雨の日にはJAZZを聴きながら

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American Clave / Anthology

2008年11月28日 05時39分34秒 | JAZZ
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一週間ほど前に、渋谷のジャズ・カフェ 『 メアリー・ジェーン 』 に立ち寄った際に店内で流れていた音楽、それが American Clave ( アメリカン・クラヴェ )の 2枚組コンピレーションCD 『 Anthology 』でした。

最近はこの種のオルタナティブというかアンダーグラウンド・ジャズを滅多に聴かなくなってしまったので、 段ボールに仕分けて物置部屋の奥の方に放置していたのですが、メアリー・ジェーンで聴いていたらムショウに懐かしくなり、一昨日、段ボールから探し出して聴いて、夜な夜な独り悦に浸っています。

アメリカン・クラーヴェなんて俺は知らん、という方もいらっしゃると思いますので、簡単に説明しておきます(と、言っても、僕もほとんど知りませんが)。

アメリカン・クラーヴェは、NY のアンダーグラウンド・シーンの鬼才、キップ・ハンラハンが1980年に創立したレーベルです。1954年NYラテンの中心地、ブロンクスで生まれたハンラハンは、幼い時からパーカッションに慣れ親しみ、のちにインド、ガーナ、バリなどを巡りながらその土地のリズムを吸収していきました。さらに70年代に入ると、ジャン=リュック・ゴダールやテオ・マセロに師事し、映画や音楽プロデュースについて多くを学んだといいます。70年代末には映画制作を企画しますが、予算不足のため断念。よりローバジェットで実現可能な音楽の制作に興味を抱くようになっていきます。そしてついに1980年にアメリカン・クラーヴェを創立しました。

アメリカン・クラーヴェが提示する音楽は、ラテン・パーカッションをベースとして、そこにジャズ、ファンク、R&B、ノイズ、ポエトリーなどの要素を取り入れた「脱ジャンル音楽」です。一応、キップ・ハンラハンの一連の作品は、レコード店ではジャズのコーナーに仕分けられていますが、この音楽をジャズと呼んでよいかどうかわかりません。ただ参加ミュージシャンを見渡すと素晴らしいジャズ・ミュージシャンが名を連ねています。ドン・ピューレン、カーラ・ブレイ、スティーブ・スワロウ、アート・リンゼイ、デヴィッド・マレイ、アラン・トゥーサン、レスター・ボウイ、エヴァン・パーカーなどなど (ロバート・ワイヤットやジャック・ブルースなんかも参加している作品もある)。

パーカッションを核にしたNYラテンと言ってしまえば簡単なのですが、ハンラハンの音楽には他の誰とも似ていない異質な輝きを放っています。しなやかで繊細な感性をもったハンラハンは、常に社会に対する不条理、音楽業界のマジョリティーに対する怒りなどを静かに内に秘め、そのエネルギーを自らの音楽に転換していったのです。NYの街の、しかし決してビジネスマンが行きかう昼間の表通りではなく、排水溝から立ちのぼる生臭い悪臭がただよう薄暗い路地裏に息づく耽美でクールなラテンの響。彼の音からはそんなイメージがリアルに思い描けます。

彼は多くのアーティストをプロデュースしてきましたが、その中でも最も評価されているのが、タンゴ界の巨人アストル・ピラソラの作品です。ハンラハンがプロデュースしたピラソラの作品には、『 Tango Zero Hour 』( 1986 ) 、『 The Rough Dancer and The Cyclical Night 』 ( 1988 ) 、『 La Camorra : The Solitude of Passionate Provocation 』 ( 1988 ) の3枚があります。この3枚によりヒラソラ自身の評価もより一層高まりました。一番人気はやはり最初の『 Tango Zero Hour 』でしょう。当初はアメリカン・クラーヴェからリリースされたこれらの作品も、のちにワーナーから発売されるようになり (ハンラハンがお金に困って、版権を譲渡したのでしょうか)、04年のワーナーのジャズ部門閉鎖に伴い、現在はノンサッチから発売されています。

そんなわけで、アメリカン・クラーヴェは決して多くのカタログを所有するレーベルではないのですが、何から聴いたらよいのか分からないという方には、この2枚組コンピレーションは最適です。サンプラーという体裁はとっていますが、実は80年代のハンラハンを短時間に俯瞰し、理解することのできる作品として貴重だと思います。

実を言うと、最近のハンラハンならびにアメリカン・クラーヴェの活動については全く知りません。僕がアメリカン・クラーヴェに興味を持ったのは2000年に発売された村井康司氏の著書『 ジャズの明日へ 』 ( 河出書房新社 )で紹介されていたのがきっかけで、その頃に熱病にかかったように夢中で聴き漁ったのですが、その熱もすぐに冷めて、最近はその存在すら忘れていました。結局、キップ・ハンラハンの扉は開けたものの、その中に奥深く入りこむことはできなかったです。今ならあの頃とはまた違った理解の仕方ができるかと、今回針を落としてみましたが、やっぱりある一定のところから先には惚れ込めない何かがあるのですね。40代半ばにして理解できないものが今後、理解できるようになるとは到底思えず、やっぱりこの種の音楽は僕にとっては永遠の越境音楽なんだろうなぁ、と溜息をついている次第です。

Aaron Parks @ Cotton Club

2008年11月24日 05時42分57秒 | ライブ
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Aaron Parks ( アーロン・パークス )のライブを、丸の内 コットンクラブに観に行ってきました。今回の公演は19日から22日までの4日間。僕が観たのは最終日22日の2nd show 。いくらメジャー・デビューしたとはいえ、まだまだ日本では知名度の低いアーロンですので、当日ぎりぎりの予約でも余裕で間に合うだろうと高を括っていたらどんでもない。当日に電話したらすでに 1st show は満席とのこと。仕方なく9時30分開演の 2nd show を観ることにしました。

あとでわかったのですが、どうやら某企業社員や某カード会員に優待券が大量に配られたようです。僕も Blue Note から送られてきた割引券( チャージ料金6.825円が4.200円に )を利用しました。おそらく正規料金で観た方はほとんどいないのではないでしょうか。

今回のメンバーは、最新作 『 Invisible Cinema 』 ( 前項あり )にも参加していた Mike Moreno ( g )、Matt Penman ( b ) を含むギター・カルテット編成。ドラマーだけが Eric Harland ではなくJochen Rueckert ( ヨッヘン・ルカート )に代わっている。

ヨッヘン・ルカートはほとんど馴染みのないドラマーですが、古くはマーク・コープランド、最近ではカート・ローゼンウィンケルのサポートをしています。NYの気鋭ギタリストMisja Fitzgerald Michel ( ミシャ・フィッシェジェラルド・ミシェル )の『 Encounter 』( 2006 ) でも叩いていました。75年ドイツ生まれのヨッヘンはNY のロック界でも活躍中で、しかもドラマーとしてではなく、ベーシスト、プログラマー、プロデューサーとしても名を馳せているようです。

アーロンがメンバーを簡単に紹介のあと演奏が始まりました。アーロンはどことなくニューハーフっぽいしゃべり口調で、ちょっと意外。ほとんどMCなく淡々とアーロンの世界観を綴っていくステージです。ガレスビーの ≪ Con Alma ≫ を除きすべて『 Invisible Cinema 』からの楽曲。アンコールにはタイトルは失念しましたがBe-Bop の曲を演奏してくれました。やっぱり全編にマイク・モレノの宇宙系ギター・サウンドが効いています。たとえアーロンのソロに短いオブリガートつけるだけでも、瞬時にホール内の空気を変えてしまう存在感が彼にはあります。やはりアーロンの理想とする音世界にはマイクのギター・サウンドは不可欠な要素なのだということが実感されるステージです。アルコールにより全身の知覚神経が軽く麻痺していることもあり、心地よいトランス感に浸れることができました。特に4曲目に披露した ≪ After Glow ≫ は、アーロンのテンポ・ルバートで始まるのですが、この導入部がただただゆっくりと聴き手を陶酔の花畑に誘うkeithy な美旋律満載で、うっとりしてしまいました。約80分のステージは全く退屈することなく、浮遊感漂う音場に身を任せながら、最高の時間を過ごさせていただきました。

というわけで、帰宅後、ライブの感動を思い起こしながら『 Invisible Cinema 』を聴き直していましたが、もう一枚、アーロンの名演が聴ける作品として、 Patrick Cornelius ( パトリック・コーネリウス )の『 Lucid Dream 』 ( 2006 ) を引っ張り出して聴いています。パトリックはNYで活躍中の新進気鋭のアルティストで、昨年、アーロン周辺のミュージシャンとしてマイク・モレノやローガン・リチャードソンなどの新譜を拙ブログで紹介した際、ブログ『 ジャズ新譜ナビゲーター 』のナカーラさんから教えてもらったミュージシャンです。ここでのアーロンのソロもかなり出来が良いです。

 2 songs upload from the album 『 Lucid Dream 』

ちょっと話は逸れますが、12月号のSwing Journal にアーロンの記事が掲載されていましたが、その中で、彼は「 以前の4枚のリーダー作( Keynote の諸作品のこと )は、誰も掘り出せないような地中の奥深くに埋めてしまいたい気持ちだ。」と話しています。彼の若い頃の折り目正しいスタイルも僕は好きですが、自身としては許せない過去なのでしょうね。なんだか気持ちは分かるような気がします。

Set List ( October 22, 2008 at Cotton Club, MARUNOUCHI , 21:35~ )

1) Nemesis
2) Con Alma
3) Riddle Me This
4) After Glow 
5) Harvesting Dance
6) Praise
< Encore >
7) Be-Bop の曲。タイトル失念。

Aaron Parks (p)
Mike Moreno (g)
Matt Penman (b)
Jochen Rueckert (ds)

Modern Art Trio / Progressive Jazz

2008年11月22日 18時14分54秒 | JAZZ
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Franco D'Andrea(フランコ・ダンドレア )が Modern Art Trio 名義で70年に吹き込んだ名盤『 Progressive Jazz 』 が復刻されるという情報は、今年の春頃には入っていたのですが、発売日などの詳細はその後も全くアナウンスがなく、そのうち僕も忘れてしまっていました。が、ついに、やっと、発売されました。復刻ししてくださったのは、パオロ・スコッティ総帥率いる Deja Vu Records です。仕様は紙ジャケ&LP 。最近はアナログ収集に全く興味がなくなった僕も、今回は随分迷いましたが、やっぱり紙ジャケを購入しました。でも、この紙ジャケがなかなか素敵なのです。

詳細はまたあとで。

というのも、これからコットンクラブにアーロン・パークスを観に行ってきますので、とりあえず、退散。

November 20, 2008

2008年11月20日 23時47分45秒 | JAZZ
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今日は毎年楽しみにしているボジョレヌーヴォーの解禁日。というのは嘘で、ワインには全く疎い僕にとってはボジョレヌーヴォーのどこがいいのか、正直わからない。最近は随分少なくなったが、以前は接待で嫌という程、高級ワインを飲ませてもらったので、高いワインなのか、そうでないワインなのかだけは一口飲めば分かるようになったつもりでいる。

そんなわけで、ボジョレヌーヴォーの味には興味はないものの、近所のイトーヨーカドーの可愛い売り子さんの笑顔に負けて、アルベール・ビショー社のハーフ1780円のワインを買ってきた。

飲みながら聴いているのはやっぱりフランスがイイだろうということで、Orchestre National De Jazz の『 In Tempo 』。 Laurent Cugny が指揮を務めていた1996年の作品。この時期の同バンドには、ステファノ・ディ・バティスタ、ステファン・ギローム、フラビオ・ボルトロ、それにステファン・ウシャールなど、驚くほど豪華なメンバーが在籍していた。「バティスタはサイドメンで起用した方が生きる」、という仮説を見事に証明した傑作だ。

November 18, 2008

2008年11月18日 23時36分12秒 | JAZZ
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仕事の移動時間を利用して、渋谷の老舗ジャズ喫茶(ジャズカフェ)、Mary Jane ( メアリージェーン )に立ち寄る。渋谷南口を出て大きな歩道橋で246号を超え、少し路地を入ったところにメアリージェーンはある。渋谷の繁華街から離れているため意外に知られていない。

ここはジャズ喫茶といっても食事のメニューが豊富で、ランチもやっているので、タラコのパスタを頂く。

この日店内に流れていたのはBugge Wesseltoft ( ブッゲ・ヴェッセルトフト )のピアノ・ソロ集『 It’s Snowing On My Piano 』 とAmerican Clave のコンピレーション。ブッケは2年ほど前にお邪魔した際にもかかっていた。ブッゲも American Clave もこの店のオーナー、福島哲雄氏の十八番だ。ここから発信された尖がったジャズは多い。

ブッケ・ヴェッセルトフトはノルウェーの先鋭キーボーディストであり、またフューチャージャズ・レーベル “ JAZZLAND ” の主催者でもある。
ブッゲのラジオはこちら。( Last. FM )


Bugge Wesseltoft  『 It's Snowing on My Piano 』  1998

雑 記

2008年11月17日 22時52分50秒 | JAZZ

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11月13日 木曜日
ジャーナリストの筑紫哲也さんが7日に肺癌で亡くなられていたことを知る。
昔、テレビのインタビューで氏が、煙草の煙をはきながら沖縄問題について熱弁をふるっていたことを思い出す。
大量殺人兵器のごとき煙草を右手に持ちながら反核を訴える筑紫氏が妙におかしかった。
そういえば、以前、倉本聰さんも富良野自然塾の話をしながら煙草を吸っていた。何を話しても説得力に欠けるような気がした。

11月14日 金曜日


拙ブログ始まって以来、初の7のぞろ目、777位!
なんだか嬉しくなって、思わずSS撮ってみる。

11月15日 土曜日


仕事に忙殺される。午前中に胃内視鏡を40人こなす。もうヘロヘロ。
仕事帰りに同僚と白金台の有名フランス料理店、OZAWA で夕食を食べる。
同僚がオーナーシェフと知り合いとのこと。
オマール海老の茶わん蒸しがこの世のもので作ったとは思えないほど美味しかった。また行きたい。


11月16日 日曜日

あいにくの雨。屋内で遊べる場所ということで、10月にオープンしたばかりの埼玉県越谷市にある日本最大のショッピングモール、イオンレイクタウン( AEON Lake Town ) に行く。とんでもなくデカくて途方に暮れる。船橋ららぽーと TOKYO-BAY の比ではない。文字通り、湖まで人工的に作っちゃてるし。でも、店舗はこれといって目新しさはない。ただデカいだけ。この施設の隣に、これまた馬鹿デカいララシティー( ららぽーと新三郷+コストコ+IKEA )を建設中っていうんだから、何を考えているのやら。どう考えても作りすぎでしょ。でも暇つぶしには最高ですわ。コインゲームに子供そっちのけで夫婦で夢中になり、幸せな時を過ごした。

11月17日 月曜日

仕事を早く切り上げ、急いでBlue Note Tokyo へ。 今日は High Five Quintet のライブ。早く着きすぎたので、ビールを飲みながら南博さんの 『 白鍵と黒鍵の間に 』 を再読。やっぱり滅茶苦茶面白い。はっきり言って、氏の音楽よりもテキストの方に魅力を感じてしまう。続編出ないかな~。
ライブは最高。それ当然。スカナピエコはだいぶ疲れきっている様子。今日は朝9時に起こされたようだ。
僕はファースト・セットを観たが、帰り際にセカンドを観に来ていた Rhodia さんにご挨拶。可愛くて、そしていかにも社交的で誰からも好かれそうな女性でした。


Richard Whiteman / Slow Night

2008年11月12日 22時05分22秒 | JAZZ
カナダ人ピアニスト、リチャード・ホワイトマンの3年ぶりとなる通算6枚目の最新作です。

96年の『 Grooveyard 』がコアな輸入盤ファンの間で人気となり、99年の『 Avenue Rhodes 』が例の『 幻のCD レア盤~ 』に掲載され、さらには05年の『 All or Nothing At All 』が寺島靖国氏の監修するコンピレーションCDに収録されるなど、着実に日本でもファンを増やしてきたホワイトマン。 今回もピアノ・トリオ編成でスタンダードを中心に演奏しています。何故か、椎名林檎の≪ 歌舞伎座の女王 ≫ もやってます。

とにかく、ホワイトマンのジャズを聴くといつもユーホリックな気分で満たされます。ふ~、イイねえ、このスイング感。特別な仕掛けや気負いなど全くなくて、それでいて滋味溢れる豊かなフレーズが次々と紡ぎだされる。最初のワン・フレーズでその場の空気を仄かに暖めてくれるような優しい音です。

現在ジャズ界が直面している閉塞感を何とか打破しようと日々、新しいジャズを探求、模索している先鋭ジャズメンを尻目に、ひたすらスイングし、自身の歌を綴っていくことに音楽人生をかけているピアニストです。10年先、20年先も彼は今と変わらないスタイルで、トロントあたりのクラブで弾いていることでしょう。

なんだか、聴いていると、ジャズにハマり始めた若かりし頃の熱くてピュアだった気分が蘇がえってきちゃいます。

ちなみに本作は廉価盤CDを制作している Tapas Records ( 配給はガッツプロダクション ) からリリースされていて、値段は税込1200円。あまり値段のことを強調すると何処からか槍が飛んできそうなので、ここは小さな声で….超お買得です

Igor Prochazka / Easy Route

2008年11月11日 21時34分18秒 | JAZZ

アダム・マコビッチ、ロベルト・バルザールと、チェコスロヴァキアのアーティストが続いたので、ついでにもう一人聴いてみましょう。

チェコ共和国に生まれ、ドイツでクラシック音楽を10年以上学んだ後、現在はマドリッドを拠点に活躍中の若手ピアニスト、Igor Prochazka ( イゴール・プロハースカ ) のデビュー作です。

ブルー・スカイ、乾いたブライトサンド、そしてオレンジ・イエローのアンティーク車。輸入盤取扱い店でも、ひときわ目を引く印象的な美しいアート・ワークの作品なので、手にとった方も多いのではないでしょうか。実際にもかなりのセールスを獲得しているようです。そしてアート・ワークだけでなく内容もそれに負けないくらい秀逸です。

何と言っても、4 ビート一辺倒では決してなくて、ロックやソウルの軽快なリズムを基調とした洒脱なナンバーを大々的に配したことが本作の特徴です。ピアノトリオというシンプルな編成でも、豊かなバックグラウンドを持つアーティスト同士が、柔軟な発想で取り組めば、たとえテクニック的に凡庸であっても、素晴らしい音楽が作れる、という見本のような作品です。

本作はジャズ批評誌の最新号 No.146 『 ピアノ・トリオ Vol.4 』でも3人のライターが推薦されていました。全7曲で録音時間35分ですから、1時間以上の作品が当たり前の時代にあっては、非常に短く感じます。あっという間に聴き終えてしまいます。でもその潔さがかえって作品のイメージを明確にし、よい結果を導いているようです。6曲がイゴール・プロハースカのオリジナルで、1曲がベーシストのクリスチャン・ペレスのオリジナル。やはり、これから売れるためには、クラシック音楽教育に裏付けられた高度な技術と、哀愁かつポップな馴染みやすいメロディセンスが必須条件なのでしょう。あと4ビートだけに拘泥しているとダメですね。

  

余談ですが、ジャケットの車はスペインの自動車メーカー、SEAT ( セアト )の60年代から70年代にかけて生産された車のようです。当時はフィアットとのライセンス契約で、フィアットのモデルを生産していました。このSEAT 850 もその一台です。しかし、1980年にフィアットが撤退し、現在はフォルクスワーゲン傘下にあるようです。日本への正規ルートでも輸入は行われていないので馴染みが薄いかもしれません。

で、面白いのは、リーフレットにある上の写真です。フロント中央に羽を広げたようなロゴが付いていますが、よく見ると『 JAZZ 』 と書かれてあります。本当はここには社名の『 SEAT 』と記されている車なのですが、この撮影のためにわざわざ特注したのでしょうか。お金のかかっていないアート・ワークのようで、隠れたところにちゃんとお金をかけている粋なお仕事ですね。


アルバムのタイトル曲 ≪ Easy Rout ≫ 。

Robert Balzar Trio / Overnight

2008年11月09日 08時32分11秒 | JAZZ
金曜日にアダム・マコビッチを聴いていたら、チェコスロヴァキアのピアノをまとめて聴きたくなって、Emil Viklicky ( エミール・ヴィクリツキー )、Matej Benko ( マチェイ・ベンコ )、 Naj Ponk ( ナイポンク )などのCDを棚から引っ張り出して聴いていました。そんなことをしていたら偶然、拙ブログにたびたび来てくださる Marty さんが「 Robert Balzar Trio の 『 Overnight 』 を買いましたよ。」 とコメント入れてくれたので、久しぶりに僕もバルザールの 『 Overnight 』 を聴きながらこうして書いています。

ロベルト・バルザールはスロヴァキアの売れっ子ベーシストで、ピアノはスタニスラフ・マハという人が弾いています。この作品はジャズ批評の最新号 No.146 『 ピアノ・トリオ Vol.4 』に掲載されています。紹介している方は diskunion 吉祥寺店の水野悠さんです。僕もこの作品が大好きだったので、「よくぞ取り上げてくれた!」と、もし彼が目の前にいたら、熱く手を握りしめ、思わずドードレブスカ・ポルカを踊りだしていたかもしれません。水野さんは本作以外にも、アラン・パスクァの『 The Way You look Tonight 』、エヴジェニー・レベデフの 『 Fall 』、南博の 『 Like Someone In Love 』、ロバート・ラカトシュの 『 Never Let Me Go 』 etc を紹介されていて ( どれももベースが良い作品 )、いずれも非常に共感できる作品ばかりなので、これからも彼の推薦盤をチェックしていこうと思っています。

さて、まずはバルザールの経歴について簡単に触れておきましよう。
All About Jazz と こちらを参考にしました。 )

彼は1962年にチェコ共和国のポーランド国境近くにある町ナーホドに生まれました。12歳の時にウッドベースを学び始め、ブルノ音楽学院でクラシックのコントラバスとピアノを学んだそうです。85年よりプロとしての活動を開始し、プラハ活動拠点として、スタジオやテレビ番組のビッグバンドでの仕事をはじめ、国内外の著名なミュージシャン達との共演を重ねていきました。自己のトリオを結成したのは96年で、98年にはデビュー作 『 Travelling 』 ( jazzpoint ) をリリース。2000年には二作目となる『 Alone 』 ( cube ) をリリース。05年に三作目となる本作『 Overnight 』を Sonny / BMG よりリリースし、メジャー・デビューを果たしています。今年発売されたジョン・アバークロンビーとの共演盤 『 Tales 』 ( BCWD music ) が第四作目となる最新作です。

自己のバンド以外では、前述したエミール・ヴィクリツキー ( p ) 、チェコの人気シンガーソングライター、ダン・ベルタのサポート・メンバーなどで人気を博してきました。ピアノ・トリオ・ファンならナイポンク・トリオの94年の幻の名盤 『 Birds in Black 』 ( カラスのジャケット ) で弾いていたのでご存じの方も多いでしょう。

バルザールはとにかく滅茶苦茶うまいです。弦を高く張り、指で弦を引っ掻くように力強く弾くので、アタック感が明瞭で、ブリブリ、ゴリゴリのウッドベースらしい音が出ます。アンプリファイされない、木の香り漂う美しい音質です。それでいてサム・ポジションでのソロも軽々とやってのけるので驚きです。驚異的なテクニックです。同郷の名手、ジョージ・ムラーツと非常によく似たスタイルですね。

作品全体の印象としては美メロ満載の抒情派路線なのですが、ベースの重心が低く、ドラムのジジ・スラヴィチクも要所要所で適度に暴れてくれるので、聴き終えた後、確かな余韻を残してくれる素晴らしい仕上がりになっています。抒情的と言っても透明感はあまり感じられず、むしろ、霧のかかったような仄かな抒情性が全編に漂っている感じです。雲の隙間から差し込み、海面を仄かに照らす太陽の光が美しいジャケットのアートワークのように、ダークだけれど哀愁感を湛えた作風です。

全9曲で、そのうち6曲がバルザールのオリジナル。その煌めくソングライティング力も彼の魅力の一つです。特に M-6 ≪ night ≫ のメランコリックなメロディーは、一度聴いたら忘れられない魅力を放っています。

この作品、ちょっと不思議ですが、中古店で安く出回っているのをよく見かけます。新品を手に入れるのは難しくなってきていますので、ぜひ中古店で探してみてください。そういえば、11月7日に移転オープンした diskunion お茶の水駅前店 に昨日寄ってきましたが、このCDが2枚も売られていましたよ。

Adam Makowicz & George Mraz / Classic Jazz Duets

2008年11月07日 23時14分33秒 | JAZZ
≪ 今夜はこんなの聴いています ≫

一昨日は風邪をひいてしまい、発熱と咳のため百々徹さんのライブはキャンセル。昨日はなんとか解熱剤の大量内服+座薬で熱を下げ、Blue Note Tokyo での Gordon Goodwin’s Big Phat Band のライブを観てきました。いやー、かっこよかった。観衆のノリがいまひとつだったのが残念でしたが、演奏自体は非の打ちどころがなかった。今日はだいぶ体調も回復したので、まずは傷んだ体に優しいジャズを選んで聴いています。

アダム・マコービッチ( 1940年生まれ )は、旧チェコスロバキア出身のピアニスト。寺島靖国氏が「 チェコスロバキアの溶岩のようにゴツゴツしたピアノ 」と比喩した人です。「 ヨーロッパのジャズ・ディスク 1800 」( 1998年 ジャズ批評社 )によると、ポーランドのフレデリック・ショパン音楽学校でクラシックを学んだが、ラジオ番組「 USA JAZZ Hour 」を耳にしてジャズの魅力にとりつかれて中退。60年代にはトマシュ・スタンコらとフリー・ジャズのバンドを結成したり、ワルシャワを中心に自己のバンドで活躍。78年に長年の夢であった米国に移住。現在も活躍中です。「 幻のCD 廃盤レア盤~ 」に『 Naughty Baby 』( 1987 Novus ) が取り上げられていましたね。

本作は、渡米後、初めてジョージ・ムラーツと録音された81年の作品で、その後二人は長年にわたり交友を深め、デュオでの数枚の作品を残しています。マコヴィッチは恐るべき演奏技術の持ち主で、特に右手のフレーズが超速いです。印象としてはアート・テイタムやオスカー・ピーターソンを聴いているときの驚きに似ています。

 2 songs upload
これイイです→≪ If ≫ ( 米国70年代に活躍したソフトロック・グループ、Bread の名曲 )


西山 瞳 / Parallax

2008年11月04日 22時25分35秒 | JAZZ

少し前の話になりますが、10月9日にお茶の水NARU に西山瞳トリオ+馬場孝喜のライブを観にいきまいた。

今まで Spice of Life から発売された三作品はいずれも欧州の一流ミュージシャンとの共演盤だったので、今回の国内ミュージシャン、それも非常に若い方との共演には、正直なところ大丈夫だろうか、という不安がありましたが、そんな不安も杞憂に終わるほど素晴らしいステージでした。

ライブを観た時点では僕はまだ彼女の最新作『 Parallax 』を聴いていなかったので、次の日に勇んで買い求め、以後、mp3プレーヤーに入れて、通勤中に頻繁に聴いています。

今回のツアーは、最新作の発売記念であると同時に、渡米するドラマーの清水勇博さんの追い出しライブでもあったようです。ライブの始まる前に僕の近くで清水さんが話をしているのが耳に入ってきましたが、なんでも、米国での仕事が保障されているわけではないようです。現地で仕事を探すのでしょうかね。でもまあ、まだまだ若いですからどうにでもなるでしょう。応援しています。頑張ってください。

このドラマーの清水勇博さんも、ベーシストの坂崎拓也さんも、技術的には申し分なく、しかもイケメンで、まったく羨ましい限りです。西山さんもこんなイイ男と一緒に仕事ができてさぞかし御満悦のことと御察しします。

また今回、個人的にツボにはまったのが、ゲストで出演していたギタリストの馬場孝喜さんです。年の頃は30前後といったところでしょうか。まだまだ大学生っぽさが残る青年です。2005年のギブソン・ギター・コンテストで最優秀ギタリスト賞を受賞しているようです。大学は大阪大学ということですから、優秀な方でもあります。

終始、不気味にニヤけていたのが印象的でした。僕の経験から言わせてもらうと、こういったニヤけた掴みどころのない不思議な雰囲気をもった男は、天才的な才能を持った奴が多いのです。スタイル的には現代のNYあたりではやりの複雑なアウト・スケールを多用した浮遊系ギタリストです。ライナー・ノーツで尊敬する評論家、成田正氏が、「パット・メセニー似の音色とマナー」と書かれてますが、僕はむしろマイク・モレノあたりに似ているように感じました。かなり好きなタイプです。音楽的にも、おそらく人間的にも。

それにしても、西山さんは、作品を重ねるごとに、どんどん打鍵が力強くなり、また複雑でアグレッシブな作曲をするようになりました。2004年の自己制作盤『 I’m Missing You 』 の頃のような、 エンリコ・スタイルの消え入るよう陰影感が懐かしくなります。まあ、彼女の音楽的進化であると考えれば、喜ばしいことなのですが、個人的には 『 I’m Missing You 』 の ≪ Passato ≫ あたりにどうしようもなく惹かれてしまいます。そういえば、『 I’m Missing You 』 でも演奏していた 美しいバラード ≪ Blue Nowhere≫ を今回も演奏しています。両方を聴き比べると彼女がこの4年間でいかに変貌してきたかがわかります。

最後に、音楽と全然関係なくて、申しわけありませんが、実際に彼女を見て思ったのは、彼女の容姿って、

でも、でも、でもなくて....

ましてや、

ではぜんぜんない....ということが、わかりました。
でも、ナチュラルで飾り気のない、そんな彼女が、大好きです。


心の清涼剤としてのジャズ・ヴォーカル

2008年11月03日 08時28分57秒 | JAZZ

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今日は朝5時に起きて、ひたすらヴォーカル物を
片っぱしから聴きまっくています。
というのも、次号の「ジャズ批評」の原稿依頼が来まして、
というか、とっくの昔にメールはいただいていたのですが、
全く手をつけられず、気がついたら締切は明日!
子供が起き出したら、うるさくて書けないので、
こうして休日早朝から眠い目を擦り擦り、
他にやるべき仕事が蓄積しているのに、
なんでこんなにまでして書かねばならないのか、
とも思いますが、まあ、好きですから、
なんとか午前中に仕上げようかと、思ってます。

ってな訳で、Dannielle Gaha ( ダニエル・ガー )の『 You Dont' Know Me 』を
取り出して聴いていましたが( 上の写真中央 )、聴きながらググッていたら、
この人、オーストラリア人ではありますが、現在は結婚されて、
名前も Gaha から DeAndrea に変え、LA に住んでいらっしゃるようです。
もともと、ポップス~ソウル系の歌手で、UKでシングルを何枚かリリースして
いるようでして、ジャズの作品は今のところ、この一枚しかないようです。
ノラ・ジョーンズの爆発的ヒット以降、この手の、ボーダレスな歌手が
ジャズのフィールドへ大勢で進出してきていますね。
まあ、肌ざわりは悪くないけど、ちょっと飽きやすいかな。
以前にもこの作品取り上げてますので、もしよければこちらをどうぞ。


□ Viktoria Tolstoy / My Swedish Heart   2005 ACT
ヴィクトリアの作品は全てはずれなしで、毎回満足しているけど、
“ 一服の清涼剤 ” というキーワードで選ぶとなると、これかな。
ウルフ・ワケニウスのアコギが北欧の清々しい風景を想起させますねぇ。
ラストのモニカ・ゼタールンドの愛唱歌、≪ Jag Yet Dejltig Rosa ≫ で、
ニスル・ラングレンのトロンボーンが入りますが、これが泣けます。


□ Viktoria Tolstoy / My Russian Soul  2008 ACT
ヴィクトリアの最新作。今回彼女が目指したのは 母親の故郷である“ ロシア ” 。
ご存じのように、彼女の母親は文豪トルストイのひい孫ですからね。
ロシアの楽曲と言っても、取り上げているのはチャイコフスキーやラフマニノフ。
その他はトラディショナルを少し。
ピアノはヤコブ・カースゾンで、ニルス・ラングレンがプロデュース。
ストリングスがまたよいですなぁ。
最近仕入れたヴォーカルでは一押しです。
それにしても、ヴィクトリアも34才ですか。
目じりに皺が目立つも、やっぱり美しいですね。


□ LAZAREV , Bolshoi Symphony Orch. / Rachmaninov Symphony No. 2
ヴィクトリアの新譜の中で、ラフマニノフの交響曲第二番に歌詞をつけて
歌っているのが、すごく良くて、思わずクラシックの棚からこれを引っ張り出して
聴いてしまいました。ラフマニノフは個人的に一番好きな作曲家です。
人生の晩年に僕が聴いているのは、ジャズではなく、彼の音楽かもしれません。


□ Rigmor Gustafsson  /  Close To You  2004  ACT
ヴィクトリア・トルストイと同様、スウェーデン人でACT専属ヴォーカリスト、
リグモア・グスタフソン。
ちょっとハスキーでキュート。
決して美形ではないけど、歌っている表情は何だか妙にセクシーで魅力的です。
本作はディオンヌ・ワーウィックに捧げた作品で、つまりはバカラック集です。
無類のバカラック・ファンの僕としては、彼女の諸作の中ではダントツに好きです。
ジャッキー・テラソンの短いながらも煌めくフレーズを散りばめたバッキングも
聴きどころのひとつです。
このあと、ミッシェル・ルグラン集を出し、最新作はラーシュ・ダニエルソンの
プロデュースで自作曲集を出しています。
それにしても、ACT のヴォーカルは、どれも高水準ですな。





□ Fay Claassen  / Sings Two Portraits of Chet Baker Vol.1  2006 55 Records
2003年に発売されたイヴァン・パドゥアの2枚組ライブ盤で、
フェイの歌声を聴いて以来の大ファンです。
本作はチェット・ベイカーの生誕75周年記念盤で、当初、2枚組で発売されましたが、
国内盤ではジャケットも変えて2枚別々に発売されました。
Vol.1 はトランペットを含むカルテットをバックに歌っています。
一方、Vol.2 はチェット・ベイカー=ジェリー・マリガン・カルテットのチェットの
トランペット・パートをヴォーカリーズでフェイが歌うという高度でマニアックな作品です。
懐に余裕のある方はもちろん2枚とも買えばよいのですが、
ボーナスもカットされ、株で大損し、おこずかいを減らされた寂しい方(俺か)は、
迷わず Vol.1 を買いましょう。
最新作『 Red, Hot & Blue 』 ( 2008 Challenge ) も悪くはないのですが、
このチェットベイカー盤は、いつもより声が艶やかで伸びやかなんですよね。
一家に一枚、現代ジャズ・ヴォーカルを語る上で避けては通れない名盤です。


□ Stacey Kent  /  The Tender Trip  1998  Chiaroscuro
ステイシー・ケントはなんだかんだと買い揃えているうち、全部揃っちゃいました。
でも、どの作品も旦那のジム・トムリンソン( ts )を軸としたシンプルなサポートで、
作品ごとの差異が曖昧になってしまっているのが残念です。
特に最近の作品はやや飽きてきてます。
個人的には初期の諸作に愛着があり、特に98年の本作は、同年の私どもの
結婚式の入場で使わせてもらったので思い出深い作品です。
≪ In The Still Of Night ≫ や ≪ East Of The Sun ≫ など、
僕の好きな曲が含まれているので、そのせいもあり、よくトレーにのせます。
独特の透明感のある可愛らしい歌声は、一度聴いたら忘れられません。
いつも聴いているとなんだか気持ち悪くなってきますが、
それこそ半年に一度くらい、ムショウに聴きたくなるタイプの、女性です。
現実の世界でもいますよね。そういう女友達って。


Kelly Eisenhour / Seek and Find

2008年11月02日 00時50分21秒 | JAZZ
≪ 今夜はこんなの聴いています ≫

ケリー・アイゼンアワー。
ソルトレイク・シティーを拠点に活動しているシンガーです。
今年新たに聴いたシンガーでは個人的にはベスト3にはいるほど
気に入っているんですが、
おそらく、日本でヒットすることは今後もないでしょうね。
癖がなさ過ぎる。
流行のファニー・ヴォイスでもないし、
いかにもジャズっぽいアーティスティックなボーカルでもないし、
それほど美形でもないし。
決して下手ではないのですが、これといった個性が感じられないのですわ。
でも、たまにはこんな巧くてサラッと聴ける
ピュア・モルトのような純粋な歌を聴いてみたくなるものです。
ボブ・ミンシャーが参加しているのですが、
これが輪をかけて癖がないので、なんとも清々しい作品に
仕上がっています。

そうそう、ギターがイイ感じだと思ってクレジットみたら、
ケンジ・アイハラという日本人でした。
チェックしておこっと。



Gordon Goodwin's Big Phat Band / Act Your Age

2008年11月01日 17時32分42秒 | JAZZ

LA の売れっ子スタジオ系ミュージシャンにより結成された超馬鹿テク集団 Big Phat Band の二度目の来日コンサートが来週に迫っています。作曲兼編曲を担当するのは主にテレビや映画音楽のフィールドで活躍されている Gordon Goodwin ( ゴードン・グッドウィン )。有名どころでは『 Mr. インクレディブル 』や『 スピード 2 』などがあります。ディズニーリゾートで売られているCDにもクレジットされているのを見たことがあります。グラミー賞1回とエミー賞3回を獲得しており、名実ともにアメリカ西海岸を代表するアレンジャーです。

このバンドは18人編成で、リード・アルトは昔チック・コリア・エリクトリック・バンドで活躍した Eric Marienthal ( エリック・マリエンサル )、リード・トロンボーンは Andy Martin ( アンディー・マーティン )、そしてビッグバンドの要、リード・トランペットには西海岸で最も多忙なトランペッターと呼ばれている Wayne Bergeron ( ウェイン・バージェロン )を擁しています。

バンド・スコアやマイナスワンCDなどのラインナップも充実していて、アマチュア・ビッグバンドの世界では絶大なる人気を博しているようです。

結成は2000年とまだ新しく、現在までに計4枚のCDをリリースしており、最新作『 Act Your Age 』は先月に発売されたばかりです。日本ではまだまだ知名度は低いですが、ビッグバンド・ファンの聖地、銀座山野楽器では、以前からポップ付き面置きで売られており、知る人ぞ知る存在ではありました。最近では特設コーナーまで設けて大々的に売り出しているくらいです。

さて、11月4日から8日まで、Blue Note Tokyo でライブが行われます。今年の1月にパティー・オースチンをゲストに迎えて来日した時は、残念ながら聴けませんでしたので、今回は絶対観にいこうと思ってます。というわけで、予習も兼ねて、土曜日の長い夜、デビュー盤から順に聴いてみようかと思っています。

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『 Swingin' For The Fences 』  2000 SILVERLINE 282002-2

2000年のデビュー作。一糸乱れぬアンサンブルとはこういうことを言うのだろうか。針の穴を通すような精度で超高速フレーズを聴かせてくれる。ハード・エッジでクリアなサウンドはひたすら爽快で気持ちがイイ。ジャズの持つ人間臭さをうまく排している。現代のビッグバンドはややもするとソリスト重視で、アンサンブルが希薄になりやすい傾向になるが、このバンドの素晴らしいところは、あくまでアンサンブルで聴かせるバンドであること。アルトゥーロ・サンドヴァル ( tp ) やエディ・ダニエルズ ( cl ) がゲスト参加している。のちにメンバーとなるエリック・マリエンサルやアンディー・マーチンもこの頃はまだゲスト・ソリストとしての参加だ。ブランドン・フィールド ( as ) がソロで参加しているのも、個人的には嬉しい。


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『 XXL 』  2003 SILVERLINE  281206-2

2003年のセカンド。このアルバムからエリック・マリエンサル、アンディ・マーティン、さらにはトランペットのボブ・サマーズらが正式メンバーとして加わり、ほぼ現行の主要メンバーがそろった形となった。いつも豪華ゲストを迎えて制作しているゴードンだが、今回はマイケル・ブレッカー(1曲のみソロ)、 Take 6 、ジョニー・マティスら、大物を招き、ラテン、クラシックのカヴァー、スタンダードと、多彩な楽曲を演奏している。ちなみにゲスト扱いではないが、ピーター・アースキンが5曲叩いている。メンバーがそれそれ売れっ子スタジオ・ミュージシャンなのだから、それほどリハーサルの時間もとれないだろうに、どうしてこんなに音が気持よく合うのか、不思議で仕方無い。純粋に音楽的に凄いのか、と聞かれると何とも言えないが、少なくとも超高速でアンサンブルなどをキメられると、ちょうど鍛え上げられたアスリート選手の演技を観ているときのような理屈を超えた快感を覚えるのは確かだ。



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『 The Phat Pack 』  2006  IMMERGENT  284404-2

2006年の3枚目。個人的には一番好きな作品。カヴァーは最低だけど。今回はデヴィッド・サンボーン、Take 6 、ダイアン・リーブスらがゲスト参加している。前作を踏襲する作風ではあるが、スピード感のある楽曲がやや多めなので車の中でよく聴いたCD。デヴィッド・サンボーンのフィーチャーされた曲、エリック・マリエンサルをフィーチャーした曲を聴き比べると、何度聴いてもマリエンサルの方が巧く聴こえるのだか….。この作品にはボーナスDVDがついていて、全曲の5.1 サラウンド・ヴァージョンをはじめ、レコディング風景、ライブ演奏などの動画、譜面などなど、盛りだくさんの内容である。


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『 Act Your Age 』  2008  IMMERGENT  281147-2

先月発売されたばかりの最新作。メンバーはほとんど前作と同じ。そして今回のゲストは超豪華! チック・コリア、デイヴ・グルージン、パティ・オースティン、そしてリー・リトナー。リー・リトナーはプロデューサーとしてもクレジットされている。そして、パティー・オースティンの歌う E.W.& F. の≪ September ≫ 、チック・コリアがピアノを弾く ≪ Senor Mouse ≫、デイヴ・グルージンとリー・リトナーがフューチャーされた ≪ Punta Del Soul ≫ 、さらには、昔のアート・テイタムのピアノだけを抜いて、それに彼らがアンサンブルを加えたヴァーチャル共演曲 ≪ Yesterdays ≫ など、ものすごく話題豊富な内容だ。でも、う~ん、洗練されすぎるのもいかがなものか。万人受けする聴きやすさは確かに増したのかもしれないが、アンサンブルが炸裂する元気な楽曲が少なめなのがちょっと残念。本作にもボーナスDVDがついている。

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