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Dave Douglas & Keystone 『 Moonshine 』

2008年01月12日 21時45分57秒 | JAZZ

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1994年のデビュー作『 Parallel Worlds 』以来、かなりのハイスピードで作品を制作してきたデイヴ・ダグラスですが、その勢いは留まる事を知らず、特に2005年に自身のレーベル、Greenleaf を立ちあげてからはさらに加速度を増し、昨年は計5枚もの新作を発表しました。本作はその昨年のリリース・ラッシュの最終作で、エレクトリック・プロジェクトである“ keystone”名義の第3作目にあたる作品です。

彼は昔から複数のプロジェクトを同時並列的に進行させていくという創作活動を行ってきたアーティストですが、現在も例えば、ランディー・ウエストンのトリビュート・バンド “ Music of Randy Weston ” 、室内管弦楽団を擁した “ Blue Latitudes ” 、それからニコラス・ペイトンに代わって正式メンバーとなった “ SF Jazz Collective ” など、計8つのプロジェクトを展開しています。そんな中、活動の主軸となっているプロジェクトがユリ・ケイン(p),ジェームス・ジナス(b),クラリス・ペン(ds)のリズム隊に現在ブルックリン系では最も勢いのあるドニー・マッキャスリン(ts)をフロントに据えた “ Dave Douglas Quintet ”であり、もう一方のメイン・プロジェクトが唯一のエレクトリック・バンドであるこの“ keystone”なのです。

現代のトランペッターで、アコースティック・バンドとエレクトリック・バンドを同時並列に展開しているヴァーサタイルなアーティストは意外に多いですよね。たとえば、パオロ・フレズの “ Angel Quartet ” 、ラッセル・ガンの “ Ethnomusicology ” project 、そして最も成功したと言えば、ロイ・ハーグローブの “ The RH Factor ” でしょうか。ニコラス・ペイトンも “ Sonic Trance ” という不思議な得体の知れないバンドを結成し、2003年にワーナーから セルフ・タイトル作品 『 Sonic Trance 』 をリリースしましたが、これが箸にも棒にもかからぬ愚作で、ガッカリしたことがありました。

閑話休題。彼のOfficial Web Site によると、この“ keystone” project は、“ New music for electric sextet with trumpet, tenor/soprano sax, rhodes, electric bass, drums, and turntables. Inspired by films, written for films, both new and old. ” ということで、新旧映画によりインスパイアされ、その映画のために書かれた音楽、のようですが、今のところはいずれも20世紀初頭のサイレント・ムービーにインスパイアされて制作された作品です。2005年の第一作『 keystone 』 は映画監督兼喜劇役者であったロスコー“ファッティー”アーバックルのサイレント・ムービー『 Fatty & Mabel Adrift 』(1916年)のための音楽であり、今回の新作もバスター・キートンとロスコー・アーバックルの作品『 Moonshine 』(1917年)にインスパイアされて制作されたものだそうです。第一作ではCD&DVD作品で、DVDの方に実際の『 Fatty & Mabel Adrift 』がデイヴ・ダグラスの音楽を被せて収められているし、今回の『 Moonshine 』も彼のOfficial Web Site で同様に動画が見られますが、ハッキリ言って、どこが面白いのか僕にはよくわかりませんし、あまり音楽と映像がシンクロしているようにも思えないので、単純にデイブ・ダグラスの音として目を閉じて聴いた方が良いかもしれません。ちなみに、バンド名の“ keystone” とは、ロスコー・アーバックルやチャールズ・チャップリンらが在籍していた映画会社、キーストン社からとった名前です。

バンドの編成では、結成当初はジャミー・サフト(wurlitzer)が入ってましたが、第二作目以降、アダム・ベンジャミン(Fender Rhodes)に交代しています。フェンダー・ローズと言っても、リチャード・ティーのようなフェイザーのかかった美しい音ではなく、モジュレーター系や歪み系、あとは何を使用したらこんな音が出るんだか分らないような不思議な音を発していて刺激的です。ベースのブラッド・ジョーンズもアップライト・ベースとは言っても、Ampeg のサイレント・ベースですし、何と言ってもDJ オリーブというターンテーブル奏者が参加しているので、エレクトリック度が非常に高い音楽になっています。

相変わらずアングラ臭のプンプン漂う変態ラインを奏でるデイブ・ダグラスですが、それにも増して過激なマーカス・ストリックランドのソロも鳥肌モノで、この裏街道まっしぐらの二人が揃えば、とんでもなく刺激的なジャズの出来上がりです。白眉はM-7≪Kitten≫です。メタル・ソリッドな弾丸16ビートに乗って、超カッコいいテーマが炸裂。久し振りにイイ曲聴いた気分です。やっぱりデイヴ・ダグラスはカッコイイわ~。

Complete Discography of Dave Douglas by Patrice Roussel