雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

Logan Richardson 『 Cerebral Flow 』

2007年04月29日 23時30分44秒 | JAZZ
前述したマイク・モレノがサイドメンで参加した Logan Richardson (ローガン・リチャードソン)のデビュー作です。レーベルはFSNTであり,ピアノレスでヴィブラフォン入り,そしてナシート・ウェイツやマイク・モレノの参加とくれば《 現代ブルックリン派 》からの新進気鋭と言ってよいのでしょうか。正直なところ,僕も《 現代ブルックリン派 》と言われてもきちんとした定義が分からないので,いい加減なこと言えないのですが。

スティーヴ・コールマンやグレッグ・オスビーらが牽引者となり80年代に一世風靡した《 M-BASE 派 》が後に《 ブルックリン派 》と呼ばれた事は,比較的ミュージシャン達も限定されていたし,音楽自体も当時のいわゆる《 新伝承派 》と明確に区別できたので問題なかったのですが,近年の《 現代ブルックリン派 》とか《 新ブルックリン派 》とか,あるいは《 ブルックリン派第二世代 》と呼ばれる人々は,どうも曖昧なカテゴリーで理解しにくいのです。

《 新ブルックリン派 》のミュージシャンと言えば,マーク・ターナー,トニー・マラビー,クリス・チーク,それにドニー・マッキャスリンらあたり (あら,全部サックス奏者だ) から,最近ではボブ・レイノルズなどもその中に入るのでしょうか。レーベルで言えばFSNTから作品を出すミュージシャンに《 新ブルックリン派 》は多いですよね。でも,《 MYコンテンポラリー・ジャズ 》と《 新ブルックリン派 》はほぼ同じような意味で用いられているようでもあるし。マルサリスを中心とする極一部の《 新伝承派 》以外はみな程度の差はあれ《 新ブルックリン派 》のような気もするし。

でも,例えば,テレンス・ブランチャードなどはデビュー当時は《 新伝承派 》に分類されていましたよね。でも最近の作品などはどう見てもBe-Bopとはかけ離れたジャズであって,むしろ《 新ブルックリン派 》に近かったりしますし,そう考えると《 新伝承派 》とか《 新ブルックリン派 》とか言った分類はあまり意味がないとも言えますね。でも全く聴いたことのないミュージシャンを説明する際には便利な表現ではありますが。

閑話休題。ローガン・リチャードソンは1980年,カンザス・シティー生まれで,例の如く,バークリー音楽院出身です。バークリーでは,スティーヴ・ウイルソン,マーク・ターナー,ヴィンセント・ハーリング,ジョージ・ガゾーン,レイチェルZ,ゲイリー・バーツらのレッスンを受けているようです。本作がデビュー作ですが,サイドとしてはジョー・チェンバースの『 Outlaw 』( 2006 Savant )とグレゴリー・ターディーの『 Steps of Faith 』( 2007 SteepleChase )に参加しています。後者は所有していますが,どうもターディーの作品の中では地味な印象を持った作品で,リチャードソンもそれほど暴れていません。タイトル『 Steps of Faith 』(信仰の道のり)からも分かりように,精神的,内省的,思索的な作品で,以前のようなイケイケ・ハード・バップではありません。余談ですが,彼は敬虔なクリスチャンのようですよ。

全10曲で,全て彼のオリジナル。変拍子のそれこそ《 M-BASE 派 》風の楽曲があるかと思えば,浮遊感漂うコンテンポラリーな楽曲もあり,はたまた,エリック・ドルフィー風の絶叫型ブローあり,と様々な表情を見せるローガン。《 ローガンは,私が今まで長い間見て来たいかなるアルト奏者とも違い,肉声に似た柔軟さと器用さを併せあわせ持ったミュージシャンだ。》とグレッグ・オスビーがコメントしているように,どんなジャズもこなせ,それでいてどんな場面でも個性的なソロがとれる,優れたアルティストであると思いました。《 ローガンは現時点ではあまり知名度は高くないが,近いうちに多くの人が知ることになるであろう素晴らしいプレーヤーであると私は信じる。》とグレゴリー・ターディーが言っているように,これからの活躍が楽しみなミュージシャンです。

Logan Richardson の Official HP はこちら

Logan Richardson 『 Cerebral Flow 』 2006 FSNT 278
Logan Richardson (as)
Mike Pinto (vib)
Mike Moreno (g)
Matthew Brewer (b)
Nasheet Waits (ds)
Thomas Crane (ds)

Mike Moreno 『 Between The Lines 』

2007年04月27日 21時40分03秒 | JAZZ
待ちに待った Mike Moreno (マイク・モレノ)の初リーダー作が発売になりました。とは言っても,おそらく彼の作品を待っていたであろうジャズ・ファンは日本に50人もいないでしょうが。マイク・モレノは以前に拙ブログでも一度触れたことがありましたが,いわゆる NYC ブルックリン派のギターリストで,カート・ローゼンウィンケルやベン・モンダーあたりにも通じる空中浮遊型のクールでダークなトーン,フレージングを特徴とするミュージシャンです。

今までにもジョン・エリスの『 By A Thread 』や,ジェレミー・ペルトの『 Identity 』(2005 MAXJAZZ)や『 Profile 』(2001 FSNT)にも参加していましたし,最近ではボブ・レイノルズの『 Can't Wait For Perfect 』(2006 FSNT) やローガン・リチャードソンの『 Cerebral Flow 』(2006 FSNT) にも助演していましたが,いずれもあまり前面にでることはなく,どちらかというと <バッキング+ちょっとソロ>的な参加で露出度は低いと言わざるを得ませんでした。

と言うことで今まではその素晴らしいテクニックに魅かれながらも,どうも欲求不満が残る作品ばかりでしたが,本作でやっとギブソン 335を弾きまくるモレノを堪能できました。

彼のトーンはローゼンウィンケルに比べると明るい感じがします。それにローゼンウィンケルは頻繁に歪系のエフェクターを軽くかけますが,モレノはあくまでクリア・サウンドで,モデュレーション系やデレイなどの空間系を品良く使用するぐらいで,音色的にも大好きな部類です。フレージングやアーティキュレーションはどちらかというとパット・メセニーに近いかもしれません。ジョンアバを具象化したようなサウンドと言ってもよいでしょう。

なんだか,書いている僕自身が良く分からなくなってしまいましたが,要は,とっても分かりやすい空間浮遊系ギタリスト,です。個人的には,

【 分かり易さ度 】

パット・メセニー > マイク・モレノ > カート・ローゼンウィンケル >>> ジョン・アバークロンビー

かな。

本作は全体的にはそれほどキャッチーなメロディーはありません。まあ,ブルックリン系ですから。ダーク&クール,ミステリアス,で,スルスルと指間をすり抜けるような掴み所の無いフレーズ。そう,Be-Bopの戒律である II-V-I をあっさり放棄し,何処まで進んでも解決しない,それ故,浮遊したまま永遠に物語が語られていく,まさにジャズの未来を模索し続ける現代ブルックリン派の宿命。そんな,ジャズが聴こえてきます。

マーカス・ストリックランド(ts),ジョン・エリス (ts&ss),アーロン・パークス(p),それに最近初リーダー作を出したばかりのケンドリック・スコット(ds)など,メンバーもブルックリン系で固め,NYCの裏街道まっしぐらの,一部のコアなファンにはたまらない魅力を秘めた秀作です。 

Mike Moreno 『 Between The Lines 』2007 world culture music (indie)
Mike Moreno (g)
John Ellis (ts & ss)
Marcus Strickland (ts)
Aaron Parks (p)
Doug Weiss (b)
Kendrick Scott (ds)
Tyshawn Sorey (ds)


Alessandro Galati Trio Live at Motion Blue

2007年04月23日 18時28分04秒 | ライブ
先週の土曜日,Alessandro Galati (アレッサンドロ・ガラティ)のライブをモーション・ブルー・ヨコハマに観に行ってきました。僕にとってガラティは,1995年の『 Traction Avant 』以来,恋い焦がれていた憧れのピアニストでしたが,こんな無名なミュージシャンがまさか来日してくれるとは思ってもみなかったので感激も一塩でした。これは絶対見逃せないぞ,といつもはライブ嫌いな僕も遥々横浜まで(とは言っても電車で1時間なのですが,出不精の僕にとっては大移動なんですよ)出かけてきました。

仕事を早めに切り上げ,京浜東北線に飛び乗り関内駅に着いたときには既にFirst set の始まる6時30分を20分程過ぎていました。いつもなら駅から赤レンガ倉庫まではぶらぶら徒歩で移動するところですが,そんなのんびり横浜の町並みを楽しんでいる暇もないので急いでタクシーに乗って赤レンガへ直行。ライブ会場の重たい扉を開けると既に演奏は始まっていて,何とも言えない張りつめた空気が漂い,一気にライブ鑑賞モードに突入,気持ちが高ぶります。ステージではちょうど <Falling in love with love > の演奏が始まったばかり。奇麗なウエイトレスさんにカウンター席まで案内され一息つき,改めて会場を見渡すとほぼ満席状態。よかった~。主催者でもないのに妙にホッとしたりして。それにしても若いカップルの観客の実に多いこと。この人々は本当にジャズを聴くのか? 甚だ疑わしい限りですが,まあ,仮にジャズを聴くカップルだとしましょう。でも,本当にこの人々はガラティを知っていて観に来ているのか? ガラティがイタリア人であることすら知らないのではないか? ガラティのことなどジャズを長年聴いてきたジャズ・ファンでもなかなか知らないのに,こんな若い人たちがどうみても『 Traction Avant 』に感動して今日,ここにやってきたとは思えないのですけどね。

でも誤解してもらいたくないのは,決して僕はそういう観客が良くないとは思ってないのです。こういうジャズの裾野を形成してくれている多くの<おしゃれな店でジャズを聴きながらお酒を楽しむ>人々,つまりは非マニア系ジャズ・ファンがいればこそ,欧米の無名のミュージシャンの来日が実現するわけで,僕のようなオタクばかりしか足を運ばないようなジャズ・ライブハウスでは,あっという間に潰れてしまいますからね。それに,この人々の数人は,ガラティのジャズに感動し,来年の今頃にはコルトレーンとは言わないまでも,エヴァンスくらいを聴いていてくれれば,それはそれで良いわけですから。ジャズの入り口は様々,ですからね。

閑話休題。僕は結局,First setの途中からSecond set の最後まで観たのですが,ほとんどMCが無かったので正確な曲名はわかりませんでしたが,知る限りの曲目を挙げておきます。

<First set >
最初の3曲は聴いていませんが,monakaさんによると3曲オリジナルをやっています。
4) Falling in love with love
5) I should doubt in autumn ( 『 Cubicq 』から )
6) Andre ( 『 Traction Avant 』から )


<Second set >
1) Cubicq ( 『 Cubicq 』から )
2) Stella by starlight
3) Noir ( 『 Cubicq 』から )
4) Rover de te voir ( 『 All Alone 』から )
5) Stringimi forte I poisi ( 『 Cubicq 』から )
6) アップテンポのスタンダード?
7) アンコール Nuovo cinema paradiso  ( 『 Cubicq 』から )

個人的には,CDで聴かれるような<究極の静寂美旋律のファンタジスタ>としてのガラティを期待していたのですが,やはりライブということもあり,静謐感とは対極にあるような情熱的で激情的な演奏がほとんどでした。特に-嫌な予感はしていましたが-大坂さんのドラムの音が激しすぎて,ガラティのピアノの音が打ち消されて聴き取れませんでした。時にはガラティと大坂の格闘的対話もあり,かなりCDのイメージとはかけ離れた音楽になっていました。Blue Gleam で見せる彼の姿はもしかして表向きの商業的仮面でしかないのか,と思わせる程のジキルとハイド的な乖離に兎に角びっくり仰天のライブ・パフォーマンスでした。まあ,それはそれで迫力があって楽しめましたし,ガラティの静寂音楽を聴きたければ家に帰ってCDを聴けばいいわけですしね。実際帰宅後僕は『 All Alone 』を聴きながら飲み直しましたが。

オリジナル中心の選曲の中でも,個人的に感激したのが,あの『 Traction Avant 』からの名曲 <Andre > を演奏してくれたことです。おそらく,最新の Blue Gleam レーベル録音の2枚からの選曲だろうと予想していただけに,First set の最後に <Andre > のメロディーが流れてきたときには比喩的な表現ではなく本当に体が震えました。この曲でガラティのファンになった方,多いですからね。また,スタンダードの選曲が <Falling in love with love > と <Stella by starlight > ということで,< 日本人はキース・ジャレットがお好き > ということをちゃんとリサーチした上での選曲で(共にキースお気に入りのスタンダード),意外に考え抜かれていて感心しました。<Stella by starlight >の構成など,キースの『 Standard Live 』のそれに似ていたしね。

ベイ・ブリッジを渡る車のヘッド・ライトの絶え間ない流れを窓から眺めながら,最高のジャズを聴き,そして旨い酒を飲み,やっぱりここが僕のかけがえのない居場所なんだな~とあらためて実感した一夜でした。

ガラティさん,また次回の来日を楽しみにしています。今度はぜひ都内のライブ・ハウスでやってくださいね。待ってます。それから,Blue Gleam の方々,今回の素晴らしい企画とジャズに対する新しい価値観を提示してくれたことに感謝するとともに,今後のリリース作に大いに期待しています。

Alessandro Galati discography

1995 Traction Avant ( VVJ )
1997 Jason Salad! ( RCA victor )
1999 Europhilia ( arci )
2005 All Alone ( Blue Gleam )
2007 Cubicq ( Blue Gleam )






Nathan Davis 『 Peace Treaty 』

2007年04月20日 23時21分03秒 | JAZZ
もう4, 5年前の頃の話ですが,所有するLPを大量にネット・オークションで処分したことがあります。そんな処分品の中にNathan Davis (ネイザン・デイヴィス)の 『 IF 』 が含まれていたのですが,出品するや否やあれよあれよといううちに入札額が1万円を超え,最終的には2万3000円ほどで落札されたことがありました。全くの予想外の高値落札に吃驚した僕は,落札者にどうしてそんなに人気があるのか訊ねたところ,「クラブではかなりの人気レア盤なんですよ。」とのことでした。

LPを発送する直前に慌ててCD-Rにデジタル化して焼いておいて,のちに聴き返してみたのですが,これが凄くカッコいいクールなハード・バップで,どうしてネイザン・デイヴィスの良さにそれまで気がつかなかったのだろうと後悔したのでした。とは言ったものの高値でさばけることに味をしめた僕は,他のネイザン・デイヴィスのLPを全部処分してしまいましたけどね。もちろんデジタル化した上でね。

小川充氏の監修による『 Jazz Next Standard 』(クラブ世代のためのジャズ・ディスク・ガイド)の中で,『 IF 』が紹介されたのはその2年後のことです。クラブのDJさん達って,すごいところからネタ見つけてくるもんですね。

そんな『 IF 』も2005年にP-VINE RECORDS からCD化され,誰でも聴けるようになりました。多分,LPでも復刻されたと思います。他にも『 Suite For Dr. Martin Luther King, JR 』( 1977 Tomorrow International ),『 Rules of Freedom 』( 1968 German Polydor ),『 Happy Girl 』( 1965 Saba ) などが近年CD化されています。そして今回,僕が最も愛聴していた作品『 Peace Treaty 』( 1965 SFP )がついにCD化されました。今回のCD化にあたり,未発表曲が2曲収められています。ちなみに澤野工房からは本作のLPが再発されているようです。ただし3600円もしますが。

本作はウディー・ショウ,ジャン・ルイ・ショータンとの3管ハード・バップです。ショータンはクラリネットやテナーも吹くマルチ・リード奏者ですが,ここではバリトンを吹いています。全6曲で,4曲がネイザン・デイヴィスのオリジナルで,1曲がウディー・ショウのオリジナルで,もう1曲がモンクの《 Ruby My Dear 》です。特に ウディー・ショウのアフロ・ジャズ・ビートの軽快な曲《 Sconsolato 》がカッコイイです。N・デイヴィスのゴリゴリ極黒パワーに満ち溢れたブローが最高なのですが,なんといっても楽曲の良さが本作の魅力でしょう。N・デイヴィスというとどうしても〈 スピリチュアル・ジャズ 〉系の吹き手の印象が強いのですが,本作では全然難解なことはやってませんので安心してください。〈 スピリチュアル・ジャズ 〉を強く感じるのは Segue からの2枚,つまり『 Makatuka 』 や『 The 6th Sense in The 11th House 』あたりでしょうね。

そうそう,先日,浅草のジャズ喫茶「 がらん 」に久しぶりに立ち寄ったら,この『 The 6th Sense in The 11th House 』が流れていました。あそこのマスターもかなりレアなLP所有しているんですよ。流石。因みにこのSegue の2枚だけは未だにCD化されていません。残念。

Eddie Gomez  『 Palermo 』

2007年04月16日 20時11分19秒 | JAZZ
90年代後半に「 Live at Vartan Jazz 」というシリーズがあったのをご存知でしょうか。これはヴァルタン・トノイアン氏が経営するコロラド州デンバーにあるライブ・ハウス「 Vartan's Jazz Club & Restaurant 」で繰り広げられたライブ・パフォーマンスを記録した自主制作盤のシリーズで,テディー・エドワーズ,ハル・ギャルパー,ヴァレリー・ポノマレフなどの,数多くのライブ演奏をカタログに持つ素晴らしシリーズでした。ジャケットはヤン・ザクシェウスキという画家が描いた現代抽象絵画で統一されたデザインで,ジャズっぽさは希薄でしたが非常に印象的なジャケットでした。

実はこのシリーズの中でも特に愛着があり今でも時々聴いている愛聴盤が2枚ほどあるのです。一枚はモスクワ出身のピアニスト,Andrei Kitaev (アンドレイ・キタエフ)のトリオ盤で,もう一枚がスウェーデン出身のピアニスト,Stefan Karlsson (ステファン・カールソン)のトリオ盤です。この2枚,面白いことにサポート・ミュージシャンがエディー・ゴメスとエリオット・ジグモンドで同じなんです。ビル・エヴァンスのバックをつとめた2人がサポートするとなると,当然エヴァンスを意識した作風となるわけで,両作品ともエヴァンスの愛した曲をまさにエヴァンス風に表現しています。特にステファン・カールソンの演奏などは,エヴァンスにそっくりで,疑似エヴァンス体験的な好盤でした。(人によっては似非エヴァンスと酷評されるかもしれませんが)

ちなみにアンドレイ・キタエフの作品は例の『 幻のCD 廃盤/レア盤~ 』に掲載されるほど現在では入手困難なCDになってしました。カット盤なら某関西系の通信販売業者から入手可能かもしれませんが。一方,ステファン・カールソンの作品は長らく廃盤でしたが,最近 NORMAから再発され,入手可能だと思います。

閑話休題。この二人とも,すばらしい演奏を聴かせてもらったわりに,それ以後,全く音沙汰知らずで,今日まで何処で何しているのか分かりませんでした。まあ,そんなに夢中に追っかけするほどのめり込んだ訳でもないので。それどころか完全にアンドレイ・キタエフもステファン・カールソンも“ 一発屋 ”だと思っていました。

ところがつい先日購入したエディー・ゴメスのリーダー作『 Palermo 』のピアノを弾いていたのがなんとこのステファン・カールソンだったのです。これにはびっくり。昔,田舎でつき合っていた彼女が,ある日突然,六本木交差点で奇麗な純白のミニのワンピースを着て歩いているのを見てしまったような,そんな感じです。元気だったのね~,それもエディー・ゴメスと競演されているとは,出世したのね~。と,まあ,嬉しかったわけです。“ 一発屋 ”だなんて,失礼しました。

で,彼のBioを調べてみましたら,1996年以降,エディー・ゴメスのトリオ&カルテットのレギュラー・ピアニストをつとめており,現在までに7枚のリーダー作と47のレコーディング歴があるようで,しっかり活動していたようです。

エディー・ゴメスの作品にカールソンが参加したのはおそらく今回で5枚目になると思われますが,正直なところ,ゴメスのリーダー作を買ったのは初めてでした。ゴメスは好きだけど,ベーシストがリーダーになると気難しくてつまらない作品に陥りやすい印象が強く,どうしても食指が伸びないんですよね。今回珍しくゴメスのCDを買ったその理由は,《 jazz eyes 》というイタリアはシチリア島の都市,パレルモにオフィスを構える新興レーベルからのリリースだったからです。このレーベル,新興もいいところで,まだ2枚しかカタログがありません。もう一枚は昨年にヒットしたケビン・ヘイズの『 For Heaven's Sake 』でした。この作品が凄く良かったので,第二弾であるこのゴメスの作品にも期待したという訳です。

肝心の内容ですが,カールソンのピアノは昔のエヴァンス一辺倒だった頃の面影は全くなく,セオリカルにはより進化した手法を身につけた,どちらかというとリッチー・バイラークを想起させるジャズで,これまたびっくり。「 Live at Vartan Jazz 」でも演奏した《 We will meet again 》も完全にエヴァンスの呪縛から解き放たれた自由な発想で構築されており,スケール感もあり感動的です。

ゴメスはどうかというと,これがnaryさんも言われているように,録音が悪いのか何なのかわかりませんが,とにかくペニャペニャ,ベチャベチャ音で,聴くに耐えません。ゴメスのように弦高を恐ろしく低くしてアンプに頼った奏法をするベーシストは,録音機材や技術者の優劣によりその音の出来具合が左右されるので,時にこんな最悪な事態に陥ってしまうのでしょう。

ということで,カールソンの今後の活躍に期待する一方で,やっぱりゴメスは80年代がベストだと確信した一枚でした。 おしまい。

Eddie Gomez  『 Palermo 』 2006 jazzeyes002
Stefan Karlsson (p)
Eddie Gomez (b)
Nasheet Waits (ds)




Daniele Scannapieco 『 Daniele Scannapieco 』

2007年04月15日 06時26分04秒 | JAZZ
リー・モーガンのヒット作『 The Sidewinder 』にはジョー・ヘンダーソン,名作『 Cornbread 』にはハンク・モブレー。リー・モーガンの超絶技巧の派手なフレーズの影に,カウンターバランスをとるかのように朴訥とした表情を見せるジョー・ヘンダーソンやハンク・モブレー。金管楽器と木管楽器のコントラストはたとえるならば“明”と“暗”,“高”と“低”,“鋭”と“鈍”,そして“主”と“従”。あくまで主役花形はラッパであり,笛はラッパを支える女房役であるわけですね。

イタリアの新進気鋭のThe Young Lions ,High Five Quintet の醍醐味のひとつに,この金管(ボッソ)と木管(スカナピエオコ)のカウンタータイプの繰り成す音響的な面白みや多彩なハーモニーの美しさがあるのではないでしょうか。あまりにも突出した強烈なアイデンティティーを有するファブリツィオ・ボッソだけでは,あれほどファンキーで楽しいジャズは生まれてこなかったであろうことは,その後の彼のワン・ホーン作品の出来栄えが証明しています。スピード感抜群でキュートで超絶技巧なボッソと,野太い滑らかなトーンで優しく包み込むスカナピエコの2人の邂逅があってはじめてあの傑作が生まれたのでしょう。

という訳で,前回のHigh Five Quintet 絡みでもう一枚,聴いてみましょう。新作ではないのですが僕の密かな愛聴盤である Daniele Scannapieco (ダニエル・スカナピエコ)( ts & ss )のデビュー作『 Daniele Scannapieco 』( 2002 night & day )です。彼のリーダー作は今のところ本作と『 Never More 』( 2004 VVJ )(前項あり)の2枚しかありません。ボッソが既にリーダー作やサイドを含め,大量の録音を世に送り出しているのに比べると何とも寂しい限りです。

このデビュー作,まず目を引くのがそのメンバーです。ボッソ,バティスタ,レニーニ,ウマチェカと,最強布陣で制作されています。うぉ~,これは ボッソ=バティスタ=スカナピエコ の夢の3管フロント実現か~,と興奮しますが,実はバティスタは1曲のみ参加でしかもその曲《 Deja-Vu 》ではボッソがお休みだったりして,結局,夢の3管フロントは1曲もありません。一方,ボッソは全11曲中5曲( M-2,3,4,7,10 )に参加。 『 Never More 』では2曲しか吹いていませんでしたから,その点は大健闘でしょう。楽曲はメンバー各人の持ち込み曲で,おそらく大体は本作への書き下ろしかと思われますが,M-3 《 Magic Boltro 》はエリック・レニーニがフラビオ・ボルトロのリーダー作『 40°』に参加した際,書き下ろした曲ですし,M-7 《 Funny Moon 》もレニーニが今度はステファノ・ディ・バティスタの『 A Prima Vista 』に参加した際に書き下ろした曲です。でもども曲も何処かで聴いたことあるような,ないような。

全体にHigh Five Quintet のような派手でキャッチーな曲は少なめですが,その分,ボッソもスカナピエコも丁寧に構築されたアドリブ・ラインを披露してくれて,知らず知らずのうちに惹き込まれてしまいます。また,チェカレリの多彩な小ワザを随所に挟み込みながら,時にドラマティックに,時にロマンティックに場を盛り上げるその手腕には,やっぱり流石。ロレンツォ・トゥッチとは一味も二味も違うな~と感心させられます。

最初は幾分地味な印象を受けるかもしれませんが,聴きこむうちにジワジワと沁み込んでくる秀作です。あまり流通量が多くないと思いますので,見つけ次第ゲットがよろしいかと。

Daniele Scannapieco 『 Daniele Scannapieco 』2002 night & day
Daniele Scannapieco ( ts & ss )
Fabrizio Bosso ( tp )
Stefano Di Battista ( ss )
Eric Legnini ( p )
Dario Rosciglione ( b )
Andre Ceccarelli (ds )

Mario Biondi 『 Handful of Soul 』

2007年04月12日 22時45分38秒 | JAZZ
イタリアの人気ラウンジ系ジャズ・ボッサ・レーベルSchemaは,僕にとっては“あちら側”のジャズ・レーベルであって,完全に守備範囲外。もはやジャズの原型をどどめないほど解体され,歪んだ再構築を施されたRemix物や,聴いていると脳みそが溶けてしまいそうになる軽薄ボッサ物など,真摯なジャズ・ファンにとっては完全な越境ジャズですので,本当は無視したいところなのですが,中には芯のしっかりした本物のジャズ作品も世に送り出しているので,そうは簡単にいきません。

ファブリツィオ・ボッソ,ロザリオ・ジュリアーニ,ピエトロ・ルッソ,ジュセッペ・バッシ,ロレンツォ・トゥッチらによって結成された,ニコラ・コンテのプロデュースによる Schema Sextet の 『 Look Out 』 (前項あり)などはイタリアン・ハード・バップらしい洒落たアレンジ,アンサンブルで非常に質の高い作品でした。

一方で, この超人気DJであるニコラ・コンテの自己名義の作品 『 Other Direction 』(前項あり) (正確には Schemaではなく Blue Note 作品ですが) では,ボッソ,ティル・ブレナー,ダニエル・スカナピエコなど,錚々たるベンバーを起用しながらも,一転して脱力系ジャズ・ボッサをだらだらと13曲も演奏しており,あまり特筆すべき点のない凡作だったりしました。

ということで,いくらファブリツィオ・ボッソが参加しているからと言え,Schema 作品には注意が必要なわけですね。今日取り上げる Mario Biondi (マリオ・ビオンディ)は初めて耳にするイタリア人の男性歌手で,通常ならスルーすることこですが,バックがなんと High Five Quintet とくれば条件反射で手が伸びてしまうのがイタリアン・ジャズ中毒患者の悲しい性。

僕は買っちゃいましたが,普通はいくらHigh Five Quintet が参加しているとは言え,躊躇しますよね。なにしろ出所が Schema だし,しかも人相の怪しいスキンヘッドのオジサンが意味不明なポーズをとっているし。大体,High Five Quintet がサポートしているからと言っても,ボッソやスカナピエコのソロなんかあるんだろうか? 真剣にバッキングしてんのか? どうせお小遣い稼ぎの事務的ワークだろうぉ~,と勘繰ってしまいます。
でもね,まあ,なかなかイイ感じの作品でした,これが。ボーカルのオジサンは,ハスキー系の渋い感じの声質で,何となくマーク・マーフィーをサラッと洗浄して聴きやすくしたような雰囲気があります。全然ジャズではありませんが,聴いた瞬間,《 On The Beach 》で有名なAOR歌手のクリス・レアを思い出しちゃいました( 特にM-3 などクリス・レアに似ていた )。個人的には嫌いじゃない声です。

High Five Quintet のバッキングもアンサンブルが洒落ていてカッコイイです。肝心のソロ・パートですが,全12曲中ボッソが7曲 ( M-3, 5, 6, 7, 8, 10, 11 ),スカナピエコが6曲 ( M-4, 6, 7, 9, 11, 12 )ソロをとっていて,ボーカル作品であることを考慮すると十分な演奏であるように思われます。しかもかなり熱いソロも披露しており,ある意味 Schema らしくないソロであったりします。全体の雰囲気はやはり Schema らしくジャズ・ボッサを基調とした爽やかで軽いノリではありますが,その他大勢の軽薄 Schema 作品とは一線を隔す出来栄えだと思います。因みにプロデュースはニコラ・コンテではなく,レーベルオーナーの Luciano Cantone (ルシアーノ・カントーネ)です。

Mario Biondi 『 Handful of Soul 』2006 Schema

Mario Biondi (vo)
Fabrizio Bosso (tp)
Daniele Scannapieco (ts)
Luca Mannutza (p)
Pietro Ciancaglini (b)
Lorenzo Tucci (ds)

安達久美クラブパンゲア 『 Little Wing 』 (2)

2007年04月08日 20時25分42秒 | JAZZ
8曲目《 Birthday Card 》は「 ハッピバースデイ トゥー ユー ~ 」で始まるあの《 Happy Birthday 》のギター・ソロがイントロとして使用されています。あのウッドストックで,ジミヘンがゴミ山をバックにギターソロで演奏したアメリカ国歌を真似た訳ですね。それにしてもこのシャッフル,ナニワの頃の清水だったら,絶対,スラップでリズムを刻むはずなのに,ここではちゃんと指弾きしているんですよね。寂しいな~。昔は「お前,ここはどう考えても指弾きだろぉ~」という所でも無理やりスラップで押し切っていたのに。彼も歳をとったということか。そう言えばナニワの《 K-Bone Shuffle 》を必死にコピーしたなぁ~。

9曲目《 Cookie Monkey 》は上野動物園のサルの無邪気に遊ぶ姿を見ていて書き上げた女の子らしい可愛い曲。

とりあえず一通り聴いてみて感じたのが,もっとスコット・ヘンダーソンばりの超絶技巧の変態フージョンを想像していたわりには,意外にも直球勝負のシンプルなロック・フージョンであったこと。スコヘンというよりも,ハイラム・ブロックやロベン・フォード,それからサンタナやラリー・カールトンなど,要はジャズ系フージョンというよりはロック系フージョンに近いテイストであったように感じました。サイドメンに関しては,昔ならフージョン界の対極に位置していたナニワ・エクスプレスとスクエアのメンバーが,20代の若い女性ギタリストをキー・パーソンとして終結しちゃうという不思議さ。時代の流れを感じずにはいられませんでした。

そして,彼女の演奏を聴いていて一人思い出した女性ギタリストがいました。その名は Nori Bucci 。Gamalon という米国のロック・フージョン・バンドをご存知でしょうか。ニューヨーク州バッファローで結成されたツイン・ギターを売り物したインストゥルメンタル・バンドで,1987年にデビュー以来,おそらく4~5枚のアルバムを制作しています。僕は George Puleo (g)が在籍していた初期の頃が一番好きなのですが,2004年から加入したこの女性ギタリスト,Nori Bucci もなかなかの腕前です。彼女の参加したアルバムは(たぶん)まだ制作されていませんが,YouTube で彼女の演奏が観れますので,リンク貼っておきます。その他にもGeorge Puleo 在籍時の Gamalon の映像も貼っておきます。

Gamalon ( Nori Bucci ):http://www.youtube.com/watch?v=VcDqz-yVKEo
Gamalon
 ( George Puleo ):http://www.youtube.com/watch?v=WBTmoepUukc

写真のアルバムは1990年の Gamalon のセカンド。名曲 《 Bleecker ST. 》 が収められた(個人的)名盤。カッコイイです。普段は全然スピードを出さない私ですが,これを聴くと自然にアクセル踏んじゃいます。スティーブ・ヴァイ好きの雑食系ジャズ・ファンにはお薦め。

P.S.  成毛滋さんが3月29日に大腸がんで亡くなられていました。享年60歳。 昔,成毛滋さんのギターの教則カセットテープを,それこそ伸びきってピッチが狂うまで聴きまくった思い出があります。今と違って昔は教材が皆無だったから彼の教則カセットは貴重な情報源だったのです。  ご冥福をお祈りします。


安達久美クラブパンゲア 『 Little Wing 』 (1)

2007年04月08日 20時23分08秒 | JAZZ
ナニワの女ジェフ・ベックこと安達久美率いるユニット「 club PANGEA 」のメジャーデビュー・アルバム『 Little Wing 』が巷で評判がすこぶる良いようで,それじゃあと言うことで昨日買って帰りました。

タイトルが『 Little Wing 』ですから当然,ジミ・ヘンドリックスへのオマージュが窺がえる訳ですし,ジャケットもジェフ・ベックの『 WIRED 』のパクリですから,大体,針を落とさなくても出てくる音は想像できるのですが,やっぱり実際に聴いてみると圧倒的なハード・コアな音圧に吃驚仰天します。まだ何処となくあどけさが残る若き女性の指先から,あんな音が,こんなフレーズが,出てきちゃうんですから時代も変わったものです。

安達久美の経歴はこちらを参照していただくとして,この「 club PANGEA 」のメンバーは現在,安達久美 (g),則竹裕之(ds),清水興(b),河野啓三 (key)の4人ですが,初期の頃にはキーボーディストに佐伯準一が加入していたり,一時期ですがクリヤ・マコトが参加していたりと,やや流動的であるようです。

1曲目の《 Little Wing 》は言わずと知れたジミヘンの名曲。原曲は2分半の短い曲でしかも1コーラスのソロの後にフェイド・アウトという構成でした。安達久美の3コーラス分のソロでのイントロ(原曲では1コーラス)→河野啓三の激情的なシンセソロ→安達久美のソロという構成。キーは原曲と同じEm。DからEへのチョーキングで始まる最初の一音に痺れちゃいますね~。フレーズはマイナー・ペンタトニック主体のかなりオーソドックスな組み立て方ですが,無駄の無いクリアー・トーンで綺麗です。

2曲目は彼女の地元,泉州のだんじり祭りにちなんで作られたファンク・ナンバー 《 Danjiri Funk 》。イントロのカッティング・ギターが左右のチャンネルに振り分けられた洒落たアレンジ。19歳の時に渡米し,スコット・ヘンダーソンに師事しただけあって,ここではアウト・スケールを多用したスコヘン流儀が顔を覗かせています。個人的にはこの曲がベストかな。途中で《 Giant Steps 》を引用するあたりが面白いですね。

3曲目《 狐の嫁入り 》は一転してポップな7/8拍子の軽快でかわいらしい曲。狐の嫁入りとは,晴れているのに雨が降ることを言いますが,そんな不思議な彼女の実体験からできた曲。

4曲目 《 JUNK 》は深いディストーションにワウワウをかけて,まるでジミヘンの《 紫のけむり 》のようなイントロで始まります。重心低く繰り出される清水興の8ビートにゾクゾクします。

5曲目《 Air Poket 》はスピード感,浮遊感のある美しい楽曲。彼女は譜面が書けずに佐伯準一に譜面を書いてもらっていたと言いますが,どうしてこんな複雑な構成の曲を作れちゃうのでしょうかね。不思議です。なんとなくプレーヤーズ(いわゆるコルゲン・バンド)風のドラマティックな曲だと感じましたが。そういう耳で聴くと彼女も松木恒秀に似ているようにも思えちゃう。

6曲目《 Gorilla Gorilla Gorilla 》はパーカッションが入ったラテン・タッチの曲。清水興のベース・ソロが入りますが,垢抜けないフレーズは今も昔も変わりませんね。巧くはなったけど,洗練されていないところが彼の良いところでもあり悪いところでもある訳で。それにしてもこのバンドでは清水興が裏方に徹しているのが不気味です。

7曲目《 PANGEA 》は10分41秒の幻想的なバラード。ゆったりと流れていく気の遠くなるような時間の中で,巨大大陸 PANGEAは徐々に分裂していったというグラフィック映像(NHK番組)からインスパイアされて書いた大作。なんか何処かで聴いたことあるような楽曲なんだけど,思い出せない。鳥山雄司だったかなぁ,あるいは森園勝敏だったかなぁ。と,考えているうちに曲が終わった。

                   つづく

EGEA Orchestra 『 Di Mezzo Il Mare 』

2007年04月05日 23時30分05秒 | JAZZ
Swing Journalに連載中の「 寺島靖国 日常生活する 」の4月号の記事によると,ついにというか,やっぱりというか,寺島氏が「テラシマ・レコード」なるレーベルを発足させるようです。とは言っても完全なインディペンデントではなく,DIWの傍系レーベルのようですが。どんなミュージシャンに声をかけ,どんな楽曲を演奏させるのか楽しみですが,記事によると内容もさることながらその外装にも彼独自のこだわりを見せたいようです。

はっきり言うがいまCDが売れないのはジャケットが良くないからである。… 私は現行の手頃な大きさのCDが好きである。同じサイズで本の形式にしたらどうか。あるいは写真のアルバムのような作り。… テラシマ・レコードはすべてその手のブック形式のCDで出していく。》

だそうです。僕の場合,昔のLP時代の頃はよくジャケ買いしたものですが,最近はジャケットにほとんどこだわらなくなってしまいました。本質は外装ではなく内容である,とごく当たり前のことが最近やっと分かり出したからですが,でも,本当はそりゃ~手の込んだジャケット,外装に越したことはないですよね。ジャケットにこだわらない,というよりも,もしかするとあのCDのプラスチックに入っている陳腐なぺにゃぺにゃジャケに諦め感みたいなものを感じているんでしょうね。時代の流れだから仕方ないよな~,と。本当は惚れ惚れするようなジャケット・デザインや凝った外装のCDがあったら良いのに,と実は思っていたりするわけです。

寺島氏は分厚いボール紙の表紙と12点の写真と説明書で構成されたSabina Hank という歌手の『 Blue Moments 』  Quinton Records )を引き合いに出して絶賛しておりました。残念ながら僕はこのCDを所有していませんが,ちょうど同じような外装の愛聴盤が今,手許にあります。それは,イタリアの EGEA レーベルから最近リリースされた EGEA Ochestra 名義の『 Di Mezzo Il Mare 』という作品です。ジャケットデザインは他のプラケース入りのEGEA作品と同じですが,この作品はシックなつや消し黒の分厚い紙の表紙で,中には24ページにわたるカラーの写真(録音風景やイタリアの町並みの風景写真)が収められたブックレット形式で,手にすると何とも言えない上質な触感と重量感があり,非常に所有欲をかき立てられる外装なんです。

     

本作は,EGEA 所属のミュージシャン10人で編成されたラージ・アンサンブル集団で,その顔ぶれはエンリコ・ ピエラヌンツィー,ピエトロ・トノロ,ガブリエル・ミラバッシ,ピエトロ・レベラトら,EGEAの資金力にものを言わせて集められた錚々たるメンバーです。作編曲は  Germano Mazzocchetti という方です。ナポリの大衆音楽であるカンツォーネをベースにジャズのアレンジを施した6篇からなる組曲作品で,イタリアン・ミュージシャンのレベルの高さをあらためて再認識させられる素晴らしい作品です。幾重にも織り込まれた重厚で華麗なアンサンブや,各人の見事なソロ・パート(特にミラバシが凄い!)など,聴き所満載のメンバーにも外装にもお金をたっぷり注ぎ込んだお買い得盤です。
     

ところで,EGEACDが全てこのような豪華ブックレット形式かというとそんなことは全然なくて,通常はプラスチックケースに入った普通のジャケットなんですよね。僕の手許にあるEGEA CDでは,このEGEA Ochestraの『 Di Mezzo Il Mare 』とOlivia Sellerio オリビア・セラリオ の『 Accabbanna 』の2枚だけがブックレット形式です。前者EGEA オールスターズによるアニヴァーサリー的な意味合いがあるから豪華仕様になっているとも考えられますが,後者は別段,豪華仕様にする必要もないように思われますけどね。ちなみに EGEA Official Site のカタログを見てみると,この豪華仕様盤も通常盤も同じ15ユーロ(約2640円)です。 


メタボリックシンドローム予備軍

2007年04月03日 22時16分39秒 | 健康・ダイエット
今まで履いていたパンツが最近きつくなってきたので,昨日,恐る恐る体重計に乗ってみてみました。なんとそこには目を疑うような数字が表示されているではありませんか。75.2kg!! ひぇ~。 一年ほど前までは71kg前後を行ったり来たりだったのに,いつの間にか4kgのゲインです。ショックです。ついでにウエストを測ったら,な,な,なんと90cm!! しばし呆然と立ち竦む僕に妻が 「そろそろ真剣にダイエット考えたら」 とキツイひと言。しかし,これが現実です。落ち込んでいても仕方ありません。よ~し,今月から仕事場が変り時間の余裕もできたことだし絶対体重を落とすぞ,と昨日はビールを飲みながら誓いを立てたのでした。

メタボリックシンドロームとは,飽食と車社会の中で増加してきた心血管疾患のハイリスク状態のことを言いますが,ベースには内臓脂肪の蓄積があるわけです。 「メタボリックシンドローム診断基準」ではウエスト径の増加(男性≧85cm, 女性≧90cm)を満たした上で,高中性脂肪症,高血圧,空腹時高血糖の3項目のうち2項目以上を満たしたものをメタボリックシンドロームと呼んでいます。僕の場合,「ウエスト85cm以上」と「高中性脂肪症」は残念ながら満たしちゃいますが,高血圧と高血糖はみられないので,ぎりぎりメタボリックシンドロームの範疇には入りませんが,その予備軍であることは間違いありません。このままでは60歳ぐらいまでは生きられるけど,老後の健康の保証はないでしょう。何とかここで食い止めなければならないのです。ということで早速,今日から運動を始めることにしました。

メタボリックシンドロームの保健指導の基本は,運動と食事の生活習慣の改善により内臓脂肪を減らすことに尽きます。人により〈 運動のみ 〉,〈 食事指導のみ 〉,〈 運動と食事指導 〉などから選択するわけですが,僕は軽い食事制限と軽い運動の両方を実践していこうと考えました。具体的には一日2本は飲んでいる缶コーヒーをやめてお茶にする。看護婦の休憩室に置いてあるお菓子類には手を出さない。そして運動はできる限り毎日,ジムのウォーキングマシンで最低20分はウォーキングする。ということにとりあえず決めました。はじめから高いハードルを設定しては長続きしませんので。幸い,僕のマンション内の共有スペースにはフィットネス部屋があるので,エレベーターで20階から2階に降りるだけですぐ運動ができるわけです。こんなに便利だったのに今まで利用しなかったのがもったいないくらいですが。

本日のデータ
体重75.2kg 身長171.0cm 腹囲90cm 体脂肪率22.3% BMI 25

身長から計算した僕の標準体重は64.3kg

メタボリックシンドロームの対象者に対しては,一気に標準体重までダイエットするのではなく,まずは現在の体重の5%(僕の場合は3.8kg )を3ヶ月から6ヶ月かけて徐々に落としていくという指導が行われていますので,僕もそれに従い,無理のないダイエットをするつもりでいます。

というわけで,先程,ジムで軽く汗を流してきたのですが,約20分のウォーキングマシンで120kcal消費してきました。あ~,疲れた。その割りにたった120kcalですからね。カロリーをとるのは簡単なのに,消費するのはえらく大変です。1kgの体脂肪を減らすのになんと7000kcalの消費が必要なんですからね。今日の運動のペースでやっていたら1kg減らすのに58日もかかってしまう計算です。こりゃあ大変だ。

Michela Lombardi 『 Starry Eyed Again 』

2007年04月02日 22時24分45秒 | JAZZ
先月いっぱいで18年在籍した大学の医局を退局し,本日より民間の病院に勤務することになり,不安と期待に胸膨らませながら,心機一転,頑張っていこうと思っています。まあ,既に僕の人生もピークアウトしていて,遮二無二頑張るような歳でもないので,マイペースでやっていこうと思っていますが。幸い今度の病院は緊急手術もほとんどなく,時間の余裕もだいぶできそうなので,子供と過す時間もたっぷり持てますし,ジャズを聴く時間も作れそうです。

ということで,今日はすごく気分爽快です。先日の採血結果でも尿酸値も正常化したし,肝機能も改善(とは言ってもGPT=74と今だ高値ですが(^-^;))しているので,心置きなくビールを飲みながら久しぶりのブログ更新です。

気がつけば今日でJazzのエントリーも395個に達しているんですね。いや~沢山書いたものだと我ながら感心しておりますが,内訳を見てみますとやっぱり欧州ジャズのエントリーが多いですね。趣味を反映して管モノの作品が多いのも特徴かもしれません。それに反してヴォーカル物はほとんどありませんね~。実は意外にヴォーカルの新譜をちょくちょく買っているし,その中には気に入っているものも多いのですが,なかなか記事にするのが難しくて紹介できないだけなんですよ。ヴォーカルを文章に置き換える作業って,楽器の音の変換作業に比べて難しいと思いませんか? 

しかもヴォーカルって聴き手の個人的な「好きな声」,「嫌いな声」が評価基準に大きく関わってくるので,なかなか客観的なレビューが書きにくいと言ったこともありますしね。

僕はサラやエラなどのいかにもジャズ・ヴォーカルといった歌唱法が苦手で,どうしても白人女性ヴォーカルに好みが偏ってしまいがちです。昔ならビヴァリー・ケニーやモニカ・ゼタールンドが好きだし,最近ではステイシー・ケントが堪らなく好きです。そんな好み範疇に先日仲間入りしてきたのがイタリア人女性,Michela Lombardi (ミッシェラ・ロンバルディー)です。

「どうせ,お前,ジャケットにつられて買ったんだろ~。」と言われても仕方ないくらい綺麗な女性ですが,本当はバックの Riccardo Arrighini (リカルド・アルギーニ, 1967~)買いです。信じてください。

僕がアルギーニを初めて聴いたのは一昨年の銀座プロムナードでフランチェスコ・カフィーゾのバック・メンバーで来日した時です。カフィーゾはもちろんとんでもなく凄いプレーヤーだったのですが,僕が意外に耳を奪われたのがアルギーニの,時にアグレッシヴに時に繊細に緩急自在に弾き分けるそのピアノ・テクニックだったのです。特にその強面からは想像できない優しいバラード・プレーには酔いしれました。その後,Philology から自己のトリオ物やファブリツィオ・ボッソ入りのカルテット物などをリリースし,最近俄かにその存在感を日本でもアピールしてきている若手ピアニストです。

本作ではもちろん歌伴ですから,全体に控えめな演奏で占められていますが,時々右手のシングル・トーンで奏でられる美旋律にはうっとりしてしまいます。肝心のロンバルディーのヴォーカルは,透明感があって僕の好きなタイプなのですが,あまり癖がない清唱である分,印象に残りにくい声質かと思います。個人的にはもう少しキュートで甘ったるい,猫系の声質が好みですが。清潔感があり過ぎるのもジャスとしてはいかがなものかと。