけを傾聴しても十分楽しめます。
一方のエリ・デジブリも絶妙なねじれ加減が心地よく、しかも要所要所で強暴にブローしまくってくれるので、ますます好きになっちゃいます。でもまあ、アルの前作『 Drandyn 』でのクリス・ポッターの素晴らしいプレイに比べたら負けちゃうのは仕方ありません。
全体にゆったりとした疾走感を持続しながら生々しく進行するライブをうまく捉えた素晴らしい作品だと思います。マスタリングも内藤克彦氏で、現代的な音の響きを重視しながらも、音が痩せずに芯が太く温かみを温存した録音、つまりはちょうど、ヴァン・ゲルダーとジム・アンダーソンのイイとこ取りのような美音ですね。そして、この作品はライブですから、可能な限り大音量で聴ければ、相当のトリップ感が体感できると思います。
Al Foster 『 Brandyn 』 1997 LAIKA
アル・フォスターよりも、クリス・ポッターの凄さについ聴き惚れてしまうアルバム。
Blue Mitchell 『 The Thing To Do 』 1964 BLP-4178
このアルバムはLPでしか持っていなかったので、久し振りにレコード棚を漁って引っ張り出してきました。今回のアルの新作でも演奏されていた≪ Fungii Mama ≫ですが、ブルー・ミッチェルとジュニア・クックの奏でるメロディーのなんと爽快なこと! 空の彼方に飛翔していくかのように高らかに歌い上げる様は、決して現代ジャズには見られない潔さがうかがえます。やっぱりジャズってこうでなくちゃね~と、久し振りにBlue Note 60年代の空気を味わった感じです。
[ 追記 8/27 ]
Al Foster のリーダー作に関して、中年音楽狂さん、Sugarさん、Ozaさんらからの
情報を総合しますと、現在までに以下の3作品が存在するようです。
1978 『 Mixed Roots 』 Laurie Records
1979 『 Mr. Foster 』 Better Days Records
1997 『 Brandyn 』 LAIKA Records